コスモスと過ぎた名月に乾杯
マスター名:秋月雅哉
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 4人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/10/24 22:12



■オープニング本文

●名月は過ぎたけれど秋の夜長に月見をしない手はない
「お月見と、コスモスを眺めにいきませんか」
 せわしなく人が行きかう開拓者ギルドの一角、いつものようにサボりモードに入っているらしい宮守 瑠李(iz0293)は緑茶の入った湯呑を両手で包んで暖を取りながら開拓者に声をかけていた。
「前回、私がお話ししたコスモスに関する話はすれ違いと無頼漢のせいで悲恋になってしまったわけですが。秋にしか見られない花の思い出がそれだけでは寂しすぎますからね。コスモス畑を見つけてきたんですよ」
 それで、皆さんもよかったら、と思いまして。
「近くに紅葉と滝が名所として売りに出ている観光地がありますからね、食べ物の現地調達も屋台で売られているような簡単なものでしたら可能ですよ。紅葉の名所の方に足を伸ばしてもまた違った秋を見つけられるかもしれませんね。子供の足でも十分かからない距離なので両取りもできるかと思いますし」
 昼頃現地に着くようにして昼は紅葉狩りとコスモスを楽しんだ後夜は月見酒なんていかがですか?
 縁談攻撃が最近はなかったのか、いつもより生き生きとした、というかうきうきした様子の瑠李。
「紅葉と色とりどりのコスモスと、名月の時期は過ぎてしまいましたが月と。秋を満喫しにいきませんか?」


■参加者一覧
礼野 真夢紀(ia1144
10歳・女・巫
シルフィリア・オーク(ib0350
32歳・女・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
雁久良 霧依(ib9706
23歳・女・魔


■リプレイ本文

●とりどりの秋の桜と、燃えるような赤と
 コスモス畑は若干盛りは過ぎたようだがそれでも色とりどりのコスモスで華やかに彩られていた。細い茎が少し強めの風に揺れ、花で作られた色彩の絨毯が風の方向になびいては元に戻る。
 ピンクに白、落ち着いた赤。オレンジや周りは淡い色合いで中心が濃い色になっているもの。同じ色でも濃淡がそれぞれの花によって微妙に、場合によってはかなり違うのでただ眺めていても心が和む美しい光景が広がっていた。
 礼野 真夢紀(ia1144)はオートマトンのしらさぎと一緒に待ち合わせ相手を花畑から少し離れた場所で待っていた。
『……あ、こすず』
 シルフィリア・オーク(ib0350)が同伴した人妖の小鈴を見てしらさぎが小さく手を振って挨拶する。
「ああ、シルフィさんの朋友ちゃん、薔薇園で逢いましたっけ。お元気でしたか?」
 せっかくの機会だから秋の綺麗な景色を小鈴にもみせてあげたいという思いとまだまだ人見知りがちな小鈴が人に慣れるいい機会になるのでは、と連れ出したシルフィリアだったが小鈴がしらさぎと真夢紀を見て嬉しそうに手を振り返したのを見て同伴させてよかった、と胸をなでおろしたのだった。
「お弁当を作ってきたのであとで食べましょうね」
 料理上手な年下の友人はこんな時にも抜かりがない。
「少し離れてるみたいだけど屋台も出てるらしいし、屋台での買い食いの分はご馳走しちゃう。お弁当は夜の月見の時用にとっておいて昼ご飯は屋台にしない?」
「え、でも……」
「遠慮しないの。材料費だってただじゃないんだしご馳走して貰ってばっかりじゃ年上のメンツが、ね?」
 悪戯っぽく笑って一同を率いて屋台が出ているという紅葉の名所の方へ歩き出すシルフィリア。
「じゃあせっかくなのでお言葉に甘えて……ご馳走になります」
「うんうん、人間素直が一番」
 そういうシルフィリアの笑顔は来年にならなければ見ることのできない夏の太陽のように、あるいは太陽によく似たひまわりのように明るく輝いている。
 胴乱に財布を入れてスマートに支払いができるように準備をすると紅葉の名所と案内板が出ていた方へ連れ立って歩き出す。
「そういえば今日も小鈴ちゃんおめかししてるんですね」
 秋らしい色合いで落ち着いた雰囲気にまとめられた小鈴の衣装に目を留め真夢紀がほめると小鈴は照れたようにシルフィリアの陰に隠れてしまったが小さくお礼を言うようにお辞儀を返したところを見ると褒めてもらったのがとても嬉しかったのだろう。
「うん、折角汚れる心配のないお出かけだしね。あたいが着飾らせたいってのもあるんだけどさ。可愛いから色々着せてみたくて」
 これじゃあ初めて女の子を育てる母親みたいかな、と苦笑交じりに答えたシルフィリアのセリフに真夢紀もしらさぎも首を振って否定した。
「素敵なことだと思いますよ。朋友だってかけがえのない家族ですから」
「こすずも、シアワセそう」
 そう? とシルフィリアが小鈴に目を向けるとこっくりとうなずきが返ってくる。
 それだけでは足りないと思ったのかぎゅっと抱き付いてきた小鈴を抱き留めて髪をなでるとシルフィリアはこの上なく幸せそうに微笑んでありがとう、と呟いた。
「お肉の串焼きにカットフルーツに……あ、米粉で作った生地に具を挟んだものなんかもあるのね。食べたいのがあったらどんどん言ってね。遠慮はなしよ」
「ジルべリア風の料理のアレンジも結構あるんですね。ガレットみたいなのもあるみたいですし……生地も色々……」
 舌が肥えている真夢紀は美味しいものを食べるのが好きなのもあって店を選ぶ目つきが真剣だ。
 遠慮しているのもあるのかもしれないがいくら食べるのが好きでも物理的に食べられる量に限りがあるというのもあるだろう。夜には手作りの弁当も待っている。
「まゆちゃんは食べ物見ると目つきがかわるよね。胃袋の限界、挑戦してみる?」
「ちょっと悩んでます……思ったより色々な屋台があるので」
「確かにねぇ。お菓子の屋台も結構あるし。大体歩きながら食べられるものだけど焼きそばとかもあるし。迷うところだよね」
 そういって屋台をみるシルフィリアの目も割と真剣だ。
 暑い季節が過ぎ去り、実りの季節ということもあって美味しい食べ物は多い。観光しながら食べる料理はいつもと違う味がする気がするということもあって悩むのもまた楽しみの一つ。
 気になるものを分け合って少しずつ食べる方針で色々買い込むと紅葉を楽しみながらコスモス畑へと戻る途中、食べ物の屋台ではない屋台に目が留まった。
 髪飾りや編み紐で模様を編み込んだミサンガなどを取り扱っているようで折角だからと覗いていくことに。
 紅葉の季節ということもあってか紅葉をモチーフにしたアクセサリーもいくつか置いてある。
 シルフィリアが目を留めたのは紅に近い、濃い橙の紅葉と黄色の紅葉がついた髪留めだった。
 対になっているらしく濃い橙の葉の方が大きいものと黄色い葉の方が大きいもの、二つが並べられている。
(小鈴とペアで買ったら喜んでくれるかな……)
 そう思って小鈴の方を見ると小鈴の視線の先もその髪留めが置いてあるスペース。
「すみません、その髪留め二つとコスモスが中心についてるリボンブローチ一つ」
「はいよ。包むかい?」
「つけていきたいので……」
「美人さんだからまけとくよ」
「有難う」
 白いコスモスのコサージュをリボンの結び目を隠すように置き、リボンは淡いピンク色のリボンブローチと小鈴も見ていた髪留めを両方買うと驚いたように自分を見上げる小鈴の髪に髪留めを付けるシルフィリア。
「紅葉も綺麗だったしコスモス畑を見た記念にもなるし……お揃いは嫌だった?」
「ううん、嬉しい。ありがとう、シルフィリアお姉ちゃん」
 あどけなく笑う小鈴の頭をなでて真夢紀に立ち止ったことの詫びを言おうとすると真夢紀は真夢紀で対になったような色合いのミサンガを購入してしらさぎに結んであげているところだった。
「やっぱり記念品って欲しくなりますよね。シルフィさんの選んだ髪留めとリボンブローチ、可愛いです」
「まゆちゃんたちの選んだミサンガもね。さ、コスモス畑に戻って秋のお花見を楽しみましょう?」
『アキもオハナミ、できるのね』
「紅葉狩りとセットだったけどね。滝で遊ぶのは夏かな」

 リィムナ・ピサレット(ib5201)と雁久良 霧依 (ib9706)は泰大学の寮のルームメイトであると同時にリィムナの姉が霧依にリィムナの躾を頼んでいるという間柄でもある。
 もっと親密になっていろいろしたい、と思っている霧依だがリィムナ本人には内緒だ。
 コスモス畑を散策した後小腹がすいた二人は紅葉の名所の方へと移動して紅葉狩りをしつつ屋台でお腹を満たすことに。
 コスモスの匂いを嗅いだり自然の中をはしゃいで駆け回り、落ち葉をかき集めて葉っぱのシャワーを作り上げたりと元気いっぱいのリィムナを目を細めて見守る霧依。
「リィムナちゃんは元気いっぱいねぇ♪」
「あはは、滝があるよ♪ とうっ!」
 ナディエで跳躍した後水蜘蛛で水面を器用に歩き、滝に巻き込まれる直前で跳躍して帰還したりと秋の自然を満喫しているようだ。
「もう、転ばなかったからよかったけれど転んでいたらびしょ濡れになっていたわよ? 目が離せないわねぇ♪ もう一回やるつもりなら気をつけなさいね?」
 霧依がリィムナに声をかけるとえへへ、と満面の笑顔。
「もしびしょ濡れになったら霧依さんに暖めてもらうー♪」
「あらあら、リィムナちゃんったら大胆♪」
 楽しげに笑いさざめきながら屋台でそれぞれ気になるものを買い込み座れる場所をゴザを敷いて確保すると食事を雑談を交えつつ楽しむ二人。
「お月見に備えて寝たいから霧依さん、膝枕してー♪ えへへっ」
「お月見まで時間があるけど……あら、寝たいの? ふふ、いいわ。お膝で休んでなさい♪」
 頭や背中を撫でながら膝を提供する霧依と霧依の膝枕で夜までひと眠りするリィムナ。
 それぞれが楽しく時間を過ごすうちに秋の日は釣瓶落とし。あっという間に日が暮れて月が顔を出したのだった。

●月を眺めて
「リィムナちゃん、月が出たわよー」
「んん、よく寝たー……あ、羽織かけてくれたの? 霧依さんありがとう!」
「可愛い可愛いリィムナちゃんが風邪でも引いたら大変だもの、どういたしまして♪」
 寝ていたせいで少し乱れてしまったリィムナの髪を上機嫌で整えてやりながら霧依がにっこりと笑って言葉を返す。
「さてお月見ね♪ 私もお酒を持ってきたし、乾杯しましょうか♪ ん〜いいわねぇ♪」
「立派なお月様が出たね〜♪ そーれぽんぽこぽん♪」
 狸の真似をして腹鼓し踊るリィムナを見てクスクスと楽しげに笑いながらお酒を飲む霧依をさりげなく観察する。
(……大人はお酒飲んでずるいなぁ。この間、とある場所で飲んですごく気持ちよくなったんだよね〜。そうだっ)
「霧依さん、霧依さん、ちょっと花摘んでくるね」
「ええ、気を付けてね。暗いから」
「はーい」
 離れたところでラ・オブリ・アビスを使用してもふら様の姿を取るリィムナ。
「もふ〜通りすがりのお酒好きもふらもふ! お酒欲しいもふ♪」
「もふら様? ふぅん……いいわよ、どうぞ♪」
 お酒を差し出す霧依にリィムナの扮したもふら様は上機嫌で盃を開けようとする。
「ねぇ、もふら様。今日一緒に遊んでるリィムナちゃんって女の子なんだけどね。近頃おねしょの回数が増えて今朝で二週間連続でしちゃったのよ♪」
「へっ? 違うよ! まだ十日しかしてない! ……あっ」
「……やっぱりリィムナちゃんだったのね。騙してお酒飲むだなんて……ちょっと夜の紅葉狩りに行きましょうね」
 横抱きにして物陰にリィムナを連れていきお尻を叩く霧依。
 紅葉の様な赤い手形がお尻にたくさんついたところでお仕置き終了。
 お仕置きが済んだ後は真夢紀たちにも声をかけて手作りのパンプキンパイを食べることに。
 まだひりひりするお尻を合流したメンツに気づかれないようにそっとさすりつつパイを食べさせて、とねだるリィムナと甘えん坊ね、と笑って応える霧依。
「甘くて美味し〜い♪ ……霧依さん抱っこして♪」
「いいわよ、いらっしゃい♪」
「ん……柔らかくて気持ちいい」
 そのまますやすやと眠ってしまうリィムナを見て霧依は穏やかに微笑む。
「……寝ちゃったわ♪ 本当に可愛い♪」
 真夢紀がしらさぎと作ってきたお弁当も好評で図らずしも女子会の呈を相した秋の行楽日和は幕を閉じたのだった。