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■オープニング本文 ● もうすでに夕日が沈みそうな時間、二人の狩人が今しがたの成果を見せあいながら、帰路についていた。 「今日も結構な獲物が獲れたな」 「あぁ、だが数日前から、獲物がいなくなっているような気がするんだが?」 「阿呆なことを言うな、今日だって、ほれ」 そう言うと、片方の狩人が今日の成果を掲げる。 「いや、そうじゃなくてだな。なんかこう、鳥の声がしないというか」 「なんだ、突然。まるで自分がプロみたいな言い方だな」 「なんだ、俺たちゃその道のプロじゃなかったのか?」 「あぁ、俺はな、こんな獲物取ってるんだから」 そう顔を見合わせて笑い合っている二人を、ぎょろぎょろと二つの忙しなく動く目が見つめる、そして‥‥。 「今夜はこいつで。ってあれ?」 「おいおい、まさかせっかくの獲物なくしたとかないよな?」 きょろきょろと狩人が来た道を探しまわる。 それに少しずつ、ゆっくりと近づく影。 しかし、もう一人が、その異形なものを見つける。 「お、おい、変なものが来るぞっ」 その一人の、絶叫が混じった声を聞き、もう一人がゆっくりと顔を上げると、あの忙しなく動く二つの目が宙に浮きながら、こちらに近づいてくるではないか。 これには、さすがに驚愕し、二人は村まで続く一本の道を脱兎のごとく走って行った。 |
■参加者一覧
空(ia1704)
33歳・男・砂
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
将門(ib1770)
25歳・男・サ
沖田 嵐(ib5196)
17歳・女・サ
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰
笹倉 靖(ib6125)
23歳・男・巫
久藤 暮花(ib6612)
32歳・女・砂
凹次郎(ib6668)
15歳・男・サ |
■リプレイ本文 ● 村に着いた開拓者たちは、すぐに行動を開始した。 必要なものを村で調達した彼らは、すぐさまアヤカシを見たと言う森へ足を進めた。 依頼人の話から、開拓者たちは彼らがアヤカシと遭遇したと思われる場所へと向かっていた。 「依頼人から話は聞いたが、目玉が宙に浮いてるねぇ、どういう理屈なんだか」 笹倉 靖(ib6125)は、先程あった依頼人の話を思い出しながら、そう呟いた。 「依頼人が無傷なのは、幸運だったな」 沖田 嵐(ib5196)も、村であった依頼人の二人組を思い出しながら、呟いた。 「そうだねぇ。んー、でもあの二人の話だと、目玉が浮いてる化物としか言わなかったから、どんなのだろうなぁ」 「あら?目玉のアヤカシとは限らないわよ?あの人たち、等間隔で言ってたでしょ?もしかしたら、間抜けなアヤカシかもしれないわよ?」 そう言ったのは、リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)。 「その時のために、みんなこれを用意したんだろう?」 そう言う将門(ib1770)の手には染料の入った袋が握られ、周りの仲間の手にも同じようなものが握られていた。 彼らは、リーゼロッテが危惧していたことに対する、策をすでに用意していた。 敵が擬態するアヤカシの場合、この特製のペイントボールを当てようと言うのだ。 「まァ、あらゆる事態を想定して、それに対しての対策を練るべきだよな」 だが、そういう空(ia1704)の手にはあのペイントボールは見当たらず、よく見るとリーゼロッテも、そのようなものは身に着けていないようで、それに対して、仲間の開拓者は何も言わなかった。 「情報がないでござるからな。それで、久藤殿はいつになったら、ちゃんと起きるでござるか?」 「ふみゅ‥‥、寝ちゃダメと思うと眠くなっちゃう‥‥。ありがとうございます‥」 歩く凹次郎(ib6668)の背中には久藤 暮花(ib6612)が背負われていた。 ここに来る途中、ふらふらと歩く久藤をみて凹次郎は不安に思い、思わずおぶってしまったのだ。 今や、久藤は凹次郎の背中に安心してしまい、本当に寝ようとしている。 そして、村雨 紫狼(ia9073)は、また違うことを考えていた。 「にしてもさー、空中に浮かぶ大きな‥大きな‥。はっ!?いやいやリーゼたん嵐たん、大丈夫だって需要あるから!暮花おねーさまもばっちこいだぜー俺ー!」 「‥村雨君、その大きいって意味じゃないよ‥むにゃ」 すかさず、久藤が寝ぼけながらに反応をする。 自分の身体について言われた沖田は、すこし目で村雨を威嚇している。 「俺としたことが、もっと違うこと言わなきゃならないよな。凹次郎、お前少し俺と変われ、羨ましいんだよ、チキショォォ!」 「なぜ矛先が拙者に!?」 そして、開拓者たちは、目的の場所についた。 ● その道は、ある程度整備されたような道で、獣道までとはいかないが、人間が通れるほどの大きさに開けていた。 すぐ近くに獣道のような小さな道があり、その道のすぐ近くに、木で大きく×印が、刃物のようなモノでつけられていた。 依頼人たちは、この大きな×印がついたがついたすぐ近くの獣道から出るときに、問題の目玉に遭遇して、命からがら逃げてきたと言っていた。 だが、周りにはそのようなもの見当たらず、いたとしても、森の中、木々が邪魔をして目など見つけられない。 「さてと、それじゃぁ作戦を始めますか」 「まずは俺からだな」 息を整え、大きく深呼吸すると、将門を中心に、地を揺らすほどの大きな雄叫びが、森に響いた。 それにびっくりした久藤は、びくりと飛び起き、無理やり夢の世界から戻された。 「‥もう、大丈夫。降ろして凹次郎くん、ありがとうね」 するすると下りた久藤は、不謹慎にも、また大きく口を開け欠伸を一つすると、目をごしごしとさすった。 「さてと、次は俺か、用意いいか?」 そう言うと、笹倉の体がほのかに光を発した、瘴索結界が発動したのだ。 「んー、いないと思ったら、近くにもう数体いるみたいだね」 「ほォ、やっぱし情報が足りなかったみたいだな、敵は一匹じゃないみたいだ」 「ふふ、いっぱいいた方がいいじゃない。それじゃぁ、空、いぶりだしてあげましょう」 リーゼロッテが詠唱を開始すると、仲間達は彼女を中心に密集する形になった。 「ふふ、ここで使うのは初めてだからわくわくするわね」 詠唱を終えたリーゼロッテがアゾットを振るうと大きな竜巻が森の中に発生した。 「赤く染まれ、降りしきる血涙に撃たれ!」 トルネード・キリクが発動するとほぼ同時に、空が裏術・鉄血針を発動する。 地面から生えてきた針から、大量の血が噴出された、それは竜巻の風に乗り、上空へと押し上げられる。 「あわわっ。皆さん凄い技をお持ちなのですねぇ〜‥‥ふぁ」 久藤は相変わらず、呑気に欠伸を一つ。 竜巻が止まると、無風地帯の木を除いて、半径30メートルの木々はなぎ倒されており、みるも無残な光景になっていた。 そして、少し時間がたつと、紅の雨がざぁと降り、森に赤い色を施した。 「んー、残るは運よく無風地帯に入っていた奴が数匹だな」 先ほどと同じように笹倉が瘴索結界を発動し、的確に無風地帯の敵の場所を指示した。 開拓者たちはその指示を頼りに、赤い血のついた敵を探し出し、それを倒していった。 竜巻の起きた場所から、少し離れた森の中。 大きな二つの眼がきょろきょろと、忙しなく動きながら、開拓者が戦っている場所まで、ゆっくりと近づいていた。 ● 「よしこれで最後ー」 森の中へ逃げようとした小さな目玉のアヤカシを追いかけ、沖田の薙刀がこれをとらえて、切り倒した。 笹倉の瘴索結界と、空の心眼によって、戦闘は難なく終わった。 「対策を取れば、恐るるに足らぬ敵でござったな」 もう戦闘は終わったと、凹次郎は煙管に手を伸ばし、将門は刀を鞘へ収めると、大きく息を吐き、集中力を解いた。 眠たそうだった久藤も、戦闘がはじまると、眼光が鋭くなり、まるで別人にでもなったかのように戦っていたが、今や見る影もない。また一つ大きな欠伸をして、眠たそうに眼をこすっている。 「カエル、じゃなくて、カメレオンか」 倒したアヤカシが倒された瞬間擬態能力がなくなるようで、それを見た沖田が屈みながら、それを観察していた。 村雨も、腰を曲げ、沖田に影を落としながら、同じようにそれを見ていた。 「んー、小さいやつばっかりだったなぁ、大きいって感じのは一匹も。ん、小さい?二つの小さな‥」 「おい村雨、それ以上考えない方が身のためだと思うぞ?」 沖田がまたかとばかりに村雨を睨みつけた。 「お二人さんよォ、いちャつくンだったら、依頼の後で、ん?」 苦笑しながら、じゃれあっている二人に注意を言おうとした空の視界に、少し違和感を感じた。 気のせいかとよく見ると、薄暗い森の中から、きょろきょろと忙しなく動く何かが、それは忙しなく動いているのだが、じゃれついてる沖田達を見ていることは確かだった。 「沖田ァ!村雨ェ!すぐそこから離れろッ!」 空は、咄嗟に自分が叫んだことに驚いた。 だが、それは彼の持つ自己生存と言う本能がさせたもの、あいつはやばいと本能で感じ取ったようだ。 「え?」 沖田が後ろを振り向こうとしたら、村雨が彼女を腕をつかみ、後ろへと無理やり投げた。 瞬間、村雨は、腹のみぞおち辺りに大きな衝撃を感じる。 分かっていたから、力を入れて踏ん張っていたが、思っていたよりも衝撃が強く、軽くだが後ろへ飛ばされた。 「二人とも、村雨達より前にでるなよ」 「わかっているでござるよ」 先程まで、気を抜いていた開拓者たちだったが、すぐさま柄に手をかけ、戦闘形態に戻った。 「おい、村雨大丈夫か?」 アヤカシに警戒しながら沖田は村雨のことろまでゆっくりと下がる。 受け身を取ったとはいえ、村雨はまだ痛みを感じながら、立ちあがった。 「大丈夫だって、野郎はしらねぇけど、女の子の盾にはなるほどなんだぜー俺。こんなんでやられねぇよ」 「そうか、無事ならいいんだ」 ホッと胸を撫でおろす沖田。 村雨は大きく深呼吸すると 「うおお〜〜俺は爆もぷにもぺただってボインは全部大好きーだーー!」 この咆哮である。 「よっしゃー、やる気出てきたぜ!」 あれでやる気が出るようである。 先程の咆哮にピクリと反応したアヤカシは、ゆっくりと薄暗い森の中から、リーゼロッテによって木々がなぎ倒され、光が差す場所に出てきた。 「あら、ネタが割れたからって力で倒そうというの?馬鹿なのか利口なのかわからないわね」 光が当たる場所に出て、そのアヤカシの大きさを実感できる。 先程までは、大人の手二つ分の大きさのカメレオンだったのだが、このアヤカシの大きさは、目玉から推測すると、それとは比にならない大きさである。 アヤカシと開拓者の間に静かな空気が漂う。 「これでもくらうがいいでござる!」 凹次郎がそれを破るように袋を投げる。が、それは空中で突然消え、がちゃんと大きな音を立て、投げた所とは反対の木にあたり、白い白墨の粉を撒き散らし、また大きな音を立てて重りが地面に落ちた。 すると突然、沖田の持っていた薙刀が引っ張られた。 最初は驚いた沖田だが、これはしめたと力が一番加わっているところ掴む、するとぬめりとした感触があり、沖田は踏ん張るように足に力を入れた。 「こいつ、離すもんか!」 しかし、敵の方が力は強いようで沖田はずるずると、アヤカシに近づいていった。 「そこかぁ!」 その隙に一気にアヤカシに近づいた将門がアヤカシと沖田の間の空間を一刀両断。 沖田は尻もちを着き、アヤカシは少し怯んだように見えた。 隙をついて接近したのは将門だけではなく、あの眠そうな姿からは考えられない身軽さで、久藤がアヤカシに近づいていた。 「何時もはこんな花さんですが‥――やる時はやるんです、よっ!」 と、大きく振りかぶりアヤカシに一撃を加える。 それに続いた凹次郎の長柄槌が、その傷めがけ振り下ろされた。 そして止めにと、リーゼロットのアークブラストがアヤカシを襲った。 ● 「その、村雨。ありがとな‥」 「ん?」 戦闘終了後、仲間達が周りを警戒する中、沖田が小さな声で、村雨に語りかけていた。 「‥‥あの時、守ってくれてありがとな」 「あぁ、きにすんなって、俺が勝手に盾になっただけだからな。しかし、最後のは本当に大きかったよな」 ぴくり。 「だが、嵐たん、そう気を落とすことはない」 ぴくりぴくり。 「小さくだって需要は」 「チビチビっておまえはあたしを馬鹿にしてんのか―!」 彼女が放ったグーは、回転が加えられながら、彼のみぞおちを見事にとらえた。 彼にとっては、未だに傷が癒えていないみぞおち、しかも今は気を休めており、完全に予想もできなかった出来事。 彼、村雨によって開拓者たちは、依頼人たちが住む村で一泊して帰ること余儀なくされた。 他にアヤカシがいないか調べ終えた開拓者たちを見て、村人たちはさぞや壮絶な戦いがあったのだろうと想像した。 なぜらな、笹倉の背には幸せそうに寝る久藤が、そして、凹次郎の背には、気絶した村雨がおぶられていたからである。 |