栗ご飯 〜満腹屋〜
マスター名:天田洋介
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/09/27 13:52



■オープニング本文

 朱藩の首都、安州。
 海岸線に面するこの街には飛空船の駐屯基地がある。
 開国と同時期に飛空船駐屯地が建設された事により、国外との往来が爆発的に増えた。それはまだ留まる事を知らず、日々多くの旅人が安州を訪れる。
 そんな安州に一階が飯処、二階が宿屋になっている智塚家が営む『満腹屋』はあった。


 先月の八月初旬から満腹屋では『きぃやんぺぇ〜ん』実施中。
 丼一杯、または定食一人前につき、割り符を一枚進呈。二十枚集めて手続きを踏むと栗拾いの旅ご招待を行っていた。
 九月の初めに給仕の智塚鏡子の案内で一回目が終了済み。栗の木がたくさん生えている山まで貸し切りの飛空船で往復する一泊二日の旅だ。
 二回目の案内は鏡子の妹の光奈が担当することになっていた。たくさんの栗を拾うべく張り切る光奈は準備を怠らない。ただその方向性が正しいかどうかは別の問題である。
「光奈さん、それって‥‥」
「これならトゲトゲの栗の雨が落ちてきても平気なのですよ〜♪ きぃやんぺぇ〜んドントこい〜♪」
 客からは見えにくい調理場近く。鏡子は光奈の姿に唖然とした。鉄鍋を三度笠のようにして被っていたからだ。
 年頃の乙女なのだから馬鹿な真似はおやめなさいと取り上げようとする鏡子。嫌なのですと光奈は懸命に抵抗し続けた。
「甘酒かき氷、二人前できたぞ。‥‥姉妹で何やってんだ?」
 調理場から現れた銀政に光奈が気を取られる。その隙に鏡子は光奈の頭から鉄鍋を外す。
 とにもかくにも二回目の『きぃやんぺぇ〜ん』による栗拾いの旅は間近に迫る。参加名簿には開拓者の名前も並んでいた。
「栗ご飯は外せないのですよぉ‥‥♪ ぐぅ〜〜‥‥すや〜〜」
 当日まで毎晩栗拾いの夢を見る光奈であった。


■参加者一覧
礼野 真夢紀(ia1144
10歳・女・巫
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
玄間 北斗(ib0342
25歳・男・シ
杉野 九寿重(ib3226
16歳・女・志
緋乃宮 白月(ib9855
15歳・男・泰
三条 忠義(ib9899
30歳・男・弓
マルガリータ・ナヴァラ(ib9900
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●出発
 栗拾いの旅はまだ夜が明けぬ時刻から始まる。
「満腹屋きぃやんぺぇ〜ん栗拾いの旅はこちらの飛空船なのです〜♪」
 智塚光奈の声が空が白みだした朱藩・安州の飛空船基地に広がる。乗船する参加者の中には開拓者の姿もあった。
「栗の渋皮煮と甘露煮にをつくる予定ですの」
「栗拾いはおいらに任せて欲しいのだぁ〜」
 礼野 真夢紀(ia1144)と玄間 北斗(ib0342)は並んで座席に腰掛ける。からくり・しらさぎと忍犬・黒曜も一緒に。
「せっかく割り符をコツコツと貯めたでおじゃる。絶対に行くでおじゃるよ」
 飛空船の乗降口を直前で引き留められている御仁もいた。三条 忠義(ib9899)はからくりのアリシアに抱きつかれ身動き出来ない状態。より正確にいえば胸元に挟まれた悶絶状態だ。
「く、栗の土産を必ず保って帰るでおじゃる。それで許すでおじゃる‥‥」
 ようやく解放された三条忠義は蹌踉けながら飛空船内へ。疲れた様子は現地到着まで続いたという。
(「栗、たくさんの栗‥‥そのまま売ってよし、茹でておやつとして売ってよし。家計が助かりますわ」)
 マルガリータ・ナヴァラ(ib9900)はワクワクしながら飛空船の離陸を待ちわびる。
 友人知人から割り符を譲ってもらって手に入れた栗拾いの旅。お腹一杯に食べる絶好の機会に心躍らすマルガリータである。
「これで全員なのですよ♪」
 参加名簿の確認を終えた光奈が最後に乗り込んで飛空船は離陸を開始。左右に揺れながらもふんわりとゆっくり浮かび上がった。
 光奈は挨拶を交わしながら空いていた杉野 九寿重(ib3226)の横へと座る。
「秋は実りが豊潤に成る頃合の季節ですね。ここは栗拾いを‥‥‥‥席が二つ空いていますが、それでよいのですか?」
「あれ? おかしいのです〜。満席のはずだけど‥‥」
 杉野の横で光奈は首を捻った。その理由はまもなく窓の外を眺めていた緋乃宮 白月(ib9855)によって知らしめられる。
「何かと思ったら人がいますよ」
『マスタ〜、あの人は何をしているのです?』
 緋乃宮の猫耳に掴まりながら羽妖精・姫翠も窓から外を望んだ。釣られて窓際の全員も視線を外へ。やがて殆どの者が外を眺める。人影は船首付近にあった。
「はいーそういう事でやってきました! 第1回! チキチキ!! 秋の味覚をこの手でGET〜 きぃやんぺぇ〜ん栗拾い大会!!」
 甲板の伝声管を使って旅行の開始を告げていたのは村雨 紫狼(ia9073)。
『どんどんぱふぱふ〜〜なのです!』
 その横で土偶ゴーレムのミーアが囃し立てていた。
「このイベントは、満腹屋の提供でおおくりしま〜すンガググッ!」
 笑顔のまま村雨紫狼は足を滑らす。そのまま落っこちて甲板から真っ逆様。
『マスタァー〜! って縄をつけていたのです☆』
 ぶらんと吊り下がる村雨紫狼を土偶ゴーレムのミーアが引き揚げる。その様子を見て船内の一同はホット胸をなで下ろすのであった。

●栗拾い
 飛空船は昼前に現地へと到着。一行は宿に荷物を預けるとさっそく栗がなる山へ。
 光奈は満腹屋の旗を掲げて一行の案内をする。三十分程で山を少し登った周辺に到着した。
「暮れなずむ頃に吹く笛の音が終わりの合図なので集まってくださいなのです☆」
 光奈の説明が終わって栗拾い開始である。
「陣笠の方が軽くて動き易いと思うのだ〜」
「お〜、確かに軽いのですよ〜♪」
 光奈は玄間北斗から借りた陣笠を頭に被る。姉の鏡子から取り返した鉄鍋はお役ご免である。
 玄間北斗は連れてきた忍犬・黒曜に光奈のお供を任じる。真の指示は光奈に困ったことが起きた場合のための護衛。玄間北斗の心遣いだ。
 光奈と別れた玄間北斗は礼野と一緒に栗拾いを始める。籠はからくりのしらさぎが背負ってくれていた。
「落ちてますね。まずはこれで充分だと思います」
 礼野が拾った棒で草むらを分けると毬栗がさっそく見つかる。よく見ればそこら辺に毬栗が転がっていた。
 玄間北斗がさっそく手袋はめて毬栗を集める。宿の人が貸してくれた下駄で器用に踏んで実を取り出す。一時間程度で籠の半分が埋まった。
 礼野は先に調理するために、からくり・しらさぎと一緒に宿へと戻っていた。玄間北斗は忍犬・黒曜を預けた光奈と合流する。
「ちょうどいいところに来てくれたのです♪ あの木をじっと見ていて欲しいのですよ」
「何かあるのだぁ?」
 光奈が指さす栗の木を玄間北斗が目を凝らす。するとぽつぽつと間を置いて毬栗が落ちている。
「陣笠があってもあの状態で行くのはちょっと怖いのです。でも拾えないのは悔しいのですよ」
「おいらが落とした後でゆっくりと拾ったらいいと思うのだ〜」
 玄間北斗は光奈を後ろに下がらせると六尺棍で枝を揺らす。届かない高い枝には紐付きの苦無を利用した。熟した毬栗目がけて投げ、落としてゆく。
 光奈と玄間北斗は急いで毬栗を回収。一所に集めた毬栗は小さな山となる。
「これはすごいのです!」
「たくさん獲れたのだぁ!」
 光奈と玄間北斗は下駄で毬栗を割って中の実を取り出すのであった。

●ガシガシッ
 集合場所からかなり離れた木漏れ日の下。金髪の女性が周囲を見回す。
「誰もいませんわね?」
 マルガリータは人目がないのを確かめると『魔杖「ヴィエディマ」』を掲げて大きくぶん回して栗木の幹を打撃。そしてパラパラと落ちてくる毬栗を見て高笑い。気をよくしてもう一度叩いてみれば脳天に毬栗が突き刺さった。
「痛いんじゃ! ワレ!!」
 キレたマルガリータはガシガシッと栗の木を蹴り続けた。
「あ、マルガリータさんなのです〜♪」
 声をかけられて振り向くと満腹屋の光奈が。
「お、おほほほほ。こんなところまでいらっしゃるなんて」
「自分の分は取り終えたので見回りをしていたのです☆」
 マルガリータは独り言を聞かれていなかったか内心冷や冷やである。毬栗を剥く作業を手伝ってくれてから光奈が見回りへと消える。
「さてもう一がんばりしませんと。これでようやく私が食べる分ですし」
 マルガリータと毬栗との闘いはさらに二時間程続いた。

●危険な棘
 山を散策していたのは三条忠義。
「雅なものでおじゃる」
 詩や俳句が浮かびそうな山の景色に目を奪われながらも栗拾いを思い出す。三条忠義は栗の木を見つけると草むらに目を凝らした。
「落ちている栗は‥‥ないでおじゃるな」
 見つかった毬栗はたった一つのみ。三条忠義は弓を取り出すと栗木の幹に即射する。
 枝が揺れて毬栗が落ちてきたまでは想像していた通り。ただその勢いについては想定外であった。
「痛いでおじゃる!」
 首もとに小さな毬栗が入り込んで背中をチクチク。跳びはねたら毬栗を踏んで今度は足の裏に棘が突き刺さる。
「これは天罰でおじゃ‥‥いやいや、そんなことはないでおじゃるよ」
 置いてきたからくり・アリシアを思い浮かべながら、三条忠義は棘を抜き終わった。あとは草むらへと毬栗を集めて実を取り出すだけ。
「これでお土産の分も充分でおじゃる」
 三条忠義は一杯になった籠を肩に担いで山の斜面を下ってゆくのだった。

●仲良し
「うわっ、沢山栗がありますね」
 緋乃宮が前にした木の下にはたくさんの毬栗が転がる。羽妖精・姫翠は毬栗の棘をつんつんと触りながらはしゃいでいた。
『マスター、いっぱい栗を取りましょう!』
 緋乃宮が羽妖精・姫翠に頷いてさっそく開始である。
「上から栗が落ちてくることもあるみたいですね、気をつけないと」
 転がっている分で充分な量がありそうだが、熟れた毬栗を予め落としておこうと緋乃宮と羽妖精・姫翠は力を合わせた。
 陰陽の帽子を被り直した緋乃宮は幹を押して揺すり、羽妖精・姫翠は枝の上で跳ねる。いつ落ちてもおかしくない毬栗がこれによって地面へと転がった。
『チクチクして掴みにくいです、マスタ〜』
「それなら僕が毬栗を集めて割るので中の実を籠に入れてくださいね」
 緋乃宮と羽妖精・姫翠は作業を分担。この木一番の収穫時期と重なったようですぐに必要分が集まる。
「宿に戻ったら調理してもらいましょうね」
『楽しみです、マスター。お菓子もあるかな?』
 緋乃宮が背負う籠には栗の実がいっぱい。羽妖精・姫翠は緋乃宮の回りをぐるぐると飛んで喜ぶのだった。

●危険な斜面
「結構な勾配がありますね」
 杉野は発見した獣道を辿ってあまり人が立ち入らない山奥に辿り着いた。彼女に苦労した様子がないのは志体持ち故だ。普通なら疲労困憊になっているところである。
「気をつけないと‥‥」
 斜面にそびえる木の下にはたくさんの毬栗が転がっていた。身軽に跳びながら大きな掴み棒を使って背中の籠へと毬栗を放り込んでゆく。
 杉野がこの辺りの毬栗を拾わなければ難しさ故に放置されていたことだろう。
 籠が一杯になり、安全な場所でイガイガがついている外皮を割って中身を取り出す。実を袋に入れて木の枝へとぶら下げ、杉野は再び斜面で毬栗を拾った。それを四度繰り返した頃、籠に溢れそうな程の栗の実が集まる。
「数個だけ毬栗のままで持ち帰りましょうか」
 杉野はご機嫌な様子で獣道を下ってゆくのだった。

●お約束的に
「秘密兵器彼女カマーン!」
 語尾を巻き舌で叫んだ村雨紫狼が土偶ゴーレム・ミーアを招く。ちなみに彼は彼女のことを『ドグーロイド・ミーア』と呼んでいた。
「俺は手袋で、ミーアは平気だろうから素手でどんどんと拾っていってくれ」
『マスター、わかりましたのですゥ』
 村雨紫狼が選んだ木の下はすでにたくさんの毬栗が落ちていた。借りた籠六つ分を満たすべく村雨紫狼と土偶ゴーレム・ミーアは次々と拾う。
「はっはー、この厚手の手袋があれば安全なのだっ! どこかの誰かのご期待どうりに全身イガだらけになるなんてオチはないのだーっ!」
『マスタ〜、こんなにたくさん拾ったのですゥ〜。あっ!』
 多数の毬栗を両手で抱えるように持って村雨紫狼に駆け寄ろうとした土偶ゴーレム・ミーアが石に躓いた。
 振り向いた村雨紫狼の頭上には逆光で影を纏う多数の毬栗が。
「あァ〜!!」
 村雨紫狼に対処する手はあらず。両手に毬栗を掴んだまま無抵抗に毬栗の雨へと晒されたのであった。

●お土産作り
 先に宿へと戻った礼野はからくり・しらさぎと一緒に調理に取りかかった。事前に用意した秤、砂糖、重曹、梔子の実、大鍋二つ、竹串、保存瓶を作業台に並べる。
「洗った栗を沸騰した湯に漬けると剥きやすくなります」
 礼野はからくり・しらさぎの側で実践してみせた。
「渋皮煮と甘露煮は違います。渋皮煮は渋皮を剥かずに、鬼皮だけを剥くの。ざらざら部分に包丁を入れて、つるつる側に向かってむいて。渋皮に傷が付いたら渋皮も全部むいて、こっちに使うから」
 礼野の横で器用に包丁を動かすからくり・しらさぎ。すぐに覚えて礼野と同じ勢いで栗の実を剥いてゆく。
 途中、玄間北斗が追加の栗を持ってきてくれる。それも湯に浸けて鬼皮を剥いたらたっぷりの水に重曹を入れて沸騰させる。弱火にしてしばらく煮続けた。
「時計の針がここまで来たら火を止めて」
 作業台に置いた自前の懐中時計を礼野を指さす。頃合いに味見すると栗の苦みが消えていた。
「竹串使ったら取り易いよ」
 火から降ろし、水を足して栗の筋や鬼皮のかすを取る。
 新たにひたひたの水を張り直した鍋に処理した栗を入れて一度沸騰させる。途中を加えながら三時間程煮れば出来上がりである。
 しばらくして栗拾いの一行が戻り、十分な量の栗の実が揃う。玄間北斗と光奈も手伝って皮むきが終わったところで渋皮煮が出来上がる。
「熱いうちに保存瓶にいれてと」
 渋皮煮の瓶詰めが終わったところで夕食の時間となった。
 甘露煮作りの続きは食事後に行われる。
 多めのお湯で茹でて笊に揚げた。そして栗と同量の水とその半分の重さの砂糖、さらに適度なみりんに梔子の実を鍋に加える。当然、茹でた栗も。
 やがて出来上がった甘露煮もまた熱いうちに瓶へと詰められるのだった。

●夕食
 栗拾いも終わり、全員が宿の宴会場へと集合。
 一部の者にとってはこれこそが目的の夕食の時間となる。お浸しなどのおかずも並んでいたがみんなの目当ては食べ放題の栗ご飯だ。
『む〜でもミーアは栗ごはん食べられないのですゥ‥‥あ! じゃあマスターにあーんして食べさせちゃのです☆』
「ンガググッ!!」
 突然、土偶ゴーレム・ミーアから口に栗ご飯を茶碗一杯分放り込まれた村雨紫狼はもがいていたが、しばらくして静かになる。
『マスター?』
「ぐはっ! 死ぬかと思った!」
 何とか呑み込めたようで村雨紫狼は事なきを得た。
「ここの栗は質がよいですの」
「もう三杯目なのだぁ〜♪」
 礼野と玄間北斗は並んで座って栗ご飯を楽しんだ。
「栗の炊き込みご飯はとても美味しいですね。これで焼き栗も頂ければいうことないのですけれど」
「ふふふっ‥‥実は満腹屋に戻ったら焼き栗をしようと思っていたのです☆ 鉄鍋はちゃんと洗いますし、川原で拾った丸石も用意してあるのです〜♪」
 杉野と光奈が話していると近くに座っていた緋乃宮の猫耳がピクッと動いた。
「焼き栗、いいですね。お手伝いしますので一緒にいいですか?」
「大歓迎なのです〜♪」
 光奈の言葉に緋乃宮は笑顔を浮かべた。この話は周囲へと伝わって開拓者全員とその他の客も何名か参加することになる。
「お代わり!」
 その頃、茶碗では足りずに丼で十杯目の栗ご飯に突入した御仁が。
「ま、まだ食べるのです?」
「背に腹が変えれまして!? 屈強な兵士も食料が尽きれば――」
 驚いた光奈が声をかけてもマルガリータの食欲は留まることを知らなかった。だがふと我に返るマルガリータ。
「あ、あのですね‥‥。実はお金を落としてしまいまして、この旅の前には一週間程水だけで過ごしたというか――」
 焦った様子で弁明を始めるマルガリータであった。

●そして
 翌日、栗拾いの旅一行は飛空船で帰路に就き、朱藩・安州へと戻った。
「く、くるしいのでおじゃる‥‥」
 三条忠義は飛空船基地で待ち続けたからくり・アリシアに抱きつかれ、胸の中で窒息死寸前まで追いつめられる。震える手で土産の栗を見せるとようやく解放された。
 神楽の都へと帰る前に開拓者を含めた一部の者は満腹屋へと立ち寄る。そして裏庭で鉄鍋に敷いた石で栗を焼いた。礼野のいう通り爆発しないよう栗へと傷を入れて。
「美味しいのですよ〜。涼しくなってきて焼き栗が美味しいのです☆」
 光奈も満足に次々と焼き栗を頬張る。
 礼野が作った渋皮煮と甘露煮はお土産としてみんなに分けられた。ある程度は日持ちするものの、早めに食べてと言葉を添えて。
 何名かは栗を満腹屋に渡すことで料理と交換可能な木符をもらう。多くの者は持ち帰った栗で美味しい料理を作ることだろう。
 秋の季節は深まりつつあった。