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■オープニング本文 遅咲きの花がちらほら見える武天の山。麓の村では、ある問題が勃発していた。 「あきらめてはくれないか?」 「嫌じゃ、絶対に嫌じゃ」 「親父、歳を考えろよ!」 「お前こそ親に向かって、その口調はなんだ!」 村の集会所では、長老集と若集の言い争う声が響く。 入口から覗きこむ子供達と母親達が、どなり声に肩をすくめた。 「ねぇ、お花見に行けないの?お父さんも、おじいちゃんも怒ってるよ?」 「行けないことはないんだけど、どちらも頑固だからね‥‥」 覗いていた女の子の一人が、悲しそうな顔で母親を見上げた。困った顔で、母親は子供を抱き上げ、頭を撫でる。 「花見なんて、村はずれの桜ですればいいだろう?」 「頂上の桜を見つつ、村を見下ろすのが良いんじゃ!今年は遅咲きの桃も咲いておる」 村で毎年行われるお花見。年々お年を召していく長老集に、今年は山ではなく村の中でやろうと言った若集。 年寄り扱いするなと長老集が怒りだしたのが、言い争いの発端だった。 「うちの旦那も、じいちゃんも頑固だからね」 「どうするかい?ほっといて、うちらはうちらでしようか?」 「とりあえず、止めるよ」 料理を作る母親達も、困り顔で井戸端会議をする。 肝っ玉母さんの鶴の一声。問答無用で、集会所の中へ水を撒き散らした。 「絶対、山の上で行うぞ!」 「親父、登れるのか?去年は膝が痛いと言ったくせに」 「あれは荷物を持ったからじゃ」 「俺は荷物持てないぞ、チビをおぶるんだから。やっぱり村外れで‥‥」 「今年は、荷物持ちの助っ人を頼もう」 「おお、それは良い考えじゃ!」 「‥‥ついでにチビとじいさんたちの子守も頼みたい」 若集の言葉をさえぎって、長老集の一人が妙案を出した。賛同する長老集、若集の抵抗の声は賛辞にかき消された。 ぽつっとこぼれる、若集の本音。 そして、ギルドにお花見のお手伝い募集の依頼が張り出された。 |
■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
空(ia1704)
33歳・男・砂
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志
浄巌(ib4173)
29歳・男・吟 |
■リプレイ本文 ● 明日は花見、心は浮かれている。 「お母さん、桜餅は?」 「また後で」 「えー!」 「俺が作ってやろう」 料理を手伝っていた風雅 哲心(ia0135)は、駄々をこねる子供に笑いかけた。季節の創作料理に凝っているが、たまには伝統料理も良い。 「ほう、見事な手つきだ」 見学していた皇 りょう(ia1673)は、哲心の手際の良さに感心。武芸と胃袋に自信はあるが、女らしさには自信が無い。 「ねぇ、まだ?」 「ちょっと待ってな」 「羨ましいな、私が混ざればきっと散々な事に‥‥」 「あんこだけでも、丸めてみるか?」 「そ、それぐらいなら!」 ため息を聞いた哲心からの誘い。嬉々として勇士の帯をしめ、りょうは気合を入れた。 秋霜夜(ia0979)は、広場で子供達に混ざっていた。隣で虎しっぽをゆらゆら、羽喰 琥珀(ib3263)も楽しそう。 「よしっ、これで準備万端だ!」 「明日が楽しみですね♪」 完成した遊び道具に、琥珀は満足げである。霜夜と子供達の嬉しそうな声が響いた。 「おーおー、元気な餓鬼共だこと」 「貴公も混ざらしむ」 「誰がッ!」 広場を眺め、ぼやく空(ia1704)。浄巌(ib4173)は深網笠の下から、遊びに行けと勧める。 くっくっと面白そうに笑う友人。空は鋭く睨みつけた。 「荷造りは出来たかしら?」 「しばし待たれよ」 「時間が少のうおす、早めにお頼みもうしやす」 「‥‥人使いの荒い小娘共だな」 敷物を持って来た葛切 カズラ(ia0725)は、艶やかに尋ねる。酒樽を地面に置きながら、華御院 鬨(ia0351)も発破をかけた。 鬨はれっきとした男だが、機嫌の悪い空は見た目で女と一括り。 「なぁ、なぁ、背負子が欲しいんだけどさー」 「背負子なら、そこにあるわよ」 ひょっこりと琥珀が、遊び道具を持ってきた。カズラが指し示す。 「これも荷造りして欲しいです」 「荒縄が必要どすな」 「‥‥我らがやろうぞ、そこに捨ておけ」 「おい、安請け合いするんな!」 霜夜の抱えた景品の数をみて、鬨は優美に眉を寄せた。助けを求める視線、浄厳は折れた。空の声は無視。 「桜餅ができたぞ」 「すまないが、取りに来てくれ」 「わー♪」 哲心とりょうの声が耳に届いた。おやつの時間に、見守っていた子供達は大喜び。 「おじちゃん達、あとお願いね!」 「おじ‥‥」 「諦めたし、仕方なきとて」 空に年長の自覚はあったが、いざ言われると絶句。浄厳は笠を深く被り、悟りの境地。 そして皆は去っていった、山のような荷物を残して。 「‥‥年寄りは、労わッて欲しいぜ」 「寂しや、吾は花を見ゆるが、汝は村ぞ」 「てめェ、酒返せよ!」 「宴というものは、準備に時間がかかるものよ。文句を言うても始まらぬぞ?」 「やるよ、やれば良いんだろ」 浄厳は、留守を預かる最長老衆を指差した。そして文句を垂れる空の前から、酒樽を退け始める。 明日の楽しみを奪われては堪らない。空は荒っぽく荷物をまとめだした。 ● 「さて‥‥行くか!」 腕まくりしながら、哲心は酒樽を担ぎあげた。水ものは意外に重量がある。 「兎にも角にも、力仕事ならばお任せを」 りょうも手を伸ばし、もっとも大切な荷物を選ぶ。弁当が入った重箱を。 「はい、宴席用の食材の包み、あたしが運びますっ!」 「いやいや、私が」 手を上げた霜夜が、残りの重箱を掴んだ。りょうも負けまいと手を伸ばす。にわかに火花が散ったように見えた。 「どっちでもいいけど、落とさないでくれよ」 「食いもんを粗末にすんな!」 「手間がかかるものなりて」 「無理は禁物どす」 あきれ顔で哲心は釘を刺す。凄んだ空に、浄厳と鬨も同意の口調。 「‥‥私は飲み物を運ぼう。その代わり、霜夜殿には料理を死守して頂きたい」 「はい、任せてください!」 皆に怒られ、料理が苦手な二人の動きが止まる。りょうは手を引き、持っていた重箱を差し出した。 交渉ごとでの押しが弱い霜夜は、瞳を輝かせる。赤い髪紐を揺らしながら、恭しく受け取った。 「荷はいずこ?」 「俺は帰り荷物もちすッから、行きは任せたぜェ」 浄厳は隣の空に疑問をぶつける。割り当てよりも、少ない気がした。 子供用の甘酒を持ち、ひらひらと空は手を振る。荷物を押しつけられる前に、さっさと出発。 「こういう力仕事は男性の仕事やさかい、任せてくれやす」 「まあ、力持ちね‥‥」 「ひゃー、すげーな」 涼しい顔で答える鬨の背には背負子、腕には酒樽が。そのまましゃなりしゃなりと、花道を歩きだす。 目を丸くした、カズラと琥珀。お見事とばかりに、華奢な体つきの鬨を見送った。 「真面目にお手伝いのつもりだったけど‥‥」 カズラは丸めた敷物を手に取り、抱き寄せる。視線の先には虎耳姿。 「俺も頑張るぞ!」 琥珀は背負子を背負い直し、拳を突き上げた。虎しっぽもピンと立つ。 「粋の良い子が沢山いるし、愉しむ方を優先させてもらおうかしら♪」 小悪魔の笑みが浮かび、紫の瞳が細められた。 「いざ山頂へっ♪」 号令のもと子供達が列をなす。霜夜は小枝をふりふり先導。背中の荷物からは、甘い匂いが漂っていた。 「前を向いて歩くのよ?」 カズラは最後尾を行く。山菜に目を奪われ、道を外れかけた子供を引き止めた。 春の山は命が芽吹く季節。目覚めたばかりの毒蛇が、襲ってくる可能性もある。 二人は周囲を警戒しながら、山道を進んだ。 後ろからは長老集が続く。 「やはりこの季節は花見どすよなぁ」 「春の花見ぞいと風流なりて。この楽しみは一年でも稀よの」 「昔から、桜は山頂と決まっておる! それを年寄りと‥‥」 「息子はんは心配されはってるだけと、ちゃいます?」 「‥‥親の心、子知らずなり‥‥」 「お若いの、良いことを! まったくもって、その通り!」 息子に諭された長老集も混ざっていた。愚痴を聞きながら、鬨は相槌を打つ。 笠の下の独り言を、聞き咎めた長老集。ビシッと杖で地面を打ち、浄厳を大いに肯定した。 「山頂には山神様がおってな、桜は山神様からの贈り物なんじゃ」 「そんな言われがあるのか? なら毎年来ないと損じゃないかな」 「へーーそりゃ、確かに見に行かなきゃ損だなー」 「花見は山神様に、感謝を捧げるためにある。それを村の若者は‥‥」 琥珀から貰った杖に手をかけ、別の長老集は立ち止った。薄れゆく伝統の意味を、悲しげに語る。 「‥‥もし荷物持ちが足りないってんなら、また来る。それ抜きにしても、来年も来たいって思うよ」 「俺だって、手伝うぜー。いつでも呼んでくれよ♪」 何かに束縛される事を、極端に嫌う哲心。旅一座の一員として、流れていた琥珀。 止まることを知らぬ二人が、留まりたいと思う場所。心のふるさとと、人は呼ぶのかもしれない。 「戦において重宝されがちな力が、まさかこのような形で必要とされるとはな‥‥」 「ま、普段はアヤカシだの、なんだのに、脅かされる立場だ。多少は羽目を外したいんだろ」 黙々と荷物を運んでいたりょう。いつの間にか、先頭集団に追い付いてしまった。 春眠暁を覚えずと大あくびをする空は、暇つぶしに会話に乗る。聞き流しながら、頭の中では冷静に計算。 「私達に支払われる報酬も、けして安いものではなかろう。誠心誠意、尽くさせて頂く!」 「真面目だねェ。花見して金貰えるなら、まァ楽ッちャ楽か」 力強く宣言するりょうの、背中の酒樽を見る。報酬はあるし、酒も飲み放題、悪くはない。二つ目の大あくびがこぼれた。 ● 「へぇ、いい場所があるじゃないか。これは来た甲斐があるってもんだな」 「あ、田植えを待つ田んぼが。こちらの眺めも最高です♪」 「舞い散る早咲き桜に、満開の遅咲き桃‥‥。実に贅沢な景色であるな」 山神様のお膝元で、感嘆の声が上がる。酒樽を下し、肩をもみながら哲心は見渡した。霜夜は村を見下ろし相槌。 りょうの視線は、風に舞う桜を捉えていた。哲心が脱ぎ捨てた陣羽織の上に、花びらは降り立つ。 「俺にャァ花の良さは分からんなァ、花は花だろ。酒が美味いのは分かるがな」 「お酒も良いわよね、料理もおいしそうだし。無礼講でなければ、羽目を外したいところなんだけど‥‥」 「嘯風弄月を解せぬとは。あな悲しや、悲しや」 酒を楽しみたい空は、威勢よく酒樽を叩く。お酒と美食を愛するカズラも、敷物を敷きながら答えた。 浄厳は小ぶりな枝を触り、花と戯れ中。二人を見やり、からかう様に呟く。 「あのさー、遊んできていーか?」 遊び道具を抱え、上目使いにおねだりする琥珀。後ろには、遊び盛りの子供達を引き連れている。 「準備には時間がかかるさかい、それがええでっしゃろ」 ピコピコ動く虎しっぽを追いかけ、子供達が駆けて行く。快諾した鬨は、微笑ましい光景に目尻を下げた。 「おめーら、ちょっとした遊びやるぞー」 大人達から少し離れ、輪になる子供達。遊び道具を広げる琥珀を取り囲む。 得意げに取りだしたのは、昨日、頑張って作った板。一から九の漢数字が描かれている。 「もう、遊ぶ時は声をかけてくださいよ!」 軽い怒りを含む声音に、子供達の視線が集まる。こちらにやってくる、景品を抱えた霜夜が見えた。 「あはは、ごめん、ごめん」 愛想笑いを浮かべ、頭をかく琥珀。口元からは八重歯が覗く。 「うーん、蚊帳を吊るのが難しいですね」 「大人でないと、届きそうにないなー」 的当てをする予定なのだが、鞠の行方が問題だ。遠くに転がらないように、蚊帳を吊りたい。 見上げる木々は、ずいぶん大きく見えた。 「準備できたわね」 「しかし、村全体で花見を催すとはな。それで喧嘩しているのだから、仲が良いのか悪いのか」 子供用のとれたてみったんジュースを置き、満足そうにカズラは頷いた。苦笑を浮かべて、りょうは宴会場を見渡す。 「ぼちぼち、子供達を呼びはったらどうどすか?」 酒樽を運びつつ鬨の声。迎えに行くと、賑やかな声が聞こえた。 「がんばれー☆」 「よし、行くぞ」 ねこのてを振る霜夜の声援を受け、哲心は鞠を転がす。見事に板に命中。 「おうおう、良い点数だな」 「一点‥‥」 「ほーい、景品」 ケラケラ笑う空。琥珀の差し出すチョコレートを受け取り、哲心は肩を落とす。 背の高い二人は請われ、蚊帳を吊りにきた。気がつけば、そのまま遊びに突入。 「ずいぶんと楽しそうだな」 「大きい子が混じっておるぞ」 「確かに」 りょうと浄厳は忍び笑いを交わす。 「準備できたわよ!」 手で口を囲いカズラが呼ぶと、子供達は元気に返事をした。 酒樽の前で、ほのかに鬨の頬は薄桃に染まっていた。若集と先に呑んでいたらしい。 「折角やし、今日は歌舞伎の修行はやめにして、花見を楽しませてもらいやす」 一言断ると、髪を結っていたリボンを外した。ふらりと立てり、カズラの隣に座る。 「こやうやって、ゆっくり花を見ながら飲めるなんて、幸せですね」 「美味しいお酒に、美味しい料理。本当に幸せよね♪」 「そうだな。まっ、料理も余る事はないだろう」 酒を勧めつつ、カズラはくすくす上機嫌。向かいの哲心は巻き寿司を口に放り込み、出来栄えに舌鼓を打った。 隣では天儀酒を手にした浄厳に、空が朱盃「金銀日月」を突き出している。酒を注がれた盃の中で三日月が踊った。 「やッぱ酒は美味ェ! 花はどうでも良いが、コレだけは俺にも良さが分かるッてモンだ」 「酒を飲むのは構わぬが、あまり酔うてはくれるなよ。帰りは『荷物』が増える故な」 「まァ酔う程飲むつもりもねェ」 一気にあおって口を拭う友人に、浄厳は意味深な台詞。大丈夫と空は片手で答えた。 「これ、うめーなー!」 呑み組を背に、子供を中心とした食べ組が陣取る。琥珀も必死で桜餅をパクついた。 「桃と桜が見事です!」 「桜は散り際が美しいと言われるが、それはそれで寂しさも伴うもの」 風流、風流と、花を愛でる霜夜とりょう。それぞれ、おにぎりと唐揚げが握られているのはご愛敬。 「あー? 酒はあるのに、つまみは無ェのか」 空は、よっこらせと立ち上がる。ふっと、姿と気配がかき消えた。 「私とて戦場に生き、明日をも‥‥」 志士人生を語る、りょうの後ろを通り抜ける。抜き足、挿し足、忍び足。 「貰ッてきたぜ」 「あー、唐揚げがない!」 「どうした?」 「私の分をあげるから泣かないの」 戦利品を見せる空の後ろで、子供の泣き声。近くの哲心が声をかけ、頭を撫でている。カズラが唐揚げを手渡した。 「‥‥」 バツが悪そうに、空はそっぱを向く。咎める視線を送り、浄厳は腰を上げた。子供の前で口笛を鳴らす。 「口笛のうぐいすかー。俺も笛なら吹けるぜ」 おなかいっぱいの琥珀が、指を舐めた。懐から横笛を取り出し、吹いて見せる。 「私も吹けますよ」 負けじと、霜夜も母から習った腕を披露。子供の泣き顔が、笑い顔に変わった。 「一曲、舞いましょうか?」 ほろ酔い加減の鬨が、桜にしな垂れかかる。紅桜の冠を頭に、なぜか的当ての景品の甘刀「正飴」が握られていた。 思ってもいない出し物に、村人は拍手で出迎える。手拍子が支える中、静々と足が踏み出された。 桃と桜を背景に、笛の明るく華やかな二重奏が広がる。それは、それは、見事な神楽剣舞であった。 山神さまに別れを告げる一行。陽気に歌う酔っ払いは、哲心とカズラ、琥珀に任せられた。 「大人って、すげーな」 「そういう、訳じゃないが‥‥」 「こういうのを反面教師っていうのよ」 色々と驚きの琥珀に、難しい顔で哲心は答える。カズラはさらりと流した。 「俺、わかんねーよ」 「大人になるまで、理解できないかもしれないわね」 片づけたゴミを背負いつつ、琥珀は唸る。余裕の笑みを浮かべ、カズラは述べた。 「俺みたいに‥‥、いや、気にしないでくれ」 哲心は出かかった台詞を飲み込む。酒に強ければ問題ないと、将来ある子供には告げられない。 こちらは、遊び疲れた子供を背負う者たち。 「コレが大人の辛さッて奴か」 「酒を飲み過ぎた者は使えぬ」 「ちッ。餓鬼は呑気で良いねェ」 「先に言うたであろう、帰りは『荷物』が増えると‥‥」 「てめェは、うるせェよ!」 なにかと小言の多い浄厳。空は黙れと睨み、言葉途中で遮った。 「母親の心境を、少しは味わえるだろうか?」 ぽつりとつぶやくりょう。遠い目をしつつ、まずは相手探しからと胸中。 「あ、桃と桜のお花が、白く浮かび上がってますよ!」 「ほんに綺麗どすな」 振り返れば薄暗い夕暮れ空に、月が浮かんでいた。山頂を見て霜夜と鬨は感慨にふける。 「そうだ、一つ考えました。花とかけて宴と解く!」 「ええどすな、うちも考えまひょ」 「えーと、どちらも、サケを願う気持ちが盛り上げるでしょう」 「‥‥その心は、どちらも色で華やかさが増しはる」 「なるほど、酒と咲け。そちらは花の色と、宴の女の色か」 何気なく聞いていたりょうが、口を挟む。霜夜と鬨は、それぞれ笑顔で答えた。 背負う子よ、ねんねんころりと子守歌、月下に響く。 思い出よ、夢に花咲け、色鮮やかに。 |