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■オープニング本文 朱藩の首都、安州。 海岸線に面するこの街には飛空船の駐屯基地がある。 開国と同時期に飛空船駐屯地が建設された事により、国外との往来が爆発的に増えた。それはまだ留まることをしらず、日々多くの旅人が安州を訪れる。 そんな安州に、一階が飯処、二階が宿屋になっている『満腹屋』はあった。 「はい。海老丼ですね。少々お待ちを〜♪」 一階の飯処で給仕をする娘の名は智塚光奈という。 大きな瞳に笑顔。ジルベリア風に後ろでまとめられた黒髪が彼女の動きに合わせて揺れていた。 料理の注文を受けては裏手の調理場の前で料理名が書かれた木札を鈎にぶら下げる。これを見て板前の『智三』と見習いの『真吉』は次々と料理を仕上げてゆく。 「お待たせしましたわ」 もう一人の給仕は光奈の三歳年上の姉『鏡子』である。 ちなみに二階の宿屋は光奈と鏡子の父と母が切り盛りしていた。父の名は『義徳』。母の名は『南』という。 昼時の忙しい時間が過ぎ去り、ようやく一息つけるぐらいに空いてきた。 「ふう‥‥。さてと‥‥これなんなのでしょ?」 裏手で光奈は常連のお客からもらった壷の蓋を開ける。 「お醤油? ではないようね。色は黒いけれど香りが違いますわ」 鏡子が壷の中身を少しだけ小皿に取りだす。 「どうした? お嬢ちゃん達」 智三もやってきて黒い液体に興味を示す。 「ジルベリアの『そ〜すぅ』っていったのですよ。これをくれたお客さんは」 「そりゃソースだな。とはいえソースっていうのはたくさんの種類があるらしいや。ちょっと舐めてみるか」 光奈と智三は小皿からソースを指先で掬って口に運んだ。鏡子はにこりとしたまま二人の様子を眺め続ける。 「しょっぱいけど、お醤油とは違う‥‥なんだかクセになりそうな味なのです。それにこの鼻に抜けてゆく香りもとてもいいのですよ‥‥」 「そうだな、光奈嬢ちゃん。とても変わっているが、いい調味料だ。こりゃ」 光奈と智三が何度も舐めて確かめる。 「本当に独特なお味ね」 ようやく舐めた鏡子も二人に同意した。 「これで面白い料理が出来るかも知んねぇな」 「わたしもいろいろと挑戦してみてみる‥‥あ、いろんな土地にいっている開拓者にも聞いてみよ〜と」 光奈は安州内にある開拓者ギルドを訪ねてみようと決めた。 「お、親方、皿洗い終わりました」 調理場から届いた小さな声は真吉のものだ。 「おう、わかったぜ。次は夕方の仕込みに野菜を切っておきな。ということで嬢ちゃん達、仕事に戻るぜ。俺も考えてみるわ」 智三が調理場に消え、光奈と鏡子は店内へと戻る。 その日の夕方、光奈は開拓者ギルドを訪れた。そしてソースを使った料理を開拓者に相談したいと依頼を出したのであった。 |
■参加者一覧
樹邑 鴻(ia0483)
21歳・男・泰
樹(ia0539)
21歳・男・巫
王禄丸(ia1236)
34歳・男・シ
設楽 万理(ia5443)
22歳・女・弓
藍 舞(ia6207)
13歳・女・吟
からす(ia6525)
13歳・女・弓
瑞乃(ia7470)
13歳・女・弓
趙 彩虹(ia8292)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●壷の中身 朱藩の首都、安州。 まだ外は暗く、満腹屋の一階飯処の出入り口は閉め切られている。だが店内には神楽の都からやってきた開拓者達の姿があった。 卓の中央に置かれた壷。 何人かは椅子に座り、また何人かは立ったまま壷を眺める。 「それでは味を確かめてもらうのですよ。これが『そ〜すぅ』なのです〜」 智塚光奈が壷の中から柄杓で黒い液体を柄杓で掬って小皿に取りだす。少々の粘りけはあるものの、一見するだけでは醤油のように見える。 「料理好きとして未知の調味料には興味深々ですね」 趙彩虹(ia8292)は借りた箸の先につけてソースを口に運んだ。 「これが『そ〜すぅ』? 匂いは俺好みのようだが‥‥」 まず小皿に鼻を近づけて香りを確かめたのが樹邑 鴻(ia0483)である。 「そ〜す? 初めて聞くよね、どんなのかな〜」 樹(ia0539)はわくわくしながら指先で掬ってから舐めた。 「‥そーす? ま、なんでもいいや。試食の名目でおいしいものを‥‥けふん」 最後にいった本音を誤魔化しながら瑞乃(ia7470)も舐めてみる。肉類に合いそうだが、せっかく海に近い安州の地なので魚介類を使いたいと思った瑞乃だ。 「つまるところ、醤油の亜種なのだろう?」 ためらいもなく、さっと指先につけて味を確かめたのは王禄丸(ia1236)。 「舶来品の調味料ねぇ‥‥。匂いがいいわね。醤油よりは辛くないから量は多めに使えるかしら?」 設楽 万理(ia5443)は感想を言葉にしながら何度も確かめる。 「これがソース。様々なものに使えそうな良調味料。では、さっそく料理を考えよう」 からす(ia6525)は想像を巡らせてどんな食材が合いそうかを思い浮かべていた。 「こういう味‥‥いろいろ試してみるのがよさそうだわ」 藍 舞(ia6207)はまず魚介類を試してみようと考えていた。とはいえ他にもいろいろと試行錯誤として試してみるつもりである。 「そろそろ店の準備に入るんで、そこんとこよろしく頼むわ。昼飯と夕飯の頃を外してもらえれば、調理場は使って構わねぇよ」 智三がやってきて試食作りに関して注意を告げた。まずは食材探しをと開拓者達は町中に散らばるのだった。 ●豊富な食材 「あ、合うわね、揚げ物にもご飯にも」 一人店内に残った設楽万理は満腹屋の料理にソースを試していた。邪魔にならないように他の客と同じものを注文しながら。 「これくださいな」 笑顔を振りまきながら、からすが買い集めた食材は豚肉と野菜類。そして烏賊や牡蛎である。 「たまねぎをたくさんっと‥‥」 瑞乃はたくさんの玉葱をカゴに入れる。やはり海産物もかかせないということで牡蛎、鮹、鮪切りも。後は牛肉を買って満腹屋に戻った。 「普段食べないような雑魚や解体された残り肉で良いから、とにかくの多種多様の魚をそろえたいのだけれど手伝ってくれる?」 「わかったのですよ〜♪」 藍舞に頼まれて光奈も買い物につき合った。たくさん買うので荷物持ちとして樹邑鴻も同行してくれた。いろいろな種類の肉、そしてあまり世間では見られない魚を多種手に入れる。 「なぁ、おっさん。こんだけ買うから、少し安くしてくれないか?」 樹邑鴻も自分の分として食材を買い求めた。旬の魚や貝類、さらに牛肉少々とジャガイモなどだ。 「はじめましとぇ! 樹の巫女です。不束者ですけどお願いします」 緊張に舌を噛みながら樹は鏡子に挨拶をした。言葉の意味もヘンテコだが、そこはご愛敬だ。 「よろしくですわ。光奈の姉、鏡子といいます。どうぞ、調理場はこちらですので」 鏡子はくすくすと笑いながら樹を案内するのだった。 「さて、こんなものでいいだろう」 満腹屋に戻ってきた王禄丸が購入してきたのは納豆、鶏卵、魚類。一般的に醤油をかけて頂くものばかりだ。 「んー、未知の調味料との戦い‥‥。わくわくしますね♪」 王禄丸と一緒に戻ってきたのが趙彩虹である。抱えていた食材は主に泰国料理に関係するもの。炒飯と煎餃子の材料だ。 それぞれソースに合う食材、新たな料理を探す探求の時が始まるのだった。 ●王禄丸の挑戦 「納豆は‥‥駄目だな」 店内の片隅で醤油代わりにソースをかけて試食していたのが王禄丸である。顔をしかめながらソース味の納豆をかけたご飯を胃に掻き込む。 「目玉焼きはいけるのですよ。お醤油と甲乙付けがたい感じなのです」 「どれ、うむ。これは、なかなかだな」 仕事の合間に光奈も座って試食のお手伝いをしてくれた。 焼き魚に関しては白身魚にソースはとても合う。赤身は好みもあるだろうが、どうも合わない気がした。 さらなる挑戦として鍋物も用意してみる。 「色合いが‥‥なんとも言えんな。とにかく喰ってみよう」 煮込みの最後にソースを入れてから王禄丸は頬張った。一緒に食べ始めた光奈の顔色が見る見るうちに青くなってゆく。 「‥‥満腹になる前に美味いものにありつかんと、割に合わんな」 すべてを食べ終わった後に王禄丸はぽつりと呟く。 その後は揚げ物を作る仲間と一緒に行動した王禄丸であった。 ●設楽万理の挑戦 満腹屋の料理でソース試しを行った設楽万理は、揚げ物や天ぷらなどの油を使う料理に的を絞っていた。海老丼にソースを使った料理が美味しかったからである。 海老や貝、鮹を用意してかき揚げを仕上げる。 「胸焼け防止のキャベツを食べやすいように刻んで‥‥」 千切りキャベツとかき揚げを、御飯入りの丼にのせてソースを満遍なくかける。 「そ〜すぅかき揚丼の完成だ!」 「わぁ〜い!」 側にいた光奈が設楽万理に拍手を贈る。 「完成したようだな」 食材集めに協力した王禄丸も『そ〜すぅかき揚丼』に注目する。 光奈と王禄丸も一緒に頂いてみた。 「揚げ物のサクサク感とキャベツのシャキシャキ感がそ〜すぅの芳醇な味わいの下で引き立て合いそれでいてお米の食感も殺さない、まさに味の上級アヤカシだわ〜」 一気に食べ終わった設楽万理が瞳をお星様のように輝かせた。 「これはいけるな」 「美味しかったのですよ〜」 光奈と王禄丸も、その味に満足するのだった。 ●樹の挑戦 「いただきまーすー」 「あら? ソースは使わないのかしら?」 店内の椅子に座った樹に鏡子が首を傾げる。魚の塩焼きとご飯だけで、卓の上にはソースがなかったからである。 「そ〜す使うんだよね‥‥。ちゃ、ちゃんと覚えてるよ」 忘れていた樹は急いで調理場からソースを持ってくる。そしてドバッとかけてみた。 「それじゃぁ‥‥。うっ‥うううう」 口に入れた途端、目をグルグルとさせた樹。その光景はすでに他の開拓者達によって繰り返されたものだ。とはいえ、自分で試してみなければ真実はわからない。 急いで食べ終わると樹は店の裏に駆けてゆき、自らに解毒をかける。決して毒ではないのだが気持ちの問題だ。 他に饅頭の皮へ練りこむ醤油の代わりにソースを使ってみた。だがこちらも大失敗に終わる。 「おせんべいも醤油を塗って焼くよね‥‥。大丈夫かな」 樹はソースを塗った煎餅を焼く。恐る恐る口に運んだが、これはとても美味しかった。 急いで鏡子を探しだし、樹はソース味の煎餅を勧めてみる。 「これは美味しいわ。とっても」 鏡子の言葉に喜んだ樹は、店の者や仲間達にもソース味煎餅を配るのであった。 ●からすの挑戦 「なんか、開拓者料理バトルになってるね」 満腹屋、片隅の卓。お茶で喉を湿らせてから、からすは自らが調理した料理の試食を始める。 「豚肉とは合う、ということか」 炒めた豚肉を卵で閉じてソースを塗り、千切りキャベツの上にのせた豚玉は結構美味しい。 「こういうやり方なら醤油と大差なく美味しいものとなるのか」 次はソース味の野菜と魚介炒めである。魚介のみだときついが緩衝となる野菜があるとソース味が程良くなる。 最後は牡蛎や魚介の天ぷらにソースをかけて頂く。 「これは特に好みに左右されるね」 美味しいと思う者もいればそうでない者もいるだろうと、からすは想像した。 「美味しそうなのです。少しもらってもいいのです?」 お腹を減らした光奈がやってきて、途中から一緒に食べ始める。光奈が自分と似た意見をいってくれてからすは自信を深めた。 ●瑞乃の挑戦 「たまねぎは皮ごと網焼きっと‥なんかおおざっぱに思われそうね」 満腹屋の裏口付近。瑞乃は網の上で玉葱を丸ごと焼いていた。 最後に焼けこげた皮を剥いて鰹節とソースをかける。 「これで『やきたまそーすがけ』の出来上がり! さてとあれ?」 瑞乃がさっそく試食をしようとした時に人影が見える。よく見れば見習いの真吉であった。 「一緒に食べてみる? 味はわからないけど」 「い、いいんですか。僕でも」 真吉を呼び寄せて瑞乃は一緒に試食する。外側は結構美味しいのだが、中心部が生焼けでこればかりは頂けない。 「あの、この鉄蓋を被せて焼いてみたらどうでしょう?」 「あ、いいかも。蒸し焼きっぽくなるかな」 二度目の挑戦では玉葱の芯の部分にまで火が通る。ソースもとても合って美味しく頂けた。 次に挑戦したのは牡蛎だ。 「牡蠣もそのまま焼いて玉葱のみじん切りを‥‥火が通ったら殻にそーす‥‥」 網の上で牡蛎を殻ごと焼き、玉葱の微塵切りをかける。さらに油とソースを垂らして煮込むよう焼き上げた。 「命名、『牡蠣が溺れた! そーすの海で!』。頂きます!」 こちらは一発で美味しいものが出来上がる。 「さて大物! まずはお鍋の準備ね。これは作りながら食べてもらうのが一番かな」 試しに作ってみた鍋はとても美味しく感じられる。 ソースを出汁として扱い、お酒と水で割って鍋に張る。沸騰したら薄切りにした蛸、鮪、肉を鍋の中で泳がせて頂く料理だ。 最後には御飯を入れて雑炊で締める。 試食で満腹になり、真吉と二人で笑った瑞乃であった。 ●藍舞の挑戦 ジュッと焼ける音が満腹屋の裏口付近で鳴る。 瑞乃とは別の日に藍舞は鉄板焼きを行っていた。 焼かれていたのは肉や魚。ソースで味を付けて出来上がりである。 「さてどんな感じに‥‥」 「焼き魚とは少し違う感じですね」 藍舞は匂いに誘われてやってきた光奈と一緒に試食をした。途中で智三も現れる。 どちらかといえば淡泊な味の食材に合うのだが、一概に絶対とも言い切れなかった。変わったところでは熱でとけた肉の脂身がソース味と合っている。ただ、これだけをたくさん食べるとくどいので料理としては成立していない。 「み、水!」 時にはきつい味に倒れて光奈に水を求めた藍舞だ。 わかったのは鶏肉とソースの相性の良さである。 藍舞は鶏のむね肉をあらためて買い求めてソース味でまとめてみるのだった。 ●樹邑鴻の挑戦 「とりあえず、魚介類の下ごしらえを手早く済ませてしまおう」 樹邑鴻は研ぎ終わった包丁で魚を捌いてゆく。口直し用として白身の魚の刺身の用意を忘れずに。 最初に作ったのはブリの煮付け。醤油の代わりにソースを使ってみる。 次は牡蛎焼きとホタテ焼きだ。貝殻が開いたところにソースを一垂らしずつ。 カニの吸い物の味付けにもソースを。止めに肉じゃがにもソースだ。 「何というか――未知の領域への冒険と大差無いな、これは」 出来上がった料理が盛りつけられた皿や器をじっと眺める樹邑鴻。 「モノによっては勇気が試されそうだな、これは‥‥。胃袋は頑丈な方だからな、大丈夫。‥‥‥‥たぶん」 一人、調理場で試食を躊躇っていると光奈が姿を現す。 「あ、出来上がったのですか〜♪ 任せて下さいな」 光奈は料理の皿をお盆にのせて客が引けた店内に運び始めるのだった。 ●趙彩虹の挑戦 そしてみんなで 「先に頂いていて下さいね。すぐに持ってきますので」 空いた調理場に飛び込んで一気に料理を仕上げたのは趙彩虹である。 仕込みは既に終わっていた。食材の油通しを行い、最後に強い火力で一気に仕上げる。 「はい、出来上がり。ソース炒飯に煎餃子のソース掛けです!」 料理が盛られた皿を両手にもって趙彩虹が現れる。 光奈と鏡子も料理運びを手伝ってくれた。 「いい香りなのですよ〜♪」 光奈は炒飯をレンゲで掬う。具は野菜の細切れに烏賊。それに鶏卵が加えられている。 「こちらもいい感じですわ」 鏡子が箸でとった煎餃子は揚げ焼きにされたものである。餡は豚挽き肉に白菜で作られていた。 他の開拓者達が試行錯誤してきた料理も並ぶ。 「さすがにそれほどでは‥‥あったようだな」 樹邑鴻は自分の料理で築かれた犠牲者の山を見ながら肉じゃがを食べて呟く。ソースを垂らした牡蛎焼きとホタテ焼きを除けばどれも酷い出来である。その後、口直し用の刺身は綺麗に平らげられた。 「お、美味しいと思うけど」 樹はソース味煎餅をみんなに食べさせた。とても好評で首を傾げる者は一人もおらず、持ち帰りたいとの声があがるほどであった。ちなみに光奈は自分の分をキープ済みである。 「そ〜すぅかき揚丼はいけるのです〜」 「美味しいでしょう!」 光奈は設楽万理が作ったかき揚丼がお気に入りだ。 「お、ここにあるのは‥‥。これもおいひぃ〜のです」 小皿にのったソース付きの天ぷらを見つけて光奈が頬張る。それは王禄丸が内緒で用意した烏賊の天ぷらにソースをつけたものだ。 (「自己満足であろうと、食には感謝をしよう。つまるところ‥‥失敗作は自己責任だ」) 無惨に散っていった失敗作を思い浮かべながら、唯一成功した烏賊の天ぷらに感謝する王禄丸である。 「『牡蠣が溺れた!そーすの海で!』をどうぞ!」 瑞乃も自信作を披露する。牡蛎料理はたくさんあったが、瑞乃のが一番美味いと好評で終わった。反面、鍋の評判は芳しくなかったが。 それでも仲間達の料理が食べられて満足げな瑞乃だ。 「鉄板焼きには、まだ可能性が残っていると思うわ」 鶏の胸肉ソース和えを出した藍舞は鉄板焼きに未練があった。特に脂とソースがからまった味は捨てがたい。とはいえ未完成であるのは否めない。 「いかがだろうか?」 からすの野菜と魚介のソース炒めも、おかわりが出るほどに好評であった。ソース味の豚玉、烏賊焼き、天ぷらも食べ残した者はいない。 「悩むな‥‥」 「うむぅ〜〜」 智三と光奈が相談した上で、満腹屋で作りたい料理は『ソース炒飯』『そ〜すぅかき揚丼』『そ〜す煎餅』『野菜と魚介のソース炒め』となる。 ただお客さんからもらったソースなので、今後どのように手に入れるかが問題として残る。事実、壷のソースは四分の一以下に減っていた。 「でも、そ〜すぅをくれたお客さんはよく来るので、きっとまた入手できるのです♪ その時まで賄い料理として楽しませてもらいま〜す〜」 光奈の食いしん坊宣言に一同は笑った。 そして翌朝、開拓者達は神楽の都へと帰ってゆくのだった。 |