虹の村、繋がる道
マスター名:青空 希実
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: やや易
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/06/01 21:38



■オープニング本文

●虹村
 とある朱藩の村には、虹があった。太陽があった。
 雨が降っても、かかる虹。曇り空でも、輝く太陽。
 以前、村はアヤカシによって滅んだ。朱藩の魔槍砲によって、弔いの炎が灯される。
 神楽の都から、太陽の花が持ち込まれた。墓参りした者たちは、虹を村の入口に掛ける。
 虹は、希望の架け橋になった。瘴気によって故郷を追われた、移住者たちがやってくる。
 村を見守るのは、ひまわりが生える、数多の墓。ひまわりの花言葉の一つは、愛慕。
 移住者の心にかかる、七色の橋。
 いつか帰るべき故郷に、持ち帰ると決めた、太陽の花。
―――これは、虹と太陽の村の物語。


●姉妹村計画
 数週間前。神楽の都の開拓者ギルド本部で、一つの依頼が張り出された。
『武天の緑野で収穫した麦を、朱藩の虹村まで運搬求む』
 麦は秋に植え、麦踏みを経て、冬でも育つ植物。水が少なくても、なんとか育つ。
 緑野で、初めての収穫を迎えたらしい。


 虹村の再興を呼び掛けたのは、とある朱藩の臣下。その臣下は、今年三月に緑野の視察に訪れる。
 朱藩の国王、直々の視察命令。緑野は一年半前まで、魔の森だった。
 魔の森の跡地に、人が住めるようになる。食物が採れるようになる。
 キセキを支えた一人は、朱藩の国王。魔の森の焼き払いを始め、影で尽力してくれた。
 臣下の視察の結果、緑野産の春が朱藩国王に届けられた。菜の花と、ジャガイモ。
 次は夏のヒマワリが楽しみだと、臣下は報告書にしたためる。
 実は緑野のヒマワリは、朱藩の虹村から種が運ばれた。臣下も、それを知っている。
 だから視察のときに、ヒマワリがどうとか住民と会話を。
 話が弾んだ。弾み過ぎて、緑野住民と朱藩臣下の文通に発展。
 更に飛びはねて、こんがらがった。虹村と緑野の住民間で、文通が確立される。
 文通は、巡り巡って、物産品紹介の依頼になったそうな。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
杉野 九寿重(ib3226
16歳・女・志
ウルグ・シュバルツ(ib5700
29歳・男・砲
フランヴェル・ギーベリ(ib5897
20歳・女・サ
レムリア・ミリア(ib6884
24歳・女・巫


■リプレイ本文

●緑の願い
 開拓者ギルドで、依頼書を眺めていた羅喉丸(ia0347)。
「朱藩の魔槍砲によって、弔いの炎が灯される?」
 何かが琴線に触れた。担当のギルド員に声をかける。
「お前さん。二年前の事、よく覚えていたな」
 【槍砲】雨で、一緒に行った村だと返事があった。
「あの後に村が、どうなったんだろうか?」
 羅喉丸の質問に、ギルド員は不思議な笑みをたたえる。依頼の報告を楽しみにしていると。
「そうだ、賊が出ると言う話はないか? 賊等が出ると厄介だからな」
 地図を借りながら、羅喉丸は情報収集を怠らない。国境の山道で、山賊の被害が相次いでいるとか。


 高らかに鳴く迅鷹が、開拓者の来訪を告げた。緑野には、三羽の迅鷹が住んでいる。
 出迎える、緑野の住民たち。ウルグ・シュバルツ(ib5700)は、頭をさげて、挨拶する。
「…無事に、育ったんだな」
 ウルグは銀の瞳を細める。太陽の光を受け、刈り入れ前の麦穂が輝いて見えた。
「不躾な申し出ですまないが…穂を一本ほど、持ち帰っても構わないだろうか?」
 鎌「稲穂刈」を見せつつ、ウルグは問う。刃元に隠れるように、茶色の宝珠が見え隠れ。
 犬耳が嬉しそうに動く。杉野 九寿重(ib3226)の前に広がるのは、収穫済みの麦畑だった。
「住み着いた人々の気概により、ある意味、結果が出てきた頃合なのでしょうか」
 なにも無い所からの出発。復興を目指して、たゆまぬ努力が成された。
「こうして交易する事により、更なる向上を望めるという事ですね」
 本来なら、寂れ、潰(つい)えてしまったであろう、二つの村。
 村単独では、限界が有る。交流が進めば、新しい文化も生まれるかもしれない。
 九寿重のダスク・サーコートが揺れた。黄昏時の空を宿したコートが、今宵見る夢。
 小柄な迅鷹が寄ってきた。片手を上げて、ルオウ(ia2445)はご挨拶。
「俺はサムライのルオウ! よろしくなー」
 迅鷹は、何度か鳴き返した。喜びの歌が風に乗る。
「麦の運搬だな! 力仕事ならまかせとけー! いってくるぜぃ!」
 ルオウは元気いっぱい、片手を空に突き上げる。いってらっしゃいと、迅鷹が空を旋回した。
 レムリア・ミリア(ib6884)の白銀の髪が、光を携えた。癖の無い長髪は、風にそよいでいる。
 切れ長の眼が瞬きした。黒い瞳は、収穫途中の麦畑に向けられている。
 更に視線を動かし、村の長の元へ。艶やかな唇は、言葉を紡ぎ出した。
「村から村への運搬って伺ってきたけど、物産交流って言うんじゃそれなりにまとまった量を運ぶんだろ?
荷車なり大八車に乗せて、引いて行くようかい? それとも、一寸嵩張る(かさばる)けど、背負子で運ぶようかい?」
 小麦色の肌は、艶やかで健康的。歯切れのよい口調は、元気そのもの。
「運ぶ荷が食品だけにね…」
 レムリアの心配は、当然だった。麦畑では、さっきから雀が穂を狙っている。
 威嚇して追い払うのは、三羽の迅鷹たち。叱られた雀は、しょんぼり道端に降り立つ。
「野盗以前に、腹を空かせた動物に警戒する必要があるだろうし」
 子供の一人が、雀に自分のおやつを差しだす。ついでに、レムリアにも手渡された。
「無事に荷を届けて、この良い流れに弾みを付けたいところだね」
 準備された、三俵分の麦。レムリアは大八車に近寄りながら、団子を味わう。
「緑野の言葉と共に…確かに、届けよう」
 迅鷹たちが、大八車を追ってくる。麦俵に片手を当てながら、ウルグは約束した。
「収穫物、必ず虹村に届けますよ!」
 頼もしく胸を叩くのは、フランヴェル・ギーベリ(ib5897)。迅鷹たちが何度も鳴く。
「くれぐれも、よろしく…かな?」
 迅鷹の言葉は、分からないけれど。フランヴェルに短く鳴き返すあたり、正解らしい。


 道中で、神楽の都に立ち寄った。陣羽織「鷹虎」を脱ぎ飛ばし、台所を占領するフランヴェル。
「荷物になってしまうけど、どうしても持っていきたいんだ」
 緑野で貰った、ヒマワリの種。去年採れたヒマワリ油も、パン生地に使う。
 石臼を回して、小麦粉も入手済み。無茶なお願いを、緑野の人々は聞いてくれた。
 ヒマワリの種は、炒って刻み、パン生地に練り込んだ。発酵させた後、焼く。
 ジルベリア育ちとしては、パン作りはお手の物。貴族出身だけれど、開拓者生活は潤いを得た。
「ヒマワリの種入りパンさ。小さく切れば、村の人達全員に試食してもらえるかな♪」
 妄想癖がある、フランヴェル。物事を自分の都合がいいように、脳内変換してしまう
 焼きたての匂いと共に、パンを荷台に乗せる。ご機嫌麗しく、虹村へ歩きだした。


●麦色の思い
 借りてきた地図を見せる、羅喉丸。
「この道の近くまで、森が近づいているな。賊が隠れて待っていやすそうだ」
 山賊の襲撃に向いた地点。事前に備えておけば、奇襲も怖くない。
「結構、道がでこぼこしてんだな。やばかったら、強力で持ちあげるぜ」
 大八車を引いていたルオウは立ち止る。じっくり道を観察した。
 どっかに、車輪が挟まるかもしれない。見極めは大事である。
「なにか居ますね」
 山に差し掛かった。念のためと、心眼を使った九寿重は、首を傾げる。
 腰までの漆黒の髪を揺らし、辺りを見渡した。相手の動きが慎重だ。
「…囲むつもりですね」
 片眉をあげた九寿重は、野太刀「緋色暁」を構えた。じりじりと間合いを測る。
 相手も気付いた。茂みが一斉に動く。撹乱のつもりか。
 でも、開拓者が殺気を悟るのは、簡単だ。九寿重は、茂みに向かって、刀を横薙ぎに。
 刀を避けながら、山賊が出てくる。奇襲にしては、甘い作戦だ。
「最大限の貢献を成し遂げるために、必要なことを知っていますかね?」
 山賊に問うてみた。九寿重は北面・仁生における、実力有る剣士を輩出する道場宗主の縁戚。
 質問に答えず、山賊は襲ってくる。不機嫌そうに青い目を細める、道場幼年組の出世頭。
 山賊の迎撃に必要なこと。戦いに重要なこと。肝に銘じながら動く
「必要以上に突出せず、無理しない…」
 先んじて、突貫していく九寿重。足元の土に、一歩目の足跡が。斬り込みを図る。
 下からくる山賊の薙刀を、受けとめた。横にいなしながら、前に出る。
 不意に抜ける、薙刀の力。姿勢を崩した犬耳は、音を捕らえた。
「右だ、避けろ」
 背後から、羅喉丸の声がする。九寿重は倒れ込むように、斜め前に飛んだ。
 代わりに踏み込む、ルオウ。殲刀「秋水清光」が飛んできた槍を狙った。
 水の如く澄み渡った宝珠が光る。天儀最高峰の刀工による業物は、軽々と槍を弾いた。
「はんっ! 盗賊なんか、お呼びじゃねえんだよ!」
 ルオウは、睨みつけた。剣気を山賊に叩きつけ、威圧する。
「痛い目合わない内に、とっとといっちえよ!」
 刀を返し、峰を山賊に向けた。人に対して、刃は向けない。
 ルオウが亡き父から、受け継いだ一つは、刀。父は、ジルベリア騎士だったという。
 ルオウの正義感の強さは、父譲りかもしれない。全ての悲劇を無くそうと、まい進する日々。
「大丈夫か?」
 羅喉丸は片手を差しだし、九寿重をひっぱり起こす。神布「武林」を巻いた腕。
 武林とは、武術を身につけた者たちが所属する社会を指す。
 武林是一家。職業は違えど、武術を学ぶものは皆兄弟。羅喉丸の気性は、武林の名に恥じぬ。
「首領を沈黙させるぞ」
 龍袍「江湖」の裾がひるがえる。江湖とは、権勢を省みず義侠を尊ぶ者。
 武をもって侠を為す、羅喉丸。賊の存在は、憂いになりかねない。
 唐突に消える、羅喉丸の姿。あらわれた先は、山賊のど真ん中。
 木々の根っこに支えられた大地を、大きく踏みしめる。凄まじい衝撃波が発生し、山賊に襲いかかった。
「それから…孤立分断に陥られず、声を掛け合うですね」
 羅喉丸の背中を見送りながら、九寿重は呟く。山賊が、九寿重の問答を悟ることはない。
「お前の相手は俺だってんだよ!」
 木々の上から、矢が降ってきた。上を見上げ、ルオウは咆哮を仕掛ける。
 後衛に向かっての攻撃。正面から出てこない分、性質が悪い。
 身の軽さが身上。幹を伝って、弓持つ相手を追う。
「俺達以外が襲われる事の無い様に、ここできっちり一網打尽にしておくぜぃ」
 追いついたルオウは、不敵に笑う。矢を刀で叩き落とした。
 ルオウは飛ぶ、しなる若葉の枝。頭上からの峰打ちで、山賊の気絶狙いだ。


「荷の傍に付き、前衛の援護に回るとしよう」
 引いていた大八車を止めた。ウルグは荷台の銃を手にする。
 魔槍砲。アル=カマルよりもたらされ、朱藩の職人達が開拓者と共に改良したもの。
 ウルグは思い出す。以前、虹村が滅んだのは、魔槍砲改良の最中の出来事だった。
 朱藩の臣下たっての願いで、魔槍砲が使用される。アヤカシだろうと、村人は朱藩の民だと。
 魔槍砲の宝珠が、光り始める。ウルグの強い思いと共に、込められる練力。
「行くぞ」
 込めた弾丸が、山賊の前で炸裂した。閃光を発し、視界を奪う。浮足立つ山賊たち。
 更に、もう一発。砲撃は山賊を直撃せず、足元の地面を撃ち抜く。
 爆風でめくれる大地。飛ばされた小石が、したたかに顔を打つ。
 レムリアは体に巻きつけた鞭を、ほどく。伸びるウィップ「シークレット」は、地面を打った。
 土埃があがる。山賊の一人は、横に飛んで避けた。
 レムリアに並び、荷車の傍らに控えたフランヴェル。ぼそりと言った。
「…なるべく命までは取りたくない」
 握る殲刀「秋水清光」は、殺人剣のひとつ。世人からは、外道の刀とまで評されている。
「個人的には、無駄に命を奪う事は避けたいね。罪人であっても、命の重さは変わらないもんだよ」
 レムリアの願い。掌から毀(こわ)るる砂の様に、大切な命をこぼす事無く、救い上げたい。
 フランヴェルは目を細める。かつての朱藩の臣下も、レムリアと同じ思いを抱いていたのだろうか。
「絶対に収穫物には、手を出させないよ!」
 フランヴェルから、咆哮が上がった。飛びかかって行きた山賊は、一瞬の隙が出来る。
 刀を振るう、フランヴェル。切っ先が、幾つにも別れた。柳生新陰流奥義、柳生無明剣。
「逃がしはしない」
 ウルグは目じりを上げた。仲間を見捨て、逃走を試みる山賊がいる。
 構えた魔槍砲から、光が伸びた。山賊と並行して走る。標的は、山賊の少し前の小石。
「次は当てようか?」
 嘘だが。仏頂面のウルグの一言は、効果てきめん。大八車に近づく者は、一人残らず捕縛した。
「しかし、今後の交流の妨げと成りかねない存在だね」
 レムリアは山賊達に、応急処置を施す。障害が残ったり、命に支障をきたす心配はない。
 が、扱いをどうしたものか。お役人の出番?
「処遇は然るべき機関に委ねる」
「全員、まとめてだね」
 レムリアの荒縄で、麦俵を荷台に固定し直していた、ウルグとフランヴェル。顔を上げた。
 遠くの方で、飛び出していった仲間たちと、野太いうめき声が聞こえる。


●虹色の景色
「麦もってきたぜー!」
 高らかに響く、ルオウの声。待っていた虹村の住人が、歓迎の返事を。
「雨は止み、虹が架かったのか。人は強いな。
かつて、虹の村に関わった者として、村が復興した事は嬉しく思う」
 羅喉丸の黒い瞳が、嬉しげに細められた。二年前の雨の憂いは、残っていない。
「これも人の縁が作りだしたものなのか。まぶしいな」
 村の中には、植えたばかりのヒマワリ畑。出迎えた子供が、教えてくれた。
「以前伺った村は、周囲の村との絆と繋がりを深め、復興の歩みを確実に歩んでいるんだね」
 一歩一歩、虹村に近づく。レムリアの胸元で、首飾り「ブルードロップ」が揺れていた。
 雫型の水色の宝石は、守りの加護があると信じられている。
 願うは、道中の無事。緑野と虹村の交流の無事。
「なあなあ、綿花畑ってこれか?」
 新芽が出始めた木がある。夏の黄色い開花を待って、秋には白い綿の収穫。
 ルオウは金の瞳を細める。まだ小さい木だけれど、いずれ虹村の特産品に成長するはず。
「手が必要なら、畑の手入れなどを手伝おう。共に携わらせて貰えれば、幸いだ」
 ウルグは、三人兄弟の次男。腕白な子供達に身を任せ、畦道を歩く。
 田植えの準備が近づいていた。田んぼの中で、石ころを拾う事が子供たちの仕事。


 フランヴェルは村の住人に、ヒマワリ入りパンを配る。
 パンに縁のない、虹村の人々。摩訶不思議な食べ物、初体験。
「焼き釜が必要なら、この設計図の通りに作ればいい。勿論、作るならボクも手伝うよ♪」
「私達も手を貸そうか?」
 満面の笑みを浮かべる、フランヴェル。日除けのケープの下から、レムリアが尋ねる。
「俺は、構わないが」
「力仕事ならまかせとけー!」
 義侠心に厚い羅喉丸が、断るはずもなく。弱い者や女性をほうっておけないルオウは、拳を握る。
「どんな麦料理を、ご馳走になるのでしょうか?」
「…普通に、パンだと思うが」
 物怖じしない九寿重は、瞳を輝かせている。気圧される、ジルベリアの地方出身のウルグ。
 後日、虹村に『石窯』と言う、ハイカラな設備が完成した。
「お好み焼きでも、作ろうかなー」
「天儀の料理かい? 面白そうだね」
「これでも『小麦粉料理人』とも言われた事あるし、そこそこできるほうなんだぜぃ?」
 お好み焼き係、決定。レムリアは嬉々としながら、ルオウについて来た。
 不死鳥の羽根を取り出し、ルオウは釜戸の前にしゃがむ。羽柄の部分を激しくこすり、火種を起こした。
 赤く、艶やかな羽根。激しく燃え上がる炎の色に、よく似ていた。


「よしっ食うぞー! いっただっきまーす!」
「美味しいですね♪」
「おおー、うめえー。やっぱし食事は皆揃ってが一番いいよな!」
 合掌したルオウ、舌鼓を打つ。犬耳を満足そうに動かす、九寿重。
「とてもおいしいね♪」
 お好み焼き片手に、フランヴェルも歓喜する。後で九寿重と一緒に、お好み焼きの秘密を、調べなくては。
「俺が為したことの欠片は…確かに、形になっているのだな」
 食べ終えたウルグは、懐から麦穂を取り出した。風になびく穂を、見つめ続ける。
「…お墓参り、行くかい?」
「もちろんだ」
 フランヴェルは、ウルグを誘う。二人とも、緑野と虹村に携わり、双方の歩みを見てきた。
 緑野。魔の森跡地を、鎮守の森に生まれ変わらせる、道のり。
 虹村。滅んだ村の悲しみを、命ある土地に変えて行く喜び。
 それは、小さな積み重ねだった。そして、未来の礎になっていく。
「俺も行こう」
 羅喉丸は記憶を辿る。不死人系アヤカシになってしまった、当時の村人たち。
 あのとき弔った墓は、村の片隅で、ヒマワリ畑に囲まれつつあった。膝をつき祈る、羅喉丸。
「死者の魂に安らぎがあらん事を」
 もうすぐ、虹の村に夏が巡る。太陽の花が咲く、三度目の季節が。