もふら様の恋愛事情
マスター名:安藤らしさ 
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/09/12 10:14



■オープニング本文

「もふもふ、涼しくなってご飯がおいしいもふ!」
「おいしいもふ、うまいもふ」
 ここは陽天に住むサナエという女性の家。サナエは若くして夫を亡くしてしまい、その寂しさを埋めるためにもふらを飼いだしたのだが。
 一匹では寂しかろうと二匹飼い、二匹いればあと一匹くらい増えてもと増えはじめ、今では十五匹のもふらがサナエの周りを囲んでいる。
 今はご飯の時間、もふら達がこぞって餌皿に向かえばもふもふもこもことある意味壮観である。
 だがそんな元気いいもふら達の中
「はぁ‥‥‥‥もふ」
 深々とため息を吐くもふらがいた。目の前に置かれた皿の上のご飯は一口しかかじられていない。
「あらあらどうしたのですか、もふぞうさん。夏バテでしょうか?」
 飼い主であるサナエがもふらの顔を心配そうにのぞき込んできた。ちなみにもふぞう、最近の食欲は失せがちであるが、夏の間は「夏はスタミナが肝心もふ!」と人一倍、いやもふら一倍食べて肥えていた。
「夏バテじゃないもふ‥‥お医者さんでも治せない病気もふ‥‥」
「え、えぇ――ッッ!?」



 不治の病かと一時は慌てふためいたサナエであったが、よーくもふぞうから話を聞いてみれば、それは確かに医者では治せない病気だった。ただし命にはそれほど別状がない。
「あのつやつやふわふわの白いもふらの子が忘れられないもふ‥‥」
 もふぞうは恋をしていた。
 どうも数日前に開拓者が連れていたもふらに一目ぼれしたらしい。どんな開拓者だったかと聞けば「人間だったもふよ」と頼りがいがまったくない答えが返ってきた。
「つやつやふわふわの白い子といわれてもですねぇ‥‥」
 人間の目ではあまり変わりがないように思われる。もふら好きのサナエであっても特定するのは難しそうだ。
「もふぞう死んでしまうもふ?」
「戦いに行く前に結婚の約束をするもふ? この戦いが終わったら引退するもふ?」
 何かを勘違いしたもふら達がもふぞうとサナエの周りに集まっていた。
「大丈夫ですよ〜、もふぞうさんはちょっと疲れているだけなんです」
「大人は皆そういうもふよ!」
「えぇ――ッ」
 生意気盛りのもふはちがそんなことを言うので「もふぞう死んじゃだめもふー!」「もふぞうに任せて先にいくもふ!」ともふら達にすっかり混乱が広がってしまった。
「うーん、困りましたねぇ‥‥。もふぞうさんには元気を出してほしいし、このままではもふら達も勘違いしそうですし‥‥‥‥やはり、開拓者さんに頼みましょうか」
 ぽん、とサナエは両手を叩いてギルドに向かうことにした。



「えっとそのもふぞうって子を元気づけるのと、もふら十五匹の世話ですか‥‥」
 ごくりとギルド受付はひそかに唾を飲み込んだ。人前ではちょっと知的な受付を気取っているが、実は受付も大のもふら好きだったりする。
 受付なんて業務、今すぐ放り出して!
「あのぅ、口元‥‥」
「はっ!? す、すいません! そ、それで何か他に頼みたいことはありますか?」
「そうですねぇ、もふらの飼いすぎでちょっとお金がないんです。それで、あまりお金は払えないのですが、その代わりリンゴ狩りを楽しんでもらおうと思いまして」
「リンゴ‥‥」
「ええ、知り合いがリンゴを育てているんですよ〜。今年はもふら達と一緒に遊びにおいでって言われていたんですけど、どうせなら開拓者の皆さんも一緒にどうですか‥‥あのぅ、口元‥‥」
「もふもふとリンゴ‥‥もふもふとリンゴ‥‥」
 サナエの指摘も耳に聞こえず、受付はぼんやりと甘酸っぱいリンゴと白いもふらに囲まれる妄想をし続けるのであった。


■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
朝倉 影司(ia5385
20歳・男・シ
ニーナ・サヴィン(ib0168
19歳・女・吟
白 桜香(ib0392
16歳・女・巫
ネネ(ib0892
15歳・女・陰
藍 玉星(ib1488
18歳・女・泰
ロゼオ・シンフォニー(ib4067
17歳・男・魔
御哉義 尚衛(ib4201
18歳・男・魔


■リプレイ本文


「あらあら、今日は皆さん本当にすいませんね〜」
 家主であるサナエがのんびりと開拓者達を玄関まで迎えてくれた。
「今日はもふ龍と一緒にがんばりたいと思いますよ!」
 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)が「おー!」と連れているもふらと一緒にはりきっている様を見せてくれた。
「えーっと。皆さんよろしくお願いします」
 ロゼオ・シンフォニー(ib4067)が周囲の人々にぺこりと大きく頭を下げた。
「もふら君の恋煩いかぁ‥‥。僕にお手伝いできる事があればいいのですが」
 御哉義 尚衛(ib4201)がぼんやりと呟いた。もふぞうの恋わずらい解決はもちろんなのだが、報酬のリンゴ狩りというのも彼にとっての楽しみである。
「それでは、まずもふらさん達にご挨拶させますね。皆さーん、開拓者の皆さんが来てくれましたよぉ〜」
 サナエが家の奥に向かって呼びかけると‥‥
「開拓者さん達来てくれたもふ!」
「もふぞうが死んでしまうもふ、助けてほしいもふ!」
 もふもふもこもこの津波があらわれた! ‥‥と思ってしまうほどのもふら達が姿を見せた。どうやら話に聞いていたときよりも誤解が広がっているようだ。
「ああ、皆さん落ち着いて。別にもふぞうさんに死亡フラグは立ってないから。余命一ヶ月フラグも立ってないから」
 ニーナ・サヴィン(ib0168)がどうどうともふら達をなだめた。
「ちがうもふ?」
「ええ、言うなれば、とってもハッピーな病気よ♪ 考えただけで頬が赤くなって、心が暖かくなって、幸せになれるの。大好きなご飯を食べている時より幸せね」
「そうもふ! もふぞうは恋をしているもふ!」
 遅れて一匹のもふらが奥から姿を見せた。これが恋をしているという件のもふらだ。
「も、もふらですら恋を‥‥」
 藍 玉星(ib1488)がそんな恋わずらい中のもふぞうの姿を見てショックを受けていた。
(もふらに恋の何たるかを聞くのは、恋を夢見る乙女として正しいアルか?)
 いやいや、それって人間としての大切な何かを捨てているかもしれないアル、と玉星は一人悩み続けた。
「おや、どうかされましたか?」
 隣にいた朝倉 影司(ia5385)がそんな玉星の様子をうかがってきた。
「いや、何も言って無いアル。もふらの世話、頑張るネ」
 平静を装う玉星だったが、考えていることがバレていないかどきどきひやひやしていた。藍 玉星、十四歳。恋に恋する乙女でもある。



「では私達はお掃除しますね。桜香さん、いっしょにやりませんか?」
「はい、家事は大好きなので頑張りますよ〜」
 ネネ(ib0892)と白 桜香(ib0392)がごそごそと持参した前掛けをつけ始めた。
「すいません、箒かしてくださーい」
 ネネはサナエに呼びかけた。サナエが「はいは〜い」と玄関横にある押入れの扉を開けた。
「ハタキはどこにありますか〜?」
 と桜香も掃除道具を出すために「うんしょ」と前においてある大きな箱を取り出した。
「もふらさんの寝床も布団等干してふわふわにしましょう」
 桜香とネネは布団の両端を掴み、「よいしょ」と持ち上げた。だが。
「ふぇっ‥‥くしゅっ!」
 ネネが小さくくしゃみをした。
「わわ、凄い毛です、ブラッシングも必要そうですね‥‥くしゅ」
 桜香もつられたかのようにくしゃみした。お互いに顔を見合わせてくすりと笑う。
 さて、しばらくは桜香が箒とハタキで埃をはらいながらネネが雑巾がけをしていたのだが。
「もふもふ! 追いかけっこもふ!」
 一番小さなもふじゅうごが掃除をしている部屋に乱入してきた。続いてもふら達ももこもこ入ってきた。どうやら外で洗われていた途中らしく、もふらのようなもこもこ泡が部屋中に散らばった。
 しかも一匹のもふらがもふじゅうごでなく箒を追いかけ始めると、次々ともふら達はそちらに構い始めた。
「こっちの方が楽しいもふ!」
「とっても可愛いです、でもあの‥‥すみませーんどなたかもふらさんを‥‥!」
 もふらに囲まれた桜香はふえ〜っと助けを呼んだ。
「あわわ、もふら様! こっちでマッサージしてあげますよ〜」
 隣の部屋から追いかけてきたロゼオがもふじゅうごをよいしょと抱えて運ぶと、もふら達も「マッサージもふ!」とその後を追いかけていった。
 掃除は半分ほど終わっていたのだが、もふら達が走り回ったせいですっかり埃だらけ毛だらけの部屋、おまけに泡だらけだ。
 はあーとため息を吐く桜香とネネ。
「せっかくだから、上から下まで、しばらくお掃除しなくてもいいくらいぴっかぴかに磨き上げてしまいましょー!」
 むん、と拳を握りしめてネネは改めて気合を入れた。
 ‥‥そしてマッサージを受けているもふらはというと。
「もふもふ〜気持ちいいもふ〜」
 ロゼオの獣としてのツボを心得たマッサージにより心身共にめろめろになっていた。
「どうです、気持ちいいですか?」
「いいもふ、特に耳のあたりが気持ちいいもふ〜」
 洗いたてのふかふかもふらのツボを押すと石鹸の匂いがふんわりロゼオの鼻をくすぐった。
「さて、もふぞうさん♪ あなたの想い人‥‥いえ想いもふらさんについて教えてもらえませんか?」
 ニーナがずいっともふぞうに顔を近づけた。
「そうですね、それにもし思い出せるのなら連れていた方のことも教えていただけませんか?」
 と影司。彼は今回難しいと言われている想いもふらを探してみるつもりだ。
 そして台所では紗耶香と玉星がもふらに出す料理をしていたのだが。
「あっ、玉星さん! お砂糖入れすぎです!」
「えっ、あっ! しまったアル!」
 本当ならば量って入れなければならない砂糖を、玉星は気付かないうちに袋ごと入れてしまっていた。
「どうしたんですか? 熱、じゃないみたいですけど‥‥」
 紗耶香は玉星の額に触れ、心配げに顔を見つめてきた。
「だ、大丈夫アルよ! ちょっと考え事してたアル!」
 わたわたと慌てながら玉星は鍋の中身の味をみてみた。やはりだだ甘。
「うう、これも恋の味アルかな〜‥‥」
 小さく紗耶香に聞こえないように呟く玉星。実は隣の部屋ではじまる恋バナに耳を傾けていたなんて言えそうになかった。
「新しい玩具をくわえながら街を歩いていたもふ。でもおいしそうな匂いがして玩具を落としてしまったもふ。橋から落ちそうになった玩具を拾ってくれたのがあのかわいいもふらもふ! ‥‥そういえばそばにいた開拓者はおねーさんだったもふ」
「なるほど。これはいいことを思い出してくれました。ありがとう、もふぞう君」
 影司はもふぞうの頭をくしゃりとなで、すっと立ち上がった。
「もしかして、あのもふらを探してくれるもふ?」
「ええ。時間の許す限り、ですが」
「あらあら、でしたら先にこのリンゴを持っていってください」
 サナエが影司にいくつかのリンゴを手渡した。今日の礼になるリンゴと同じものだ。
「ああ、これはありがとうございます。道中頂くとしますね」
 影司はサナエからリンゴを受け取ると、そのまま部屋からしゅたっと出て行った。玄関ではなく、天井から。
「他に特徴は思い出せませんか〜?」
 桜香が膝の上にもふじを乗せてブラッシングしながらもふぞうに尋ねてみた。
「う〜ん‥‥あのもふらをずっと見てたから覚えてないもふ‥‥かわいいもふらだったもふ〜」
「もふぞうさん、その子のチャームポイントを教えてくれませんか?」
 普段はおっとりとしているネネが瞳をきらきらさせながらもふぞうに聞いた。やはり恋バナは少女の好物なのだ。
「えっと、もふ」
 もふら達も興味津々ともふぞうの周りに集まってくる。いつの間にかもふらにとってのチャームポイント暴露大会になった。
 結論からいうともふらにとってのチャームポイントはもふらそれぞれ、になってしまうらしい‥‥。
「ちなみにサナエさん、恋の経験は?」
 ずいっとニーナがサナエに顔を寄せる。
「え、えぇ――ッッ!?」
 まさか話をふられると思っていなかったのか、サナエが激しく動揺した。
「やっぱり旦那さまとの恋が一番の思い出かしら?」
「そうですね。夫も開拓者をやっていまして、助けてくれたのをきっかけに恋に落ちて‥‥。でも、そういう職業の人でしたから」
 もふらに囲まれているときには見せない悲しい表情がちらりと見えた。
 ニーナも村がアヤカシに襲われたことがある。家族は無事だったからあまり気にしていないが、もし誰か命を落としていたらと時折考える。
 きっとその心の傷はもふらに何匹囲まれていたとしても癒されないだろう。
「もふらまんじゅうできたアルよ〜。ほら、もふぞう。コレを食べれば、夢で彼女に会えるかも知れないのコトよ」
 玉星が皿いっぱいに重ねられたふかふかの饅頭を持ってきた。あまった皮やゴマなどでうまく目と鼻が作られもふらの形になっている。
 もう片手には泰国風の卵焼きや炒め物が積まれていた。サナエから聞いたもふらの好物を作ってみたのだ
「こちらにもありますよ〜」
 その後ろから紗耶香も皿を抱えながらやってきた。こちらの饅頭は白だけでなく、ピンクや黄色などの様々な色をつけられている。
「おいしそうもふ!」
 もふら達がぐるぐると二人の周りを走り始めた。
「わ、わー! やめてください〜!」
「危ないアルよ、落としてしまうアル!」
「あらあら、いけませんよ。そうです、皆さん! せっかくですからお外でいただきましょう」
 もふら達をたしなめながらサナエは言った。その表情はもう明るかった。




 一方その頃の影司であるが。
「うーん、なかなか手がかりは見つかりませんね〜」
 ギルドで「女性でもふら様を連れている開拓者」のことについて尋ねてみたが、何人も候補がいたうえにほとんどが依頼に出かけていた。
 仕方ないので戻ったら連絡してもらうように頼み、今は懐のリンゴをかじりながら歩いていた。
「リンゴ‥‥」
 横からの小さい声に影司は振り向いた。
 そこんは赤ん坊を背負い、隣に自分よりも小さな少女を連れた少年が立っていた。子沢山の家の子供のようだ。
「このリンゴ欲しいですか?」
 影司が尋ねると少年はこくこくと首をふった。
「では差し上げますね。両手を出してください」
「いいの!?」と少年は瞳をきらきら輝かせ、両手を出してきた。
「ええ、喜んでくれる方がいただく方がリンゴもうれしいでしょうからね」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
 少年と少女はリンゴを抱えながら下町の方へと走っていった。兄弟達にわけてあげるのかもしれない。
 影司はたくさんの子供達が喜ぶ様を想像し、顔を綻ばせる。
「さて、俺はそろそろ報告に戻りましょうかね」



 そして開拓者達はリンゴ畑へとやってきた。
「皆さ〜ん、リンゴをむいてあげますね。こっちはウサギさんにしてあげますよ」
 桜香が器用にリンゴを切り分け皮をむいた。ぴんと立った耳は小うさぎの耳のようだ。
「わぁ、うさぎさんもふ! もふらリンゴはできないもふ?」
「え、えっと、もふらリンゴですか‥‥が、がんばってみます!」
 どんな形がもふらなんでしょうか、と頭を悩ませる桜香。
「このもふらまん、餡子がとても甘くておいしいですね」
 ほにゃっとロゼオが饅頭を口に含みながら笑った。実は甘すぎになってしまった餡子をなんとか調整したのはヒミツだ。
「それにしても、もふら君がこんなにいっぱい‥‥一箇所に集まってもらったらモフモフ布団‥‥あっ、何でもありません」
「あらあら、もふらさん達の上で寝てもらっても構いませんよ〜。もふらさん達はこう見えても力持ちですからね。私もときどきもふらさんの上でお昼寝してるんですよ〜」
 尚衛はこっそり呟いたつもりだったが、ちょうどサナエに聞かれてしまった。もふら達もサナエの言葉を聞き「寝るもふ? いつでもいいもふ!」と綺麗に整列してくれた。
「で、ではお言葉に甘えて‥‥うわぁ、見た目どおりふかふかだぁ〜」
 もふらの大きさによってでこぼこが出来ているがそれが逆に心地良い。穏やかな秋の日差しと洗いたてのもふらの香りに尚衛はうとうとと眠りの世界に落ちかけた。
「うふふ、子守唄なんてどうでしょうか」
 ニーナが吟遊詩人としてのクラスを生かして優しく、そして暖かい歌を唄う。もふら達もとろんと瞼が落ちていき‥‥。
「おや気持ちよさそうですね」とリンゴが実る枝葉から現れた影司が尚衛を「ご、ごめんなさいっ!」と驚かせた。
 もふら達も「もふ〜?」と閉じかけた目を開けた。
「それにしても、もふぞううらやましいもふ。もふしちも恋っていうのをやってみたいもふ!」
 もふしちがやりたいやりたい恋やりたいと駄々をこねはじめた。せっかくニーナがリボンをつけてかわいくしてあげているのに台無しだ。
「憧れる恋もいいけど目の前にある恋も見つけてみてはどうかな?」
 ロゼオがもふしちの鼻先に指をたてて助言してみる。転がっていたもふしちがぴたりと止まった。
「見つかるもふ? ロゼオも見つけたもふ?」
「えっと、その、こ、これから見つけるところなんだよ!」
 もふしちに聞かれて思わぬことをロゼオは顔を赤くして言ってしまった。
「もふぞうも大丈夫もふかね‥‥」
 影司からの報告はあったものの、やはりもう一度あのもふらに会えるかもふぞうは不安げだ。
「もふぞう君は大丈夫ですよ。恋は障害があったほうが燃える物です。再び出会えればまさに運命! 出会えなければ、もっと素敵なもふら君‥‥さんに出会える可能性があると言う事です。素敵じゃないですか」
「なるほどもふ。経験者の言うことはやっぱり違うもふね!」
「えっと、経験者かというと、その、あのー」
 尚衛ももふぞうの言葉にロゼオと同じように顔を赤くしてしまった。恋をしたことがあるかどうかはわからないが、恋バナに頬を染めて照れている姿はあまり少年のようには見えない。本人も気にしているところだ。
 尚衛の恋バナはそこの改善から始まる、のかもしれない。
「‥‥ふむ。恋の味、アルか」
 あちこちで行われる恋の話に、玉星はリンゴをかじりながらぽつりと呟いたのであった。



 開拓者達はもふら達と共にサナエの家へと帰ってきた。
 紗耶香がリンゴジャムやリンゴパイなどを作り披露してくれたので、開拓者やもふら達はまた舌鼓を打つことになった。
「ところで‥‥もふらにも恋愛感情というのがあるんですね‥‥」
 リンゴジャムを乗せたクッキーをほお張りながら紗耶香が呟いた。
「そうよね、自然発生なのに恋なんて‥‥えっとなんでもないわ」
 ちょっと下世話な話だもんね、とニーナは咳払いをしてごまかす。
「もふらさまのプロポーズとかって、どんなんでしょうか? ちょっと気になります」
 ネネがほぅっとため息を吐きながら考え込んだ。
「考えるだけで和みます‥‥」
 桜香もぽんやりと暖かい気持ちになったが、きっとそれはここにいるすべての人間の胸に宿っているものに違いなかった。