Ψ氷の街の中でψ
マスター名:霜月零
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/01/29 00:53



■オープニング本文

「あらあら、大胆ねぇ?」
 ギルド受付嬢・深緋はふふっと不適に笑う。
 ジルベリア最北領・スウィートホワイト。
 その首都ホワイティアは、現在上級アヤカシ刹血華に占拠されていた。
 街の周囲はスノードームのように氷に覆われ、元露店通りのあった広場には氷の城がそびえ建つ。
「余裕ぶっこいてる場合じゃねぇだろ、逃げろよ!」
 マッチョ開拓者、マスト=ムスケルが叫んで、深緋に向けられた刃を自身の得物で止める。
 刃を止められたアヤカシ―― 氷鎌鼬は、チチチッと苛立たしげに鳴いて飛びのく。
 飛び退きながら放たれた氷の刃を、ムスケルは全てグレートアクスで叩き落し、その筋肉隆々の体躯からは想像もつかない素早さで、氷鎌鼬の身体にアクスを叩きつける。
 粉々に砕けた氷鎌鼬はそのまま瘴気へと還って逝く。
「お見事。やーっぱり避ける必要なかったわねぇ」
 極上の笑顔でパチパチと拍手を送る深緋。
「お前なぁ……」
 ぐったりと力尽きそうになるムスケル。
 ムスケルが守らなければ、志体のない深緋は即死もありえたというのに。
「ほらほら、くたってる場合じゃないみたいよぉ?」
 深緋がギルドの入り口から外を指差す。
「……冗談だよな」
 ムスケルのこめかみに冷や汗が流れる。
 その目線には、巨大な氷の鎌鼬。
 数十匹の氷鎌鼬とともに、ギルド前に現れたのだ。
「大丈夫大丈夫、ほら、ギルドにある消耗品いくらでもあげるから。さくっと倒してきて頂戴?」
 焙烙玉を、よいしょっとカウンターに持ち上げる深緋。
 そして同時に。
 ギルドに続々と被害報告が寄せられる。
 ―― ホワイティアのあらゆる場所で氷鎌鼬が出現したと。


■参加者一覧
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
ユリア・ソル(ia9996
21歳・女・泰
ラシュディア(ib0112
23歳・男・騎
浅葱 恋華(ib3116
20歳・女・泰
綺咲・桜狐(ib3118
16歳・女・陰
ジレディア(ib3828
15歳・女・魔
サイラス・グリフィン(ib6024
28歳・男・騎


■リプレイ本文

●現状把握
 それは、突然だった。
 何の前触れもなく、悲鳴が上がる。
 竜哉(ia8037)は即座に鍛冶屋から飛び出した。
 無論、得物を手にする事は忘れずに。
「やれやれ、預けてたもの取りに来たらこれかよ、っと」
 鍛冶屋で研ぎなおしてもらったばかりの霊剣「迦具土」を、すっと横に払う。
 それだけで、竜哉に飛び掛ってきた氷鎌鼬は瘴気と化した。
 まったく敵ではない。
 だがそれは、竜哉にとってだけの事。
 街の至る所から上がる悲鳴は、尋常ではない。
「何が起きている……?」
 脚絆「瞬風」の加速を利用して、竜哉はさらりと手近な屋根の上に跳ぶ。
 瞬間、巨大なアヤカシ―― 大氷鎌鼬の姿が竜哉の目に飛び込んだ。
 竜哉は全力でギルドへと走る!


「さてと。遊んであげるからかかっていらっしゃい」
 開拓者ギルドで事件に遭遇したのは、ユリア・ヴァル(ia9996)だ。
 ギルドの入り口で、最大級の氷鎌鼬と小型の氷鎌鼬が立ち塞がる。
 神槍「グングニル」を構え、巨大なアヤカシを前にユリアは少しも動じない。
 開拓者ギルドに偶然居合わせた開拓者達も、直ちに戦闘体制をとる。
「深緋これ借りるわよ!」
 深緋がカウンターに並べた焙烙玉を片手で掴み、ユリアはギルド入り口に向かって投げつける。
 派手な爆発音と爆風に怯んだ氷鎌鼬の脇をすり抜け、ユリアはギルドの外に飛び出した。


 鈴木 透子(ia5664)は目に付いた手近な建物の中で、一番高い屋根の上によじ登る。
(大きなアヤカシは三体。一体はギルドのほう。小さい集団はここから近いのは3集団迫っていますね)
 ざっと見渡すだけでも、相当な数のアヤカシだ。
 華やかな門の向こうに広がるのは遊郭だろうか。
 二体の大氷鎌鼬が出現している。
 透子は屋根から屋根に飛び移り、少ずつ高度を下げて戦いやすくしながら、二体の大氷鎌鼬に向かって屋根の上を走り出す。


「なんなんだ、この状況は?!」
 ラシュディア(ib0112)は思わず叫ぶ。
 無理もない。
 街を突如として氷が覆ったと思ったら、今度は氷鎌鼬の集団に出くわしたのだ。
 動じるなというほうが無理である。
「お二人とも、よろしくお願いいたします」
 ラシュディアと共にいたジレディア(ib3828)は、サイラス・グリフィン(ib6024)とラシュディアに頭を下げる。
 幾分冷静に見えるが、どうだろう。
 最愛の人が側にいるなら、どんな状況でも大丈夫なのかもしれない。
「こいつは……厄介だな」
 サイラスは軽く眉をひそめる。
 顔見知りと合流できたのが奇跡のような混乱。
 逃げ惑う人々を急ぎ、屋内へ誘導させながらサイラスは氷鎌鼬の集団進軍を食い止める。
 

 遊郭街。
 そこにある遊郭『露甘楼』で、幸せな時間をぶち壊された浅葱 恋華(ib3116)はブチ切れる。
「もぉ〜っ! 折角和んでいたのに、よくも邪魔したわね」
 真っ赤な垂れ犬耳が逆立ちしそうな勢いで、恋華は飲んでいたお酒を思いっきり氷鎌鼬にぶちまける。
 本当に、気持ちよく飲んでいたのだ。
 親友の妹が注いでくれるお酒も、一緒について来た綺咲・桜狐(ib3118)の笑顔も、最高の時間だったのに。
「はむ、せっかく油揚げを味わっていた所なのに……。寒い風景に冷たそうなアヤカシは気分的に寒さ倍増ですね……」
 恋華の激怒をぴりぴりと肌で感じながら、桜狐は露甘楼の用心棒達に朽黄達の護衛をお願いする。
 もっとも。
 桜狐と恋華、二人掛かりで敵に当たるのだ。
 露甘楼の中に、一匹たりとも氷鎌鼬の入れる隙などあるはずがない。
「さぁ、行くわよ桜狐! 揃って此の周辺から叩きだす!」
「氷のアヤカシなら炎が効果的……だといいのですけど。火炎獣撃ちこみます……。がおー……」
 恋華の怒りに押されつつ。
 桜狐は自身の分身にも思えそうな九尾の狐型の式を出現させ、恋華に合わせて周囲を炎の海に巻き込んだ。


●ギルドと露甘楼
「よく言うだろ? 『来た時よりも美しく』ってね」
 死屍累々、一網打尽。
 そんな言葉が似合う勢いで、竜哉の後には草木の一本も残らぬほどにアヤカシが消え失せていた。
「いい所に来てくれたわね。このデカブツを倒すのを手伝って!」
 ギルドに駆けて来た竜哉を見るないなや、ユリアは叫ぶ。
 ユリアの前には、最大の氷鎌鼬。
 彼女はギルド内の開拓者達を街の救助へ向かわせる為に、足止めを買って出ていた。
 これによって事態を理解した多くの開拓者達が、街へといち早く向かう事が出来た事は大きい。
 街への被害が最小限に留められるだろう。
「流石だね」
 中級アヤカシと思しき大氷鎌鼬を前に、ユリアはたった一人でも引けを取らない。
 雑魚と呼んで差し支えない氷鎌鼬を、ギルドに残っていた開拓者達が追い払っているとはいえ、目に見える傷は一切負っていないのだ。
 竜哉は感嘆のため息を漏らしながら、大氷鎌鼬に苦無を投げる。
 風を斬り、ユリアに集中していた大氷鎌鼬の足を貫き、其のまま地面へ固定する。
 大氷鎌鼬の足の甲は、苦無でホワイティアの石畳に縫い付けられた。
 チチチッと鳴いて、氷の刃をユリアと竜哉に放つ大氷鎌鼬。
 だが無駄だ。
「あなたの最大の武器は素早さよ。その武器を失ったいま、あなたに勝ち目はないわ」
 幾重にも放たれた氷の刃を、ユリアは神槍をくるりと回して叩き落とし、アクセラレートを用いて一気に間合いをつめる。
「悪足掻きはスマートじゃないね」
 竜哉は氷の刃の大半を姿勢を下げる事で交わし、交わす事で街へ被害のありそうなものは即座に剣で切り捨てる。
「終わりよ!」
 ユリアの槍が、大氷鎌鼬を貫く。
 彼女を振り払おうと振り下ろされた前足は、竜哉の苦無が弾いた。
 
 
「あれは、青い狼煙?」
 サイラスは氷鎌鼬をロングソードで切り捨てながら、ギルド方面で打ち上げられた狼煙に気づく。
「ギルドは討伐完了したようですね。ならば、私達は街をこのまま護りましょう」
 狼煙銃を背負いながら、氷鎌鼬の集団にアークブラストを撃ち放ったジレディアに、ラシュディアも頷く。
(民の盾となり正義を貫く、それが……騎士になりたかった男の意地ってやつだな)
 超越聴覚で氷鎌鼬の場所を確認しながら、ラシュディアは思う。
 一つでも悲鳴を止められたら。
 一人でも、その命を護れたら。
「遊郭街に巨大な氷鎌鼬が二体も出現しているらしい。ギルドにも出ていたようだからギルドに向かうつもりだったが、急ぎ遊郭街に向かおう」
 街人を逃がしながら得た情報に、サイラスはカフィーヤを巻き直して心を落ち着ける。
(刹血華の仕業かとも思ったが、あのアヤカシがする事にしちゃ芸がない。遊び心もなくただ人を襲う無意味なアヤカシをあれが好むとは到底思えないからな)
 氷に覆われた空を、そしてそれを突き抜けるようにそびえ立つ城を、遠く見つめる。
 刹血華の仕業でなければ、アヤカシ達は指揮の取れていない可能性が高い。
 現に、集団で行動している小型の氷鎌鼬ですら個々の攻撃はまばらで、サイラス達の敵ではなかった。
(遊郭街に二体?! 露甘楼、セルバスタハブの顔見知りたちは無事か……焦るな、これは。特に、あのシノビ、主人を護って無茶をしていないといいんだけどな)
 ラシュディアの脳裏に、知り合いの顔が次々と浮かぶ。
 三人、全力で遊郭へと走り出す。


「黄泉より這い出る者……上から援護します」
 透子が遊郭に辿り着いた時、そこでは既に恋華と桜狐が激しい戦闘を繰り広げていた。
 二人が大氷鎌鼬に集中出来るよう、透子は屋根の上から高位式神を召喚しては氷鎌鼬を一瞬で呪い殺していた。
 そして粗方氷鎌鼬を消し去ると、大氷鎌鼬から見えない位置で、二体のうち、より獰猛そうに見える一体に狙いを定める。
(二体同時は困難です。一刻も早く、一体に絞らないと)
 透子の放つ火炎獣が、一体の気を引き、その隙を恋華が捉える。
「ほぉら! 貴方達の相手は、此の私がしてあげるわ!」
 タンッと小気味よい音を立てて石畳を蹴り、恋華の拳が大氷鎌鼬の体に打ち込まれる。
 気功を込めた拳は、大氷鎌鼬の氷の胴に亀裂を走らせた。
「その傷を広げてあげます……がおー……」
 桜狐がすかさず火炎獣を放ち、亀裂を焼き付ける。
 亀裂の入った体を激しく壁に撃ち当て、大氷鎌鼬は悶え苦しむ。
 だが大氷鎌鼬は二体だ。
 一体に集中すれば、もう一体が容赦ない。
 恋華と桜狐に、もう一体の大氷鎌鼬から氷の刃が撃ち放たれる。
 再び恋華は地面を蹴って空中でくるりと回転し、氷の刃を軽々と避けるが桜狐はそうはいかなかった。
「桜狐!」
 恋華の叫びも間に合わず、桜狐の銀色の耳と尻尾が切り裂かれた。
「結界呪符「黒」!」
 屋根の上から透子が叫び、黒い壁を桜狐の前に出現させ、大氷鎌鼬から追撃で放たれた氷の刃は黒い壁に突き刺さる。
「桜狐をよくも傷つけてくれたわね……この代償は高くつくわよ!」
 只でさえブチ切れていた恋華の理性が吹っ飛んだ。
 駿脚で一瞬にして素早い大氷鎌鼬との間合いをつめたかと思うと、拳の連打連打連打!!!!
 自身に向けられ、飛んでくる氷の刃を避ける気もない。
「恋華……危ないです……」
 負傷によろけながら、桜狐が火炎獣で氷の刃を燃やし、透子がもう一体の大氷鎌鼬をもう一度黄泉より這い出る者を撃って足止めする。
 恋華の激打と、桜狐と透子の支援と。
 三人の力で大氷鎌鼬は消えうせる。
 残るは、後一体。
 
 
「あなた達の好きにはさせません!」
 遊郭・セルバスタハブに乗り込もうとしていた氷鎌鼬の集団に、ジレディアがファイヤーボールを打ち込む。
 運よく軌道を逃れた氷鎌鼬は、もれなくサイラスの餌食となった。
 飛んで来た氷の刃を剣で受けてかわし、金色のオーラを纏ったまま、次の氷鎌鼬の集団を相手取る。
(あのシノビは、無事か?)
 サイラスに攻撃が集中しないよう、ラシュディアは手裏剣とロングソードを巧みに操りながら敵陣に切り込む。
 走りながら攻撃を繰り出すラシュディアに、氷鎌鼬も必至に逃げ惑いながら氷の刃を放つ。
 その一刃が、ジレディアに飛んでいくのをラシュディアは見逃さなかった。
「ジレディー!」
 ジレディアを抱きかかえて横に飛ぶ。
 そして氷の刃は、何処からか飛んで来た苦無が弾き飛ばした。
「……」
 ラシュディアと旧知のシノビが放ったのだ。
「無事だったんだな!」
 ラシュディアの笑顔に、頷くシノビ。
 そしてシノビはふっと微笑んで、次の敵へと去ってゆく。
(心配する必要はなかったかな。みんな、きっと無事だ)
 安心感は自信へと繋がり、より一層ラシュディアの力が増す。
  

「透子、無茶をしないで!」
 恋華が叫び、透子を渾身の力で突き飛ばす。
 透子に群がった氷鎌鼬は、そのまま恋華を身代わりにした。
「そんな……っ」
 なにが起こったかわからなかった。
『住民に襲いかかられるより良いと思います』
 そう思い、ワザと隙を作って、大氷鎌鼬が仲間をおびき寄せるように誘導したのは透子だった。
 大氷鎌鼬は残り一体。
 露甘楼周辺にいた開拓者や用心棒の力もあり、圧倒的に有利だと思ったのだ。
 苦しむ大氷鎌鼬が、本当に仲間を呼んだのかどうかはわからない。
 だが苦しむ大氷鎌鼬の鳴声に引かれる様に、氷鎌鼬の群れが次々と現れたのだ。
 無論、迎撃し続けたが数が多すぎた。
 そして。
 透子に襲い掛かる氷鎌鼬の群れから透子を守り、恋華が。
「止めてみせます」
 恋華に群がる氷鎌鼬を黒い壁で遮断し、透子は焙烙玉を投げる。
 焙烙玉の爆風は氷鎌鼬を蹴散らし、爆風は黒い壁に当たり恋華には向かわない。
「恋華に……これ以上攻撃はさせません……」
 桜狐の符が空を舞い、次々と岩に変わり、岩の雨が氷鎌鼬を押しつぶす。
 恋華は残った数匹を拳で粉砕し、透子に駆け寄る。
「無事?!」
「むしろあなたのほうが危険です。ありがとうございました」
 ぺこりと頭を下げる透子にあちらこちらを負傷した恋華は、心底ほっとする。
 街の人々も大事だが、仲間も、本当に大切なのだ。
 だからこそ口調もきつくなる。
 誰一人失いたくないから。
「恋華、治療を……」
 桜狐が治癒符をもってかけてくる。
「まって、まだ一番厄介なのがっ」
 恋華が大氷鎌鼬を睨んで言いかけたその時、
「……我が霊剣に誓おう、聖堂騎士剣!」
「春の芽吹き、光の輝き、大いなる恵みを此処に」
「たとえ命が尽きようとも、民を守り続けるよ」
「守りの壁よ、出現せよ!」
「これで最後かな」
 竜哉が、ユリアが、ラシュディアが、ジレディアが、サイラスが。
 みんなが、救援に駆けつけたのだ。
 8人の開拓者を前に、手負いの大氷鎌鼬が出来る事といえば、足掻く事だけ。
 だがそれも一瞬の事。
 大氷鎌鼬が紫の瘴気と還るのに、数秒とかからなかった。
 

●氷の街の中で
 アヤカシを消し去ると、露甘楼遊女達によるおもてなしが始まった。
 もともといた部屋にいったん戻る桜狐と恋華。
 そこには、食べかけの油揚げが。
「ん、せっかくあるのに残すのは勿体無いのです……。油揚げ大事です……」
「だめよ?」
 冷め切ってしまった油揚げを食べようとする桜狐を、恋華がぴしゃりと止めた。
「恋華……あんまりです……」
「違うわよ。ちゃんと美味しく作り直してあげるっていってるの。冷たいのより、あったかくて美味しいほうが嬉しいでしょ?」
 恨みがましく上目遣いで恋華を見つめる桜狐に、恋華はウィンク。
「恋華……大好きです……っ」
 うりゅっと嬉しそうに抱きついてくる桜狐を、恋華はよしよしと抱きしめた。
 用意された宴会場では、
「やっつけてくれてありがと〜♪ いっぱいご馳走するんだよ」
 露甘楼の朽黄が、嬉しそうに透子にご馳走を勧める。
 見た目的にお酒を勧めるのは躊躇ったのか、透子の前にはフルーツジュースが置かれていた。
 そして竜哉、サイラス、ジレディア、ラシュディアは。
 宴を断り、露甘楼の前で空を見上げる。
 その目線には、氷の城。
「目指すしか、なさそうですね」
 氷の城のその中で待つ刹血華の招待状を、四人はもっている。
 ゆっくりと身体を休める時間はないのだ。
「事情はわからないけれど、最大限援助するわ」
 ユリアの身体が淡く輝き、四人の身体を次々と癒してゆく。
 時間が経てばたつほど、ホワイティアの街の人々は深い恐怖に落ちてゆくだろう。
 四人は其々街の各地へと散らばって準備を済まし、氷の城へと向かうのだった。