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■オープニング本文 ●虹の村 その村には、虹があった。太陽があった。雨が降っても、かかる虹。曇り空でも、輝く太陽。 以前、村はアヤカシによって滅んだ。朱藩の魔槍砲によって、弔いの炎がもたらされた。 神楽の都の開拓者から、太陽の花がもたらされた。墓参りした開拓者たちが、虹を村の入口に飾った。 移住者を見守るのは、ひまわりが生える、数多の墓。ひまわりの花言葉の一つは、愛慕。 瘴気によって故郷を追われた、移住者たちの心にかかる、七色の橋。 いつか帰るべき故郷に、持ち帰ると決めた、黄色い花。 ―――これは、朱藩のある村の物語。 ●余談 アル=カマルに、家族旅行へ出かけていた、ベテランギルド員。旅行先で、家族そろって、戦乱に巻き込まれた。 開拓者の尽力で息子を含む子供たちは、助け出される。自身もできるだけのことは、現地でしたつもりだ。しかし、時間は待ってくれない。 神楽の都に帰る時が、訪れた。ベテランギルド員は、神楽の都のギルド本部の受付係。後ろ髪を引かれた。 でも、天儀にも、助けを求める人がいる。依頼を出したい人の声に応え、開拓者に的確に伝えることが、ギルド員の仕事。 「……アル=カマルも、いつか緑の地になるはずだ。いいか、助けを求められたら、そのときは手伝うんだぞ」 砂漠を前に、ベテランギルド員は、二人の息子たちに言い聞かせた。子供たちには、まだ難しい話かもしれない。 上の子は、年端もいかない、小さな開拓者。下の子は、志体持ちと判明したばかりの幼子。 「神楽の都に帰るぞ。友達の笑顔は覚えているな? 皆の笑顔を守ること、それが開拓者の仕事だ」 二人の息子を、両腕に抱えあげる。子供たちは、たった数日だけ、オアシスで一緒に遊んだ友達に、手を振った。 明るい別れの挨拶、また会う約束。笑顔が共通の言語。それ以外、なにもいらなかった。 ●新たな村 「……どこにいても、心配は尽きんな」 神楽の都に戻ってきた、ベテランギルド員。張り出されていた依頼書を眺める、見覚えのある名前を見つけた。 「朱藩で、なにかあったのか?」 依頼人の名前は、白石 源内(しらいし げんない)。朱藩の臣下だ。 ベテランギルド員は、依頼書を目で読んでいく。ある村が復興をしようとしている、移住したての村人の為に、農業を手伝って欲しいと言う内容だった。 「綿花畑の整備に、畑の収穫か。田植えもしたようだな……移住したてで、村の整備もあるだろうに、土木と農業の両立は難しいぞ」 朱藩の平野では、綿花の栽培が盛んだ。高台から見おろすと、一面の綿花畑を見ることができると言う。くだんの村でも、綿花の栽培に踏み切ったようだ。 「物々交換も求む? 朱藩の魚は美味いときくが……あそこは平野だから、魚はないだろうな。」 以前、訪れた村の様子を思い出す。墓が立ち並び、枯れたヒマワリと、銀杏が落ちていた、秋の季節。 滅びた村の墓守は、朱藩の臣下がしていたはず。新たに住む人々を、探していると言っていた。 「移住者は……瘴気で故郷を追い出されたのか。いつか、帰れるといいな。なんだ、村の宣伝文句もあるのか?」 よく見ると、依頼書の隅に、小さく書かれた言葉がある。流し読みしたベテランギルド員は、楽しげに目を細めた。 『夏は、綿とひまわりの花がお出迎え。黄色い虹村へ、ようこそ!』 |
■参加者一覧
十野間 修(ib3415)
22歳・男・志
ウルグ・シュバルツ(ib5700)
29歳・男・砲
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ
レムリア・ミリア(ib6884)
24歳・女・巫
正木 雪茂(ib9495)
19歳・女・サ
ヒビキ(ib9576)
13歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●同行六人 怒らないで欲しい。朋友たちが、ついて来た。ギルド員が勝手に、同行許可を出してしまった。 最初は、荷正木雪茂(ib9495)の霊騎、いかづちだけのはずだった。市場に野菜を持っていくのが幾分か楽になるだろうと、荷台引き役を買ってでる。 でも、朋友たちは、希望した。フランヴェル・ギーベリ(ib5897)の甲龍、LOとか。十野間 修(ib3415)の駿龍、ルナとか。 ついこないだ、行ったばかりの武天の緑野。そこのヒマワリは、虹村のヒマワリの子孫だと聞いた。 ウルグ・シュバルツ(ib5700)の管狐、導なんて、全く縁が無いけれど。でも、虹村のヒマワリを、ウルグがフランヴェルと共に植えた開拓者の一人と聞いたら、行きたがった。 筆を咥えて、絵を描くようになった身としては、描きがいがある。人や生物、景観を問わず、観察が趣味。 ヒビキ(ib9576)のからくり、マキナはちょっと事情が違う。開拓者になったばかりで、自分に出来る事を探していたヒビキを、心配していた。 ブラック・ベルベットは、植物への純粋な興味。甲龍の大きな体で、レムリア・ミリア(ib6884)の後ろを、隠れてついて行くつもりだった。 通常の甲龍と違って、漆黒のプレートメイルを纏った、騎士の様な風態。細身に見えるけど、隠れるのは無謀だった。……おっきいもん。 ●黄色い憧れ 「碧君が言っていた通りだ……あの村にも、人が住める様になったんだね」 感慨深げなフランヴェルを残し、LOが空で大きく羽ばたく。嬉しさを全身で表現し、旋回していた。 「こんなに嬉しい事は無い……全力でやらせてもらうよ!」 フランヴェルは、両手を空に突き上げた。朱藩の臣下、源内に向かって、大きく頷く。 「この地にも、新たな営みが根付こうとしているのか…」 手向けの花は無い。必要ない。墓参りに来たウルグ肩に、導が乗っかる。大きなヒマワリを見やる。 天儀風の死者への礼。しゃがみこむと手のひらを合わせ、目を閉じた。 「……この村が、移住者達の故郷再建の希望となることを、願う」 お守り「希望の翼」を握る、ウルグ。ヒマワリを植える時にも、持っていたお守り。 「地に足を付けてコツコツと歩む人達のお手伝いとなれば、力を尽くさなければいけませんね」 修は綿花畑を見る。食料だけではなく、衣類も紡ぎ出そうとする、村人の努力の証。 「村の田畑、水路は滅びる前に整備された状態に手を加えて使ってるようですね……」 修はしゃがみこみ、水路を見つめる。きらめく水面の下に、厚い泥の層が見えた。 「何だろう、ちょっと場違いな気がする……えぇい、しゃんとせい、私!」 雪茂には、自信を持って欲しい。動きやすさを追求した袴姿。社でお祓いを受けた、太めの赤い力たすきもしめている。 「まずは畑の収穫を手伝おう」 畑に踏み込めない、いかづちが『やり方知っている?』と心配そうにいななく。自他に厳しいが、天然、武芸一辺倒で知識が乏しい雪茂。 「勝手がわからぬ……」 『あ、やっぱり』と、顔を横に振るいかづち。鼻先で、収穫にいそしむヒビキを示した。 「ヒビキ殿と共にが良いか。他の者や村の者に教えてもらいつつ、慎重にやろうか」 歩き方も慎重。夏の日差しの中を、作物を避けつつ歩いて行く。 「野菜を用いた作業を行う者の為にも、早めに終わらせてしまいたい」 物々交換や、漬物準備ため、最初に必要な作業。ウルグの声に、村人たちも集まってくる。 「主(ぬし)、次は何をするつもりぞ?」 「其方が片付けば、綿花の世話など他の手伝いに回るつもりだが……」 前足で、毛並みを整える導。小さな手には、さきほどまでオクラが握られていた。 水路を覗きこんで、レムリアは眉をひそめる。水の流れが滞っていた。普通なのかどうか、判別がつかない。 水やりの水は、ここからくんでと言われたが……。これ程水の豊かな地での作業については、経験が無い事だ。 鉢巻きした村人に、方法を教えて貰う。灌漑用水等の水路整備。経験を積む良い機会だと、積極的に手伝いに励んだ。 「すまない、水車を見て貰えるか?」 「はい、行きますよ」 ウルグは、修を呼んだ。修の日曜大工の類は、一寸した職人級。青年二人の前には、動かなくなった水車小屋。 折角、人手がある。時間の許す限り、様々な手伝いをしていきたい。 水路を、レムリアが清掃してくれた。深くなった底。絶え間なく、水が流れていく。 大地をうるおす水路と、水車小屋。レムリアの故郷に無い物が一つ、手帳に書き加えられる。 雪の降る白い大地がフランヴェルの故郷だった。綺麗に植えられた作物や綿花に、目を見張る。 「ははっ、すごいすごい! 立派に育ってるよ!」 ディスターシャ「サーフィ」を脱ぎ飛ばし、フランヴェルは畑の中に迷い込む。昔、子供を弔ったときに着ていた服を。 綿花と野菜の花畑の中で、くるくると回る乙女が一人。ジルべリアの地方貴族出身のお嬢様には、感動の光景なのだ。 「……今日は皆さんのお手伝いに来ました!」 ひとしきり、全ての畑を回った。田んぼも、あぜを駆け抜けてきた。 覚えている。フランヴェルが初めて村に来た日、田んぼもあぜも、堺が無かった事を。 「願いましては〜、ってね。良い野菜あるよ!」 市場で張り切るヒビキに、怖い物はない。源内に、物価の事を詳しく聞いて来た。損をしないでかつ、村の人の要求に添えるように頑張るのみ。 「市場というからには混み合っているであろうからな、何者かに盗まれないとも限らん」 いかづちの前で、荷物を見張っていた雪茂。荷物に手を出す不埒な輩は、とっ捕まえてやる意気込み。 「……槍大膳直伝の槍捌き、あの世の語り草にとくと見ておくがいい!」 雪茂が振り返った。キュウリを丸かじりしている者が居る。マキナがビワの交換に、席を外した一瞬の隙。 方天戟「無右」が、雪茂の頭上で振りまわされる。振るうものに鬼神のごとき力を与える名槍が。 「ユキシゲ、叩くことないだろう!」 ヒビキは頭を押さえつつ、雪茂を睨みつける。おやつは、右手に死守した。 キュウリを全て、口の中に放り込み。きちんと飲み込んだ後、ヒビキは雪茂に文句を言った。 ●緑の夢 天に向かって、緑の葉っぱを伸ばす作物。ちいさな黄色い花が理路整然と並ぶ、綿花畑。 「ボクは綿花の摘み芯を手伝うよ。初めての体験だし」 出たばかりの新芽を摘み取るなんて、勿体無いと思う。でも、フランヴェルの行為は、秋の綿の収穫に繋がると言う。 野良着に着替え、毛皮の手袋を脱いだ。和気藹々と村人に混ざる、天儀の日々の暮らし。当たり前の生活の為に。 井戸水で作った氷を渡しながら、休憩の合間に、手帳に記していくレムリアを、導が覗きこんだ。何事か懸命に話かけている様子を、ウルグは待っている。 端正な顔立ちの中で、切れ長で力強い黒い瞳が瞬きした。レムリアの艶やかな唇は、一言二言、言葉を紡ぐ。 フランヴェルを連れて、導は交渉してきた。携帯汁粉と交換しようとしていたレムリアを、圧し止める。 採れたてのキュウリをほお張る。そして、奥様方の手料理として、キュウリもみを出された。様々な舌鼓をうつ、レムリア。 「……おいしい」 艶やかで健康的な美肌に、笑顔が浮かんだ。癖の無い白銀の長髪が、軽やかに光を纏って風にそよぐ。 ブラック・ベルベットに、キュウリを一本差し出した。一口で、丸かじりしてしまう相棒。 「ナメクジは嫌だけど……暑いのは許せるね」 扇子「紅葉」をへばった子供たちに、貸し出すレムリア。砂漠の故郷では、天儀の夏など、どうってことのない暑さ。 飛び散る、木くず。木を打ち合わせる音が響く。修は小さな箱型の大八車をいくつか作った、子供たち専用の荷車。 「ニラやキュウリなんかは、まだしも。カボチャなんかですと、数運ぶとなると結構な重量ですからね」 今日はまだ良い、修たちが力を貸せる。でも、次の収穫は、村人たちだけで、行わなければならない 農家に置いては、小さな子供も貴重な働き手。修に教えて貰い、子供たちは大八車を押してみる。 「特に、大工仕事であれば少しは自信がありますからね」 甚平「匠」姿の修は、手拭「竹林」で額の汗をぬぐう。職人たちにも好まれている、小さな物入れ付きの家着は、大工道具を入れておくのに最適だ。 「私も色々と学ばせて貰おう」 「このキュウリは、食べごろですよ。こっちは、まだ小さいです」 幼い頃から飲食店を手伝い、目利きに自信がある修。茂る緑とあまり縁の無い砂の国で生きていたレムリアに、野菜について一つ一つ教えて行く。 ジルベリア風喫茶「メルベイユ」が、修の両親が営む店。そして、幼馴染で新妻の実家「縁生樹」を、妻と共に手伝う、孝行息子。 レムリアの巫女袴の裾で、光っているものに、ルナは興味を持つ。レムリアは【砂輝】魔除けの銀のスプーンを握って見せた。 「緑豊かな地になるのが何時の日か判らないけど、きっとこの経験は故郷の役に立つと思う」 アル=カマルに伝わる、魔除けのお守り。上着や荷物に縫いとめることで、厄を払うことが出来る。 ルナの鳴き声と視線に、修は目を細める。柄に蔦植物の紋様が彫られていることに、気付いたようだ。 「緑豊かな故郷……そんな希望を抱かせる予言が、神託がくだったんだ」 翠の月。レムリアは、ブラック・ベルベットを見上げる。相棒と聞いた、アル=カマルの噂話。 大地に転がるスイカを収穫していた、フランヴェル。途中で、収穫したばかりのについた土に目が留まる。 あの時、雨の日に、自分の無力さを噛み締め、握りしめた土……。武天の緑野への宝珠を借りる交渉の場で、握りしめた土……。 そして、ヒマワリと共に運ばれ、緑野の一部となった土。武天と朱藩に、行きづく土! 「ははっ、畑仕事の最中に泣くなんて変だよね」 土は、再び人々の糧を生み出している。命は、繋がれた。フランヴェルは胸が一杯になり、涙が零れ落ちる。 LOがすり寄る。正面から見ると、微笑んでいるかに見える相棒。 「ねえ、LO。手で拭うと、顔が土だらけになるけど、それが堪らなく嬉しいんだ」 フランヴェルの涙の跡についた泥は、LOがこすり落とそうとしていた。不器用な相棒に、自然に笑顔になる。 「今日は、泣いたり、笑ったり……忙しいね」 まだまだ、やることが待っている。率先して、漬物作りの手伝いをしなくては。 帰り道、荷台の雪茂は、いかづちに乗馬するヒビキを見張っていた。マキナも、荷台で同席中。 「普段何気なく口にしていた野菜だけど、こうやって皆が頑張って育ててるんだよね」 「村の者が作った大切な野菜、傷つけたくはないからな」 器用に、霊騎の背中で、後ろ向きになるヒビキ。身軽に荷台の上に飛び移ってくる。 「人間(ヒト)は悪いヤツ、と教えられたけどさ。それ、違うと思うんだ」 危ないと怒鳴る雪茂は、ヒビキの言葉に口を結ぶ。陽州の良家の子息は、違う種族への偏見はあまり無いらしい。 変わり映えのしない日常を厭い、家を飛び出してきたと言った。お供のマキナは、ちょっと苦労しているらしいが。 「見聞を広める、って大事だな。やっぱり家を飛び出して来て良かったかも」 旅情の外套を揺らすヒビキ。旅装と三度笠は、父親が若い頃に使っていた物を、餞別として貰った。 「私がそなたぐらいの年の頃は、村でひたすら研鑽に励んでいて、村の外に出ようなどとは露ほども思わなかったが……」 雪茂は故郷で猛者と謳われた、武芸者の一人娘。父の武名を汚さぬように、男の名を名乗り研鑽に励んでいた。 「あぁ、いや。そなたがその年で開拓者となったことを否定しているわけではない。すまんな」 「良いって。うまくいえないけど、もう少しで、何かが掴める気がするんだ。掴めたら、教えてあげる!」 「……帰ったら、子供たちに桃やら枇杷やらを配りたいな。子供の笑顔が見られれば最高なことだろう」 「おいらも、村の人達の笑顔が見たいな。笑顔はきっと、どの種族でも共通の言語だから」 慌てる雪茂の言う子供には、ヒビキも含まれている。無邪気に笑う修羅の子が。 自分が子供であるという事を、最大限に活用しようとする、したたかな子。そして、お詫びに、自腹で桃を多く買っていた優しい子。 雪茂は素である、「雪(ゆき)」の表情になった。おしとやかな風貌と言動、娘の表情に。 ●虹色の景色 小さな宴があった。ささやかな感謝と、お祝い。村人に主役と担ぎ出された、三人。 6月28日は、フランヴェル。6月30日は、レムリア。7月11日は、雪茂の誕生日。 「みんないい人達ですね。この村は、きっとヒマワリと綿で一杯の、笑顔に溢れた村になります」 一夜明け、フランヴェルは、LOと共に花束を墓前に供える。村の危機を伝えた、最後の生存者だった者の墓に。 「ボクもずっと、お手伝いしていきますよ」 フランヴェルは、物事を自分の都合がいいように脳内変換してしまう。それゆえ、どんな時も幸せそうである。 改めて口にする誓い。村人が幸せで、フランヴェルも幸せで。秋が楽しみだ。 「魔槍砲も、もう随分と普及が進んできたようだな。まだ、研究は続いているのだろうか。良ければ、一段落した折にでも教示願いたい」 「短くてもよろしいのでしたら、お聞きください」 普段から、柔和な表情を崩さない源内は、苦笑する。仏頂面な上に口下手なため、誤解を受けやすいウルグ。 無自覚にお人よしであり、巻き込まれ体質。自身の未熟を自覚し、日々向上に努める青年の視線を、受け止める。 「研究に終りは、ありません。人が営みを続ける限りは」 ウルグには、十分だった。村が壊滅し住民がアヤカシと化した様を、依頼で目の当たりにした砲術士には。 ヒマワリの花をちらりと見やる、銀の瞳。犠牲となった者の無念を背負い、アヤカシの被害を少しでも食い止めることを心に誓った、白い日。 「この手帳の記録は、何時の日か故郷が緑に包まれる日を夢見て、その時の手助けになればとの想いで認めているのさ」 導の描いた一枚の絵が、レムリアの手帳に挟まれていた。見せて貰ったベテランギルド員は、目を細める。 綿の花と戯れるフランヴェルと、奥様達を乗せたLOは、満面の笑顔だった。導に頼まれて、ヒマワリを見せるために、源内と大輪の花に近寄るウルグ。 水路を覗きこむレムリアの隣では、水車に興味を持つ、ブラック・ベルベットがたたずむ。修から修理方法を教えて貰う村の若集の為に、ルナは水車を両手で支えていた。 畑の中で、キュウリを手にしたヒビキは、マキナの収穫した物と、どちらが大きいか比べている。雪茂は、いかづちの引く荷車に、子供たちから預かったナスを積み込んでいた。 絵の下には、文字が書かれている。朱藩の臣下が書いたらしい。 『野菜とヒマワリの花がお出迎え。黄色と緑のアル=カマルへ、ようこそ!』 |