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■オープニング本文 泰国は飛空船による物流が盛んである。 その中心となっているのが旅泰と呼ばれる広域商人の存在。 必要としている者に珍しい品や食料を運んで利益を得ている人々だ。時に天儀本島の土地にも根ざし、旅泰の町を作る事もあった。 当然の事ながら泰国の首都『朱春』周辺にもたくさんの旅泰が住んでいた。李鳳もその中の一人である。 泰国帝都、朱春近郊の飛空船基地。そこに佇むボロ倉庫こそが昇徳商会の本拠地である。 長く朱藩の安州に滞在していた昇徳商会の面々だが、中型飛空船『翔速号』の改修の為に戻って汗を流していた。 とはいえ、改修費用のほとんどは新規の宝珠などの部品代で終わってしまう。造船所に頼めるはずもなく作業そのものは青年『王輝風』が行った。女社長『李鳳』はそれを手伝い、黒い子猫のハッピーは倉庫内の風通しのよい日影でお昼寝だ。 翔速号は設計の段階から増強の構想が組み込まれた素性のよい船体であった。新たに宝珠を固定する部分などもすでに用意されていて改修の苦労は少ない。肝心なのは微調整だが一週間程度かければ何とかなりそうな手応えを王輝風は感じていた。 「ふー。疲れたな」 「終わったわね。やっと今夜からゆっくりと眠れそう」 二週間に渡る改修作業が終わった王輝風と李鳳は、翔速号内で簡単な夕食を取り始めた。するとひょっこり現れたハッピーが皿の前で座り込む。李鳳は残り物の肉を皿に置いてあげる。 「ん? 何の音?」 王輝風がスープに口を付けようとした時、シャカシャカとした小さな音に気がついた。 「船内ではなくて‥‥あ、倉庫内に誰かいる。でも暗くてよくわからないわね」 李鳳は船窓から倉庫内を見下ろす。 「侵入されたのこれで何度目だろう‥‥。いい加減倉庫も直さないといけないか」 王輝風が蓮華を置いて卓から立ち上がる。 李鳳と王輝風は銃を手にすると静かに船外へ出た。ずっとシャカシャカという音が続いているので侵入者の位置は薄暗闇の中でもはっきりわかる。 「そこまでよ! 止まりなさい!!」 李鳳が銃を構えて侵入者を威嚇する。 「あ、昇徳商会の方ですか〜。初めまして、響鈴といいます〜♪」 ほんわりとした女性の声がして肩すかしを食らった李鳳と王輝風だが罠の可能性もある。銃を構えたまま慎重に響鈴と名乗る女性へと近づいた。 「何で‥‥‥‥そろばんを両手に持って振っているんですか?」 「ええぇ?! そろばんを鳴らしながら踊るのが旅泰の挨拶の仕方だって聞いて来たんですけど!!」 王輝風の訊ねに響鈴はびっくりした様子だ。ようやくシャカシャカとした音が止まる。 「外の貼り紙を読んだんです〜。昇徳商会に入社希望です。よろしくお願いします〜♪」 気を取り直した響鈴の挨拶に今度は李鳳と王輝風がびっくりする。まさかここに来て入社希望があるとは考えていなかったからだ。 「そ、そう。銃を向けて悪かったわ。私が社長の李鳳、隣が技師兼操縦士の王輝風。とにかく話しましょう。中に入って」 「は〜い♪」 李鳳が明るい翔速号内に導くと響鈴の容姿がはっきりとする。歳は李鳳と王輝風と同じ十五歳程度。丸い愛らしい顔立ちだが、それよりもはっきりとした特徴が見て取れる。髪と同じ栗毛色の耳と尻尾。響鈴は猫族と呼ばれる獣人であった。 「珍しいわね。旅泰希望の猫族だなんて」 「よくいわれます〜♪ でも働く気ありますから」 李鳳は急遽、響鈴の面接を行う。しばらくは見習いとして雇う事が決まった。 そして翌朝、突然の仕事が昇徳商会に舞い込んだ。嵐で遭難した漁船を探して欲しいというものだ。 開拓者ギルドにも救助の依頼がすでに出されていた。昇徳商会には飛空船に開拓者達を乗せて翼代わりに海の上を飛んでもらいたいという。 まだ翔速号の微調整が終わっておらず李鳳は悩んだ。しかし最後には協力の決断をするのであった。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
壬護 蒼樹(ib0423)
29歳・男・志
将門(ib1770)
25歳・男・サ
朱華(ib1944)
19歳・男・志
ラッチ・コンルレラ(ib3334)
14歳・男・シ |
■リプレイ本文 ●海域へ 深夜、開拓者八名は精霊門を潜り抜けて泰国の帝都、朱春に辿り着いた。 昇徳商会所属・中型飛空船『翔速号』の出発は急がれたが、オラース・カノーヴァ(ib0141)の考えにより潮の流れに詳しい漁師を乗せる事になる。依頼者が漁業関係者のおかげでまだ日が昇っていない時間に関わらず適任者を紹介してもらえたのが幸いであった。 星明かりを頼りに翔速号は朱春近郊の飛空船基地から離陸。まずは鮪漁船が難破したと考えられる海域に進路をとる。到着までの間に一同が操縦室に集まり、話し合いが行われた。 「水の事故は時間が経てば経つほど捜索範囲が広がり難しくなります‥。一週間も経っているので範囲はかなり広がっていると思います‥」 柊沢 霞澄(ia0067)が壁に貼られた地図を心配そうな顔で見上げる。 「一週間‥‥どこかに流れ着いていてくれればいいけど」 滝月 玲(ia1409)は柊沢霞澄の言葉に繋げるように呟く。地図を確認する限り難破したと思われる周辺に島はなかった。 遭難した鮪漁船の漁師仲間によってある程度の捜索はすでに行われている。しかし続行されてはいるものの、手がかりはほとんどない。難破を意味する鮪漁船のものと思われる多量の木片が海面で見つかったのみだ。 「これだけの長い期間だとすれば出来るだけ、急いだ方が良いな」 朱華(ib1944)は捜索の為に甲龍・梅桃を連れてきていた。開拓者全員が龍を連れてきているので一度に確認できる捜索範囲は広げられそうである。 「遭難者ねぇ。見つけるの大変そうだね」 ラッチ・コンルレラ(ib3334)は椅子の上に立ち、地図に描かれてあった枠を指先でなぞってみた。 それは漁師仲間がこれまでに捜索を終えた範囲。複雑な海流だとすればその範囲に戻ってくる可能性もなきにしもあらずなのだが、相談の上で捜索から外して構わないと判断された。 「水の確保出来ていればまだまだ可能性はある。何とか間に合わせたいもんだな」 将門(ib1770)は乗船してくれた漁師に遭難地点付近の潮の流れについてを訊ねてみる。近くにある潮の流れは一つだけなのだが、そこから先については季節によっても変わってくるという。少し先の近接する潮に移る場合もあるが、そのまま乗り続けて遙か遠方に流されているかも知れなかった。こればかりは実際に目で確認するしか方法はないらしい。 「もう一つの近接する潮の流れはかなり緩やかなのだな? こちらについては捜索の漁師達に任せてはどうだろう?」 「飛空船の方が遠くに行くの有利ですからね。食料も水も無く海上を漂っているなら、早く見つけないと本当に危険ですし」 オラースとペケ(ia5365)のやり取りを聞きながら李鳳が胸の前で腕を組む。 「そうね。捜索がしやすい方の潮の流れは漁船等に任せましょ。あたしたちは遭難者達が潮に乗って遠くまで流されている場合を想定しましょうか」 一度、王輝風と視線を合わせた李鳳は意見を口にする。 「海賊や空賊に襲われたという可能性もあります。普段起こらないことが起きたと言う事に違いないですからね」 壬護 蒼樹(ib0423)は難破の原因が自然災害とは別にあるかも知れない可能性を指摘する。 「壬護さんのいう通り敵は自然だけではないかも知れないわ。その点も留意して事に当たりましょう」 壬護蒼樹に李鳳が頷いた。 開拓者達は遭難現場周辺に辿り着く少し前から捜索活動を開始する。行動は大きく二つの行動に分かれていた。 船の各部に分かれて海面へと目を光らせたのは、翔速号班の滝月玲、ペケ、オラース、壬護蒼樹の四名。龍で翔速号と併走しながら探す龍班は柊沢霞澄、将門、朱華、ラッチの四名。翔速号班の面々も龍を連れてきていたのでいざという時には広範囲の捜索が可能である。 「さすがにもう木片は残っていないみたいですね」 遭難現場上空に到着すると響鈴が操縦室の船窓から海を見下ろす。 時刻は夕暮れ時。景色が赤紫に染まる中、龍班の四名が波飛沫を浴びながら飛んで念の為の確認を行う。 乗船の漁師に海流の流れに変化がないかを確かめてもらったところで日は落ちる。夜間の捜索は危険を伴い、なおかつ遭難者を見逃す可能性が高いので行わない約束になっていた。 高度を保ちながら翔速号はゆっくりと現場上空を旋回飛行する。 王輝風が操縦して李鳳が補助をする体制に見習いの響鈴が加わったおかげで、連続飛行は大分楽になる。とはいえ操縦経験がこれまでにまったくない響鈴なので、完全に任せるには不安が残った。 「何かあったらすぐに起こしてね」 「は〜い♪ 了解しました!」 横になろうとする王輝風に響鈴が元気よく返事をする。不意の事態でも対処出来るように王輝風は操縦室の片隅で眠りに就くのだった。 ●潮の流れ 翌朝から海流に沿っての本格的な探索が開始された。 海流にはある程度の幅があるので龍班が一緒に飛んでくれていたとしても、真っ直ぐ進んでいてはすべてを見渡すのは不可能である。そこで海流の両端を境界にして王輝風は翔速号をジグザグに飛ばす。 「一緒にがんばろう‥何かあったときは教えてね‥」 炎龍・紅焔に声をかけながら柊沢霞澄は潮目に注意して飛ばした。特に注意していたのは木片の存在。遭難者も木片も似たような経路を辿っている可能性が高かったからだ。 「合図にも注意しないとな」 将門は甲龍・妙見を少々高めに飛ぶように操る。鮪漁船に積まれていたという小舟も探したが狼煙や光などの合図がないかにも注意する。島ともいえないような岩礁で合図を必死に出しているかも知れなかった。わずかな救難の報せも見逃さないように将門は眼を開く。 「地図上の通り、この周辺に島はないようだな。数時間後にもう一度探してみよう」 朱華は甲龍・梅桃で可能な限りの高度まで上がって島がないかに注目する。 「今のは跳ねた魚みたいだね」 ラッチは駿龍であるニサッチャオプの速度を活かして満遍なく翔速号の進路方向の海をなぞる。眼下の海には注意してわずかな変化も見逃さなかった。 一方、翔速号班も船内からの監視を続けていた。 「動くものや光るもの‥‥。それにしても波が穏やかでよかったな」 滝月玲は甲板後部展望室から海面を眺める。いつでも飛び立てるように甲板に炎龍・瓏羽を待機させながら。 「居ませんねぇ。では遠くばかりでなく真下の確認も‥‥」 ペケは甲板から身を乗り出しながら眼下を眺める。 「あ!」 その時、縁についていた膝が滑って真っ逆様。甲板の出っ張りに引っかかって残った褌が風に棚引く。 イルカの大群を見つけて驚いて落ちてしまったペケだが、何とか船体から伸びる棒に掴まって事なきを得る。とはいえ下半身すっぽんぽんで落下する姿を船窓越しだがオラースに見られたようだ。 「今のは‥‥。おそらく目の錯覚だな。そうに違いない」 気を取り直したオラースは海面に浮かぶ漂流物の一つ一つの意味を考えながら遭難者を探す。 (「きっとお腹空かせているでしょうね。なんとしても連れ帰りたいですね‥‥」) 船倉下展望室にいた壬護蒼樹は乗船の漁師から聞いた遭難者達についてを思いだしながら船窓を覗く。遭難中に誕生日を迎えた者もいるらしく家族も憔悴しているようだ。早く助けてあげたいと壬護蒼樹は心の中で呟くのだった。 ●波間に漂う小舟 「発見しました! 南西の方角に小舟らしき影があります」 朱春を離陸して三日目の暮れなずむ頃。船倉下展望室にいた壬護蒼樹は伝声管を使って報告する。その声は船内全体に伝わった。 操縦する王輝風は李鳳の指示と同時に翔速号の進路を小舟へと変更する。 「いくぞ」 甲板後部展望室にいた滝月玲は甲板の炎龍・瓏羽に飛び乗って単独で空へと舞い上がった。呼子笛を吹き鳴らすと離れていた龍班の四名も気がついて滝月玲と共に小舟へと向かう。 龍に乗る五人は慎重に低空を飛んだ。波が荒れていて不用意に近づくと接触する可能性があった。小舟に乗る遭難の漁師達は誰もが力無く倒れ込んでいた。 「大丈夫か!」 朱華が叫んだが反応はない。だが繰り返すうちに一人の手がわずかにあげられて振られる。 「もう少し左さ」 ラッチは両手を振って降りてくる翔速号に合図を送る。 「かけ声いきますね!」 「任せた!」 後部甲板扉が開くと、船内に残っていたペケ、オラースが姿を現す。壬護蒼樹も駆けつけて投げた縄で小舟を引き寄せる形で翔速号へと収納する。 助け出された漁師は六名。酷く衰弱してはいたものの全員が生きていた。ただ遭難したのは十一名と聞かされていたので残る五名がどうなったのかを翔速号の一同は心配する。 意識がある一人の遭難した漁師に訊いてみると、鮪漁船が難破した直後に小舟二艘に分かれて脱出したのだという。途中までは一緒だったものの、ある日の朝に起きてみるともう一艘が消えていたそうだ。食料も水も尽きてから三日が経過していたらしい。 飛空船らしき船体の一部が海上に浮かんでいて、それに衝突してしまったのが直接の遭難原因だと漁師は語る。 「私が世話をさせて頂きます‥」 柊沢霞澄はさっそく閃癒で体力の回復を図る。とはいえ身体そのもののが衰弱しているので引き続き安静が求められた。しばらくは付きっきりだ。 「もう安心してくださいです〜」 響鈴も救助した漁師達の世話をする事となる。 「後の五名はどこにいったのか‥‥」 船内に戻っていた将門が唸る。 潮の流れに詳しい漁師によれば、今回救出した小舟は海流からわずかに外れた位置で漂っていたようだ。もう一艘は潮の流れに乗ったままに違いなかった。 早くに捜索したい気持ちにかられた翔速号の一同だが、日が沈んで待機の時間となった。 ●残る五人は何処に 翔速号の一同は救出した漁師六名の証言と潮の流れを念頭にいれて残る遭難の漁師五名が漂っていそうな海域を絞り込む。その範囲には無人島が存在しており、真っ先に向かう事にした。 「あれ?」 「なんでしょう‥」 四日目の昼前。龍班の四名は遠方の無人島近くに浮かぶ船を発見する。それは小舟ではなく中型以上のもので飛空船らしき船影をしていた。 翔速号は高度をとった形で無人島の上空を通過する。海上を浮かぶ飛空船には気づかぬふりをして。 船倉下展望室に集まっていた翔速号班の四名は無人島とその周辺海域を凝視した。 「あれってもしかして空賊か海賊?」 「そうだろうな。髑髏の旗を靡かせている漁船なんていないだろう」 ペケとオラースは通過した後で海上の飛空船についての情報を再確認する。 「島は小さいですが木々が育っている様子からも水源はあるようですね。空賊か海賊が根城にしているのかも。一時的な立ち寄り所かも」 壬護蒼樹は無人島全体に注目して脳裏に焼き付けていた。 「小舟が一艘砂浜に打ち上げられていたような‥‥。だとすれば遭難の漁師達が上陸しているのかもな」 滝月玲が見かけた砂浜の小舟は、海上に浮かぶ空賊らしき中型飛空船からそれほど離れていなかった。 遠巻きから眺めていると空賊らしき中型飛空船は浮上し、島の海岸部へと着陸する。海に浮かんでいた理由は魚釣りの為であろう。それらしき様子も確認されていた。 「夜は捜索しないと決めたけど確定的な場所がわかった以上は構わないわよね?」 李鳳が確認をとると反対する開拓者はいない。さっそく夜陰に紛れての無人島上陸の作戦が練られるのであった。 ●救出作戦 龍への二人乗りは非常に不安定で襲われたら一溜まりもなかった。そこで積んでいた小舟を翔速号班の四名が龍に縄で繋いで引っ張って島まで運ぶ事になる。幸いなことに海面の一部が光っていたおかげで無事にたどり着けた。海中に漂う非常に小さな生物が光っているらしい。 介護の為に翔速号へ残った柊沢霞澄を除く龍班の三名は先に低空で無人島へと上陸し、遭難の残る漁師五名を探す。龍に乗ったままでは目立ちすぎるので降りて自らの足を使って 無人島の広さはそれほどではないので簡単に見つかりそうであったが、逆をいえば空賊にいつ接触してもおかしくはない状況ともいえた。それは遭難の漁師五名にもいえる事でもある。 将門が茂みの中で倒れていた漁師二名を発見した。 ラッチは木の上に登って隠れていた漁師二名を見つける。 船長を追いかけて掴まえたのは朱華である。暗かったので空賊か海賊に間違えられたようだ。小声で助けに来たのだと説明すると船長が落ち着きを取り戻す。 漁師五名が小舟に乗ったのを確認すると翔速号班の四名はゆっくりと引っ張って沖へと移動させる。無人島から少し離れたところで翔速号が海面に降りて漁師五名を乗船させる。 さすがに騒がしかったようで空賊らしき飛空船が気がついて動き出す。充分な距離があるので大丈夫なはずであった。故障さえなければ。 調整が完璧でなかったせいか、翔速号は姿勢制御に支障をきたす。あまりに不安定で飛行速度をあげることが出来ない。無理をすると空中分解してしまう危険があった。 操縦席を李鳳に任せた王輝風は調整をしに各部を回る。壬護蒼樹と滝月玲は王輝風を手伝う。 柊沢霞澄と響鈴は引き続き遭難していた漁師達の治療をする。 ペケとオラースは時間稼ぎをする為に龍で飛びだした将門、朱華、ラッチと合流し、空賊らしき飛空船を翻弄し続ける。 翔速号が海面から飛び立ってから約二十分後。再調整が功を奏して姿勢の安定を取り戻す。即座に龍に乗った開拓者達を収容して全速力で無人島周辺から離脱する。 無人島で発見された漁師のうちの二名は衰弱が激しかったものの看病のおかげで何とか持ち直す。 翔速号はそれから約一日後に朱春へと帰還するのだった。 ●そして 救出された漁師十一名は診療所へと移送される。早めに家族や恋人の再会も果たせたようだ。二週間もあれば全快できるようである。 無人島で空賊の会話を耳にした漁師によれば、どうやら鮪漁船が難破した原因も間接的に奴らのせいであったようだ。鮪漁船が難破した海域の上空で飛空船を襲って墜落させたと話していたという。ぶつかった残骸は空賊が落とした飛空船だったのかも知れない。 全員を無事に救出できた事を喜びながら開拓者達は神楽の都へと戻ってゆくのだった。 |