Ψ狂い咲きピエロΨ
マスター名:霜月零
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/05/12 12:23



■オープニング本文

「おもちゃが欲しいわ」
 子供のような声だった。
 氷の塔の窓辺に寄りかかり、ソレは水晶結晶を思わせる下半身から氷晶球を取り出す。
 ジルベリア最北領のこの場所から見える風景は、見渡すばかりの氷ばかり。
 氷を好むソレにとっては最高の居場所であったが、物足りないのも事実だった。
「ねぇ、お前達。わたくしを楽しませて頂戴?」
 氷の剣を弄び、窓辺から振り返ったソレは配下と思わしき影に語りかける。
 ソレが振り向くと、氷で出来た髪からパラパラと氷の粉が舞い散った。
 頷いた影の一つにソレは氷晶球を手渡して、満足げに微笑む。
 

 ジルベリア最北領・スウィートホワイト。
 そこにあるホワイティアの町の片隅で、今日も五つ星奇術団と呼ばれ慕われている奇術団が公演を行っていた。
 数多くの露店が並ぶ通りでもあり多くの人々で賑わう。
 軽やかで楽しげな楽師達の曲に合わせて華やかに舞う踊り子達。
 弧を描きながら籠の中の花弁を散らし、歌う歌い手。
 五つ星奇術団が今日の為に雇った臨時メンバーだ。
 誰もが魅入り、楽しんでいた。
 そして公演も中盤に差し掛かったとき、それは起こった。
 奇術団の前に氷で出来た衣装に身を包んだピエロが一体、ぽつんと佇んでいる。
 誰もが演出だと思っていた。
 最初に異変に気づいたのは、五つ星奇術団の団長。
 ついで、その仲間達。
 詐欺やスリといった負の世界に一度でも足を踏み入れた事のあるものの定めか、本能的にソレが危険であると理解したのだ。
「逃げるんじゃ!」
 団長が叫び、首をかしげる観客を団長率いる五つ星奇術団の面々が逃がそうとするが間に合わない。

『ゲームをシようよ』
  
 ピエロが氷晶球を掲げて笑う。
 次の瞬間、ピエロの周囲に5体の氷の人形が出現、手にした氷の剣で手近の観客の首を次々とはねた。
 広場に響き渡る悲鳴。
 五つ星奇術団の公演は一瞬にして地獄絵図と化した。

『もっと叫んでオくれよ、あの方のタめに!』

 はねた首をお手玉のように弄び、ピエロがパチリと指を鳴らすと、逃げ遅れた人々の頭上に数字が現れた。

『ロシアンルーレットだヨ。さァ、死ぬのハ誰からダい?』

 ピエロが氷のサイコロを宙に出現させ、楽しげに転がす。
 サイコロの目と同じ数字を持った人々が一瞬にして凍りついた。
 恐慌状態の人々を五つ星奇術団の面々がそれでも必死に誘導してなんとか被害を最小限に食い止める。
 天からの助け―― 開拓者が駆けつけたのは、その直後の事だった。


◆目的◆
 ピエロの撃破。

◆ピエロの能力◆
 レベル:不明
 容姿:氷で出来た道化師の衣装を身にまとっています。氷の仮面着用。
 身長:160cm。
 能力:無痛覚、冷気、氷結、超念力
 超念力は念力で周囲一帯に大量の物を飛び交わせて攻撃したり、念力で相手の四肢を折ります。
 四肢を折るときはピエロの瞳が金色に光り、正面の敵に対して発動します。
 特殊能力:ロシアンルーレット

◇ロシアンルーレット説明◇
 回避不可の範囲攻撃。
 最大6人までを同時にターゲットとします。
 能力が発動するとターゲットの頭上に数字が現れます。
 6ターン。

1)氷結拘束:対象の下半身が一瞬にして凍りつきます。1ターン行動不可。
2)氷刃斬:巨大な氷の刃が対象を切り裂きます。物理攻撃力120。盾や鎧での防御可能。
3)心氷幻:心を惑わされ、仲間を敵と認識してしまいます。抵抗判定あり。
4)千氷剣:千本もの氷の剣が振り注ぎます。範囲攻撃。対象の半径5メートル以内全員。攻撃力:100。
5)氷結弾:巨大な氷の弾丸が対象を貫きます。攻撃力:120。
 5以上の数値が計算後でた場合、−5して判定。
 1〜5までの数値が出なかった場合、下記の効果が順番に発動します。

1回目:ピエロの周囲30メートルの無機物が凍りつきます。6ターン。(開拓者や一般人は凍りません)
2回目:氷人形―― アイスドール二体召還。
3回目:アイスドールの体力回復。
4回目:アイスドールの攻撃力増加。+50。
5回目:アイスドール3体召還。
以降、体力回復。
 なお、ロシアンルーレット以外でのアイスドール召還はありません。

◇数値計算◇

 プレイングに必ず1〜6の数字を入れてください。

例)数字:5
 書かれていない場合、一律『6』とします。
 ロシアンルーレット判定は、藍鼠がサイコロを二度振ります。
 一度目で、どの開拓者の数値を使うかを判定。
 二度目で、その開拓者が選んだ数値と藍鼠の出た数値で、ロシアンルーレットの数値を決定。
例)一度目の数値2。二度目の数値4。
 ID若い順から二番目の開拓者の数値を使用する。
 二番目の開拓者の選んでいる数値が『3』。
 二度目のサイコロの数値4+3=7−5=2
 ロシアンルーレット2番目の氷刃斬が発動します。

◆アイスドールの能力◆
 レベル:12
 身長:1メートル
 攻撃力:150
 命中:260
 回避:150
 防御:120
 能力:無痛覚、疾走、速攻、


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
高崎・朱音(ib5430
10歳・女・砲
サイラス・グリフィン(ib6024
28歳・男・騎
ジェーン・ドゥ(ib7955
25歳・女・砂


■リプレイ本文

●血の海に駆けつけた救世主
「こんな街中でゲームとか抜かす酔狂な輩を野放しにする訳にはいかんな」
 騒ぎに駆けつけたサイラス・グリフィン(ib6024)は嗤うピエロにロングソードを構える。
 逃げ遅れた人々に背を向け、守るように。
「まったく、暇つぶしに来ておったのに無粋なアヤカシじゃ」
 ホワイティアの遊郭に勤める高崎・朱音(ib5430)は、どうやら露店を見に来ていたらしい。
 遊郭にいる時となんら変わらない豪華絢爛なその身形は一際人目を惹く。
「まずは邪魔なアイスドールを何とかしないとっ」
 剣を振り回し襲い来るアイスドールの先制攻撃を避けながら、水鏡 絵梨乃(ia0191)は回し蹴りを食らわす。
 続いて駆けつけた開拓者は更に三人。
「生憎と、赤い雨を降らす道化師はお呼びじゃないんだよ」
 騎士然とした竜哉(ia8037)はけだるげにアイスドールの剣を自らの魔槍で横にあしらう。
 速度こそ速いものの、アイスドールの剣に重みは無いようだ。
(北限の海への興味は尽きませんが、どうやら緊急事態のようですね)
 扇子から砂漠の薔薇に持ち替えたフレイア(ib0257)は広場の位置把握に努め、ピエロやアイスドールから死角になる建物の物陰に身を潜める。
「兎も角、これ以上の被害を出さないためにもアヤカシを討伐しましょう」
 元凶のピエロに向かうべく、ジェーン・ドゥ(ib7955)は肉厚の刀身をピエロに向ける。
 ピエロの周囲を取り囲むアイスドールは五体。
 素早い動きの合間に果たしてピエロを討つ隙はあるのか――。
 全員、挨拶をする余裕などなかった。
 この場に居合わせた開拓者達は、顔見知りもいれば初対面もいる。
 けれどお互いの力量を信じこの血の海の拡大を防ぐべく、未知のアヤカシへと立ち向かう。


●ロシアンルーレット
『おヤおヤ、あの方が喜びそうナ、強いオモチャがやってキたね』
 楽しげに嗤いながら、ピエロは高らかに指を鳴らす。
 次の瞬間、アイスドールの攻撃を迎撃する開拓者達全員の頭上に数字が現れた。
「なっ?!」
 建物の影に身を潜めていたフレイアは驚愕に小さな声を上げる。
 死角を取っていたはずのフレイアにまで数字は刻まれたのだ!
 自らに刻まれた数字を、なぜか全員理解していた。
 ピエロの遥か頭上に輝く氷晶球がギラリと輝く。
『6匹かかったネ! どこかに一人いるならでてオいで、かくれんボは嫌いなんだヨ。ソレはアノ方に見えないからネ!』
 ピエロが氷のサイコロを振るう。
「長引けば此方が不利だし、さっさと倒す事にするか」
 だがサイコロを振るう間にもサイラスがすかさずピエロの背後に回りこむ。
 しかしピエロの首がくるりと真後ろを向いた!
 咄嗟に視界から逃れようとサイラスはカフィーヤを投げつける。
 柔らかく艶やかなそれは大きく広がりピエロの視界を封じ、サイラスが逃げ切るだけの時間を稼いだ。
 空を舞ったサイコロが石畳を転がり、数字が光る。
 直後、巨大な氷の弾丸が水鏡目掛けて繰り出された!
「こいつで防ぐよ!」
 水鏡は咄嗟に手近のアイスドールを蹴りつけ、氷の弾丸に打ち当たらせる。
 瞬間的に繰り出されたその技は青い閃光を周囲に迸らせ、氷結弾に激突したアイスドールは水鏡の攻撃力が加算され、即座に粉々に砕け散った。
 水鏡と同じ数値を頭上に持つジェーンもピエロに咄嗟に構えたが、彼女のほうにはピエロの攻撃は飛んでこない。
 敵を切り替え目の前のアイスドールに一気に距離を詰めた。
「捉えました。逃がしません」
 キンッ……ッ!
 氷の剣と、無名の業物が交える。
 重みのないアイスドールの剣は、けれど速度を乗せた威力がある。
 だがジェーンの持つ得物は良質の刀を更に鍛え上げた一品。 
 肉厚な刀身は重く、アイスドールの氷の剣は亀裂が走り砕け散る。
 そしてピエロのサイコロが再び空を舞い、新たな数字が刻まれる。
『世界ハ氷に囚われてこそ美しいんだヨ!』
 ピエロの声と共にジェーンの下半身が一瞬にして凍りついた!
 身動きのとれぬジェーンに、すかさずアイスドールが攻撃を繰り出す。
「直線的だね。感情も、動きも」
 竜哉の魔槍がジェーンを狙うアイスドールの足を薙ぎ払った。
 グシャリと無様に地面に倒れ込んだアイスドールは、けれど即座に立ち上がり、竜哉に疾走!
「その攻撃は、私が止めますわ。……輝く数多の星々よ、かの敵をその業炎にて焼き尽くしたまえ……メテオストライク!」
 フレイアの呪文が完成し、アイスドールに、そして元凶たるピエロに無数のファイアボールが降り注ぐ!
 広範囲に及ぶその術はすべてのアイスドールを溶かしつくし、そしてピエロの仮面を消し去った。
 一瞬の熱風がジェーンと竜哉、サイラスと朱音、そして水鏡を襲うが一切の負傷はない。
 フレイアの高度な魔術は敵のみを的確に燃やし尽くす。
『まダまだ、楽しませてもらウよ!』
 仮面が溶けてもピエロはやはりピエロのままだった。
 アイスドールが消え去ってもその余裕は消えはしない。
 再び刻まれたサイコロの数字がサイラスに、そして側にいた朱音をも巻き込んで 数百数千の氷の剣を降り注ぐ。
 サイラスは即座に防御体制を取り最低限の負傷を負うに過ぎなかったが、問題は朱音だ。
 フレイアの術に合わせて自らのスキルを重ねようとしていたから、防御が取れない。 
 水鏡が咄嗟に瞬脚で朱音に駆け寄り、氷の剣を蹴り砕くが足りない。
 すべての氷の剣を砕く事は出来ず、朱音はもちろんの事、水鏡も氷の剣に貫かれた。
 美麗な衣装を自らの血で染め石畳に倒れる朱音に、ピエロは満足げに微笑んだ。
『血! 血! 血! もっと迸らせてオくれよ、あの方は褒めてクださる!』
 けらけらと楽しげに嗤うピエロには隙がない。
 パチリと指を鳴らすと周囲に散らばった露店の雑貨がピエロを守るように渦巻き、開拓者達を次々と狙い打つ!
 そんな中、傷だらけの二人にフレイアが駆け寄り治癒を施す。
 淡く輝く白い光を見たピエロは、
『なニをしているのサ! そんな事をシたら血が止まるジャないか!』
 フレイアに目を合わせて――。
「あなたこそ何をしている?」
 竜哉がその長い得物を投げ、ピエロの上空に煌く氷晶球を突き刺した。
 砕け散った氷晶球の欠片がピエロに、そして開拓者に降り注ぐ。


●狂い咲きピエロ
『あの方のモノを、よくモ!』
 竜哉に氷晶球を壊されたピエロは、気がふれたようにわめき散らす。
 露店の武器防具が空を舞い、ピエロの周囲を渦巻き、鋭い武器が一斉に竜哉へと討ち放たれる!
「素早い訳ではないけどね」
 サイラスが念力による武器の攻撃を避け、ピエロに一気に近づきその身体にスタンアタックを決める。
 竜哉への怒りで周りの見えなくなったピエロはサイラスの接近に気付けなかった。
 そして竜哉へ放った武器も、
「さっきはようやってくれたのぅ? どれ、これは礼じゃ。お釣りはいらぬぞぇ」
 フレイアに回復された朱音が武器とピエロを一直線に捕らえ、メガブラスターを撃ち放った。
 念力で動かされているだけの武器は消し飛び、怒りに震えるピエロをも吹き飛ばす!
「その隙は見逃せないよっ」
 朱音と同じくフレイアに回復された水鏡が瞬脚でピエロに駆け寄り、そして自慢の蹴りを繰り出す。
『オモチャの癖に……オモチャノクセニ……ッ!!!』
 ピエロの瞳が金色に輝いた!
 決して動きを止めなかった水鏡は本能的にソレを避けた。
 次の瞬間、水鏡の裏にあった街路樹が真ん中からボキリと折れた。
「貴方に相応しい結果ををご用意しましょう」
 ジェーンが大量の自身のオーラを纏わせ、ピエロに最大の一撃を食らわす。
「あなたの奇術は笑えない」
 竜哉の魔槍が最後の一撃となり、ピエロの断末魔が広場に響いた。


●エピローグ
 騒ぎが収まったのを知り、町の人々が戻りだした。
 自分の露店を見て嘆く者、家族を失い嘆き悲しむ者、ただ騒ぎを聞きつけて集まった者。
「あまり力仕事は好きではないが、とりあえず暇じゃしの。暇でなければ手伝ったりなぞせぬ」
 そんな憎まれ口を叩きながら、朱音は即座に露店の片づけを手伝いに店主に駆け寄った。
 豪奢な自身の衣装が汚れることも厭わずに店主を労いながら片付けるその姿には、口調とは裏腹に今回の事件の被害者への深い同情が見て取れる。
「人への被害は最小限に食い止めれたようだな……」
 逃げた人々や露店への被害を考えながら戦っていたサイラスは、守りきれた事にほっと胸を撫で下ろす。
「此処から地の果て、最北は見れますか?」
 フレイアは野次馬の一人にそんな事を尋ねる。
 ジルベリア最北領であり、最北ではない事が疑問だったようだ。
 だが町人曰く、ここホワイティアからでは最北は見れないとの事。
 ジルベリア最北領・スウィートホワイト首都ホワイティアは、どちらかというと領の中心部にある。
 もっとも、最北の町から最北が見渡せるかというと、それはまた疑問が残る。
 なぜなら最北の町より北には真夏でも氷の解けない険しい山が連なっているのだから。
「アヤカシが自然発生するほどの瘴気があるとは思えません。侵入の経路や手口が分かれば、警備にも活かせるでしょう」
 ジェーンが駆けつけた自警団にそう指示する。
 ジルベリアの首都・ジェレゾからは離れているものの、最北領の首都であるホワイティアにはそれなりの城壁がある。
 東西南北それぞれに門があり、門番もきちんと配置されている。
 その為、外からアヤカシを何らかの形で持ち込んだり首都の中で瘴気が滞り発生したのでなければ、今ある城壁で大分アヤカシの侵入は抑えられていた。
 だが今回のアヤカシは一体どこから発生したのか……。
「周囲にはもうアヤカシはいないように感じられますが、気配や姿を消せるアヤカシが潜んでいないとは限りません。ギルドや自警団の皆様で周囲の再確認もお願いします」
 自らも周囲を注意深く観察していたジェーンだが、この場にはもうそれらしきモノはいないようだ。
 ジェーンは五つ星奇術団の面々にもアヤカシが現れた状況を詳しく聞きだすが、何分突然の出来事だった為突如として現れたとしか奇術団も答えられないようだ。
「あの方、ね……」
 竜哉は割れた氷晶球の欠片を手に取る。
 氷で出来ているかのようなそれは、けれど割れても溶けず、そのままそこに残っていた。
 ―― 欠片のどこか遠くから、笑い声が聞こえたような気がした。