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■オープニング本文 ※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。 ※このシナリオ内での朋友はすべて人の大きさに近いサイズになっています。例えば龍は全長二メートル弱、羽妖精は一・五メートル前後。飛行能力などはそのままです。 グライダーや駆鎧などはかなり擬人化させます。 どの朋友も人語で会話しますし飲食も可能です。 神楽の都にも枯れ葉散る季節が訪れる。 朋友達は主人が受けた依頼に同行しないとき、よく集まってお喋りをしていた。依頼の旅での出来事や戦闘での活躍など話す内容が尽きることはない。 普段集まっているギルド所有の空き地にはたくさんの広葉樹が植えられている。この季節になれば落ち葉の絨緞状態である。 朋友の誰かがいった。普段場所を使わせてもらっているので、せめてもの礼として落ち葉を集めて掃除をしようと。 別の誰かがいう。せっかくなので落ち葉で焚き火をする際に焼き芋をしないかと。 さらに別の誰かが提案する。おそらく今晩の深夜に主人達が戻ってくるので、一緒に食べられたらなあと。 朋友一同はこれからどうすればいいのか流れを決める。 日中は空き地の枯れ葉を集めつつ、誰かがサツマイモを入手。日が暮れてきたら焚き火を開始。そして真夜中の零時過ぎに食べられるよう焼き芋を焼く。 主人の開拓者達と一緒に焼き芋を楽しむべく、朋友達は動き出すのであった。 |
■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)
18歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
和奏(ia8807)
17歳・男・志
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓
小苺(ic1287)
14歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●落ち葉 仲間での話し合いの結果、すごいもふら・もふ龍と上級迅鷹・ヴァイス・シュベールトがサツマイモの購入係と決まる。 『芋の調達はもふ龍に任せるもふ〜☆ ご主人様が懇意にしている牧場で確か甘藷を作ってたもふから、もらってくるもふ〜☆』 『では我は一っ飛びして市場で買ってこよう。違う畑で穫れた芋を食べ比べるのも一興だからな』 もふ龍とヴァイスが張り切って出かけようとすると、又鬼犬・桃が急いで呼び止めた。 『あの、家で留守番をしている弟分の雪夜にもサツマイモを食べさせてあげたいのです。余分に購入して頂けると嬉しいのですが、お願いできますでしょうか?』 もふ龍とヴァイスは桃の願いを快諾。仲間全員がおみやげで持ち帰れるぐらいの量を買ってくると約束する。 『もふ〜♪』 もふ龍は落ち葉を土煙のように巻き上げながら空き地から姿を消す。 『では』 ヴァイスは近くの樹木の枯れ葉を落としつつ上昇して大空の点となった。 『落ちかけの葉は少し揺らして落としてしまいましょうか』 桃は樹木が数多く自分の正面に入るよう調整する。そしてなるべく声を絞って咆哮烈を放った。 震えた樹木の枝から落ち葉が一斉に舞い落ちる。風に乗る紅葉が綺麗で空き地の朋友達はしばらく目を輝かせて眺め続けた。やがて掃除に取りかかる。 戦馬・夜空は熊手を体に取り付けて四つ足で歩いた。人のように立っても歩けるのだが、やりやすい方法を選択したのである。 『なんだか慣れませんね‥‥』 しかしいつも背中に乗せている主人の篠崎早矢(ic0072)がいないと、どうにも落ち着かない。余計なことを考えていると知らぬ間に落ち葉を口にしてしまう。草を食べる習慣からだ。 さすがに枯れた落ち葉は美味しくはなかった。ちなみに掃除が終わるまで五回は枯れ葉を口に含んでしまう夜空であった。 銀灰色毛に虎縞模様の猫又・焔雲は熊手を口に銜えて空き地を元気に駆け回る。 『なんだかふわふわしているな』 何ともいえず走り心地がよい。よく落ち葉の集まりを絨緞に喩えるがまさにそのものだ。不意に滑って落ち葉の中に埋まうと暖かくて焔雲の両瞼が落ちてくる。 (「これは‥‥まずい」) 焔雲は誘惑に打ち勝ち、落ち葉の中から這いずり出た。 上級人妖・光華はわずかに箒を動かしながらぼうっと秋空の鱗雲を見上げていた。彼女のほんのわずかな周りだけ落ち葉が退かされて土が露わになっている。 『お芋は美味しいけれど、銀杏や栗とかトウモロコシも焼いちゃダメかしら‥‥』 光華が今晩帰ってくるはずの和奏(ia8807)のことを思い出していると、ふと仲間達の視線が気になる。正確にはそう光華が感じただけなのだが。 『もしかして、掃除も出来ない女だと思ってるワケ? 出来ないんじゃないわ、や・ら・な・い・の!』 ぷんぷんの光華にぶんぶんと顔を横に振る仲間達。 『‥‥何よ、その目は‥‥。嘘だと思うならちょっと見ていなさい!』 光華が使った人妖の掃除術はすさまじかった。彼女の周囲にあった落ち葉がわずかな時間で集められて人の背丈ほどの山となる。仲間達からは驚きの歓声があがった。 その後、光華は一人で市場へと向かう。 『ねえ、栗の袋ふたつ買うから、ちょっとおまけしてよ』 甘上手で店番を惑わせ、値引いてもらうしっかり者の光華であった。 ●焚き火 『コウノトリ?』 『いや、おそらくヴァイス様でしょう』 夜空と桃が空を飛んでいる不思議な影に気がついた。 よく見れば首に大きな袋を引っかけた迅鷹のヴァイス。袋の中身は市場で手に入れたサツマイモである。 『これだけでは足りなそうだが、もふ龍が買ってきてくれれば問題ないだろう。‥‥ん? 準備はまだ終わっていなかったか。少し早すぎたか‥‥どれ、では掃除も手伝う事にしよう』 胸を張ったヴァイスは箒を手に取って落ち葉集めを手伝う。 夕暮れ時。掃除が終わろうとしていた頃、もふ龍が巨大な風呂敷包みを背中に担いでよろよろと戻ってくきた。 『もふ〜大漁もふ〜☆』 笑顔でぱたっと倒れるもふ龍の風呂敷包みからサツマイモがこぼれる。 『焼き芋に一番良いって言うのを貰ってきたもふよ〜☆ もちろん、数日おいて熟成させてあるもふよ〜♪』 もふ龍が手に入れてきたサツマイモは丸っこい感じである。 『これで揃ったな』 かたやヴァイスのサツマイモは長細かった。 『芋を洗って土を落とすもふ〜♪』 もふ龍が気合いを入れ直す。わずかに残る落ち葉を掻き集めたら、全員で井戸端に移動してサツマイモを洗う。 『穴をあけないと爆発するっていってたけれど‥‥面倒くさいわね』 光華はサツマイモの他に栗も軽く洗った。そして包丁で殻に穴を開ける。 空き地に戻った一同は焚き火の準備をした。 桃が近所で譲ってもらった燃えさかる薪を銜えて戻ってくる。これさえあれば後は簡単。落ち葉に移して火を大きくするだけだ。火は炎となって辺りを照らしだす。 『これはよいな』 焔雲は焚き火近くの岩の上で丸くなった。日が沈んで大分寒くなってきたが、これならば十分な暖かさである。 『焚き火の番は任せてください』 桃は適度に炎の中へと落ち葉をくべてくれた。今ならまとめて落ち葉を入れても消えることはなかった。 落ち葉はたくさんあるので焚き火は真夜中まで十分に持つ。どちらかといえば燃やしきれないかも知れないので、その時には焚き火をもう一つ増やすことになるだろう。 サツマイモを濡れた天儀紙で包みながら全員で焚き火を囲む。 (「入れ忘れないようにしないとね」) 焚き火を眺めつつ光華が難しい表情を浮かべる。 さすがに大きなサツマイモと同じ時間、小さな栗を焼いたら黒こげになってしまう。三十分ぐらい熱すればよいようだ。 『もふもふ〜♪』 もふ龍は全身で押すようにして遠くの枯れ葉の山を焚き火の近くまで寄せる。そのおかげで毛の間にたっぷりと枯れ葉を含ませて『紅葉もふら』に変化していた。 焚き火の中で灰が積もってきたところでサツマイモを投入。火傷しないよう注意しながら紙に包んだサツマイモを灰の中へと差し込んでいった。 『ようやく落ち着いてきたな。真夜中までまだまだ時間がある。昼間の話の続きでもしようか』 ヴァイスは頭の上に乗っていた枯葉を翼で払いつつ、友人の開拓者ルオウ(ia2445)についてを語り出す。 『ルオウは些か、いや、かなり落ちつきに欠けるか。雪の苦労も耐えぬであろうよ』 雪とは同胞の仙猫でルオウが参加した依頼に同行していた。 『実力は確かなのだがな‥‥』 深くため息をつくヴァイスである。 次は焔雲の番と相成った。 『小苺との付き合いはまだ短い、でも兄弟のような仲だよ』 出逢った時には互いに独りだったという。 『兄弟だとすると、どちらが兄ですか?』 枯れ葉を焚き火に継ぎ足した夜空が焔雲へと振り向く。 『あぁ、僕が兄って感じかな』 焔雲はふふりと笑うのであった。 主人の話題が広がって桃にも話す番が回ってくる。 『普通の人と犬であれば桜様は申し分のない飼い主なのですが、朋友として御仕えする主としてはもう少し真面目に仕事に取り組んで頂きたいというか‥‥』 『具体的には?』 興味を持ったヴァイスが桃に合いの手を入れる。 『遊びに連れて行って頂けるのが嬉しくない訳ではないのですが、修行の成果を発揮する機会をもう少し頂けたらと‥‥』 『それは由々しき問題だが‥‥』 桃を見つつヴァイスが唸る。 危険な依頼は大変だが、のんびりした仕事ばかりだと腕が鈍ってしまう。かといって大切にされているともいえる。答えの出ない悩みといえた。 突然に音がして多くの朋友が振り向いた。視線の先には落ち枝を折る光華の姿があった。 『あの龍を連れて行ったのが‥‥まあ、いいわ』 光華は何かを思いだしてご立腹の様子。 今回の依頼で和奏が自分ではなく龍を連れて行ったのが気に入らないようだ。しかしみんなの視線に気づいて言葉を濁し、別の話題に切り替える。 話した内容は和奏の心配りのなさに腹を立てつつ、頼りにされているのを自慢しつつ、いろいろと。光華が話題にしたのはすべて和奏にまつわるものばかりである。 『この山には誰もいないよ、ね? よし!』 岩の上が飽きたのか焔雲は落ち葉の山へと跳んだ。焔雲が乗るとぱさーっと落ち葉が舞い上がった。その後はふわふわの落ち葉の上でごろごろ。 焚き火の暖かさも伝ってきて猫のためにあるような場所である。 『いいにおいがしてきましたね』 夜空が焚き火に向けて鼻をくんくんさせる。焼き始めて二時間が経過してかなり火が通ってきた頃といえた。 『そろそろ良い感じもふかね〜♪』 わくわくともふ龍が目を輝かす。 『任せてくだ‥‥あ、熱いです』 様子見として桃がサツマイモ一本を竹の棒を使って焚き火の中から取り出す。爪楊枝を刺してみるとまだ完全に焼けておらず芯が残っていた。 焚き火の中に戻してもうしばらく待つことに。焼き上がるであろう時間は予定通りである。 『もふ! そう言えば、凄いもふらの次は何になるもふかね〜?』 もふ龍が話題を振ると仲間達が答えてくれた。 『キングもふらではないか?』 とヴァイス。 『もの凄いもふらに決まっているじゃない。どうしてって? 勘、女の勘よ』 光華は自信に満ちていた。 『早く次の進化になりたいもふ〜! そして、いつかは大もふ様になるもふ!』 もふ龍の夢は大きかった。 『‥‥忘れるところだったわ』 もうすぐ開拓者達が帰ってくる頃だと話題が出て、光華は栗を思い出す。焼き芋と同じく灰の中へと入れた。 真夜中の零時が近づいて桃が迎えに精霊門まで向かう。又鬼の遠吠を使おうとも考えたものの、真夜中の街なので控えることにした。 時間になってたくさんの利用者が門の外へと姿を現す。 『桜様、遅くまで御疲れ様です』 「迎えに来てくれたの♪」 御陰 桜(ib0271)が屈んで桃の頭と顎下を撫でる。 『依頼参加の皆様の朋友もお待ちしています。私達で良い物を御用意致しましたので此方へ』 桃の先導で焚き火が行われている空き地へと開拓者達がたどり着いた。ちょうど焼き芋と栗が焚き火の中から出されたばかりであった。 朋友達はそれぞれの主人、友人の元へと駆け寄る。 『こちらの焼き芋は私達が焼いたものです』 桃が銜えてきた笊には湯気上る焼き芋がのっていた。さっそく御陰桜が焼き芋を割って端を一口。 「美味し、桃アリガトね♪」 御陰桜にお腹をもふもふされて『くぅ〜ん』と啼いた桃だ。気持ちがほわわんとなったところで話しを続ける。 『こほん。雪夜の分も用意してますよ』 「桃はイイお姉ちゃんね♪」 頭を撫でられた桃はさらに喜んだ。せっかくなので御陰桜と桃は焚き火にあたりつつ、小さめの焼き芋一本を半分ずつにして頂いた。 雪夜の分も合わせてたくさんの焼き芋を抱えて先に帰ることにする。 『よく焼けて美味しいです』 住処に戻るとさっそく御陰桜、桃、雪夜でほっかほかの焼き芋を食べた。雪夜は最初にとても大きな焼き芋を頂いていた。 時を少し遡って焔雲が小苺(ic1287)に焼き芋を運んだ頃。 『はい、どうぞ召し上がれ』 焔雲が勧めた焼き芋を小苺はさっそく頬張った。 「美味しいにゃ♪ ハラペコなのがよくわかったのにゃ」 あっという間に食べ終わる小苺。すさかずもう一本を差し出す。 「もらっていいのにゃ? 焔雲の分は?」 『大丈夫ですよ。たくさんありますから、ほら』 焔雲はまだ手元にある焼き芋を見せて小苺を安心させる。二本目からは焔雲も一緒に頂いた。 (「まぁたまには、ね」) 焔雲は小さな声でお疲れ様と小苺に話しかけた。 もふ龍と紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)のところも焼き芋タイムである。 『ご主人様〜☆ 焼けたもふよ〜☆』 「おいしいです〜。ちょうど帰り際に屋台があったけれど食べられなかったから‥‥ありがとう♪」 『もふ〜♪ 照れるもふ〜♪』 紗耶香に誉められてもふ龍は茣蓙代わりの枯れ葉の上でゴロゴロと転がる。そして一緒に焼き芋を楽しんだ。 ヴァイスとルオウのところも焼き芋を頂いていたが、食べ方がとても対照的である。行儀よく焼き芋を嘴でつまむヴァイスに対し、ルオウは目を輝かせて口いっぱいに頬張っていた。 『すこしおちつくのだルオウ。逃げはせぬよ』 「このイモうめぇなー♪」 ルオウが喉につかえてヴァイスが背中を叩いてあげる一幕も。それも一瞬の出来事でルオウは笑顔のままだ。 焼き芋を用意してよかったとヴァイスは心の中で呟いた。 夜空と篠崎早矢のところは特にすさまじかった。双方、まるで大食い大会に参加しているが如く焼き芋を口に運んでいた。 「うっ‥‥!」 しかし突然に篠崎早矢の動きが止まった。喉につかえたのではと夜空は心配したが、どうやらそうではないらしい。 「妖精とダンスしてくる」 そう告げて篠崎早矢がその場を離れてゆく。 夜空はすべてを見透かした上で蹄を振って見送った。戻ってきた後は元通り。その後は仲良くお喋りをしながら焼き芋を食べ続ける。 光華と和奏は焚き火の前に座っていた。 焼き芋を美味しそうに囓る和奏を光華がじっと見つめる。ちなみに和奏は小さいという意味で彼女を『光華姫』と呼ぶ。 「焼き芋、美味しいですね。光華姫は食べないのですか?」 『わ、わたしは先に食べたから』 先に栗を食べてもらおうとしていた光華だが、和奏が仲間から先に焼き芋を受け取ってしまったのである。 「ふうー。もう少し焼き芋はありませんかね。とてもお腹が空いてまして」 辺りを見回す和奏の袖を光華が思い切り強く引っ張る。光華が上半身の姿勢を崩すほどに。 『ふん。そうだと思って焼き栗を用意しておいたわ! 仕方がないから食べてもいいわよ』 「光華姫が焼いてくれた栗ですか。これも美味しそうですね」 『わ、わたしが焼いたんだから、美味しいに決まってるでしょ!』 「では頂きます‥‥。これは甘いですね」 和奏が焼き栗を美味しそうに食べる姿を見て光華は心の中で微笑んだ。少し冷めてしまったが、これぐらいがちょうど食べやすい。 安心した光華も焼き栗を頂いた。 依頼に同行していた龍にも焼き芋とほんの少しの栗をちゃんとあげた光華である。 最後は完全に焚き火を消して周囲にも水を撒いた。開拓者と朋友は和気藹々と住処に帰るのであった。 |