にゃんこ捕物帳
マスター名:青空 希実
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/09/28 19:12



■オープニング本文

●昔の話
 すべての始まりは、旅一座の歌姫が、料亭の若旦那に嫁いだこと。家出した一人娘は、押しかけ女房を敢行する。
 折れ耳の虎猫の若旦那は、当時、開拓者をしていた。開拓者は、天儀の神楽の都に住むのが基本。
 泰国育ちの若旦那も、神楽の都で、泰拳士として過ごす。料亭を営む実家から離れ、自由気ままな生活をしていた。
 依頼を終えて帰ってきた、ある日。見知らぬ白い虎の娘が、家の中から若旦那を出迎えた。世に言う、猛虎襲来である。
 歌姫は、アヤカシから救ってくれた恩人を、探してきたと言う。記憶を辿る若旦那、しばらく悩み、ようやく心当たりがあった。
 とある依頼で、仙人骨(志体)も持たないのに、アヤカシの前に居座る娘。歌声はアヤカシの気を引き、人々を遠くへ逃がしていた。
 独身貴族を満喫していた若旦那は、「帰れ」と邪険にする。が、演劇を主とする旅一座の歌姫も、負けてはいない。
 乙女の涙には敵わず、若旦那は渋々折れて、一泊を許した。しかし、翌日は朝から雨模様、二人とも外出がおっくうになる。
 「梅雨」と呼ばれる天儀の気候。若旦那も、歌姫も、猫族と呼ばれる泰国の獣人だ。天儀の気候には、慣れていない。
 雨の降り続く間、二人は家に引きこもり、身の上話をして過ごした。どこで気が合ったのか分からぬが、名前で呼びあうほどには仲良くなる。
 夏が来て、歌姫は旅一座に返された。八月は猫族の月敬いの儀式がある、若旦那もしばし実家に戻ることに。
 そして、夏が過ぎ、若旦那は神楽の都に帰ってきた。天儀の月が最も美しくなる日、一人で月見酒を楽しんでいると、不意に気配を感じる。
 視線をやると、表門から勝手に入ってくる姿があった。若旦那の司空 璋(しくう しょう)は、酒を飲む動きが止まる。
 猛虎襲来、再び。大荷物を抱えた、巴 美鈴(は みれい)は、白虎しっぽを揺らして笑っていた。



●旅一座の話
 泰国の首都、朱春の猫族の住処の一角。観客席は、異様な熱気に包まれる。演劇の旅一座の最終日の公演は、特別公演だった。
 白虎少年の喉元に付きつけられた、短剣の切っ先。不安そうに双子の兄を見る、折れ耳の虎猫娘。
 九月二十三日に、十二才の誕生日を迎える、猫族の双子の兄妹。離れて暮らす、旅一座の母方の祖父母に会いに来た。
 野外広場に押し入った、強盗風の男たち。強盗に失敗し、逃げてきた先は、行き止まりの広場。追いつめられた精神は、いかにして逃げるか迷う。
 通路の先、舞台近くの特等席に座っていた双子に目をつけた。双子を抱えあげると、短刀を付きつける。そのまま舞台に上がり、「黙れ」と叫んだ。
 双子達の父親……料亭の若旦那は、一気に虎猫しっぽを膨らませた。観客も、旅一座の劇団員たちも、劇の演出だと思っている。だが、強盗団の殺気は本物だ。
 勇喜(ゆうき)という虎少年は吟遊詩人だが、恐怖で今は歌えない。おてんば泰拳士の猫娘、伽羅(きゃら)は、殺気が本物だと分かったから、兄が心配で動けない。
 若旦那は、陰陽師をしている上の娘、司空 亜祈(しくう あき:iz0234)を探した。元歌姫の母に、そっくりの白虎の娘。
 虎娘は、弟妹の危機を察して、行動して……いない。長兄の虎猫の喜多(きた)と、のんきに「驚きの演出」と笑っている。
 時を同じくして、殺気に気づいた者がいたようだ。強盗団を追って、野外広場に流れ込んできた者。劇の助っ人をしてくれていた者。観客席で、怪訝な顔を見せる者。
 そして、旅一座の劇団員で、双子達の祖父母の白虎夫婦。予定外の演出に、観客席の娘夫婦を、困惑の表情で見る。すべてを察した、若旦那。
 劇を壊すわけにも、観客や出来団員に怪我をさせるわけにも、いかない。元開拓者の若旦那は、視線で助力を求めた。


■参加者一覧
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
劉 星晶(ib3478
20歳・男・泰
フランヴェル・ギーベリ(ib5897
20歳・女・サ
フレス(ib6696
11歳・女・ジ
雁久良 霧依(ib9706
23歳・女・魔
春霞(ib9845
19歳・女・サ


■リプレイ本文

●配役
浪漫ひーろー/村雨 紫狼(ia9073
暗躍ひーろー/劉 星晶(ib3478
情熱ひーろー/フランヴェル・ギーベリ(ib5897
舞踏ひーろー/フレス(ib6696
魅惑ひーろー/雁久良 霧依(ib9706
熱血ひーろー/春霞(ib9845
弁士/司空 亜祈(iz0234)

※ご注意とお約束
舞台の刀剣類の武器は、すべて精巧に作られた偽物です。
良い子の皆は、人に向かって武器を振りまわしたり、技法を使ったりしないでね。


●幕開き
「……ほほぅ。飛び入り歓迎とは、知りませんでした」
 観客席の苦手な人物と、視線が合った。すっと、青い瞳を細める暗躍。
「劇団員の方に、弁士お願いしたいんだよ」
 犬耳を後ろの方に倒し、舞踏が見上げる。黒猫耳を動かし、劇の手伝いをしていた暗躍は考え込んだ。
 暗躍が口利きをしたのは、双子たちの祖父母。祖父母は、観客席に手招きした。やってきたのは、竹細工が上手な孫の虎娘。
「子供を人質にとる悪党対、正義の開拓者といった感じの筋に収めるようにして欲しいんだよ」
「ええ、任せて頂戴。小道具は、これが良いかしら?」
「……あの人達に劇が終わったら、埋まるか、沈むか、縛につくか。選んで貰わないといけませんね」
 舞踏の願いに、気軽に答える弁士。暗躍が希望したのは、演出に使える小道具。竹細工で作られた武器は、確かに安全。
「どーも雲行きが怪しいじゃねーの? ……くっそ、何とかすっか!!」
 観客たちは、『凝った演出』と思っているようだ。悪党たちの焦った表情すらも。浪漫は人質になった、双子を見る。
 虎少年は、泣きだす寸前だった。威嚇する猫娘。気が立った悪党が、槍を振りおろそうとする。
「俺や仲間が派手にタンカを切って敵の意表を突いて隙を作る、上手く二人を救い出してくれよ!」
 隣に居た暗躍に目配せし、浪漫は舞台に飛び出した。咆哮が響き、悪党の視線が外れる。
「まちやがれ!」
 仁王立ちの浪漫。二刀流の木刀で、槍を受け止めた。



 観客席の中にも、異変を感じた者が居た。情熱は、ゆっくり立ち上がる。
「あら、あの舞台に上げられた子、私のタイプだわ♪」
 猫娘に注がれる、魅惑からの熱い視線。手にいだく為にも、捕り物に協力しよう!
「大変、大変っ…! 劇をめちゃくちゃになんて、させませんからねっ」
 観客席の熱血は、暗躍の出した煙と共に行動を始めた。悪党の意識は、煙幕に集中している。移動するならば、今だ。
「よっ、待ってました〜!」
 客席から喝采を送る、魅惑。両手で口の周りに囲みを作る。真似をする観客も出てきた、盛りあがっていく。
「おお伽羅、伽羅。愛しき我が子猫よ」
 胸元に片手をあてる、情熱。仲間から受け取った思いを、無駄にしない。
「ようやく巡り会えたというのに……、君はなぜ、曇り空の如く悲しげな顔を見せるのか」
 憂いをたたえた、情熱の表情。寄せられた眉。愛おしそうに、胸元の手を伸ばした。
「何が、君の太陽の如き笑みを隠してしまったのか」
 一段、一段、情熱は階段を上って行く。悪党も観客も、情熱を見つめている。咆哮の第二弾が、発動していたのかもしない。
「そうか、君達が……ボクと伽羅が結ばれるのを邪魔するつもりなのだね」
 浪漫の隣に、立った情熱。悪党を見渡し、キッと睨みつける。タイミング良く、舞踏と暗躍が、武器を放り投げた。
「いいだろう、恋は障害が多い程燃え上がるものさ!」
 武器を受け取った情熱。浪漫と情熱の背後から、閃光がほとばしる。
『そうよ、正義の味方は、悪に屈しないのよ!』
 割って入った弁士の台詞は、最初から最高潮。観客の声援が爆発した。
「そこよ、やっちゃいなさい!」
 観客席で、華やかな声援が飛ぶ。魅惑は立ち上がり、情熱を応援していた。地割れから、突如、植物の蔦が伸びる。
 薙刀に、身体に絡みつく蔦。動きを阻害される、悪党。あり得ない光景に、悪党は焦るばかり。
「さすが旅一座、凄い演出ね〜!」
『地面に眠る植物の精霊に、働きかけたのね』
 魅惑の声に、誘導される弁士。どうやら観客ともども、蔦は熱血が放ったと思ったようだ。
 熱血の緑の瞳は、怒っていた。鎌のいしづきを悪党に向ける。小柄な体からは、想像できない見事な突き。


 布を手にぐるっと巻いた拳が、短剣を掴でいた。悪党ジプシーの顔面をぶっとばす。
「不意打ち失礼。黒猫仮面参上!」
 暗躍は、行動も暗躍ぎみ。黒猫しっぽを躍らせながら、驚いたままの双子を背後にかばう。
 高笑いをしながら、煙の中に消えた。演出だと言い張ったが、やけに似あっている。
 ……本人いわく、だーくひーろー。
「待て! それ以上の暴虐は天が許しても、このフレスが許さないんだよ!」
 悪党の前で、黒髪が大きく舞った。人さし指を突きつけ、名乗りを上げる舞踏。踵を鳴らし、舞台に立つ。
『……まぁ、なんて優雅な戦いなのかしら』
 弁士から、感嘆のため息がもれる。短剣を構えた、踊り子たちの争う姿。つかず離れず、紙一重でお互いの攻撃を避けていく。
 舞踏はその場で、まわり始めた。両手の短剣が、悪党の攻撃に合わせて、弾き返す。
「悪い人は、許しませんっ! 覚悟してくださいっ!」
 凛々しい声。黒猫耳をぴんと立てた熱血手に持つ鎌が、悪党を睨む。振り下ろされた。地に地割れが起こり、悪党に向かう。
 巻き起こる風が、土を巻きあげ、視界をふさいだ。思わず、目を閉じる。それが悪党の命取りだった。


●幕切れ
『あら、なに? 怖い悪党を、やっつけて欲しいの?』
「ったく、伽羅たんのお願いじゃな!」
 弁士の後ろに隠れる、双子からの訴え。浪漫は、両手を空に掲げる。ゆっくりと一回転し、観客席に視線を投げかけた。
「俺たちに力を貸してくれっ!!」
 悪党泰拳士の攻撃を、正面から受け止める。手拍子と応援する声。観客席は、悪党の退治を願っている。
 協力して、交互に拳を振るうが、悪党泰拳たちは振りが甘い。浪漫のステップは、悪党の首の後ろを取る。木刀を叩きこんだ。
 小馬鹿にした高笑いが、悪党泰拳士の耳に付く。光や煙で、暗躍は姿をくらませるばかり。
「ほらほら、まだ劇は終わっていませんよ。気合い入れてかかって来なさい」
 暗躍は透明になり、悪党たちに、後ろからまとめて足払いをかけた。だーくなので、割とえげつないぞ!
「気合は……おっと」
 悪党陰陽師が、斬撃符を放つ。避ければ、情熱にあたる立ち位置。浪漫の迷い。
『ちょっと、力加減を間違ったようね』
 機転を利かせ、弁士が治癒符をかける。流血なんて、観客には見せられない。
 情熱は、悪党陰陽師を鷲掴みにする。舞台に叩きつけた。
 騎士の風上にも置けぬ、悪党騎士。あろうことか、観客席に乱入した。直線上には、魅惑が要る。
『えーと、目立つ上に、セクシー美女な観客さんを人質にとろうとしているわ?』
 弁士は戸惑いながら、受け取った合図を言葉にする。魅惑の茶色い瞳が「良くできました」と褒めた。
「やーん、素敵〜♪」
 第二の人質にとられた魅惑。おかげで周囲の観客は、これも演出と思い、とり乱さない。
「あれは……成程、招かれざるお客さんの様だね」
 魅惑の瞳と、一瞬の会話。情熱は荒縄を手に、観客席に向かう。悪党騎士の前で、優雅に立ちふさがった。
『剣気を叩きつけ、威圧したわ』
 短い声と共に、情熱の手が気合を押し出す形をとる。崩れ落ちる悪党の身体。
 追い討ちをかけたのは、魅惑。手の中で、宝珠が密かに光っている。深い眠りの魔法を、情熱の動き合わせて放ったのだ。


 薙刀を振りまわす、悪党武僧。熱血は、鎌の長い柄で受け流しながら、一歩を踏みこむ。
 さらに、もう一歩。熱血の右足は、大地から離れた。薙刀の刃先を踏み台に、迫る。避けるか受けるか、悪党武僧は逡巡した。
「成敗ですっ!」
 回転する、鎌。迷うことなき、一撃。熱血の掛け声とともに、悩める悪党は地に沈んでいった。
 舞踏は両手の短剣を空に投げた。薄布をひるがえし、下がる。ついでに、一人の悪党の視界を奪った。
 隙をついて、空に跳躍する、舞踏。落ちてきた短剣を逆手で、受け取る。勢いを殺さず、悪党を飛び越え、後ろに着地する。
「既にお前たちの命運は尽きたんだよ! 大人しくお縄頂戴するんだよ!」
 踊り子たちに近い観客は、見惚れるばかり。舞踏の犬耳が、悪党をまっすぐに見る。言うが早いか、華麗に走り抜けた。
 役人が悪党団を引っ立てて行く。人質の双子が、母親に抱きついて再会を喜んだ。心晴れる、勧善懲悪の幕切れ。
 もう一度の声と拍手に、機転を利かせた暗躍が煙をだす。煙がはれると、舞台の上に勢ぞろいする、『開拓者ひーろー』たちの姿があった。
「俺たちは会場のお友だちを人質に取った悪の軍団を、カッコよく倒す、五色の正義の味方だ!」
「よく頑張ったね、偉いよ♪」
 浪漫は掛け声と共に、右腕を振りあげた。情熱は双子の頭をなでて、観客の前で褒めた。
 さりげなく、浪漫と情熱は、真ん中の位置を取り合っている。猫娘の両肩に、手を置ける場所をかけて。
「双子さん達が、無事で良かったんだよ♪」
 舞踏が短く舞いを披露し、終劇を告げる。虎少年が奏でる、喜びの楽の音が、主題に聞こえた。
「正義は勝つっ! ですっ!」
 最後に、悪党を撃破したときの決め姿を、ビシッと再現する熱血。立ちあがる観客たちの拍手と歓声が、去りゆくひーろーたち。
「そして、第六の味方もお忘れなく♪」
 くすくすと観客席で呟く、魅惑。最後の仲間は、悟られず、影から助けるのが仕事。そっと、ひーろーたちについて歩く。
「折角の楽しい時間、壊すわけにはいきませんから」
 控室まで移動して、ようやく暗躍は仮面を外す。弁士に連れて行かれたのは、劇団員が勢ぞろいする打ち上げ会場だった。


●舞台裏
「こうして、一つの悪が滅びたの」
 弁士の司空 亜祈よ。劇が終わった後、ひーろーの皆さんに、お話を聞いてきたわ。


「称号げと〜! 安定のネタ称号だがな!!」
 浪漫ひーろー、村雨参上!たまにモザイクかかりますが、正義の味方です☆
 俺は、普段から浪漫ニストさ。日々美幼女から美熟女、男の娘まで幅広く愛する、な。
 衣装の泰拳袍「獣夜」は、泰国で作られている泰拳士向けの布鎧。密かに伽羅たんに、熱い思いを向けていたんだぜ?
 恐ろしげな形相の鬼面「悪来」は、俺の怒りを表していたんだ。ま〜、全部成り行きってのも、危ないしなあ。木刀で脚や腕を狙って、不殺を貫いたぜ。
 突発の事態なんで、もう状況をまんま利用するしかなかった。まずは、にゃんこ兄妹の救出が先決だと思ったぜ!


「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。少し落ち着けと友は言う」
 俺は暗躍ひーろー、シノビの劉 星晶と申します。どうぞ宜しくお願い致します。
 またの名前を、『だーくひーろーの黒猫仮面』と言いましてね。秘密ですよ?
 性格は……穏和で、意外と世話焼きでしょうか。まぁ、大切な者の危機にはどこまでも懸命で、どこまでも物騒ですけどね。
 仮面は、つぶらな目が特徴の黒猫の面ですね。ええ、黒い笑顔は、仮面で隠しますから。
 衣装の忍装束「影」は、夜闇よりもさらに濃い漆黒なんですよ。武器は闘布「舞龍天翔」で、龍の刺繍が施された布になります。
 必殺技ですか?俺は何でも。光ったり、煙出したり、透明になったりもしますよ。


「『フラン』でいいよ、子猫ちゃん」
 ボクは情熱ひーろー、サムライのフランヴェル・ギーベリ。よろしくお願いするよ。
 特徴は、どんな時も幸せそうなことかな。幼い少女と、過度のスキンシップを行うことも好きだね。
 仮面は射撃眼帯で、片方の目を塞いでいるのさ。もちろん、伽羅ちゃんの姿を見られるように、すぐに上にめくることもできる優れ物だね。
 衣装のスーツ「シヴェルスク」は、麗しき白地のスーツだよ。武器の拳鍔「銀百合」は、百合の花が彫刻されている逸品だね。
 フフッ、伽羅ちゃんを愛しているのは……本当さ♪好敵手が多いけど、渡す気はないよ。
 情熱的な咆哮、聞いてくれたかな?「伽羅、愛している!」っていう台詞。


「お芝居に乱入して子供人質に取るなんて、酷い連中なんだよ。そんな奴ら、許すわけにはいかないんだよ!」
 舞踏ひーろー、ジプシーのフレスなんだよ。よろしくお願いするんだよ。
 えっと、弁士を頼んでくれた劉兄さまは、ありがとうなんだよ!いつも、誰とでも仲良くなろうって思ってるから、嬉しかったんだよ♪
 わぁ、良く気づいたんだよ。舞踏だから、天空に羽ばたくような仮面、ファンタスティックマスカレードを身につけたんだよ。
 それから、胡蝶刀は、泰の伝統的な短刀なんだよ。水姫の外套も、動くとキラキラと輝くんだよ。
 心がけたこと?できるだけ派手な殺陣になるようにしたことなんだよ。


「伽羅ちゃん、怖かったでしょ〜もう大丈夫よ♪」
 私は魅惑ひーろー、魔術師の雁久良 霧依よ。んふふ、よろしくね〜♪
 野暮なこと聞くのね、快楽主義者にして博愛主義者なだけよ。楽しい事や気持ちいいことは、みんなで分かち合いましょう?
 特に幼い少女が好きなのよ。……あら、何の話かって?んふふ〜、何かしらね♪
 私は客席の最前列にいたのよね。一応、夜蝶の仮面をつけていたのよ。左右の端が蝶の翼の形をしている、赤い仮面ね。
 やっぱり一番前で、お芝居を観たいじゃない?舞台に上がるのは他の開拓者さんに任せて、私は客席で出来る事をしていたわ。
 聖なる守りの祈りが込められている、白鳥羽織を着ていたの。密かに聖宝珠「黒」を握りつつ、悪党さん達を無力化していたわ♪


「折角の劇を邪魔する悪い人は、成敗っ!ですっ」
 私は熱血ひーろー、サムライの春霞っていいます。宜しくお願いしますねっ!
 仮面の代わりに、おかしら様のスカーフを巻いていましたっ。恐れるものは、何もないですっ♪
 好きなものは、昼寝やお菓子、……黒猫の獣人ですからねっ。「いつも笑顔」が信条ですっ!
 んと、劇では旅情の外套で、旅人をよそおったんですっ。武器の大鎌「シャイターン」を隠して、観客席から移動して、舞台の下で待機していましたっ。
 勿論、舞台から出ないのが一番ですけど……。ほら、勢い余ってってことも、ありますからっ。
 皆、舞台に戻ってもらいましたよっ。つい行っちゃう前に、咆哮で引き寄せてですっ♪


 打ち上げの様子?
 浪漫さんと情熱さんが、妹を取りあいっこしていたのよ。魅惑さんが、さっそうと現れて、抱きかかえたけれど。
 弟の演奏に合わせて、舞踏さんは、もう一度踊ってくれたの。熱血さんも、笑顔で手拍子をしてくれたわ。
 そうそう、暗躍さんは、申し訳なさそうに断っていたわ。劇団員に誘われたのよね。
 私の兄は「もう一度、神楽の都に行く」って言いだしたの。……私や弟、妹も行きたいわよ。
 父は渋ったわ。「家出するから大丈夫♪」って母に言ったら、ひーろーさんたちが父を説得してくれたの。