【鈴蘭】僕の花【血叛】
マスター名:青空 希実
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/06/19 23:05



■オープニング本文

●血叛
 力こそが正統の証であった。
 掟が全てを支配するこの世界において、その事は、ある種相反する存在であった。無制限の暴力の只中に、慕容王ただひとりだけが、その力に拠って立っている。
 狐の面をした人影が、蝋燭の炎に照らされた。
 卍衆――慕容の子飼いたる側近集団に、名実ともに王の右腕と目されるシノビがいる。黒狐の神威。名を、風魔弾正と言った。本名は解らぬ。尤も、卍衆について言えば、弾正に限ったことではないのだが。
「慕容王は死ぬ」
 弾正が呟いた言葉に、眉を持ち上げる者がいた。
「何が言いたい」
「『叛』」
 面の奥に潜む表情はようとして知れぬ。冷め切った態度と共に吐き出されたその言葉が持つその意味を、知らぬ者などいようはずもない。それは、陰殻国の成立より遥か以前から受け継がれてきたもの。
 叛――慕容王を、殺す。


●騒動は突然に
 気弱そうな青年が、商店街で途方に暮れていた。
 店に入ろうとして踏み出し、すぐに止める。次いで、盛大なため息。
 青年は、あちこち傷だらけ。左の頬は、見事なまでに腫れている。
 …ケンカ帰り?
 小首を傾げる開拓者は、呉服問屋に用事があった。少々気になるが、店中に入る。
 しばらくして、開拓者は店から出てきた。まだ店前に青年の姿が。哀愁漂う、背中。
 右へ、ウロウロ。左へ、ウロウロ。 そして、ため息。
 お人好しの開拓者は、声をかけた。見過すこともできない。


 茶屋に誘われた青年。鼻をすすりつつ、語ってくれた。
「あやめさんは、勝気と言うか…」
 ご近所に住む姐御は、強いらしい。昔、シノビとして、名を馳せたとか。
 最近では、長屋に押し入った強盗を、一人で退治した武勇伝がある。
「僕だって、強盗ぐらい退治できる!って言ったら…」
 なぜか、手合せすることに。盛大に投げ飛ばされ、青年の左頬が変形した。
 腕っ節では、敵わない。ならば、男気を見せつけるまで。
「贈り物を買って、その…恥ずかしいから、これ以上言わせないで下さいよ」
 男気の前に、勇気が必要だった。商店街で、ため息ばかりの青年。
「ただ、あやめさん、最近まともに話してくれないんです。すごくカリカリしてて…」
 強盗が長屋に来た日からだと言う。警戒心が強くなるのも、仕方ない。
「…実は『取り逃した、また来るだろう』って、こぼしたんです」
 姐御の怒りの原因。優男の青年では、役に立たないし。
「あなた、開拓者ですよね? しばらく、あやめさんの長屋を守ってくれませんか?」
 名案を思いついた。姐御が、安心できる環境づくりを。
「お願いです、僕を助けて下さい!」
 蘇芳(すおう)と名乗った青年に、ひたすら拝み倒された。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
柄土 神威(ia0633
24歳・女・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
神凪瑞姫(ia5328
20歳・女・シ
杉野 九寿重(ib3226
16歳・女・志
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔
錘(ic0801
16歳・女・サ


■リプレイ本文

●花たち

 依頼は成功した。誰も悪くない。
 ただ、陰殻の掟が無情なだけ。


 柄土 神威(ia0633)は、少しおっとりしている。養母の言う、良い女になるため花嫁修業中だ。
 そんな神威の助言を受けた、蘇芳。白無垢を手に、意気揚々とあやめの部屋に乗り込む。
「蘇芳さんの願いが叶えばいいんだが、どうも裏に何かありそうだな」
 黒い瞳を伏せながら、考え込む羅喉丸(ia0347)。強盗は撃退した。
 でも、胸騒ぎがする。最近のギルドの依頼を見るに、陰殻で何か起きているようだ。
「あちらこちらで、陰殻関係で不審な話が流れてますね」
 杉野 九寿重(ib3226)の犬耳は、伏せられペタンコだった。腰までの漆黒の髪は、疲れを背負う。
「今回もその一角だとしたら、隠れている背景はどんなに大きいのでしょうか」
 白昼堂々の襲撃。護衛として立ち回った九寿重は、神経をすり減らした。
「まずはこの件を解決に導いた上で、何かしらの話を得られたら良いですね」
 九寿重は五人姉妹弟の筆頭。いつものように我侭であるよりも、他人の面倒を見る方を優先する。
 蘇芳の背中を見送る、ルオウ(ia2445)も。浮かない顔をしている。
「んー…なんか妙にひっかかるなあ…」
 やけにあっさり引いた襲撃者達。身の軽さを身上としているルオウを、軽くおちょくるだけの技量がある。
「追っ手でも来たのか、戦力不足を補うためにシノビの氏族の者が連れ戻しにきたのか?」
 元シノビのあやめ。羅喉丸も『取り逃した、また来るだろう』という言葉が、引っ掛かっていた。
「銀の手鏡で、仕掛けしたんだぜ」
 得意げなルオウ。あやめの部屋内部を覗けるように、仕掛けを作った。
 こっそりとあちこちの柱に、括りつけたのだ。反射を繰り返す鏡を覗きこむ。
 ルオウの動きが止まった。正座をしたあやめが、蘇芳が近づいた瞬間に崩れ落ちた。
「…血の匂い?」
 神威も異変を感じる、すべての見通すといわれる指輪「真実の瞳」を握りしめる。
 「まさか」と言う思いと、「やはり」と言う思い。蘇芳とあやめを、二人きりにしたのは、間違いだったか。
 神威は、あやめの部屋に向かって咆哮をあげる。 障子戸を開け、蘇芳が出てきた。血に染まった衣服。
 白無垢を羽織ったあやめが、部屋の片隅で倒れていた。既に事切れている。
 広がる鮮血が、白い着物の内側を染めゆく。赤裏の如く、小吹(こふき)のように。
 思わず、百虎箭疾歩を繰り出す神威。蘇芳は、即座にいなす。
「契約を果たせば、僕は自由…異論はありませんよね」
 外の気配に向かって放たれた、蘇芳の言葉。聞いているのは、同じ名張のシノビ。
「掟ですから。そして、抜け忍討伐の僕の契約も、やっと終りです」
 名張のシノビにとって、抜け忍は許せぬ存在。そして、契約は絶対。
「皆さん、本当に、ありがとうございました」
 開拓者に向かって、お礼を述べる蘇芳。至福の笑みを浮かべた。
「ようやく、二人で幸せになれます」
 蘇芳は軽く片手を振る。暗器の剛線が伸び、己が首元に絡みついた。
 躊躇なく、剛線をしめ上げる。直後、首が転がった。


―――この世では、添い遂げられぬ。ならば、あの世で。


 錘(ic0801)は黙って、斧「トリフィド」の柄を握る。樹木の精霊が、森を守護する戦士に与えたと言う斧。
 森に咲かず、殺伐の中に咲いた花。森から遠すぎて、守ることは難しかったのかもしれない。
「…一緒に、頑張るのは…難しかったのですか?」
 錘がもらす声に、もう答えぬ花達。ジルベリア北部の少数民族出身の錘に、陰殻の考えは理解できぬ。
 空を仰ぐ、神凪瑞姫(ia5328)。蘇芳に諭そうとした会話を思い出す。
『良いところなど見せようなどとするな。死んだら、終わりなのだからな』
『ココロは、死んでいませんよ』
 神座亜紀(ib6736)はうつむき、栄光の手を握りしめる。同じく、質問を投げかけていた。
『蘇芳さんには、覚悟の程を聞いておきたい。それがないなら、悪戯にあやめさんを傷つけて欲しくないし』
『命をかける覚悟はありますよ』
 意味深な、蘇芳の答え。今なら、理解できるかもしれない。
「ただ好きってだけじゃ、どうしようもない事もあるんだよね」
 亜紀の黒い瞳から、大粒の涙がこぼれ始める。一筋、二筋。頬を濡らした。
「叛に抜けた者まで巻き込むとは…、陰殻らしいな」
 瑞姫が、内面に隠したのは、情にもろい性格。無表情のまま、涙をこらえる。


●花蘇芳の花言葉「疑惑」「裏切り」
「蘇芳殿、出来ぬ事は我らに任せよ。好いたおなごの為に、何か出来る事は無いか」
「強盗を追い払ってくれるだけでいいです。…僕の腕では、敵いませんから」
 瑞姫の呼びかけに、蘇芳は振り返る。言葉の途中で、さみしげに笑った。
「蘇芳さんから頼まれたんだ。長屋を強盗から守ってくれと」
 羅喉丸の説明に、あやめは不機嫌に。姐御は腕っ節に自信がある。
「長屋の住人の安全を守るために、協力してくれないか?」
 龍袍「江湖」をひるがえし、羅喉丸は願う。義侠心に厚く、義理堅い性格。
 江湖とは、権勢を省みず、義侠を尊ぶ者の社会を差した。
「蘇芳殿から、長屋を守るようにと頼まれた。何故、取り逃がしたのだ?」
 強盗の正体を尋ねてみる、瑞姫。あやめは、返事をしない。
 …というか、面倒くさそうだ。
「私は同業者で有るし、敵で無い」
 瑞姫は粘るが、強盗について、あやめは語らない。通りすがりの者を巻き込めないと。
「長屋には、どんな性格のどんな人がいるんだ?」
 羅喉丸は質問を変える。これには、あやめも乗ってくれた。
 仲間の隣から、ルオウも口を挟む。けっこー気の強い、女の人。
 交渉しても、どうなるか、分からない。
「そういう訳だから、守らせてほしいんだよな」
 もう一度、強盗について聞いて見た。顔を見たかどうかが重要だ。
 …この反応は、きっと見ている。ルオウは確信した。


 長屋の外で、錘は初夏の日差しと戦う。動き回って索敵を行うより、長屋周辺の人通りや他の建物を観察だ。
「ある程度は、みんなで交代で見張だな」
 手が空いたルオウは、住人に蘇芳とあやめの風評を尋ねてきた。脇差「雷神」に手をやりながら、考える。
 以前から仲良かったと言えば、良かったらしい。くっつくのも、時間の問題だろうという答え。
ならば、以前って、いつ?これは誰も明確な答えが無かった。気がついたら居たと。
「襲撃してくる敵群は、侮り難いものですからね」
 突出してきた者から、各個分断を図ること。知覚の仲間へ、九寿重は声で促した。
「恐らく襲撃はやるでしょうから、それを想定して時間を区切って交代で見回りですね」
 外回り巡回を、引き受けた九寿重。且つその際の決め事を、仲間と認識統一しておく
 担当区域を割り振りながら、ちらりと視線を流した。出来うるならば、長屋住人に事件の慰撫して安心させる。
「…あやめさんに、会う予定だそうです」
 錘の緑の瞳は、ある人物を追う。午後にやってくる、魚売りの坊や。
 長屋に普段出入りしていても、知り合いでも、油断できぬ。相手は、隠密行動に長けたシノビ。
 錘の眉が、僅かばかり動いた。隠密行動をとらずに来た…もしかしたら、陽動かもしれない。
 襲撃者が、別方向から近付いてくるかもしれない。付近の建物に潜伏している可能性も、捨てきれない。
「…強盗退治だけなら、難しくなさそうですが…」
 錘は茶色い髪を揺らす。寡黙で無感動な娘は、口調に変化がみられない。
 詳しく語らないが、両親と姉を山賊に殺害され、天涯孤独の身になったとか。
 少ない口数の裏に隠された、過去。本名まで隠して生きるサムライの胸中は、伺い知れぬ。
 急に殺気立つ長屋の内部。盗賊の気配を、あちこちに感じるようだ。
「なるべく長屋を傷つけないよう注意…」
 独自の構えを取る、あやめ。邪魔にならないように、端っこに寄りながら亜紀は伝える。
 天井を蹴り割り、誰か入ってくる。亜紀は、魔法の蔦を伸ばした。侵入者を絡め取ろうとする。
「三軒隣の新入り?」
 あやめの呟き。強盗は、身近にいたらしい。
 あっけにとられる亜紀。アムルリープをかける前に、あやめが強盗を粉砕する。
 …さすが、姐御。侵入者を捕らえる計画は、台無しだ。


●あやめの花言葉「信じる者の幸福」
 蘇芳、一世一代の贈り物。呉服問屋で、白無垢を買ってきた。
「贈り物には香りもつけるべきですよ」
 苦笑する、神威。女の子らしい提案をしてみる。
 薔薇の石鹸の欠片を入れた、春の香り袋を差しだした。白無垢と一緒に、包み込む。
 さり気なく、石鹸を目につかない箇所に小さく塗って、印を付けた。
「長屋に近づかないでくださいね。強盗の人質にされないためです」
 神威は、蘇芳に厳重注意する。ついでに長屋まで送り届けた、中に入ることを確認する。


 一通り話し終った、羅喉丸。外で巡回に当たりながら、長屋の住民と挨拶をする。
 相手が手段を選ばないなら、蘇芳や長屋の住人を人質にとる可能性がある。長屋の住人が見知らぬ者を、探していた。
 働き者たちは、仕事に出かける時間だ。威勢の良い声に、羅喉丸は手を振って送り出す。
「…茶店看板娘のよっちゃんに、大工の田倉じいさん。それから、魚売りの佐助坊やが怪しいな」
 身近に居るあやめは、気付かなかったらしい。外から来た羅喉丸の勘に、触れた者たち。
 本来なら、言わない事や、やらない事。本職の者なら、あり得ない言動をもらしている。
「シノビには透明化する技法もあるから、姿が見えないからと言って油断しないようにな」
「うん、分かったよ」
 あやめの部屋に、お邪魔する亜紀。羅喉丸は、言い含める。コクンと、亜紀は頷いた。
 ムスタシュィル。侵入者への警戒のために作り出された精霊魔法。あやめの部屋に待機する、亜紀が仕掛けた。
 小さなお客さんを無下にもできず、あやめはお茶を出してくれる。
「見た所蘇芳さんはあやめさんが好き、みたいだけど、あやめさんはどう思ってるのかな?」
 亜紀は、あやめを見上げた。膝まで届く、少し癖のある黒髪を揺らす。笑って交わされるばかり。
「言っちゃ悪いけど…、そもそも何でこんなさびれた長屋に、強盗に入ろうと思ったのかが解らないよ」
 姉妹の中では、一番現実的な性格をしている、神座家三女。ずばずばと、思ったことを口にした。
 あやめは腕のいい、元シノビ。シノビが何かの意図を持って、接触を図った可能性を示唆する。
「…結局、何も教えてくれないんだね」
 終始、笑いづくしのあやめ。亜紀は仮初の笑顔のように感じていた。
「あ…、誰か来たよ」
 亜紀の呟きは、瑞姫の耳に伝わる。瑞姫の紫の瞳が、険しさを増す。
「…あやめ殿は抜け忍で、強盗は自分を抹殺にきたのだと言っていた」
 隠蔽した暗剣。抜き去るには、まだ早い。
 旡装の真骨頂。侵入者の暗器破りに使う為。
 魚売りの不穏な気配。天秤棒は、仕込み刀。
 瑞姫は、素早く印を結んだ。水が刃を成す。
「相手も手練れ…」
 呟きながら、瑞姫は後ろに飛んだ。敵の命を絶つ事も、辞さない覚悟。
 水流刃が、戦い開始の合図だった。警戒を伝える瑞姫と、羅喉丸の呼子笛が、鳴り響く。
 長屋の住人は、急いで自宅へ。笛が吹けば、強盗が来た合図と、あやめから説明されていた。


「うし、わかった。その女の人を守ればいいんだな?」
 ルオウは蘇芳と世間話をする、生きがてらの駄賃だ。
「んでさ、依頼人の兄ちゃんは、その姉ちゃんのどこを好きになったんだ?」
 ルオウにも、好きな子がいる。ジルベリアの貴族の娘に一目ぼれ。
 側に居るために、護衛の騎士に弟子入りをしたくらい、大事な子。年頃としては、参考にしたい。
「全部? 全部って、あいまいだぜ」
 金の瞳を寄せ、シワを浮かべるルオウ。ちょっと警戒したほうが、良いかもしれない。
 心眼にかかった気配。あちらこちらに隠れている。
 肉眼では普通、見つからぬ場所を、九寿重は見た。でも、相手は一枚上手。
 屋根の上で警戒していた、ルオウ。軽く足元を蹴り、地面に落ち立つ。
「よっ! どうしたんだよ」
 茶屋の看板娘が帰ってきた。長屋の中に入ろうとしている。
 昼の食事をするには、少しだけ早い時間。曖昧な時間。
「金づち!?」
 九寿重は顔を急いで、背ける。黒髪をかすめ、後方へ飛んで行った。
 黒い刀身の名刀「ソメイヨシノ」を手にする。投げる際の破壊効果範囲や、射程延長線上を、確認した。
 敵の発する気を感じ取り、虚心を使って避けて行く。機を見て懐へ飛び込んだ。
 魚屋以外にも、敵が居る。刀に紅蓮紅葉の炎が宿った。
 淡々と紡がれる、錘の言葉。襲撃者は、なるべく生け捕りにしたい。
「…分からないこと、全て教えて頂きます」
 情報収集の為とはいえ、シノビ相手には、かなりの難問だ。斧を構える身体に、緊張が見え隠れ。
 相手を見据えたまま、頭上に振りあげる手。最上段に構えた。
 最初の一撃に全てを掛ける。斧に集まる、集中力。気配を感じる。
 狙うは、敵が持つ武器。飛び道具か、忍刀か。
 …苦無だ。飛んでくる。錘は声も発さず、一気に斧を振り下ろした。


「蘇芳殿は、何を考えているのか。危険なのは貴様だろうに。願いは叶えて見せるが…」
 敵が居なくなったと聞き、はしゃぐ、蘇芳の後ろ姿。
「あやめ殿は、あの男をどう思って居るのだ」
 瑞姫は戸口の柱に手をやりながら、あやめに声をかける。自分の長屋へ向かう、蘇芳の背中。
 贈り物を取りに行くようだ。…あ、ずっこけた。
「好いております。昔から、ずっと」
 微塵の迷いもなく、あやめは答える。同郷の出らしい。
「贈り物は大丈夫ですか?」
 神威は、蘇芳の包みを覗きこむ。白無垢から、薔薇の匂いが漂っていた。
 視線を動かし、素早く確認。蘇芳の手にこすりつけた石鹸も、そのままだ。
「元シノビ、その気持ちは変わりませんか?」
 失礼とは思いながら、蘇芳に問い掛ける。当然と、力強い答えだった。