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■オープニング本文 ●二年前の泰国 「喜多(きた)様なんて、大嫌いですわ! わたくしが出歩けない事を、知っていますでしょ!?」 真っ白な白虎しっぽが逆立った。側にあった人形をつかみ、相手に投げつける。 「落ち着いて、花月(かげつ)。僕の話を……」 折れた虎猫耳は人形を受けとめた。虎猫獣人の青年は困った顔で、白虎獣人の令嬢をなだめる。 「出て行って下さいませ! どこにでも、勝手に行けばいいんですの!」 「花月の気持ちは、分かったよ……。僕はギルド員として天儀に行く、これだけは譲れないからね」 第二、第三の人形を投げつける、白虎の令嬢。虎猫の青年は、息を吸い込んだ。はっきりと紡ぐ。 「別れよう」 虎猫の青年は、背を向けた。白虎の令嬢の顔を、まともに見ない。さっさと扉に手をかける。 「……喜多様?」 令嬢の困惑した声、青年は立ち止まらない。語る言葉を持たず、無言で逃げ出した。 ●現在の神楽の都 天儀の西隣にある泰国の獣人は、総称して猫族(にゃん)と呼ばれる。獣人の九割が、猫か虎の獣人だから。 ただし、犬でも、龍でも、泰国出身なら「猫族」と呼ばれる。とある猫族兄妹たちは、天儀に住んでいた。 「バレンタインって、感謝の気持ちを表現するんじゃないの?」 虎猫しっぽを揺らし、新人ギルド員は不思議そうだった。虎猫の長兄は、開拓者ギルドの受付係をしている。 「私はチョコレートを贈って、愛を語る日ってきいたわよ?」 新人ギルド員の妹は、白虎しっぽを揺らす。虎娘の司空 亜祈(しくう あき:iz0234)は、小首を傾げた。 事をした。 元気な子供の声が、ギルド入口で響いた。猫族四人兄弟の下の双子が、子猫又を連れてギルドに飛び込んでくる。 「兄上、兄上! 父上から、お手紙届いたです!」 「姉上、姉上! 母上から、お手紙届いたです!」 「こら、勇喜(ゆうき)、伽羅(きゃら)、藤(ふじ)! 三人とも、お留守番は?」 長兄の虎猫しっぽが、天を向いた。内気な弟の白虎しっぽと、おてんばな妹の虎猫しっぽがうなだれる。 「喜多はん、怒らんといてや。うちは留守番より、お手紙が大事やもん」 泣き出しそうな子猫又。猫族一家は、故郷の泰国から、天儀の神楽の都に出てきた。 幼い子供たちは、泰国が恋しくなるときがある。料亭から届く手紙が、何よりも楽しみだった。 「姉上に、お手紙を貸してちょうだいね」 双子の頭をなで、両親からの手紙を受け取る姉。視線を走らせると、長兄に渡した。 「まぁ、うちの料亭でも、バレンタインにあやかるそうよ。お客様にチョコケーキを焼いたんですって。 私たちの分もあるみたいね。『お店を離れられないから、配達の依頼を頼んで』って書いてあるわ♪」 料亭は、去年の年末に、石窯を設置した。故郷からの愛情に、双子や子猫又は大喜び。 「開拓者の皆さんに、兄上が配達をお願いしてくれるわよ。私たちは、家でお茶会の準備をしましょうね」 「がう? 飲茶やるです!?」 「開拓者はん、うちに来るん?」 「そうよ、勇喜、藤。運んでくれた皆さんを、飲茶でおもてなしするのよ」 おおかな虎娘は、興奮した子供達を外に促す。四人兄弟の故郷は、泰国の南部。天儀の西にある儀の出身だ。 「にゃー、雪で遊んで欲しいです!」 「伽羅が良い子にしていたら、きっとお願いを聞いてくれるわよ♪」 泰国の南部は、一年中、半袖で過ごせる温暖な地域。冬を知らない子供達は、雪が珍しくてたまらない。 「きちんとお客様を迎える準備をして、待ってるんだよ?」 熱血漢の長兄は、料亭の跡取りでもある。料亭の子供達は、良い子の返事をして外に出て行った。 ●依頼 「泰国にある料亭から、チョコレートケーキを受け取ってきてください。いえ、僕の実家なんです」 真剣な緑の瞳、虎猫しっぽは膨らんでいた。冷や汗をかきながら、新人ギルドは説明を続ける。 「料亭では、『花月』が、皆さんの到着を待っていると思います。しま模様の無い、白虎の女の子なんですが……。 一緒に神楽の都に来たがると思うので、渡来を阻止して下さい。又従姉妹は、心臓が弱いんです!」 しま模様の無い、真っ白な白虎。体と心臓の弱い令嬢は、南国育ちだ。『寒さ』と言うものを知らない。 「花月は、冬を知りません。天儀の寒さで心臓麻痺でも起こしたら、取り返しのつかない事になります。 ……そりゃ、チョコレートケーキを焼いたのは、花月らしいですけど。とにかく、絶対に連れてこないでください!」 拳を握り、念押しする新人ギルド員。必要以上に食ってかかる。勢いに押され、頷く開拓者たち。 「……体が弱いのに天儀に来るなんて、何考えているんだか。本当にお願いします!」 料亭の隣町に住んでいる、体の弱い幼なじみ。料亭への外出すら、なかなか出来ないのだ。 曽祖父母の代で血が繋がる、真っ白な親戚。新人ギルド員は、黙ってうつむいた。 |
■参加者一覧
礼野 真夢紀(ia1144)
10歳・女・巫
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
慄罹(ia3634)
31歳・男・志
フェンリエッタ(ib0018)
18歳・女・シ
劉 星晶(ib3478)
20歳・男・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
神座亜紀(ib6736)
12歳・女・魔
月雲 左京(ib8108)
18歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●喜多的情況下〜喜多の事情〜 「チョコレートの配達だなっ! 任されたぜ〜」 「お任せだよっ」 ルオウ(ia2445)は、にっと笑った。元気よく、胸を叩く。 リィムナ・ピサレット(ib5201)は、片目を閉じた。ふ 「花月さんが天儀に行きたい? …今は駄目です。無理。危険です」 劉 星晶(ib3478)は、顔色が変わる。泰国出身の猫族、黒猫獣人の本音。 「ねえ喜多さん、花月さんにお手紙書いてみたらどうかな。折角チョコケーキを頂くんだし、そのお礼の意味でもさ。 きっと、喜ぶんじゃないかな。あたし達が責任もって届けるよ♪」 「必要ありません!」 リィムナは受付の前に陣取り、喜多を見上げる。喜多の表情は硬い。 「ギルド員さん、力説してませんか?」 「なんだか、いつもと様子が違うね」 礼野 真夢紀(ia1144)の不信な視線。神座亜紀(ib6736)も、感じていた。 「確か亜祈さん、浪志組の隊長さんになってるのよね? 家にいますよね?」 真夢紀、情報源確保。泰国訪問の前に、見聞を広めるという名目で、家庭訪問を実現した。 「よう、元気なお子様がいるんだってな」 玄関から覗く、慄罹(ia3634)の声に、双子がお出迎え。子猫又と揃って、ケーキの催促。 「…十二歳って、お子様と言っていいものか?」 少々面食らいつつ、慄罹は亜祈に尋ねる。行儀の悪い子供たちに、姉のかみなりが落ちた。 フェンリエッタ(ib0018)は、くすりと笑う。三毛猫しっぽで返事する子猫又。 「司空家の皆さんとは、随分久し振りね」 開拓者長屋の出来事は耳に新しい。フェンリエッタも、現場近くにいた身。双子も元気そうで、ホッとした。 「喜多さんの様子がおかしいの」 「あのですね、なんか必要以上に力説してた気がしまして」 フェンリエッタは、口を開く。そろりと尋ねる、真夢紀。 「…もう、兄上ったら!」 不機嫌になる白虎しっぽ。亜祈は煮え切らない兄を、切々と語ってくれた。 「そっか…元恋人同士なんだ。余計なお世話かもしれないけど…」 思わずギルドの方向を見る。強気なリィムナも、ちょっとしんみり。 「どこかで重ねちまってるのかな…」 慄罹は出された湯呑みを傾ける。風の外套を揺らし、空を見上げた。 行雲流水。外套の色に似た、澄んだ青色が広がっている。空に浮かぶ雲。 飲み干した湯のみを置き、慄罹は立ち上がった。肩に流した三つ編みが跳ねる。 (まぁ、俺の場合は自業自得なのかもだが…) ケンカ別れした猫族たち。…慄罹にとって、色恋話は得意では無かった。 「ギルド員の兄ちゃんに、会いたいんだろ?」 「会わせてやりたいがな」 首をかしげる、ルオウ。隣で自嘲気味の慄罹。強引な手しか、思い浮かばなかった。 「五行で合戦がなかったら、兄上を泰国に連れて行けたのだけれどね」 歯がゆいのは、亜祈も同じ。時勢が悪かったと、ぼやく。 喜多をギルドから、早引けさせた開拓者達。家で待っていた亜祈は、兄を畳の上に正座させた。 「心配する気持ちは、私にも伝わってくるわ」 フェンリエッタが、口を開く。敬意と慈愛に満ちた瞳は、喜多をまっすぐ見つめる。 「けれど体が思うようにならずに辛いのも、それを一番解っているのもきっとご本人。 天儀に来たい理由も、察しているのでしょう?」 頭で理解できても、心で納得できない事はある。 「己が気持ち、殿方が…言葉に靄(もや)かけるなどと情けがありませぬ。しゃんとなさいませ」 修羅は戦の民。喜多の前に移動した月雲 左京(ib8108)は、退かない。じっと見つめ、威圧する。 「喜多様は、側にいるのがお辛いのでしょうか…?」 心臓の弱い、真っ白な白虎。喜多にとって、今生の別れケンカのつもりだった。後悔したけれど。 「どうしても会えないなら、譲り合う事も必要だと思うわ。親しき仲にも礼儀あり、よ。 バレンタインは男性から贈り物をしても良いもの。何でもいい、花月さんと向き合ってみて」 黙り込み、喜多は口を開かない。フェンリエッタは、家の中から筆記用具を探した。 「私が彼女なら…会えないならせめて、貴方の言葉が欲しいと思うの」 「三月にホワイトデーと言って、バレンタインのお返しをするっていう風習も一部にあるんですって。 花月さんの贈物にちゃんと返答しないと、罰当たると思うんですけど?」 フェンリエッタの言葉に乗っかる真夢紀。トゥワイライト・レターを押しつけ…否、差し出す。 「どんな関係かはしんないけど、それだけ会いたいからじゃないのかなって」 ジルベリアの貴族の娘に一目ぼれした、ルオウ。護衛の騎士に、弟子入りした身。喜多に険しい表情を見せる。 「…事情詳しくわからないけど、何を推しても会いたいって気持ちは判るつもりだ。俺にも、そういう娘いるし…」 弱い者や女性をほうっておけない。花月は、身体弱い事をきっちり自覚していた。 「だからどんなに心配でも、『馬鹿な事』って言っちゃうのは、止めてやって欲しいな」 なんの理由もなく、無茶を言うとは思えない。心眼の巻物にかけて、断言する。 「伝言位預かるぜ? 手紙なら、なおいいけどさ」 「喜多さんには花月さんへの手紙を書いていただきます。何としても」 ルオウの後方に居た星晶、筆を見つけた。世話焼きなうえ、興味を持った事には何でも手を出す。 「花言葉にかけて、花を贈ってみたら?」 「…蛍草で。花月、『本物の蛍を見てみたい』って、言ってましたから。 えーと、ケーキを作ってくれた想いに、尊敬を贈るんです!」 野草図鑑を開いてみせる亜紀。しばらく悩み、喜多は口走った。膨らんだ虎猫しっぽ、支離滅裂だ。 「そっか、花月さん、蛍を見たことないんだね」 神座家三女。姉妹の中では一番現実的な性格をしている。そのまま、受け取った。 ●花月的信〜花月の手紙〜 「よっ! 久しぶりっ!」 手を振る、ルオウ。花月の真っ白な虎しっぽが、嬉しそうに動く。 向こうは厨房を、見学する慄罹。本気戦闘時は、鋭眼無口の別人になる。泰国の料理を作る身としては、興味深い。 「言いたく無い事は言わないでもいーけどさ」 ルオウは、どうして行きたいのか、花月に聞いてみる。理由に、思わず頷きそうになった。 「冬の天儀に行きたい? それ駄目! 絶対駄目!! 天儀の冬って本当に寒いんですよ。冬の朝は、水溜りの水が凍る位寒くなるんです」 花月は、氷も知らない。水姫の髪飾りをつけた真夢紀、お皿の水を氷霊結で凍らせてみせる。 「こんなのが見渡す限りあるんだから!」 亜紀も構える。集まる精霊力の標的は、真夢紀の作った皿の氷。 荒れ狂う白、ブリザーストーム。留まることのない、白い雪と亜紀の心。 「冷え込みも厳しいですし、乾燥するから風邪引く人も多く出て…」 花月は、天儀の風邪が分からない。小首を傾げる。 「天儀の冬はとても寒いんだよ。勇喜君や伽羅さんも去年風邪をひいちゃったんだ。 …熱も出るし、体もだるいし、花月さんならもっと酷い事になっちゃうよ!」 泣きそうな花月。自分の体は、自分が知っている。わがままを言っている事も知っている。 「お月見の時みたいに、気候が穏やかな時においでよ。ボク自身、花月さんに何かあったら耐えられないもん」 亜紀も泣きたい。大人びた言動で、子供じみた言動を隠そうとする。 「風邪だって、こじらせたら命に関わるんですよ! まゆもお姉様体弱いから、冬はいっつも心配ですもん」 体の弱い長姉と、守る責務を負う次姉。二人とも、家を開けられない身。真夢紀と交わす文が、楽しみだ。 「ええ、全く本当にどうしてあんなに寒いのでしょう…。つまりですね。暖かい場所で生まれ育った人間に、結構大変です」 虚ろな目になり、遠くを見る黒猫。見かねた左京が、星晶の服を引っ張っていた。 「これが冬で無かったら、二つ返事で受けたかもしれませんが、冬は駄目です」 泰拳袍「九紋竜」は奮闘していた。星晶は、花月に言い聞かせる。 「冬の天儀はいけません。その寒さと来たら、健康な若者であっても心をへし折る程ですよ」 ケーキの配達は、気をつけていれば問題ないが。花月の身体に関しては、命の危険を伴う。 「春になってまだ行きたいという気持ちがありましたら、その時は力になりたいと思いますから」 花月には、今は辛抱して貰いたい。寒い天儀を経験した、星晶の本心。 「大事な人に長生きして欲しいって思うの、人なら誰でもそうじゃありませんかね?」 真夢紀は、喜多の懸念を告げる。取り返しのつかない事に、なって欲しくないから。 「気持ちは判るけど…相手に心配かけちゃダメだろ? そんなに会いたいなら、お互い元気な方がいいじゃん。 そうだ天儀で機会があったら、シュバルツドンナーを紹介するよ。俺の相棒、空飛ぶ滑空艇なんだぜ」 ルオウの心遣い。暖かくなったら、必ず連れていくから。それまで身体を大事にして欲しい。 「あんたの想いは『それ』に込めてあるんだろ?」 ケーキを指差す慄罹。「あいつ、必死におまえさんの事、説明してたぜ」と付け加えて。 フェンリエッタは提案する。顔を合わせる事は出来なくても、気持ちを伝える事は出来るから。 「ね、先ずは文通してみてはどうかしら? 面と向かってはなかなか言えない事もあるし、不器用な男性って多いしね」 くすりと笑って、虎耳に内緒話。花月もつられて、笑う。 「恋は盲目、と申しますが…積極的な女性に好かれるとは、喜多様も隅におけませぬ」 左京のまとう着物「雪姫」の裾は、楽しげに揺れていた。 「手紙っていいよね。あたし、妹とケンカした時や悪い事して姉ちゃん怒らせた時、つい意地はっちゃう時があってさ」 リィムナは机越しに、花月の前に座った。隣の亜紀と二人して、観察する。 花月は百面相。文章を進めては、一喜一憂している。 「そんな時は、手紙を書いてるんだ。何故か、素直な気持ちが書けるんだよねー。それでいつも仲直りできちゃうんだよ♪」 白虎耳に、リィムナの『仲直り』が聞えてきた。花月が顔を上げると、視線がぶつかる。 「…まあ、姉ちゃんにはきっちりお尻を叩かれるけどね、あははっ」 元気なリィムナは、両親を早くに亡くした。歳の離れた姉が、妹達を必死に育ててくれた姉が、世界一大好き。 「愛しているからこそ、などと…理解、出来かねますね…」 花月が手紙を書く間、左京は独りで待った。つらつらと取り留めもなく、独り言。 「わたくしは…愛情が育つ前に、消え失せた心で御座います」 冥越の隠れ里。アヤカシの襲来により失った、左京の故郷。亡くした婚約者は、どんな顔だったか。 辿る記憶、遠くを見つめる色違いの瞳。緋色の瞳に双子の兄は思い出せど、黒の瞳に婚約者は映らぬ。 「会える月日もあと何日か…わたくしには、その事すら…知りえぬことでしたが…」 ゆがみ消えるのは、誰の顔か。左京はうつむく。 「会えぬと言う事を知っているのは、幸せなのでしょうか? それとも、どうにも出来ぬ事だからこそ、なおに苦しいのでしょうか」 左京の謎かけ。『自害はしないで』と残した兄は、答えをくれなかった。 ●希望雪色〜雪色の願い〜 「サイはやんちゃだから、きっと仲良くなれると思うんだよな」 『わー、獣人さんだー! 遊ぶのー? いいよー♪』 慄罹は人妖の才維を連れてきた。雪遊びは、多い方が楽しいに決まっている。 『司空って、土木工事が得意? かまくら作れるー?』 「ご先祖さまは、治水が得意だったです」 「なら、雪だるまはどうだ?」 『雪だるまー、おっきーの作ろー!』 慄罹は双子を追い立て、庭に放りだす。掛け声に、才維が目を輝かした。 「サイが相棒になってから、子供の相手も慣れてきたんだ」 笑顔で答える慄罹。手際の良さに、猫族兄姉は感心した。 「あたし、吟遊詩人になったんだよ♪」 柔らかく、優しいフルートの音色。リィムナの故郷、ジルベリアの曲が庭に響く。 フェンリエッタが心動かされた。故郷の歌をくちずさみながら、庭に顔をだす。 「あら、雪遊び? 私も仲間に入れて♪」 ジルベリア帝国貴族の末子、フェンリエッタ・クロエ・アジュールの参戦。 「カシュカシュを連れてきたら、良かったかしら?」 恥ずかしがり屋の管狐。かまくらの中から顔を出した相棒を、想像した。 リィムナは腕組みをしてしゃがみ、脚を交互に前に蹴りあげる。足首でグングル「エイコーン」の鈴が鳴った。 「ジルベリアの地方の踊り、皆もやってみる?」 リィムナに教えて貰って、双子は踊りに夢中。こさっくなんちゃら。 「マッキSIの事? うーん、さすがに無理だと思うよ!」 双子の突拍子もない考え、空の推進力に出来るか聞く。リィムナは滑空艇を想像して答えた。 先天的な白子の左京、雪は目に眩しい。家に引きこもり、飲茶を楽しむ。楽しそうに駆けまわる声、子供達が帰ってきた。 「後で雪那にも、遊んでもらおっと♪」 相棒のからくりを、思い浮かべる亜紀。姉達を巻きこんだ雪合戦に、かまくら作り。楽しそうだ。 「…外は寒いですが、良いのです。楽しそうな笑顔を見ていると、心は温まりますから。美味しいお茶もありますしね」 黒猫耳は、悟りの境地。温かい泰国と、天儀の寒さの落差が悲しい。 「餅を揚げて作った、あられとか。砂糖少なめの餡子と炒った松の実を入れ巻いて揚げた、スティック春巻きとか作るか」 慄罹の差し入れは、白大福に饅頭。台所に向かう、少し塩気のあるものも食べたい。 「ああ、後で分けて下さい。翔星にも届けてやりたいですから」 星晶は港でお留守番中の相棒、鷲獅鳥の名を口にする。 真っ白な子猫又が、藤の前に座っている。真夢紀の相棒だ。 「小雪が藤さんにあげたいんですって」 ジルべリアで買った、牛乳風味のチョコレート。真夢紀がお魚の型を彫って、魚の形に固め直した。 「生クリームも買ってきたから、泡立てました。ケーキに添えてください」 「うん! すごく美味しーい♪」 ふわふわのクリーム。リィムナのほっぺは、落ちてしまう。 「…夜汐も、欲しがるやもしれませぬね」 子猫又たちが噛みついた魚を、左京は覗きこむ。左京の相棒の猫又も、まだまだ子猫。 「友チョコ、と言う物が流行しているようです、亜祈様…貰っては頂けませんか?」 これ幸いと風呂敷包みを解く、左京。親愛の証として差し出された、チョコレート。猫族一家と、星晶にも渡された。 「さて、いつ花月をつれてくるかだ」 雪遊びに興じていた、ガキ大将。ルオウも真面目に、喜多と作戦会議。 「恋愛もケーキを食べるみたいに簡単だったらいいのに。ねー、藤ちゃん」 子猫又を抱き上げ、亜紀は語りかける。食べカスを付けたまま、藤が見上げた。 「歩み寄る切欠になればと思うけれど。…そう簡単な事ではないでしょうし、少しずつね」 フェンリエッタのスノードロップの耳飾りが、光を反射した。天儀の言葉で、『待雪草』と呼ばれる花。 |