【花祝】結婚式は大勢で
マスター名:霜月零
シナリオ形態: イベント
危険
難易度: 普通
参加人数: 22人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/07/18 02:55



■開拓者活動絵巻
1

たびがらす

津奈サチ




1

■オープニング本文

「結婚式依頼があるらしいわよぅ?」
 相変わらず簪を磨きながら、ジルベリアギルド受付嬢・深緋は馴染みのマッチョ開拓者に話しかける。
 対するマッチョ開拓者はおやっと首をかしげた。
「機嫌が悪くないな。結婚式の話題はタブーかと思ったぞ」
 そう、そろそろいき遅れになりかかっている深緋。
 やばいお歳だというのに結婚どころか彼氏すらいないのは周知の事実。
 そんな深緋はカップルだとか結婚式だとかの依頼が来るといつも不機嫌になるのだ。
 流石に依頼をこっそり破り捨てたりはしていないようなのだが。
「ふっふっ、彼氏、出来たわよぅ♪」
「ぬぁにぃっ?!」
 思いっきり盛大に驚くマッチョ開拓者ににっこり笑顔で深緋、ご機嫌。
「アタシみたいないい女、イケメンがほっとくはずがないのよぅ、ほーっほっほっ♪」
 扇子で扇ぎだしそうなぐらい高飛車余裕な深緋に、マッチョ開拓者気を取り直す。
「‥‥それはそうと、結婚式依頼って?」
 もっともっと彼氏についてあれこれ聞いて欲しそうな深緋だったが、こほんと咳払いして依頼書を取り出す。
「この間の結婚式会場でね? 開拓者の結婚式を無料で執り行ってくれるらしいのよぅ。なんでも老朽化した会場修理も先日の結婚式が成功したのもみんな開拓者のお陰でしょう? しかも殆ど手数料みたいな値段で引き受けてもらえて、ほんとに助かったんですって」
「まぁ、そうだなあ」
 正直、寄付やら何やらで何とか開拓者を雇えるだけのお金が集まったものの、修繕にかかった費用を引くとかなりぎりぎりの依頼料だったのだ。
「でね? そのお礼に、この間のカップルの為に集めてくれた鉢植えの花が枯れてしまう前に、開拓者の皆に結婚式を無料で提供して恩返ししたいらしいのよ。彼女がいるならこの機会にどぉ?」
 うふふと笑う深緋に、マッチョ開拓者じと目。
「まだいねぇよ‥‥」
 しょんぼりと肩を落とすマッチョ開拓者の背をくすくす笑いながら撫でて、深緋は結婚式をしたいカップル募集の張り紙をカウンター前に貼り付けるのだった。


◆解説◆
 結婚式イベントシナリオです。
 このシナリオでは、以下の事が出来ます。

◇結婚式◇
 カップル同士の結婚式。
 異性同姓問いません。

◇立会人◇
 会場では沢山のカップルが次々に式を挙げています。
 その為、立会人も一人では足りないようです。
 立会人=天儀の神父と同じ幹事のお仕事です。

◇お手伝い◇
 結婚式のお手伝いです。
 会場を飾り付けたりお料理手配、花嫁さんのお色直しなどなど。
 このほかにも思いついたことがあればどんどん手伝ってくださいませ。
 

■結婚による名前の変更について■
 今回、連動シナリオにて結婚したPC様からご希望があった場合、名前の変更を受付いたします。
 名前変更希望のPC様は、プレイングにて以下のタグを付けて下さい。

タグ
【結婚:相手PCID:変更名○○/フリガナ】


●名前変更についての注意事項●

 名前変更についての注意点です。
 原則、PC様の『苗字』が変更となります。
 苗字が無いPCは新たに苗字が付くことになります。
 両方ともない場合はプレイングに従って、新しい苗字を付けさせていただきます。
 PC様名は苗字+名前を全部合わせて、11文字以内となります。
 結婚以外での名前の変更は受け付けれません。
 また、結婚相手がいなかったり、お付き合いだけや、結婚式のお手伝いなどではお名前の変更は受け付けれません。
 
 同性での結婚の場合は、苗字の変更は出来ません。


■参加者一覧
/ ヘラルディア(ia0397) / 奈々月纏(ia0456) / 奈々月琉央(ia1012) / 秘純 織歌(ia1132) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 周太郎(ia2935) / 慄罹(ia3634) / 瀬崎 静乃(ia4468) / 月酌 幻鬼(ia4931) / 和奏(ia8807) / リエット・ネーヴ(ia8814) / 霧咲 水奏(ia9145) / エルディン・バウアー(ib0066) / リスティア・サヴィン(ib0242) / 十野間 月与(ib0343) / ティア・ユスティース(ib0353) / ミーファ(ib0355) / 白藤(ib2527) / 十野間 修(ib3415) / ティアラ(ib3826) / 春風 たんぽぽ(ib6888) / 闇野 ハヤテ(ib6970


■リプレイ本文

●準備はいつも以上に大変だ? でもきっと幸せいっぱい☆
 花嫁と花婿。
 本来はこの二人一組であるはずの結婚式。
 けれどここ、ジルベリアのとある結婚式会場に集まってくれたのは何組ものカップル達。
 会場の出入り口には花壇が設けられ、色取り取りの花が咲き誇っている。
 以前開拓者達が式場を飾る為に集めてくれたという大量の鉢植えの花だ。
 枯れてしまわない様にと帰り際に彼女ら開拓者によって花壇に半数ほど植え替えられ、美麗なステンドグラスとはまた違った美しさで式場を彩っている。
「自分が主役の結婚式‥‥複数でやると主役になれない気も致しますが‥‥みんなでやれば怖くないとかそういうコトでしょうか‥‥」
 集まった幸せそうなカップルをほんわかとみつめ、和奏(ia8807)は一人で納得している。
 整った顔立ちだというのに和奏にはまだ良い人はいないのだろうか?
 そんなのんびりとした和奏の呟きにピクリと反応したのは人妖の光華姫。
「結婚式って怖いものなの? そんなところにあたしを連れて来たのならきっちりと楽しませなさいよね?」とでも言いたげに和奏の耳をひっぱった。
 その後ろを月酌 幻鬼(ia4931)が大慌てで走っていく。
「ヘラルディア、大丈夫か? そんなに重い荷物は俺に任せろ」
 飾り付けの為の大量のキャンドルを両手に抱えたヘラルディア(ia0397)に駆け寄った月酌は、ヘラルディアから半ば強引にキャンドルを受け取る。
 あらかじめ会場管理人に確認を取ってヘラルディアが業者に手配をお願いしておいたのだが、届いたキャンドルは一人で持つにはちょっと無理がある。
「そんなに慌てなくとも大丈夫ですよ。でもありがとうございます」
 ヘラルディアの青い瞳に柔らかく見上げて微笑まれて、月酌は照れて後頭部を掻く。
 どうもこそばゆいようだ。
 鬼と見紛うまでに恐れられる普段の彼からは想像もつかない。
 だが今日ここに月酌が来たのはこれから式を挙げる為ではない。
 手伝いにかこつけたタダ酒目当てだったりする。
 けれど最愛の少女と共にいられるのであれば、そこが灼熱の砂漠でも荒れ果てた荒野でも月酌は幸せな時間を過ごせそうだった。
 そして天使が彫られた鉄のドアを開けた式場の中では、瀬崎 静乃(ia4468)がイスの数と飾られた鉢植えの花をチェックしていた。
「‥‥不備はないとは思うけど、念の為に」
 なにせ普段の数倍のカップルが式を挙げるのだ。
 来客数も倍になる。
 同時に入場するのではなく順番に入場して頂くのだが、数に余裕を持って揃えておくに越したことはない。
 瀬崎が鉢植えの花の傷み具合なども確認して花びらの剪定をしていると、厨房の方から慄罹(ia3634)の動揺した声が聞こえてきた。
 

「結構な量つくらねぇと‥‥って、え。おい、ちょっと‥‥?!」
 厨房で慌てる慄罹。
 彼の周りを会場のもともとの従業員達が取り囲む。
 一緒に厨房を手伝っていた春風 たんぽぽ(ib6888)は目を丸くした。
 プロ未満主婦以上の料理の腕前を持つ慄罹が式の料理を手伝う事に何の問題があるのだろう?
 今も春風の目の前で器用にも片手で卵をボールに次々と割り入れ感嘆させられたというのに。
「あの、慄罹さんが一体‥‥?」
 恐る恐る春風が聞けば、従業員達は早く着替えてくださいとのこと。 
 慄罹は厨房に入るのにこれといっておかしな格好をしているわけではないのだが、会場の着付け係がなにやら慌てている。
『こんな所で何をしていらっしゃるんですか』とか『早くしないと式に間に合わなくなります』とか。
 数人が同時に言うので良く判らない。
「や、だから間に合うようにきちんと料理をだな‥‥って、ちゃんと話を聞いてくれって‥‥!」
 慄罹が何かを説明しようとしているのだが、時間に焦る着付け係は半ばパニック状態のようだ。
 数人係で慄罹を強引に厨房から連れ出していく。
 一体、どこへ連れて行くのだろう?
 呆然と見送りつつ、春風は気を取り直して得意のオムライスを作り始める。


「周殿に連れられ来てみれば‥‥なるほど」
 霧咲 水奏(ia9145)恋人の周太郎(ia2935)と共に会場を訪れた彼女は、初めて見るジルベリアと天儀との違いに驚く。
 会場を彩るステンドグラスも、これから式を挙げるのであろう新郎新婦の衣装も、水奏が初めて見るものだった。
「やっぱ知らなかったか。まあ本島の形式とは全然違うしな」
 天儀で近々式を挙げることが決まっている二人だが、ジルベリアを訪れた記念にと恋人をここへ誘った周太郎は、驚く水奏に満足気。
 ジルベリアでの挙式はもちろんの事、開拓者であれば誰でも参加できる合同挙式ともなると、そうそう見る機会はないだろう。
「準備でここまで華やかですと、挙式はさぞ美しゅうございましょうな」
「‥‥な、凄いだろ」
 飾られた鮮やかな花を愛でる水奏の肩を抱く。
「理穴での祝言に先んじて、挙げてしまいましょうか?」
 そういってくすりと微笑む水奏に、周太郎は驚く事無くもとよりそのつもりだと頷いて。
「6月の結婚は、幸せを約束してくれるんだ」
 驚く水奏をエスコート。
  

「どこであろうと、祝福されたいと願う二人の希望に沿うのは私の役目ですから」
 白い歯、きらーん☆
 眩しすぎていっそ怪しいいつもの笑顔を振りまきながらエルディン・バウアー(ib0066)が会場管理人と式の手順を打ち合わせている。
 その隣には、じと目の助祭・ティアラ(ib3826)。
「なんですが、ティアラ殿。目付きが妙ですよ? 何か色々感じる目線ですが今日くらいは真面目ですって」
 冷や汗交じりのエルディンの笑顔にけれどティアラは冷たい。
「神父様を信じていますよ? 新婦の手を握って口説いたり。来客の少女に愛を説いたり。会場手伝いの開拓者をナンパしたり。えぇ、今日『は』きっとしないと思っています」
 今日『は』。
「ははは‥‥‥」
 猫耳をつんと立てて言い切るティアラにエルディンの乾いた笑いが会場に響いた。


「お姉様もちぃ姉様も、きっと参列したかったろうな‥‥」
 二人の姉から預かった祝いの品を胸に、礼野 真夢紀(ia1144)は二人を想う。
 常日頃お世話になっている十野間 修(ib3415)と明王院 月与(ib0343)の結婚式。
 出来れば姉妹三人揃って出席したかったのだが、生憎姉二人はどうしても出席することが出来なかった。
 もともと身体の弱い姉には遠出は難しいし、その姉を見守る次姉も同じ。
 姉達から二人に渡して欲しいと贈られた祝いの品は、螺鈿蒔絵簪『綾雲』と旗袍『白鳳』。
「お姉様、ちぃ姉様の分も、あたしが精一杯お祝いしてきます」
 贈り物に誓い、その為にもまずはしっかりとお手伝いしないとと、礼野は巫女服の袖をまくって厨房へと急ぐ。


「‥‥愛される二人が結ばれるんだ、いいことだと思う」
 せっかくのジューンブライドだからと闇野 ハヤテ(ib6970)は会場の飾り付けをより一層豪華にしている。
 もともと会場には鉢植えの花が飾られていたのだが、鉢植えゆえ飾る場所には限りがある。
 切花でないと飾り付けし辛い場所、例えばイスの両脇などに細いリボンと共に集めた切花を飾る。
 男性のわりに闇野は手先が器用なのだろう。
 それほどリボンをきつく巻いているわけではないのに、切花はプチフルールのように整ってイスに纏まっている。
「本当は、蒲公英が沢山あればよかったんだけれど」
 誰に言うとでもなく、呟く。
 今日一緒にこの会場を訪れた春風は得意の料理を生かして厨房の手伝いに行っている。
 蒲公英は彼女の名前とその髪の色と同じ花。
 たった一つだけ見つけることの出来た蒲公英の花にリボンをつけて、闇野はそっとポケットにしまいこむ。


「幸せそうで楽しそうだねぇ‥‥やっぱり結婚式は賑やかじゃないと」
 白藤(ib2527)は一緒に来た慄罹を探しつつ、飾り付けを手伝う。
 厨房へ行くといっていたので一度立ち寄ったのだが、春風の話だと着付け係がどこかへ連れて行ってしまったらしい。
「着付けは私が手伝うはずだったんだけど、間違えられたのかしらねぇ?」
 二人でこの会場に来て、きちんと会場管理人にその事を伝えたはずなのだけれど。
 白藤は首を傾げつつ、大体の飾り付けを終えて花嫁達を手伝う為に控え室へと向かう。
 

●それぞれの控え室
「ついにこの日が来たのですね」
 修は純白のタキシードに身を包み、感慨深げに呟く。
 幼馴染であり、大切な恋人である月与(ib0343)は別室でドレスを合わせている。
 スタイルのよい彼女なら、どんなドレスも魅力的に着こなせることだろう。
(父さんと母さんを招く事が出来ないのが心残りだけれど‥‥)
 修の両親も月与の両親も店の都合でこの日だと列席できないことはわかっていた。
 けれど月与の憧れていたジルベリアでの挙式だから、どうしても今日この日に式を挙げてあげたかった。
 こんこんと、控え室のドアが控えめにたたかれる。
 どうやら式の時間が来たようだ。
 月与を思いながら、修は控え室のドアを開ける。
 

「白の吟遊詩人、リスティア・バルテスよ。よろしくね!」
 少し慌てた様子で駆け込んできたリスティアは、新郎新婦用の控え室ではなく案内人に通された客室に元気よく飛び込む。
 そこには、既にティア・ユスティース(ib0353)とミーファ(ib0355)、そして朽黄が待っていた。
「待っていましたよ。丁度いまから音合わせをするところでした」
 ミーファがハープをリスティアに見せる。
 そう、彼女達はエルディンの司会進行に合わせて式を彩る楽団『祝福の音』
「皆を祝福したいな‥‥」
 アコーディオンを抱え、ティアは音量を調節。
「呼んでくれてありがとうだよ? でもちゃんとできるかな」と朽黄もリスティアに駆け寄る。
 四人とも開拓者であり吟遊詩人なのだから音楽の技量は申し分ないだろう。
 あとは、それぞれの音に合わせたパートと選曲。
「難しく考える事なんて無い。大切なのはお祝いの気持ちを素直に込める事」
 リスティアは任せておいてとブイサイン。
 四人は円を描くようにイスを部屋の中央に集めて座り、お祝いの気持ちを胸に音を奏でる。


「こういったのは何度も着たが‥‥改まって着るのは初めてだな」
 礼服に身を包み、周太郎(ia2935)は鏡の前で襟を立てる。
「‥‥拙者はやはり着慣れぬ所為か恥ずかしいものが御座いまするな」
 着慣れぬというドレスを身に纏い、霧咲 水奏(ia9145)は少し居心地が悪いようだ。
 最愛の恋人を青い瞳でじっと見つめる。
「ふふ、周殿は良く似合っておりまするよ」
「はは‥‥うん、よく似合ってるよ、水奏も」
 周太郎はすっと腕を恋人に差し出す。
 サングラスの奥の紫色の瞳が優しい。


「んと‥‥花の位置は此処で大丈夫です?」
 白藤は少し不安げな藤村纏(ia0456)の髪に花を飾ってあげながら安心するように優しく確認する。
「た、たぶん‥‥!」
 動悸が止まらないのだろう。
 纏は耳まで真っ赤で、恐らく白藤の声も半分耳に届いていない。
「藤村ねー、綺麗だよ♪」
 そんな纏を祝う為に手伝いに来たリエット・ネーヴ(ia8814)はご機嫌に纏を褒めちぎる。
 そして白藤に「何を手伝えば良いかな? 私に出来る事ある?」
 と確認。
「そうね‥‥このブーケを持ってあげて?」
 白藤から纏のブーケをリネットが受け取ると、薔薇の香りがふわりと漂った。
 その時、他の着付け係から声がかかった。
「えっ? 私も着て良いんですか? 興味はありますけど‥‥」
 せっかくの式なのだから、記念にドレスをという会場の着付け係に、白藤はちょっと戸惑う。
 花嫁ではないのに着てしまってよいものなのか?
「純白以外なら花嫁でなくとも礼服として着て失礼無いかと」
 会場の準備を終えて着付け手伝いに来ていた瀬崎が白藤の背を押す。
「それなら、お言葉に甘えさせていただこうかな」
 白藤は色取り取りのドレスに目を輝かせる。
   

「お邪魔するわね?」
 そう言って、秘純 織歌(ia1132)が周太郎と水奏の前に立つ。
「遅かったな」
 事前に連絡しておいたのになかなか現れなかった妹分に、周太郎は苦笑する。
「これ作っていたの」
 そんな周太郎と水奏に織歌は手作りのミサンガを手渡す。
 周太郎の髪の色と水奏の髪の色、それぞれの髪の色を思わせる金と緑の飾り紐で編まれたそれは異国の儀の幸せのお守りだとか。
「確か付ける時に願掛けをすると良いらしい、よ」
 織歌に言われて、二人、お互いの手首にミサンガを結ぶ。
 周太郎の手には水奏の緑を、水奏の手には周太郎の金を。
「ま、2人には必要ないかもしれないけどね?」
 仲睦まじい二人が顔を赤らめたのを確認して、織歌は周太郎に叱られる前にその場を離れる。
 その後姿を、周太郎の相棒・ニムファがとことこと付いていった。


●結婚式〜幸せな思いを胸に
 リンゴーン‥‥リンゴーン‥‥。
 会場の鐘が鳴り響き、式の始まりを告げる。
 式場の扉の外では、纏が琉央(ia1012)に手を引かれ、胸の高鳴りを抑えながらくるりとドレスで回ってみせる。
「こ、こないな服着るの初めてやねんけど、似合ってるやろか?」
 耳まで既に真っ赤な纏は、最愛の恋人の答えを待つ。
 だが一向に何の反応も返ってこない。
「どこか、おかしいやろか‥‥?」
 じっと自分を見つめる琉央の黒い瞳を、纏は不安げに見つめ返す。
 同棲して、どの位経ったろう?
 琉央と過ごす日々が楽しくて、数日間の出来事のようにも思えるし、数年来の事にも思える。
 けれどこんな風な琉央を見るのは初めてかもしれない。
 不安気な纏の両肩に琉央は腕を置く。
「式の前に話しておきたいことがある」
 肩に置かれた腕に力が篭る。
「俺の姓について‥‥俺には腹違いの弟がいる事は知っているよな」
 こくりと頷く纏。
「父は、俺と母を捨てて、他の女性を選んだ。だから、父と同じ姓は名乗らない。今迄もこれからも」
 一旦、言葉を区切る。
 父親のことを思い出してしまったのだろう。
 整った顔が、少しだけ悲しげに歪む。
「けれど、纏と過ごすけじめとして、今日からは『奈々月』を名乗りたい。俺を育ててくれた母の名前なんだ」
「奈々月、素敵な名前やなぁ」
 纏は苦しげな琉央の背に、腕を回す。
 琉央も纏を抱きしめる。
「俺はお前がいればそれだけで幸せだから‥‥後は俺が頑張るだけだな」
 抱きしめて耳元でささやく琉央に、けれど纏いは首を振る。
「『俺が』はちゃうよー。『ウチも』一緒に頑張るねん、な? 琉央♪」
 抱きしめあう二人に、コホンと一つ咳払いが。
 慌てて二人が振り返ると、そこには垂れたわんこ耳のカチューシャをつけた瀬崎と、トラ耳カチューシャをつけたリネットが。
 真っ赤になった纏のドレスの裾を、二人がそっと持ち上げる。
 

†奈々月琉央×奈々月纏†
 ヴァージンロードを一歩、また一歩。
 最愛の人と歩みを進め、纏は琉央に寄り添う。
 その纏のドレスの裾を持つのはリネットと瀬崎。
 瀬崎はそっと夜光虫を出現させ、小さな灯火はきらきらと纏と琉央を取り巻いた。
「健やかなる時も病める時も共に歩み、死が二人を分かつまで愛を誓い、琉央を想い、琉央のみに添うことを、婚姻の契約のもとに誓いますか?」
 凛とした空気の中、司会のエルディンが纏に問う。
「うん! もち‥‥や、ないな。えっと、はい。誓います。死後も来世でもずっと、な? 琉央♪」
 頬を赤らめ、纏は琉央を見つめる。
 エルディンは琉央に向き直り、更に続ける。
「汝、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時もこれを愛し、これを敬いこれを慰めこれを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
 静かに頷く琉央。
「ウチの事、更に幸せにしてな〜‥‥♪」
「当たり前だ。お前は俺のモノだ、纏。絶対に離さない」
 強く抱きしめあい、誓いのキスをする二人。
「新しい姓、奈々月の名の元に、二人の良き門出を心よりお祝い申し上げます」
 二人の誓いを聞き、エルディンが精霊札を掲げる。
 その札からあふれ出すフラワーシャワーが纏と琉央をに降り注ぎ、淡く白く輝く。
 そしてその合図に、ティアラの後ろに控えていた吟遊詩人音楽団『祝福の音』の四人が幸せを奏で出す。

 
†十野間修×十野間月与†
 ヴァージンロードを代父の手に引かれ、月与は修の隣に。
「それでは、神と私たち一同の前で結婚の誓約をかわしてください」
 エルディンが二人に厳かに告げる。
「十野間修さん、あなたは明王院月与さんを妻としますか」
「はい、いたします」
「明王院月与さん、あなたは十野間修さんを夫としますか」
「はい、いたします」
 修と月与、二人見つめあう。
 修は自分を見つめる月与の黒い瞳に、沢山の幸せとほんの少しの不安がある事に気づいていた。
「それでは、二人一緒に誓いを立ててください」
 修と月与、二人同時に誓いを口にする。
「「私たちは夫婦として、順境にあっても逆境にあっても、病める時も健やかなる時も、生涯、互いに愛と忠実を尽くすことを誓います」」
 誓いの言葉が終わると、助祭のティアラがすっと一歩前に進み出て、宝石箱を差し出す。
 その中には、シルクのクッションに大切に守られた二人のマリッジリング。
 修と月与、それぞれが指輪を受け取り、月与の祝福の薔薇のブーケとヴェールをティアラが預かる。
「修さん‥‥ありがとう」
 今日この日を迎えられたことを、月与は万感の思いを込めて修に伝える。
「月与さんの家族は、私にとっても大切な家族。私にも家族を支えさせてくださいね」
 それは、新妻になる月与の最後の不安を取り除く言葉。
 月与が結婚して家を出てしまうということは、『縁生樹』の運営が常に人手不足になるということ。
 けれど修の実家も店を営んでいるのだから、新妻たる月与がその店を手伝わずに実家の民宿を手伝いたいなどといえるはずもなく‥‥。
 そんな月与の口に出すことのない最後の不安を修は受け止め、微笑んで取り除く。
『家族を支えさせて』
 修は、月与に実家を手伝うことを許しているだけではなく、自らも手伝うといっているのだ。
「修さん‥‥っ」
 嬉し涙で視界が霞む。  
「誰しもが、守りたい人、守りたいモノがあるはずです。俺は月与さんを生涯守り続けます」
 修は月与を強く強く抱きしめて、誓いのキスを交わす。
「隊長さん、ご結婚おめでとうございます」
 楽団として控えていたティアの祝いの言葉に合わせ、楽団は再び二人の為に歌を、曲を重ねる。

         『紡がれし愛は、新たな愛を産み、育む〜♪』

         『見つめし想いは、時を越えて』

         『永久に二人を祝い続ける〜♪』

 楽師がそれぞれのパートを高らかに奏で、歌い、紡ぐ。
(自分も早く素敵な人と出会って、このような晴れやかな日を迎えて、母を喜ばせてあげたいな‥‥)
 祝福を奏でながら、ティアは母を思う。
 騎士の道を母と祖父に切望されていたけれど、ティアが選んだのは人々を癒す音楽、吟遊詩人。
 騎士にはなれずとも、花嫁として母を喜ばすことが出来たらどんなに素敵だろう?
 祝福と憧れを込めて、ティアは更に高らかに歌い上げる。
 

†霧咲周太郎×霧咲水奏†
「新郎周太郎。あなたは新婦霧咲水奏が病める時も健やかなる時も、愛を持って生涯を支えあう事を誓いますか?」
 エルディンに問われ、周太郎は頷く。
「誓います」
「新婦霧咲水奏。あなたは新郎周太郎が病める時も健やかなる時も、愛を持って、生涯支えあう事を誓いますか?」
「‥‥今一度、この場で誓いましょう。例え何があるとも拙者は周殿と共に生き、比翼の鳥となりて連理の枝と為る事を誓いまする」
 水奏の言葉を聴き、エルディンは会場の皆に向き直る。
「お二人はこのように労わり合い、慈しむことをここに誓いました。人前式とはその名の通りここにいらっしゃる皆様に誓いを認めて頂いて、初めて夫婦となるのです」
 皆様、このお二人の結婚を認めてくださいますでしょうか。認めて頂ける方は暖かい拍手をお願いします」
 会場から溢れるばかりの拍手が零れる。
「ちょっと、ニム‥‥っ?!」
 目隠しをしたまま参列していた織歌の布を、周太郎の相棒・ニムファがするりと咥えてとりはずす。
 慌てて取り返そうとした織歌だが、場所が場所。
 一番良い所で騒ぐわけにもいかず、そのまま拍手を続ける。
 けれどこれでよかったのかもしれない。
 目隠しをしたままよりも、ずっと美しく素敵な周太郎と水奏の姿を見れるのだから。
 会場の鳴り止まぬ拍手に微笑み、エルディンは続ける。
「皆様認めて下さりありがとうございます。これでお二人は皆様に認められ夫婦となりました」
 ティアラが誓約書を二人に渡す。
「こちらに、お二人のサインをお願いします」
 差し出された誓約書に、周太郎は新しい名前を記入する。
「古い名を捨て、俺はお前の傍で永久を過ごそう。今日からは改めてまた、一緒だ」
 サインを終えた水奏を周太郎は抱きしめる。
 会場に灯るキャンドルに照らされながら、二人は誓いのキスを交わした。 


●立食パーティ。みんなみんなお幸せに♪
 三組のカップルが式を挙げ終わると、会場の外では立食パーティー。
 式場から出てきた三組に、和奏の作ったライス&フラワーシャワーが降り注ぐ。
 薔薇の花を沢山購入し、それを丁寧に一枚一枚解し、お米と混ぜたそれは、和奏の手から参列者皆に配られ、花吹雪のように新郎新婦を彩り祝う。
 人妖の光華姫も和奏のアイディアにご満悦のようだ。
 和奏の肩の上で、結婚式ってまんざらでもないじゃない、和奏と挙げてあげてもいいわよと、降り注ぐ花びらの一枚をそっと抱きしめる。


「こちらはジルベリアの名物でしょうか」
 ヘラルディアがナイフとフォークで食べるのに苦戦している月酌に器用に取り分ける。
「っ‥‥やはりこうゆう所は慣れねーな‥‥」
 ただ酒のみのつもりで、けれど月酌は余り飲んでいないようだ。
 いや、飲んではいるのだが、酔っていない。
 いま彼の頬が赤いのは、愛しい少女が側にいるから。
 その少女が、たった今式を挙げたばかりの新婦を見つめる視線に気づく。
「んー? お前さんも式をいつか上げたいのか?」
「幸せそうな方々を見ていると何れはわたくしもと思う次第で‥‥」
 控えめに答えるヘラルディアを、月酌は抱きしめる。
「ヘラルディアが望むなら、なんだってしてやるよ」
「その時を楽しみにしたいですね」
 ヘラルディアはそっと月酌の背に手をまわす。 
 二人が結ばれるのは、きっとそう遠くない未来だろう。


「お‥‥白藤も、か‥‥。ははは〜、なんでこうなったんだろ‥‥けど‥‥いいなっ、それ」
 慄罹はドレス姿の白藤を見て驚くと同時に照れ笑い。
 そうゆう彼もまた、会場の着付け係によって銀のフロックコートを着させられ、どこからどう見ても花婿。
 あわや式を挙げさせられそうになったのだが、なんとか誤解を解いてパーティーに参加したのだ。
「ふふっ、慄罹さんも似合ってますよ。けど、ドレスは色んな種類があるんですねぇ‥‥」
 淡いピンク色のドレスは以前にも着た事のある白藤だったが、今日のデザインはまた少し違っていた。
 胸に着けるコサージュも白薔薇で、もしもドレスが白だったら彼女もまた、花嫁と見間違えそうだった。
「花より団子って言うが‥‥花も団子も、どっちも手に出来た感じだなっ」
 照れ隠しか、慄罹は紅白饅頭をぱくりと頬張った。


「やっぱり綺麗、ですよねぇ‥‥」
 花嫁達を見つめ、ティアラはほうっと溜息。
(私の春はまだかなぁ‥‥?)
 そっと、エルディンを見つめる。
「な、なんですかその目線は。今日はきちんとしていたじゃないですか‥‥!」
 けれど悲しいかな。
 日頃の行いが悪すぎるエルディンは彼女の目線を勘違い。
「‥‥ぅん、もうっ! まだ最後のお仕事が残っていますよ!」
 さぁさぁと、赤くなってしまった顔を見られないようにエルディンに背を向けさせて、ティアラはぐいぐいとその背を押してゆく。


「ウェディングドレスって綺麗ですね‥‥」
 会場の食事を全力で作り上げた春風は、やっぱり花嫁を見つめる。
「たんぽぽさん、結婚したいんですか?」
 いつの間に隣にいたのだろう。
 闇野に呟きを聞かれて、春風は真っ赤になる。
「わ、私は結婚する以前に相手のお方を見つけませんと‥‥!」
「大丈夫ですよ。かわいい女子に男は弱いですから」
 そう微笑んで、闇野はリボンで飾った蒲公英の花を春風の髪に飾る。
 突然のプレゼントに、春風は冷静ではいられなかった。
「‥‥からかわないでください」
 真っ赤な顔を闇野から逸らし、そう答えるのが精一杯だった。


 三人の花嫁と花婿が、皆の前に一列に並ぶ。
 周太郎は水奏を抱きあげ、合図する。
「さ、そのブーケはどこに飛んでくかな‥‥っと!」
 水奏が「‥‥それっ!」っと声をかけ、家族と同じくらい大切な少女に向けてブーケを投げる。
「後に続く人達の幸せを祈って‥‥」
 月与のブーケも弧を描いて参加者の上に。
「うちのブーケも、受け取ってな〜♪」
 纏のブーケも中を舞う。
 水奏のブーケは織歌に、月与のブーケは姉達の分までもお祝いに来てくれた、月与と修が「まゆちゃん」と呼び慕う礼野に。
 そして、纏のブーケはなんとティアラに。
「全ての人々に、永久に祝福を!」
 エルディンの声に合わせ、再び花びらが会場に溢れ、いつまでもいつまでも祝福が降り注いだ。  

 

 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 Happy Marriage 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    †奈々月琉央    VVV    VVV     奈々月纏†
               VVVVV  VVVVV        
               VVVVVVVVVVVV     
    †十野間修    VVVVVVVVVVVV   十野間月与†
                VVVVVVVVVV
                 VVVVVVVV
    †霧咲周太郎      VVVVVV       霧咲水奏†
                    VVV
                     V





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