|
■オープニング本文 朱藩の首都、安州。 海岸線に面するこの街には飛空船の駐屯基地がある。 開国と同時期に飛空船駐屯地が建設された事により、国外との往来が爆発的に増えた。それはまだ留まる事を知らず、日々多くの旅人が安州を訪れる。 そんな安州に、一階が飯処、二階が宿屋になっている『満腹屋』はあった。 「梅雨は嫌だわ。じめじめしているし」 「わたしは雨音聴きながら寝るの好きなので、梅雨も楽しいのですよ〜♪」 昼下がりの満腹屋一階。姉妹の智塚鏡子と智塚光奈は雨粒落ちる窓の外を眺めていた。 出入り口の戸が揺れる音。準備中の札がかけてあるにも関わらず、戸が引かれて誰かが店内に入ってくる。 「次の開店は夕方から‥‥あ、可奈代ちゃんなのです♪ ‥‥どうしたのです?」 「びっしょりじゃない」 突然の来訪者は光奈の幼なじみの可奈代であった。姉の鏡子も当然知っている。傘も差さずにやってきたのかずぶ濡れになっていた。 「光奈ちゃん、鏡子さん‥‥助け‥‥」 可奈代は光奈の前で跪いて床に両手をつけて頭を垂れる。 「話しなら聞くからここに座ってくださいなのです」 「手ぬぐい、持ってきたわ」 光奈は可奈代を椅子に座らせると、鏡子が持ってきてくれた手ぬぐいで頭を拭いてあげた。 最初は泣きながらでよくわからなかった可奈代の言葉だが、落ち着くに従って聞き取れるようになってきた。 可奈代の家はここ安州で豆腐屋『大豆丸』を営んでいるのだが、二週間程前にチンピラ集団から言いがかりをつけられたのだという。この店の豆腐はまずい上に食べて腹を壊した、どうしてくれるのだと。 言いがかりについては地元の自警団のおかげで解決する。 しかしチンピラ集団が巧妙な手段を用いたせいで収拾するまでに時間がかかってしまった。そのせいで豆腐屋『大豆丸』への客足はばったりと遠のいて閑古鳥が鳴いている状態らしい。 「わかったのです。大豆丸からの仕入れ、一ヶ月くらい通常の五倍、満腹屋で引き受けるのですよ♪ その間にお店を立て直すのは可奈代の役目なのです☆」 「ちょっと、み、光奈さん! こちらに来てくれるかしら?」 簡単に引き受けようとした光奈を鏡子が奥に連れ込んで問いつめた。いくら幼なじみ相手でも安請け合いはよくないと。 「もし満腹屋が大赤字になったらわたしの給金、一年間いらないのです。それでお父さんと交渉してくるので、お姉ちゃん、可奈代ちゃんのこと少しお願いなのですよ〜♪」 鏡子が止める間もなく光奈は二階にいる父、義徳の元へ。娘に弱い父親は困りながらも許可を出す。 傘を用意した光奈は可奈代を家まで送り届けた後、開拓者ギルドに立ち寄るのであった。 |
■参加者一覧
礼野 真夢紀(ia1144)
10歳・女・巫
十野間 月与(ib0343)
22歳・女・サ
三条院真尋(ib7824)
28歳・男・砂
紫ノ宮 莉音(ib9055)
12歳・男・砂
音野寄 朔(ib9892)
19歳・女・巫
遊空 エミナ(ic0610)
12歳・女・シ
火麗(ic0614)
24歳・女・サ
紫上 真琴(ic0628)
16歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●集合 日中に満腹屋一階の飯処が落ち着くのは、昼時の書き入れ時を過ぎて一旦暖簾を下ろした頃である。 集まってくれた開拓者八名に智塚姉妹が豆腐料理を運んだ。『大豆丸』の豆腐の味を知ってもらうために。これまで満腹屋で提供されてきたものばかりだ。 「どこにでも性質の悪い連中はいるけれど、巻き込まれた方は堪ったもんじゃないよね」 「可奈代ちゃん、大変だったのです」 十野間 月与(ib0343)は冷や奴の味を確かめながら光奈と世話話をする。 可奈代は毎日のように満腹屋へと豆腐を届けに来ていたという。しかし明るく振る舞っていたので顔を合わせた誰もが気づかなかったようだ。 「お友達はお元気になりましたか?」 「もう大丈夫なのですけど、しばらくは気にかけておくつもりなのです☆」 心配してくれた紫ノ宮 莉音(ib9055)にも光奈は可奈代の近況を伝える。今日も誤解を解くべく大豆丸の店先で試食を配っているはずだと。 (「この豆腐を餡かけにしたらどうかしら?」) 紫ノ宮と光奈が話す横で音野寄 朔(ib9892)は冷や奴とにらめっこしていた。じっと見つめ続けた後で光奈との会話が終わった紫ノ宮へとふり返る。 「莉音は何を作るのか考えてきたのかしら?」 「コフタを作るつもりですよー♪」 音野寄が口にした『コフタ』とは主に肉を使った料理だ。今回は豆腐を加えた特別なコフタを考えているようである。 (「満腹屋には保冷庫があるから、普通温かなおかずを冷やして出して見るのもどうかな?」) 礼野 真夢紀(ia1144)は豆腐の味噌汁を椀から頂きながら想像する。目の前に置かれている煮込まれた揚げ出し豆腐も冷やしてみたらどうなのかとか。 「こう、淡白な味がなんにでも色んな料理にもあって酒にもピッタリなんだよね。ところでこの店にはどの程度酒の客が来るんだろうね?」 「そうですわね――」 火麗(ic0614)に問われた鏡子が自分の右頬に手を当てながら答えた。昼間から引っかけてゆく客もいるがほんのわずか。やはり夕方からの客が多く酒を嗜むと。 「このお豆腐、美味しいよね♪」 冷や奴二皿目に突入した紫上 真琴(ic0628)は醤油の他に別のタレがあればよいと思いついた。事前に用意しておけるので忙しい店にとって助かるはずである。 (「湯豆腐は美味しいけれど、これからの季節には‥‥。湯葉しゃぶなら大丈夫かしら?」) 三条院真尋(ib7824)は最初に冬の豆腐料理を思い浮かべた。 しかしこれらは光奈に伝えておく程度にするつもり。夏は間近。暑い季節に適した料理を提案しようといろいろと考えを巡らせる。 「こうして美味しい豆腐料理を食べられるのは幸せだよね。やはりお豆腐のフェアとなると数をこなせる方がよいのかな?」 「この店のお客さんは食いしん坊さんが多いのです☆ だから量があると喜ばれるのですよ〜♪」 遊空 エミナ(ic0610)に光奈が満腹屋の客層を語る。 傾向としては濃い目の味が好み。 但し、これまで様々な料理を提供してきたおかげか甘党の客もそれなりにいる。たこ焼きやお好み焼きなどの持ち帰りもできる料理は女性客にも好評なようだ。 豆腐の味を確かめた開拓者達は街中へと繰り出す。日が暮れる前には必要な食材を抱えて戻ってくるのであった。 ●試作 開拓者一行が満腹屋に滞在できるのは三日間。すでに一日目が過ぎていた。 二日目は創意工夫の時間。三日目にそれぞれの豆腐料理がお披露目されることとなる。 満腹屋の板場はそれなりに広いが、営業中に八名が間借りできるほどではない。二人か三人ずつの交代で試食作りを行う。 野菜の皮むきなどの下拵えなら満腹屋裏手の庭で。地下にある氷室と貯蔵室は普段無人なので自由に使ってもよかった。 豆腐系の食材を使うといった縛りがあるので、料理が重複しても気にしないことに。味に個性があれば似た料理でも日を開けて別名で提供すればよいし、組み合わせることでよりよくなるのならばそれでも構わないからだ。 礼野と月与は提灯で照らしながら地下への階段を下りる。厳重な扉を開いて中に踏み入れるととても涼しかった。 「ここが丁度よいですの」 「あたいのは横へっと♪」 揚げ出し豆腐と豆乳を棚に置いて貯蔵室を退散する。冷えた数時間後に取りに戻ることになるだろう。 他の開拓者も地下を訪れた。 紫ノ宮と音野寄が料理や食材を抱えてやってくる。 「コフタはこちらがいいかも」 「餡かけ豆腐はここでいいとして、こちらは‥‥」 冷やすか凍らせるかで悩む紫ノ宮と音野寄だ。双方とも豆乳を使った料理については氷室へ置くことにする。 しばらくして紫上真琴と遊空も地下へ。 「とにかく冷やしてみようか。そのまま飲みたいって勇者さんがいるかも知れないし」 「こうして冷たい部屋があると便利だよね。もうお昼を過ぎているのに朝届けられたお豆腐がこんなに新鮮だし」 紫上真琴は豆乳が入った容器をそのまま置いた。冷たくすれば無調整の豆乳も美味しく飲めるかも知れないと。 遊空は豆腐を持ってきた桶へと移す。これから作るお豆腐の野菜巻きに使うつもりである。 「ふむふむ‥‥」 光奈はなるべく開拓者達の調理を見学するように努めた。 「私は作った料理を絵に残しておくね。よかったら宣伝に使ってね」 紫上真琴は綺麗に更に盛った冷や奴料理を前にして紙の上に筆を滑らせる。 「この絵、借りていいかな?」 「フェアに使うのなら大歓迎だよ」 遊空は紫上真琴の絵をもらって看板に仕上げることに。文字が足されて看板の板へと貼り付けられる。看板は鏡子が満腹屋の入り口近くへと飾ってくれた。 「この鍋ならきっと大丈夫よねぇ」 火麗は湯葉料理に使えそうな土鍋を満腹屋の倉庫で発見してご機嫌である。 紫ノ宮と音野寄は仲良く並んで調理を行っていた。その時‥‥。 「ええ‥‥美味しいわね。ぱりぱりでお手軽で‥‥」 音野寄は油揚げの両面焼きを口に運んだ。 「まあ、いやだ、朔様! つまみ食いはいけませんよ!」 紫ノ宮の視線と言葉で音野寄はようやく自分が無意識のうちにつまみ食いをしていたことに気がつく。 「‥え? あ、ああ。ごめんなさい。つい‥お揚げ‥」 狐獣人だからお揚げ好きと決まっているわけではないが、音野寄の好物はそれである。 「‥でも、おいしそう‥‥」 音野寄も油揚げの両面焼きを一枚頂いた。二人して食べて微笑み合うのだった。 その頃、三条院は満腹屋の裏手で豆腐サラダを作っていた。水切りした豆腐にトマトに大蒜、その他に市場で手に入った緑の野菜を使って。 「とっても〜美味しそうなのです☆」 「よろしかったらどうぞ」 試食に先んじて光奈は豆腐サラダのご相伴に預かる。 「このオリーブオイルがより引き立てているのですよ〜♪」 「塩胡椒に檸檬を加えているわ。そういえば豆腐を使ったチーズケーキも焼き上がる頃ね。いかが?」 「え〜と‥‥頂くのです☆」 我慢しきれなかった光奈は豆腐チーズケーキも味わう。 礼野と月与は板場で豆腐ドーナッツを作っていた。 「小麦粉に豆腐を加えて、水の代わりに薄めた豆乳でっと♪ あ、すり胡麻も忘れずに」 月与が懸命に生地を練る。 「丸い型が手に入ってよかったです。これさえあれば‥‥」 その横で礼野が中に入れる甘味の準備をする。餡子は昨日のうちに作ってあった。チョコレートは細かく刻んでおく。 形作られたドーナッツは天麩羅用の鍋の中へ。きつね色に揚げて出来上がり。一緒に提供する豆乳も作ってみる。 (「みんな、美味しそうだったのですよ〜♪ 明日の試食が楽しみなのです☆ えっと‥‥つまみ食いは忘れることに♪」) その日の夜、開拓者達が作った豆腐料理にわくわくしながら光奈はなかなか寝付かれなかった。 ●試食祭り 三日目の宵の口。 「よろしくお願いします。うちの豆腐を美味しくしてくれるそうでとても楽しみです」 店仕舞いに合わせて豆腐屋『大豆丸』の可奈代が訪れる。 挨拶する可奈代から落ち込んだ様子は窺えなかった。なので誰もがチンピラからの嫌がらせについては触れないでおく。 「ま、待っていたのですよ‥‥」 「ど、どうしたの? 光奈ちゃん。体の具合でも悪いの?」 可奈代がよろよろの光奈に肩を貸す。 「光奈ったら試食のために水以外、丸一日食べていないのよ」 「えへへっ‥‥」 鏡子は光奈に呆れ顔。給仕はちゃんとこなしたらしい。仕事が終わった瞬間、ゼンマイが切れたおもちゃのようになってこの有様だ。 光奈が空腹で倒れる前に試食が始まった。 光奈、鏡子、可奈代がついた卓へと礼野と月与が料理を運ぶ。 これから出される料理はすべて一品につき半人前から一人前の量である。 「肉豆腐ですの」 礼野が出した料理は見かけはすき焼きのようであった。肉は豚で豆腐に葱が入り、半熟卵でとじられてある。夏用の冷製仕立てだ。 「この冷たさがいい感じなのです〜♪」 もっと食べたいのをぐっと抑えながら批評する光奈。礼野は口元を隠しながらくすりと笑う。 「こっちは麻婆豆腐丼ね。辛い丼とは別の刺激的な味を常連さんに楽しんでもらえたらと思って」 「うちのお客様には丼一筋の方が結構多いの。喜んでもらえるわね」 麻婆豆腐丼を味わった鏡子は月与に頷いた。とても食べやすく、それでいて辛みの品がよいのはさすが月与の作である。 「豆腐ってこういう使い方もあるんですね‥‥」 可奈代は豆腐サラダをしばらく見つめてから食した。 好みとしては胡麻油だがオリーブオイルをかけてもとても美味しかった。 「この力強さはきっと人気になるのです☆」 光奈は豆腐ハンバーグをもぐもぐと頂く。肉の代わりに豆腐を使い、醤油や酒などの天儀風の調味料を使った餡がかけられていた。 具には大根、葱、それに食感に変化を加えるための油揚げが入っている。添えてあるがんもどきもとても美味しく仕上がっていた。 「とっても嬉しいわ。うれしー♪」 豆乳ドリンクと豆乳ドーナッツは特に鏡子が喜んだ。 豆乳ドリンクには蜂蜜、黄粉、人参、干し果物が加えられていてまろやかに甘い。お土産にする際、可奈代が竹の水筒に詰めて冷やして売ったよさそうだと案を出してくれる。 「ぷるぷるなのです☆」 「豆腐と白玉粉を大体1対1の割合で入れると冷めても美味しい白玉団子になるのです。冷やし善哉にもいいかも」 光奈は礼野が作ったお豆腐入り白玉を食べてほっぺたを押さえた。 続いて紫ノ宮と音野寄の料理が運ばれる。 「見かけはつくねの焼き鳥っぽいのです☆」 「コフタといいますよー♪」 光奈が食べる様子を紫ノ宮は見守った。 コフタは何種類かの味が用意してある。鶏の挽肉と枝豆を混ぜたもの、鰹を混ぜたもの、鯵を混ぜたものも。 「魚介とは恐れ入ったのです!」 「梅肉とお醤油、味醂のソースになっています。こちらの皿はお醤油とお酢、それから柚子と片栗粉で餡掛けになってますよ♪」 紫ノ宮の口上に乗せられて、ついつい多めに食べてしまう光奈だ。 可奈代は音野寄の餡かけ豆腐を特に喜んでくれた。 「特にこの餡はどうやって作るんでしょう?」 「鶏ガラスープに醤油、みりん、塩・おろし生姜を加えて、煮立ったら水溶き片栗粉を加えてとろみを出しているわ。さらに溶いた卵に茹でた枝豆を加えているわね。冷たい豆腐に冷やした餡をかけて完成よ」 夏なので冷製にしたが、温かいままでも美味しいと音野寄は付け加える。 締めとして出された豆乳と氷菓も好評。 豆乳には珈琲と砂糖が加えられていた。氷菓仕立ても美味しかったものの、数を作るのは難しそうである。 漉した豆腐に抹茶を足してふわふわに仕上げた氷菓を食べた鏡子と可奈代は夢心地のような表情を浮かべていた。 「止まらないのです☆」 油揚げの両面焼きをぱきっと食べる光奈だ。 腹ごなしに一旦休憩になって三時間後。紫上真琴と遊空の番となる。 「焼き豆腐にかかっているタレが美味しいのです〜♪」 「蒼ねぎと大根おろし、ダシを取ってタレを作ってかけるの。こちらのは茄子を使ったものね」 光奈が紫上真琴が作った焼き豆腐の次に手をつけたのが木綿豆腐のお肉巻きだ。 「こ、これ、お肉の脂と旨味がお豆腐に染みこんでお、おいしいのですよ!」 「光奈さん、落ち着いて」 興奮する光奈を鏡子が宥める。 「こちらはお肉ではなくて野菜で巻いてありますわ。私はこちらの方が好みかしら」 鏡子が高評価を出したのは遊空の作ったお豆腐の野菜巻きである。 潰した豆腐に小さく切られた人参、枝豆、椎茸を混ぜ、それらをキャベツで巻く。そして薄口出汁で煮られていた。 「あっさりして食べやすくしてみたのは、女性にたくさん食べてもらいたくてね。こちらもどうかな?」 遊空が次にがんもどきとひじきの煮物と揚げ出し豆腐をお勧めする。 「やっぱりお豆腐料理にはこれがないとね」 椎茸の滋味深い味が加わった揚げ出し豆腐は可奈代が気に入ってくれる。がんもどきとひじきの煮物は光奈がたくさん食べていた。 「豆乳はそのまま飲みたいって人もいるかも?」 紫上真琴は光奈に頼んでお品書きにそのままの豆乳も載せてもらうことにする。満腹屋従業員の銀政の推しによるものだ。どうやら好物のようである。 そして三条院と火麗の番になった。 「汲み出し豆腐を布巾と笊で水分を減らしたざる豆腐の方が酒と合うかと思ってねぇ」 火麗が出してきたざる豆腐を光奈が頂いた。 「確かにお酒が欲しくなるのです☆ きっとおつまみとして好評になるのですよ〜♪」 光奈はあっという間に食べ終わった。とても濃厚な味で豆腐のすべてを味わった気分に浸れる。 引き揚げ湯葉に関してもお酒にぴったり。こちらは鏡子の好みのようだ。 味付け揚げは油揚げの両面焼きに似ていたがピリリと辛かった。 前日に光奈が食べた豆腐サラダは鏡子と可奈代にも好評である。さらに麻婆豆腐と続く。 「暑い日は辛い物で汗をかいて暑気払いが一番だわ」 豆板醤を使った三条院の麻婆豆腐はかなり刺激的な味に仕上がっていた。口にした三人の表情がそれを物語る。 「これは効くのです☆」 ただ辛いだけでなく奥に旨味も隠れている。汗をかきながら光奈を含めて三人が残すことなく食べきった。 「ドーナッツと同じように味を整えた豆乳と一緒に召し上がると美味しいわ」 最後は三条院が用意した豆腐で作ったチーズケーキ。豆乳は抹茶ときな粉が加えられたものである。 「もう幸せ〜♪」 甘党の鏡子にとっては至福の時間。 三人の試食が終わったところで、開拓者達は仲間同士でわいわいと料理を頂いた。光奈はインゲンと挽肉詰めの厚揚げを披露する。 満腹屋からお酒も提供されて、何人かはほろ酔い気分である。 深夜、お土産をもらった開拓者達は智塚姉妹と可奈代に見送られながら、精霊門で神楽の都へと帰って行くのであった。 |