穴だらけの飛空船〜鳳〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/02/14 19:36



■オープニング本文

 泰国は飛空船による物流が盛んである。
 その中心となっているのが旅泰と呼ばれる広域商人の存在。
 必要としている者に珍しい品や食料を運んで利益を得ている人々だ。時に天儀本島の土地にも根ざし、旅泰の町を作る事もあった。
 当然の事ながら泰国の首都『朱春』周辺にもたくさんの旅泰が住んでいた。昇徳商会の若き女社長の李鳳もその中の一人である。


「だからやめておけってみんないってたのに!」
 李鳳を含めた昇徳商会一同が立っていたのは、泰国の田舎にある飛空船基地の敷地内。
 青空に浮かんでいた飛空船が錐揉状態で落下して森の向こうに見えなくなる。直後、轟音と共に森の向こうで土煙が沸きあがった。
「奴ら‥‥楽しんでいるのか」
 昇徳商会所属の中型飛空船『翔速号』の操縦士、青年『王輝風』が呟いた。奴らとは鳥のキツツキに似たアヤカシ。一部の者達の間では『妖キツツキ』と呼ばれていた。
 基地から飛空船が飛び立つと一斉に妖キツツキの群れが襲いかかってくる。補強として金属が使われている飛空船だが大半は木製。強靱なクチバシで穴だらけにされたのなら、壊れながら墜落するのみだ。
 人が怯える様を楽しむのもアヤカシの特徴の一つであった。
 風信器による連絡が行き届いて、ようやくこの基地を訪れようとする飛空船はいなくなる。だがすでに着陸している飛空船四十六隻は飛び立てずに地面へと這いつくばるのみ。たまたま商売の帰りで立ち寄った翔速号もそれらの一隻に含まれていた。
「しょうがないですよ〜。こうなったら開拓者が来るまで待ちましょう♪」
 昇徳商会の見習い、猫族の娘『響鈴』は翔速号の近くでアジの干物を焼いていた。黒い子猫のハッピーと仲良く一緒に並んで。
 足止めを食らっている飛空船所有者達は共同で基地備え付けの風信器を使って、妖キツツキ退治を開拓者ギルドに依頼してあった。
「そうするしかないわね。妖キツツキは今のところ人を襲わないし。‥‥とはいえいつまでそうなのかはわからないけど」
 李鳳は響鈴に振り向いた。
「翔速号に隠れても穴を開けられ、侵入されて‥‥いやいや、考えるのはよそう」
 王輝風も昼食作りを手伝う。
 開拓者の到来をまだかと待ち続ける翔速号一同であった。


■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
滝月 玲(ia1409
19歳・男・シ
壬護 蒼樹(ib0423
29歳・男・志
将門(ib1770
25歳・男・サ
朽葉・生(ib2229
19歳・女・魔
九条・亮(ib3142
16歳・女・泰
朱鳳院 龍影(ib3148
25歳・女・弓


■リプレイ本文

●到着
 夕暮れに染まる一本道。
 御者付き・もふらの荷車が牽くのは開拓者所有のグライダー三艇。龍に騎乗していた開拓者はすでに徒歩へと切り替えていた。
 陸路を選んだのは到着予定の飛空船基地を狙うアヤカシ『妖キツツキ』の群れを警戒しての事だ。
 夜の帳が下りた頃、開拓者一行は目的の飛空船基地へと辿り着いた。たくさんの飛空船が着陸しているのにも関わらず、まるで墓場のような雰囲気が漂う。
 基地内施設の広間へと案内されると、停留を余儀なくされた飛空船関係者が集まっていた。
「頼むぜ。このままじゃおまんまが食えなくなっちまう」
「ナマモノは腐る前にみんなに配っちまったがよ。せめて預かった宝珠だけは期限までに届けてぇんだよ」
 すでに依頼書によって大まかな状況は伝えられていたものの、より詳しく、また極最近の情報も含めて開拓者達に説明が行われた。
「ここにも部屋はあるけど、よかったら翔速号に来ない?」
 集まりがお開きになると李鳳を始めとした昇徳商会の面々が開拓者達に近づいて声を掛ける。誘いに乗る事にした開拓者達は朋友を連れて着陸中の中型飛空船・翔速号へと向かった。
「いい飛空船だね‥‥。こんな船、僕も欲しいなぁ」
 天河 ふしぎ(ia1037)は立ち止まって月光に照らされる翔速号をしばらく見上げていた。
 優れた飛空船というものはシルエットも美しい。それは設計思想が外形にも滲み出るものだからだ。
 各自の寝床が決まったところで食堂に再集結して遅い夕食を頂いた。話題は自然に妖キツツキについてとなる。
「ふぅむ、妖キツツキか。普通のキツツキも見たことなんじゃよな。どんな姿をしておるのじゃろうか」
 響鈴特製の乾物煮込み料理を頂きながら朱鳳院 龍影(ib3148)は首を傾げた。
「あたしも詳しくは無いんだけど全体が黒くて所々が白いの。トカサの部分は赤くて大きさは‥‥このぐらいかな。間近で見てないから大体でしかないけど」
 李鳳が両手の幅で示したのは五十センチメートル前後だ。
「一羽や二羽ならまだしも十羽以上だと脅威になるし、さっきの説明にあったように百羽以上なら、圧倒的物量の恐怖というものを実感させられるね〜〜」
 九条・亮(ib3142)は王輝風が持ってきた食堂の片隅に置かれている木片を眺める。飛空船の残骸で妖キツツキによって開けられた直径十センチメートル前後の穴が二つ残っていた。この穴が一気に百も空けられるとすれば、中型飛空船などひとたまりもないだろうと九条亮は想像する。
「百羽のアヤカシとは随分と湧いたもんだな。それにしても昇徳商会が囮を引き受けるとはな。他に立候補する飛空船乗りはいなかったのか?」
「速さなら翔速号はかなりのものだからね。多くの船は積載量を増やすために、速度はあまり重視していないんだよ」
 将門(ib1770)は王輝風と話してから昇徳商会の面々を順に見つめる。
 基地施設内での説明の際、翔速号が囮を買って出たと話はすでに聞かされていた。大変な役目を引き受けてくれたことに感心する。
 壬護 蒼樹(ib0423)は将門と王輝風の話しを聞きながら妖キツツキによって墜落させられた人々を思って瞑目した。
 開眼した後の壬護蒼樹の瞳は気合いに満ちた輝きを放つ。
「李鳳さん、囮といった思い切った決断ありがとうございます。船の人も、周辺の人も、安心できるよう尽力を尽くします」
「ありがとう。壬護さん頼りにしているわ。じゃあ頑張ってもらえるようにっと。響鈴、もう一皿追加よ♪」
 李鳳は響鈴に煮込み料理のお代わりをよそわせて壬護蒼樹に振る舞う。少し物足りなかった壬護蒼樹は迷いなく平らげた。
「技師としていい船を穴だらけにさすなんて我慢ならないからな。あ、締めの一品もあるのか」
「へへ〜。みなさんが来ると聞いたので特別に作っておいたのです♪」
 滝月 玲(ia1409)がいう『いい船』とは翔速号を指していた。
「外壁の厚みはどのくらいなんだ?」
「機関部と操縦室の部分は他より厚めに――」
 響鈴が配膳した杏仁豆腐を食べながら滝月玲は翔速号の構造詳細を王輝風に訊ねた。
「すべては明日からですね」
「信頼しているわね。朽葉さん」
 朽葉・生(ib2229)の言葉通り妖キツツキ殲滅作戦は天候が崩れない限り、明日の決行となっていた。
 開拓者達によって練られた作戦には朽葉生のブリザードストームが不可欠である。朽葉生は早めに就寝して明日に備えるつもりだ。
 食べ終えて床に就く前に輝夜(ia1150)は船倉で待機中の駿龍・輝龍夜桜を訪ねた。そして藁の束を背中にかけてあげる。
「輝桜よ、たかが妖キツツキごときなぞ汝の翼で打ち落としてやるのじゃ」
 輝夜に応えて駿龍・輝龍夜桜は小さく啼くのだった。

●妖キツツキとの戦い
 到着した翌日。わずかに雲こそあったが晴れといってよい天候。
 翔速号が離陸した直後に滑空艇・天空竜騎兵の天河、滑空艇・紫電の九条亮、滑空艇・ブレイズヴァーミリオンの朱鳳院の三艇は甲板から飛び立つ。
 駿龍・輝龍夜桜の輝夜、炎龍・瓏羽の滝月玲、甲龍・妙見に騎乗の将門、駿龍・ボレアの朽葉生は直接大地から大空へと舞い上がった。
 壬護蒼樹はミヅチ・水蓮と共に翔速号に残る。命綱を腰に巻いて操縦室の屋根部分に待機した。
 妖キツツキが隠れているはずの森は飛空船基地の北北東から南にかけてに面している。翔速号を操る王輝風は空路を北西にとる。つまり森とは反対側の方角に。
「妖キツツキと思われる群れ、森から一斉に飛び立っています〜。うわぁ〜スゴイ数ですよ〜」
 後方の確認がしやすい一室に待機していた響鈴の声が伝声管を介して操縦室内に響き渡った。
「輝風、頼むわね。腕の見せ所よ」
「任せて。速く、そして繊細に‥‥」
 李鳳は宝珠の出力を管理しながら操縦する王輝風に声をかけた。
 妖キツツキの群れに追いつかれないギリギリの間隔を保って飛び続けるのが理想だが、おそらく百以上の数が相手。これまでに墜落させられた飛空船の性能から考えて、妖キツツキの直線移動は翔速号よりわずかに速いと推測された。王輝風の旋回技術を駆使したとしてもいつかは追いつかれてしまうに違いなかったのである。
 囮となった翔速号の墜落を阻止するのが開拓者八名の役目だ。龍や滑空艇で飛行する開拓者達は翔速号の軌道を基準にして立ち回る作戦を立てていた。
 現状において妖キツツキにとっての一番の狙いは翔速号。とはいえ龍や滑空艇で天駆ける開拓者達を無視している訳ではなかった。それを逆に利用しながら開拓者達は翔速号を守護しようとしていた。
「妖キツツキが追ってきていますね。これが開戦の狼煙代わりです」
 翔速号の後方を飛ぶ駿龍・ボレアの背に立った朽葉生は、精霊武器たるフロストクィーンを突き出すように構えた。
 刹那、フロストクィーンの先から勢いよく拡散したのはブリザーストームの吹雪。白雪の勢いが迫り来る妖キツツキの群れを包み込んでゆく。
 雪に巻かれて次々と墜落してゆく妖キツツキ、飛び続けている個体もあったが、一度にまとめてかなりの被害を与えられたのは確かである。
 朽葉生が半分閉じていた瞼を開いて周囲を観察する。妖キツツキ等は一旦大きく旋回してから群れの体勢を立て直そうとしていた。今一度ブリザーストームを放って牽制した。
「仲間に任せて一旦引きますよ」
 朽葉生は機会を見計らって一旦距離を取ろうとする。大きく翼を広げた駿龍・ボレアは高速飛行によって離脱を図った。
 そして未だ執拗について迫り来る妖キツツキの群れに対し、他の開拓者達が立ち向かう。
「まだまだたくさんいるのじゃ。ここは一つ、こいつをやってみるのじゃ!」
 大きく息を吸った朱鳳院が使ったのは咆哮。その響きを聞きつけた妖キツツキ十数匹が朱鳳院の滑空艇・ブレイズヴァーミリオンを追い始める。
 朱鳳院は弐式加速で真っ直ぐに飛行する事で妖キツツキを可能な限り一列に並ばせた。そして振り向きながら強靱な肢体で『弓「緋凰」』を引く。
「まさに予想どおり、絶好のカモということじゃな」
 放たれた矢にまとわりついた衝撃波が並ぶ妖キツツキを貫いていった。バーストアローによって九羽の妖キツツキを一気に倒した朱鳳院だ。
「ちまちまと鬱陶しい事この上無い、どうせなら纏めて掛かってくるのじゃ」
 輝夜は朱鳳院が残した妖キツツキを『殲刀「朱天」』で斬って落とす。翼の狙うよりも息の根を止める為に胴を真っ二つにするのを心がける。
 相手から向かってきてくれるので、追いかけなくてもよいのはある意味で楽だ。但し、背面、背後などの死角からの攻撃には注意しなければならなかった。逆に妖キツツキの死角をついて民してゆけばおそるるにたらずである。
 輝夜は最小の動きでかわし、刃を妖キツツキに当ててゆく。翔速号に妖キツツキが集っていないかを常に確認しながら殲滅に寄与した。
 その輝夜とすれ違うように炎龍・瓏羽を飛翔させていた滝月玲は、上昇して妖キツツキの群れに酒を振りまいた。
「よおおおし!」
 滝月玲はその上で炎龍・瓏羽に火炎を吐かせた。瞬く間に引火して空中に炎が広がる。燃えさかる妖キツツキは苦しみもがくように軌道を不安定にさせてゆく。
「ここは俺と瓏羽に任せておけ!」
 炎魂縛武を武器に纏わせて滝月玲は群れを突き抜けるように飛んで妖キツツキを倒していった。
 朽葉生の呼子笛が聞こえると滝月玲は一旦引いた。再びのブリザードストームが朽葉生によって妖キツツキに浴びせかけられると再突入だ。
 白いオーラを放つ『片鎌槍「北狄」』。さらに炎が纏う。槍先で突き刺し、そのまま急接近様に鎌で妖キツツキを真っ二つにする。
 開拓者達のおかげで順調に妖キツツキの数は減っていった。しかし少しずつ森から敵の援軍が飛来する。減らしては増えての一進一退の攻防は続いた。
「行くよ、天空竜騎兵‥‥大空にはためく、この旗の元に!」
 形見のゴーグルを下ろして二度瞬きをする天河。事態の打開を計る為、少しでも翔速号を狙う妖キツツキを分散させようと自らも囮となるつもりである。
 妖キツツキの群れに向けて真っ直ぐに滑空艇・天空竜騎兵を操る。寸でのところで身体を傾かせて軌道を逸らす。一部の妖キツツキは反転して滑空艇・天空竜騎兵の天河を追い始めた。
「これ以上、この大空を汚させないんだからなっ‥‥鶴の嘶きと共に舞え、タズガネシューター」
 天河が振り返りざまに放った『手裏剣「鶴」』は鶴の鳴き声のような音を放ちながら、妖キツツキの胴体を引き裂いた。散華による手裏剣連投によって三つの軌道が宙に描かれる。
 天河は命中を確認した瞬間に急反転させた。風を切り、空を自由に舞う。さらに最適置で妖キツツキの死角へと滑空艇・天空竜騎兵を回り込ませて一気に攻める。
 妖キツツキの一団を倒したところで天河は呼子笛を鳴らす。離れたところ戦っていた朱鳳院を呼び寄せる為に。
「おぬし、どうしたのじゃ?」
「このままじゃあ船が危ない。やろう龍影、空の平和は、僕達『夢の翼』が護るっ!」
 グニェーフソードを抜きながら天河が朱鳳院に作戦を説明する。大紋旗を掲げてわざと目立つように。
「よい思いつきじゃ。それでは参るのじゃ!」
 弓を『泰術棍「林冲」』に持ち替えた朱鳳院は滑空艇・ブレイズヴァーミリオンを急速反転させて強襲を実行。妖キツツキの群れの中に突っ込んだ。天河もほとんど同時に強襲を持って群れの中へ身を投じる。
 虚をつかれた妖キツツキは為す術もない。天河と朱鳳院の刃が青空に煌めいた。鬼神迫る二人の奮闘で妖キツツキが瘴気の塵と化してゆく。
 翔速号はこれまでうまく立ち回っていたが、小回りという点においてはやはり鳥の形状をした妖キツツキには敵わなかった。少しずつ追いつかれそうになっていたが、それを防いでくれていたのが、九条亮、壬護蒼樹、将門の三名だ。
 滝月玲はいつでも援軍として駆けつけられるように翔速号後部から少し離れた空間で戦っていた。
「んじゃあお仕事といきましょうか!」
 滑空艇・紫電の立つ九条亮は両腕にはめた手甲『霊拳「月吼」』を軽く合わせて音を鳴らす。
 月は出てないが吠えるように叫んだ九条亮は翔速号に取り憑こうとする妖キツツキを狙って拳を振るう。
「故郷のスタンダートは土葬か火葬して海葬だからね。鳥葬されるわけにはいかんのだよ!!」
 九条亮が迫る鋭いクチバシを凝視してタイミングを合わせる。鈎状に曲げた左腕を妖キツツキのクチバシ横に叩きつけて軌道をそらし、止めは腹へと突き上げるように右拳を天へと振り上げた。錐揉みしながら妖キツツキは上昇し、やがて瘴気となって雲散霧消する。
 翔速号の操縦室を護る為に九条亮は全力を費やした。
(「まだ平気か。なら操縦室付近を重点的に」)
 翔速号のもう一つの弱点である後部ノズル部分にも九条亮は注意を払っていた。もしもの時には滝月玲と同じように即座に駆けつけるつもりであった。
 操縦室付近の護りは壬護蒼樹も担っていた。空中からではなく翔速号の外壁から。
「水蓮君、この船は覚えていますよね? この前一緒に掃除しましたから、やるときはあの時と同じ。ただ、掃除するのが汚れじゃなくて、意思を持った妖キツツキなだけです」
 朋友のミヅチ・水蓮に声をかけた壬護 蒼樹(ib0423)は強い風を身体に受けながら六尺棍を構える。ミヅチ・水蓮は壬護蒼樹に答えるように身体を振るわせた。
 全力ではないものの、翔速号はかなりの速さで飛んでいた。不安定な足場で戦いを強いられるが、元より覚悟していた事。
「妖キツツキなんかに穴は空けさせないです!」
 駆け寄った壬護蒼樹は翔速号に掴まろうとした妖キツツキの足を掬うように六尺棍を振り回す。
 邪魔をされた妖キツツキは壬護蒼樹の喉元目がけてクチバシを突き立てようとした。腰を屈めて低い姿勢をとった壬護蒼樹は六尺棍を突き出して妖キツツキの翼を貫く。そのまま引っかけて回転の勢いのまま遠くへと投げた。翼が千切れた妖キツツキはそのまま落下してゆく。
「水蓮君、助かります!」
 ミヅチ・水蓮は壬護蒼樹の言いつけを守って水柱の勢いで翔速号に取り憑こうとする妖キツツキをはじき飛ばしていた。壬護蒼樹はミヅチ・水蓮が時間稼ぎをしてくれている間に、次々と妖キツツキを倒してゆく。
「かなり減ってはきたが‥‥」
 将門は甲龍・妙見の背で『刀「嵐」』で妖キツツキを切り裂きながらは状況を把握する為に振り返った。
 ざっとではあるが、妖キツツキは当初翔速号を追いかけていた数の約三分の一に減っていた。数にして三十前後。
 少しずつ合流する個体がいるのですでに最初の群れを全滅させているぐらいは倒している。翔速号は護らなければならないが、作戦の目的は妖キツツキを全滅させて飛空船基地の離着陸を安全にする事だ。つまり一羽残らず妖キツツキを森から追い出した上で殲滅しなければ意味がなかった。
 幸いに翔速号は仲間達の活躍のおかげで軽微な破損で飛び続けている。前部の水晶板が貼られた操縦室付近や風の宝珠が取り付けられた推進ノズルも安全が保たれていた。
「ここを頼む」
「任せておきな!」
 将門は滝月玲に近づいて翔速号の護衛を任せると森の上空へと向かう。
 妖キツツキが逃走に入ったら追撃しようと考えていた将門だが、そうならないのであればこちらから仕掛けるべきだと考えたのである。
 咆哮を響かせると森に残っていた妖キツツキが何羽か飛びだしてくる。少しの間、甲龍・妙見にクロウ攻撃でしのいでもらいながら別所でも将門は咆哮を使う。
「まとまってくると‥‥やはり厄介だな」
 将門は新陰流による練力を刀に纏わせて戦い、妖キツツキの集団攻撃をしのぐと仲間と合流した。
 朽葉生目がけて一直線に飛び続け、途中で軌道を変える。そして朽葉生のブリザードストーム。妖キツツキが弱ったところで各個撃破を行う。
 飛んでいた翔速号にまとわりつこうとするすべての妖キツツキが一掃される。とはいえ森のどこかに隠れているかも知れず、念のための捜索が行われるのだった。

●そして
 三日目も翔速号と共同した開拓者達によって妖キツツキ探し行われたが、一羽も見つからずに終わる。すべての妖キツツキが消え去ったと考えられ、ここに安全宣言がされた。
 手に入りにくい特別な品は別として、開拓者達が消費した汎用品については依頼者たる滞留を余儀なくされた飛空船関係者によって補充が行われる。せめてもの感謝の印であった。
「今日は沢山走ったのでお腹がすきましたね」
 壬護蒼樹のお腹が鳴ったのを合図に晩餐の時間となる。
 この地の名物と呼ばれる水餃子と拉麺が山のように卓へと並べられた。お酒も当然並べられて開拓者達は楽しい時間を過ごす。
 特に飛空船関係者達の感謝の言葉が嬉しかった開拓者一同だ。これで嫁や子供に会える、破産せずとも済むと笑顔で声をかけられる。
 安全宣言が行われた後、すぐに離陸した飛空船もあった。夜になろうとしていたが、少しでも急ぎたかったのだろう。
 大抵の飛空船は四日目の早朝から昼にかけて基地を飛び立つ。翔速号もそうである。開拓者達は翔速号に同乗して泰国の帝都、朱春と向かった。
「一時はどうなるかと思ったわ‥‥。妖キツツキとか、ああいうのはとても困るわ。木造の飛空船の敵よね、まったく! 開拓者のみんな、本当にありがとう。昇徳商会の代表としてお礼をいわせて頂くわ」
 李鳳が一人ずつ開拓者と握手をして感謝する。
 開拓者達はしばらく昇徳商会の格納庫で過ごした後、精霊門が動く時刻に合わせて去るのであった。