厄星堕つるとき 終幕
マスター名:安藤らしさ 
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/03/10 20:55



■オープニング本文

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 男には自分を省み正した経験がない。何せ、己に起きる災難の数々は全て他人のせいであると信じていたからだ。その癖自尊心だけは人一倍、いや三倍は高く、そして脆かった。自分勝手すぎるその生き方に周囲の人間は一人残らず男から去っていった。
 男はついに独りになった。それでも悔い改めるなどという行為はしなかった。
 何故皆自分から離れていくのだろう。誰が自分を貶めたのか。誰が自分を孤立させたのか。誰が最も悪いのか。
 考えても考えても誰も答えてはくれなかった。男が悪いと進言する人間はもういなかった。
 そして男は一つの結論に達する。
 世界が悪い。
 この世界、天儀が歪んでいるから自分が迫害されてしまう。世界が正しいというのなら、なぜ世界はアヤカシの侵食に脅えなければならないのだ。そうだ、そもそもアヤカシが悪だと誰が決めた。自分をつまはじきにしたこの世界ではないか。ならばアヤカシは悪ではない、正義だ、彼らこそが神の鉄槌だ。
 男がアヤカシを神と定め、明らかな世界への反撃を始めたとき、男の周りに再び人が集まるようになった。男のように世界と馴染めなかった者達もいた。世界が悪いと思っているわけではないが、男の為す事で自分に利益があると感じた者達もいた。確実なのは、その中に正義を為すものは誰もいないということだ。
 やはり自分は正しかった。偽りの人望が男に誇大した自信を与えた。
 男には自分を省み正した経験がない。
 それは今までも、そしてこれからも。



 天儀において火事は恐ろしいものだ。ジルベリアや泰国の建築技術が伝来してきたとはいえ、主となる建築素材はやはり木材、雨や風には強いが、燃え狂う炎にはてんで弱い。時々開拓者が常駐していない小さな村が火事で消えることもあるし、開拓者がいる大きな街でも季節によっては大きな被害が出ることもある。
 ある大きな街。そこに住む彼らは遂のこの間、アヤカシを誘導して襲撃させようとした輩がいたなど全く知らない。小さな諍いがあったのだろうと考えている程度だ。
 突然、街の真ん中で叫び声があがる。
「きゃああーッッッ! 火事、火事よー!」
 路地の真ん中で轟々と火煙があがっていた。路地の真ん中で積まれた薪が燃えていた。火事には普段から警戒している。だからそこに薪など置くはずがない。
 しかも叫び声は街のあらゆるところから次々に発せられた。
 これはただの放火ではない。何者かによる襲撃だ。
 開拓者ギルドが現在動ける開拓者に伝令を出そうとした時だ。
 もう一つの情報がギルドに届けられる。
 街の外れの一本松、目立つその樹の幹に、無残にも首だけになった駿龍が張り付けられていたという。
 一枚の文と、血に塗れた外套と一緒に。

『裏切り者と共に死ね』


■参加者一覧
樹邑 鴻(ia0483
21歳・男・泰
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
菫(ia5258
20歳・女・サ
ブラッディ・D(ia6200
20歳・女・泰
雲母(ia6295
20歳・女・陰
エメラルド・シルフィユ(ia8476
21歳・女・志


■リプレイ本文

 町外れの一本松には情報通り無残な姿を晒している龍の首があった。それを見た鴇ノ宮 風葉(ia0799)が飛び出そうとするが、恋人である天河 ふしぎ(ia1037)が片手で制した。
「待って‥‥念の為に」
 ふしぎは額のゴーグルに手をあて、心眼に集中した。敵の気配はない。どうやら周辺に隠れている存在はないようだ。
「誰もいないみたいだ。でも罠はあるかもしれないから慎重にね」
 素早い泰拳士である赤マント(ia3521)が警戒しながら磔になった龍の首に刺さっている剣を抜いた。そして龍の首を布で包み、木の根元にそっと隠した。
「ごめん‥‥君のお墓は、後で作ってあげるから‥‥」
「御免。‥‥あの子を無事に助けたら、一緒にアンタを丁寧に葬ってあげるからね」
 赤マントと風葉が謝罪の言葉を呟く。
「‥‥彼女には救われて欲しかったというのに‥‥。あの時、私が逃がしさえしなければ‥‥」
 エメラルド・シルフィユ(ia8476)は自責の念に苦しめられていた。
「そんなこと今言うことじゃないわ、エメラルド。今は急がなきゃ」
「そうだな、今はそれを言っても仕方ない。きっと生きている。私もそれを信じて戦おう」
 風葉の言葉にエメラルドは頭を振り、その顔を上げた。
 赤マントは龍と共に降ろした外套を広げていた。肩から背中にかけて大きく裂けている。首謀者が陰陽師らしいという情報はギルドに届いていた。それを考えると傷は式によってだろう。
「この術は‥‥蛇神?」と赤マントが首を捻る。
「確信は持てないがそのクラスの技だろうな。‥‥どうだ、その外套を纏って敵を誘うというのは。外套のみということは彼女は敵の手に落ちていないのではないだろうか」
「うーん、犯人に囚われてイビられてる可能性もあるんじゃないかな」
 エメラルドの提案に赤マントが別の意見を述べる。
「だとしても挑発にはなると思う。問題は誰がやるかだが‥‥金髪の私には無理だしな」
「じゃあ、それはあたしが。背格好も同じくらいだしね」
 危険な囮という役に風葉が名乗りをあげた。
「風葉‥‥やってくれるのか。頼む」
 普段身に付けている帽子や腕章を外し、血に濡れた外套を纏う風葉。確かに遠目から見れば咲華だと錯覚するかもしれない。
「僕は陰から風葉を守るよ。君には傷一つ付けさせやしない」
「ありがと‥‥でも無理しないでよね」
 ふしぎが恋人を守ることを誓えば、風葉はそっぽを向きながらも礼を言った。
「僕がどれだけ速く走っても過去には間に合わない‥‥けどこの悲劇になら間に合うはず!」
 赤マントの言葉と共に開拓者達は走り出した。



「‥‥今は、やるべきことを為すのが先だ‥‥殺させるものか、必ず‥‥」
 混乱の街の中、菫(ia5258)が決意しながら走っていた。ギルドからの情報によると町外れに娘のものらしき血塗れの外套があったらしい。開拓者仲間達は既にその方向に向かったという。ならばあえて同じ道を行く必要もあるまいと、菫は無法者を撃退することを決めた。
 そしてその方向とは別の場所。
「おやぁ、私の休暇中に一騒ぎ起こしてくれるとは‥‥」
 たまたまこの街で休暇を過ごしていた雲母(ia6295)が煙管を吹かしていた。
「いきなりの騒ぎに放火やら何が何やら‥‥ま、暴れられそうだからいいけどな。ギャハハ!」
 同じように仲間と共に街に来ていたブラッディ・D(ia6200)はこの騒ぎだというのに楽しそうだ。さすがは狂犬というべきか。
「おいそこの二人! 開拓者と見受けるが、協力を仰ぎたい、頼む!」
 ギルドから救援要請が来てすぐに飛んできた樹邑 鴻(ia0483)が二人に向かい叫んだ。
「それが人に物を頼む態度かい、なぁんてな。まぁいいだろう、休暇を邪魔した代償と償いの大きさを身をもって知らせてやろう」
「頼まれなくたって暴れてやるよ、ギャハッ!」
 どうやらこの二人は無法者の撃退に乗り出すらしい、雲母とブラッディが冷たく笑った。
 他の開拓者達が住民の避難を促しているとはいえ炎は恐ろしい。火消しが走り回っても広範囲ではなかなか手が回らないだろう。
「‥‥よくも、ここまで無差別にやれるもんだ。相応の覚悟は出来ているんだろうな?」
 鴻は怒りを込めて、両の拳を握り締めた。



 さすがに街を襲えば開拓者の反撃があるとわかっていたらしい。武器を持った無法者達が鴻を取り囲んでいた。だが既に鴻の最初の一撃で、火種を持っていた者はそれを投げ出し顔面を押さえていた。目を潰されているのだろう、赤い血が指の隙間から零れていた。
 無法者の一人が鴻に棍棒を振り下ろしてきた。頭を狙ったその一撃は、背後からだというのに鴻の拳に制された。彼は既に背拳の練力を纏っていた。無法者達をぎろと睨みながら鴻は宣言する。
「悪いが、今日の俺は一切の手加減が出来ない。――死んだら恨め」
 死の底まで貫き通す瞳に、無法者達は竦み上がる。
「か、かかれぇッッ!!」
 無法者達が二人同時に切りかかった。だが刀は鴻を捕えることなく、乾いた音が響いた。転がっているのは脚を折られた者と腕が妙な方向に曲がっている者。
「手加減は出来ないと言ったはずだ」
 これで怯んで逃げればと鴻は微かな希望を抱く。だが新たに鎧兜を身に付けた者と、長距離を得意とする弓を構えた者が現れた。
「やれやれ――血の花が咲くことになるな」



「ギャハハッどうした、お前ら! それは玩具か? 一発くらいあててみろよ!」
 楽しそうに剣を振るいながらブラッディが叫んでいた。
「なめんじゃねぇぞ小娘ぇ!」
 無法者の剣がどっと襲い掛かる。だが泰拳士ならではの身の軽さを利用してひょいひょいと回避していた。そのうちの一撃が命中しそうになるが「おっと危ない」と裏一重を使い受け流した。
「どうしたどうした、後方から攻撃されるだけでうろたえるほどの力しかないのか!」
 ひゅんひゅんと雲母の弓が唸る。ブラッディの後方から飛ぶ矢は確実に無法者達の腕や脚を貫く。風上から奇襲しようとしていた彼らは、まさか自分達が奇襲されるとは思っていなかったようだ。
「まるで鴨撃ちだな‥‥おやぁ?」
 だが二人を挟むように新たな敵が現れる。その中の一人の男は鉄塊のような大剣を構えている。ブラッディの姿を確かめると、にたりと大鬼のような歯を剥き出しにした。雲母も弓を投げ捨てランスに持ち替える。
「いいねぇ、雑魚ばっかりで飽き飽きしてたンだぁ‥‥思いっきり楽しませてくれよ、ギャハハッッ!」
 男が自らの獲物を振り上げた。と思った瞬間。
 豪ッ!!
 朦々と土煙が舞った。だが大剣が振り下ろされたそこには既にブラッディの姿はなく、男の体がぐらりと揺れた。いつの間にかブラッディは男の背後で笑っていた。
「なんだ見掛け倒しのただのうすのろじゃねぇか。本気出して損したぜ」
 男の体から血飛沫があがり、地に沈んだ。
 もう一方の雲母もあらかた片付いたらしい、倒れている無法者の一人の首根っこを掴んでいる。
「私の休暇を邪魔した罪は重いぞぉ」
 ドガッドガッと無慈悲な雲母の拳が無法者の顔にめり込んだ。キレているのか、先程咥えていた煙管はない。
「おいおい、あんまりやると死んでしまうぞ。俺がいうことじゃないけどな、ギャハッ」
「それもそうか。おい、誰の差し金か教えろ、死にたくなければな」
 雲母が男にランスを突きつけた。だが男は「うぅっ」と呻いた後、ぴくとも動かなくなった。
「おいっ言わずに死ぬな!」
 がくがくと雲母が男の首を振る。
「ギャハハッ! 遅すぎたか!」
「ちっ、しょうがない」
 雲母は気絶した無法者をぐしゃりとその場に投げ捨てた。
「仕方ない、まだ動ける奴に聞きにいくぞ」
「ああ、尋問なんかより暴れる方が楽しいな! ギャハッ」
「今度はちゃんと聞き出す‥‥いや、いい。とにかく行くぞ!」
 殲滅、二人に相応しい言葉はまさしくそれだった。



 咲華は何所かの家屋に閉じ込められているのかもしれない、そう考えた菫は途中で合流したエメラルドの力も借り、街の住民から情報を集めた。どうやらある家屋に泥沼らしき男が大きな荷物を運び込んだらしい。念のためエメラルドが心眼を使ったが、敵はいないようだ。
 家屋の中はゴミと錆びた武器ばかりであったが、その中央で怪我の治療もされないまま荒縄で括られている咲華が横たわっていた。人質として扱えると考えたのだろう。あまりにも酷い仕打ちにエメラルドは顔を顰めた。
「‥‥生きていますか? ‥‥貴方は助けます、まだやることのある人なんですから」
 菫が咲華の荒縄を解きながら話しかけた。答えが返ってくるとは思わなかったが、「‥‥何しに、きた‥‥」という呻き声が聞こえた。
「助けに来た。君は望まないかもしれない。世界を呪いたかった境遇など、そうでない私には理解することが出来ないのだろう」
「捨て置け‥‥私は、罪人だ。‥‥助け、られる、道理は、ないっ」
 エメラルドの言葉に咲華は息も絶え絶えに孤高の道を示す。だが、菫が言葉を続けた。
「‥‥貴方は前に、私達があの街の人たちのことを知らない、と、言いましたよね? けど、貴方もそうだと思うんです‥‥だから、帰って話してあげてください」
「今更、そんなこと‥‥」 
「それでも――私は君に幸せになって欲しい。翁もそう思っている。君にはまだ彼がいるじゃないか!」
 助けたい、エメラルドの意志が咲華に伝わったかどうかはわからない。咲華は傷の痛みに呻くと気を失った。
「応急処置をして、それから誰か回復の技を使える者を探しましょう」
 菫の言葉にエメラルドは頷いた。



 そこは河川の近くということもあり、街の中でありながら火の手は少なかった。橋の近く、血濡れの外套を纏いながら走る姿があった。
 突如大きな影が、その人物に襲い掛かろうと鎌首をもたげた。
「僕の最愛の人に、指一本触れさせはしないんだからなっ!」
 蛇の牙が届くかと思った瞬間、飛び出してきたふしぎが風葉を庇った。事前に何も警戒していなければ風葉かふしぎが重傷を負っただろう。だが必ず襲撃はあるはずだと警戒していたふしぎの心眼によって、軽傷で終わった。
 赤マントも先行を維持するように二人の前に現れる。
「おのれ開拓者めぇ! 神の使徒をたばかりおって!」
 怒りのあまり逃げるという選択を失ったようだ、顔を真っ赤に燃やした陰陽師が柳の陰から現れた。体中に符を貼り付けた異様な姿だ。さすがはアヤカシを神と讃える異常者といったところか。従えているのは鎧を身に付けたサムライ一人だ。まさか自分の身を曝け出すとは予想していなかったのだろう。
「貴様、神の使徒として天罰を下せ!」
 サムライは無言で身を低くし、地を滑るように駆けた。刃の先には赤マントがいた。すっと赤マントも同じように身を屈めて撃退の姿勢をとる。
 刹那後。
 ドガガガガガッッッ!!!!
「なッ!? 爆発だとッ!?」
 泥沼が叫んだ。彼がそう思うのも無理はない、サムライが謎の衝撃音と共に弾け跳んだからだ。
「ふー」
 拳を構えながら、細く息を吐く赤マントの体は赤い。何が起こったのかと問われれば、まずサムライの技を回避。これだけではない、覚醒した体で三連、否、五連撃を放ってみせた。速さは何よりもの武器だ。
「くそ、貴様まで裏切るのか! 私を拒絶した世界に復讐をせねばならないのだ! だから起きろ! 起きてこいつらを殺してから死ね!」
 ぴくりとも動かないサムライに掛けられた泥沼の言葉は、慰労ではなく罵倒だった。
「仮にも仲間に対しての言い草‥‥反吐がでるねっ」と赤マント。
「‥‥お前が世界に拒絶されたのは、お前自身のせいだ‥‥」
 静かにふしぎが呟いた。
「他人の痛みもわからないで、災難全てを人のせいにして逆恨みなんて‥‥お前の思い上がった根性、僕がその企みごと粉砕してやるっ!」
「世界も知らぬ若造が口を利くな! すぐに我が式で喰い殺してくれ‥‥」
「式ってさっきのミミズみたいな奴? 随分と貧相な蛇だったよね!」
 簡単に激昂した泥沼が式を呼び出すために体の符へと手を伸ばした。すかさず赤マントの挑発が横槍を入れてくる。
「だ、だまれぇッ!! 愚弄する気か、神を、私を!?」
「隙あり、だよっ!」
 ふしぎの構える剣が不思議な光を帯びていく。その紅葉のような燐光は、まるでふしぎの想いを全て託されているようだ。
「紅・葉・剣‥‥烈風閃紅斬!」
 紅蓮を纏った真空の刃――泥沼に回避する術は、ない。
 ザズアッッッ!!!
「ぎゃああッッ!!」
 悲鳴をあげながら泥沼は転げまわった。
「ああ、神よ! 早くこいつらに罰を与えてくれ! ‥‥なぜだ、何故何も起こらん! まさか神も私を裏切るつもりか!」
「間違った行いには、天罰が下るもんよ。‥‥咲華にも、そしてアンタにも‥‥いつか、アタシにも!」
 いつの間にか風葉が走りこんでいた。その手に装備した手甲は泥沼を殴るためのものだ。少女の代わりに戦う――それはこの依頼を受けるときに密かに誓ったものだった。
 ゴッ
 重い音が周囲に響いた。音は一回で終わらず、何度も何度も撃ちぬかれた。
「これは咲華の分! これは爺ちゃんの‥‥で、これがアタシの分ッ! まだよ、まだまだ殴り足りないっ!」
 巫女であるはずなのに、風葉の拳が赤く染まる。
「た、助けふぇ‥‥」
 泥沼が懇願の呻きを洩らした。それでも振り下ろされようとした風葉の拳をふしぎが掴んだ。
「お、おお! お前、私の味方か!」
「違うよ。風葉に命を奪わせたりしたくないだけ」
 お前に味方なんていない、言外に告げられた言葉に泥沼は絶望の色を顕にした。



 全てが終わった街の中。墓場の片隅に小さな墓を作った。手頃な石を墓標としたその墓の下には、かつては翁を、そして咲華を背に乗せて飛んだ朋友の亡骸がある。
 開拓者達の動きがあったとはいえ、やはり火事で数名の命が奪われた。勿論、その中には開拓者が奪った罪人の命もある。新しい墓の前で祈りを奉げる泰拳士の姿があった。
「‥‥死した身に貴賤などない。それだけだ」
 鴻に何かを問うたとしてもそうとしか返ってこないだろう。
 怪我をした者には風葉が癒しの技を使った。
 捕まった泥沼とその一味は、放火という大罪により死罪を免れないだろう。咲華は放火に加担していないとはいえ、村や街を襲撃した罪で投獄されることになった。
 世界に復讐を考えた者達。だがその心根は天と地の差があった。
 沈黙のまま連行される咲華に赤マントが語りかける。
「あの、そのっ! 僕は自分が倒れても復讐はして欲しくないな、それより笑っていてほしい。だから、きみのお母さんもそう思ってたんじゃない、かな‥‥ごめん、勝手な事言って」
「いや‥‥ありがとう、やっと最後の言葉が届いたよ」
 少女は笑った。あの時からずっと忘れていた感情で。


 最後の言葉、それは――
「泣かないで、笑っていてほしいわ」