タイトル:【ODNK】WHeadSquadron4マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/27 16:09

●オープニング本文


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 福岡からの圧力がさらに増した。
「大佐! 俺は反対です! まだ侵攻の準備は整っていません! 火砲から歩兵達の手持ちの携帯武器の弾薬、KV戦力の補充まで、全てが中途です!」
 不破真治が吼えた。
「久しぶりだな。てめぇが俺にそこまで言うのも」
 壮年の男が、死んだ魚のような目で若き大尉を見る。
「それだけの事態だという事です。この状態で進軍? 千歩譲っても七割は勝算が欲しいと言っていたではないですか。そこまでの勝算がこの作戦にありますかッ?」
 村上顕家は紫煙を一つ吐き出してから短く、
「無ぇな、五割かそれ以下だ」
「大佐ッ!!」
「日向の親父と俺じゃ状況が違う」
 村上は黒瞳を動かし不破を見据え、言った。
「手前、勘違いしてんな。俺は何時いかなる時も堅実にいくのがベストだなんて言った事は一度たりとも無いぜ。肝要なのは勝算と効果と現実性だ。だから、まぁ、ある意味堅実っていやぁ堅実かもしれんがな? だが、勝負しなけりゃならん時もあると言った筈だ」
「適当な事言って煙に巻こうってんじゃないでしょうね?」
「そいつぁ、てめぇがてめぇの頭で判断しろ」
「馬鹿だから困るんです。大佐が本気で俺を騙そうとしたら、俺がそれを見抜けると思えますか」
「‥‥アァ?」
 不破のその言葉に対し顔を顰める。
「手前、らくしたくて言ってるのか? それとも本気でそう思って言ってんのか?」
「俺が大佐と頭で勝負して勝てる訳ないでしょう」
 不破の言葉に、くたびれた大佐は口端を上げて睨みつけた。
「訳が無い? なんでだ。一万譲って訳がないのだとしても、だからどうした。勝てないのはしょうがない? しょうがないで済むのは温い場所だけだ。てめぇは良く知ってると思ってたんだがな? まぁ、どうにもならねぇ事ってのは、どうにもならねぇ事なんだから、そりゃどうにもならねぇよ。だが所詮人間を相手に争う事が、真に『どうにもならない』事か? 押して駄目なら引いてみな。正面から避けられるなら後ろからぶん殴れ。一人で勝てないなら百人で殺せ。百で駄目なら万で殺せ。万の軍勢をすぐには揃えられないなら百年耐えて次代に渡せ。どんな手を使っても、這ってでもぶっころすのが俺達の仕事じゃなかったか? 俺を見抜けない? 勝てないだと? てめぇは何だ? 呼称なんざどうでも良いが、てめぇは何だよ。不破真治はなんだと聞いている。もしも敵に回るなら、バグアだろうが村上顕家だろうが、全て叩き殺せなきゃいかんのじゃないのか手前様は? てめぇのお仕事はなんだよ? 勝てる訳ないだと? テメェが、俺に、勝てないで、どうする。俺の師匠の一人は日向のオヤジだが、俺はあのオヤジを殺す方法を十以上、知ってるぞ。あちらさんも俺を抹殺する方法なんざ幾つも知ってるだろうがな。てめぇはどうだ?」
「‥‥俺が村上顕家を殺せるとしたら、一つだけでしょう」
 右手を抜き手に作って不破は言った。
「他に部下のいない場所で、例えば、今のこの部屋のような場所で、腕力で殺す」
「俺がそれに対して何の対策も取ってないと?」
「未来の事は解りませんが、今現在は無いでしょう。そんな所に使う金も労力の余裕も無く、何よりも無駄だからだ。貴方は俺がそんな事をする訳がないと知っている。何故か? 最大の根拠は、俺が大分を解放したいと心底思っている点です。大分を解放する為には、貴方が生きていた方が都合が良い。それを貴方は知っている。今貴方に消えてもらっては俺が困る。だから安全だと判断している。安全な所に費やすのは無駄。だから今現在防備はない」
「それくらいは考えられるなら他も考えろ。俺の判断が信用できねぇってのならテメェで考えろ。てめぇが俺ならどう動く?」
 不破真治は押し黙り、しばし経ってからまた口を開いた。
「‥‥‥‥速攻をかけるのが一番、大分を守り切る勝算が高い?」
「何故そう判断した?」
「長引いたら負けです。消耗戦になったら勝てない。挟まれた以上、こちらの戦力と国東の戦力の差がもっとも有利についてるのは打ち負かした直後である今現在だ。挟まれた以上、こっちが戦力を増やす量よりも、遥かに多く速くの戦力を国東は回復し、増やしてゆく。時間が経てば経つほどにこちらは不利になる。国東を速攻で撃破出来れば日向准将達の救援にも向かえる。福岡からの圧力にも対抗出来る。最悪、向かう前に准将達が敗れたとしても、こちらはまとまって反抗できる。しかし遅れたらそれも出来ない。九州全体の戦局。メリットとデメリットを考えると、ここでもたもたしているのは愚か以外の何者でもない」
「だったらやるこたぁ決まってるだろ?」
「しかし、空港を抑えたとはいっても国東の守りは依然として強固ですよ。陥落させる事が、出来るのですか?」
「今まで違って戦略的な有利はさほど無い。前回もきつかったが、今回はもっとない。カリマンタン以降、うちの旅団は精鋭だなんだ言われちゃあいるが、うちが強い最大の理由は武装が贅沢だからだ。所詮は大半はただの人間の集まりよ。火力に頼っているに過ぎない。勝って当たり前の状態で勝って来たに過ぎない。それを支えて来た装備の補給が十分に成されていない、ってぇなるとどうなると思う? 今現在の戦力比でいやぁ、攻めと守りの差をひっくるめて五分かそれ以下」
「戦術での勝負になります。博打ですね」
 村上は頷き、しかし言った。
「そうだ。だが、百万賭けてでも博打を打つべき局面があるってんのなら今だ、と俺は判断する。今が一番配当も勝率もデカイんだ。のんびり座ってても死ぬしかねぇってんのなら、ケツまくっていくっきゃねぇだろ?」


 別府基地から鋼鉄の翼が空へと舞い上がった。
「ウォーヘッドより各機へ」
 空戦隊の爆撃隊と制空隊を統括する不破真治が言った。
「恐らく、今回の一連の作戦が大分解放戦の天王山だ。ここで勝つか負けるかで今後が大きく変わるだろう。そしてその一連の戦いは、この空の俺達が勝つか負けるかで有利不利が大きく変わる」
 今回、空戦隊に与えられた任務は国東市街より西方の山岳地帯に存在する無数の長距離砲群を沈黙させる事だった。
「故に大分の興亡この一戦にあり、だ。Z旗じゃないがな、各員の奮闘を請う」
 国東の山岳に入る少し前で、レーダーに無数の機影が浮かびあがってゆく。
 バグア側の迎撃部隊だ。
 他方、
「やれやれ、戦略だなんだ言いつつ我々が加わる戦はいつも劣勢になってからですね。うちの大将にも困ったものだ」
 青い本星型HWの中でブラウンの髪の美丈夫が言っていた。
「ま、そこをひっくり返すのが面白いんだけどね?」
 緑のHWの中で金髪の女が言う。
「ふふっ、そうですね。群がる蚊蜻蛉を叩き落としてやりましょう」
 HW達が赤く輝く。
 KVが北上しHWが南下する。
 決戦が、始まろうとしていた。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
叢雲(ga2494
25歳・♂・JG
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF
リン=アスターナ(ga4615
24歳・♀・PN
月神陽子(ga5549
18歳・♀・GD
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
依神 隼瀬(gb2747
20歳・♀・HG
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
佐賀繁紀(gc0126
39歳・♂・JG
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD

●リプレイ本文

 九州の空。
「守ったら負け、ならば攻めろ‥‥か。無茶な話だけど‥‥時間が経てば、その無茶すらできなくなるってことよね、結局」
 リン=アスターナ(ga4615)が嘆息と共に呟いた。余力のあるうちに勝負をかける、攻撃は最大の防御、それは解らないでもないが、状況は厳しい。
「乾坤一擲の博打か‥‥ふん、上等! 天下分け目の大戦! 勝利は我らの手に!」
 堺・清四郎(gb3564)が気勢をあげて言った。
「本命決着ばっかりの博打ってのは面白くないものね。ここらで一つ穴を開けるとしましょうか‥‥!」
 女は頷くと操縦桿を握り直す。
「ここが正念場、ですかね」
 井出 一真(ga6977)が言った。
「ええ、これまでの戦果を無に帰さない為にもここでしくじる訳には行きませんわ」
 とクラリッサ・メディスン(ga0853)。
(「エースの方々に及ばぬとは言え、【告死天使】の名に恥じぬ戦いぶりを見せなくてはなりませんわね」)
 胸中でそう呟く。
「雌伏何年等と悠長な台詞は言えません。私事ですが別府八湯は祖先の土地で、死守せよが家訓です。護れねば死ね! ですよ? 首の皮一枚です。だから死に物狂いで戦います!」
 藤田あやこ(ga0204)が言った。剛毅な家系だ。地元民としてはなんとしても先祖伝来の地を守りたい所である。
「ま、俺もそれなりに頑張るさ」
 ジャック・ジェリア(gc0672)が言った。
(「何とでもなりそうなメンバーだし」)
 主任務は制空確保。最悪、爆撃隊が爆撃出来るだけの結果を出せば戦局はなんとかなるはずだ。
 傭兵達は三機ないし二機に別れて敵に当たるようだった。そのうちの組の一つ、井出はロッテを組む真紅のバイパーを見やって胸中で呟いた。
(「これが名高い夜叉姫か‥‥」)
 月神機、その筋では有名らしい。そういえば、昔からかなり破壊王だった。名も通るものだろうか。間近で見る良い機会だが、生憎と余所見出来る余裕のある状況では無い。
(「ここは戦闘に集中だ」)
 KV大好きな井出だがそちらに視線をやってて落ちててはどうしようもない。気合いを入れ直して前方を見据える。
 他方、
「ロッテは獅子座のとき以来でしょうか。よろしくお願いしますね」
 如月・由梨(ga1805)がペアを組む南部 祐希(ga4390)へと言っていた。
「ああ、如月さん、お久しぶりです」
「獅子座の配下を見たという報告がありましたので、来てみましたが‥‥どうやら、本人はここにいないようで」
「赤竜は下、ですね。こちらは取りこぼしの許されない戦場です。勝ちましょう。それが義務です」
「はい、そのつもりです」
 ふふっと笑い如月。赤竜はいないが、こちらにもエース機らしき相手はいる。どんな戦いになるのか、如月としては楽しみな所だ。
 傭兵達は爆撃隊より先行して北へと飛ぶ。やがて肉眼でも機影が捉えられる位置まで迫った。
「わぁ、いっぱい来た‥‥」
 一見少年に見える少女が呟いた。依神 隼瀬(gb2747)である。
「正に手を変え品を変え、だな。だが招かざる客を歓迎する理由もない。速やかにお引き取り願おう」
 白鐘剣一郎(ga0184)が言った。
「あの二機‥‥色からして報告にあった三機の連中でしょうか」
 叢雲(ga2494)が言った。
(「大人しく地を這ってればよかったものを」)
 胸中で呟く。空に上がった以上は遠慮なく食い散らかして差し上げましょう、と思う。
「さて‥‥阿弗利加上空で本星型と戦闘したが、こいつ等はどうかな」
 と佐賀繁紀(gc0126)が言った。基本は同じでも戦域によって多少差異があるものだ。新たな場所では緊張が強いられる所である。
「乱戦になる前に、できるだけ敵の数を減らします。向こうも撃ってくるでしょうから、覚悟を決めますわよ!!」
 月神陽子(ga5549)が言った。この辺りの戦域は昔は大抵どちらも譲らずヘッドオンだ。死んだ英雄は、どれほど強大な剣を持っていようと二度とそれを振るう事は出来ない。ならば殺せ、である。最初の激突が戦の趨勢の八割を決める。居合い斬りの世界だ。
 もっとも、それはAIに限った話であるが。今回の相手はどうか。
「了解」
 ロッテを組む井出が言葉を返した。初手は五機づつK‐01で集中して狙ってゆくようだ。
「想定通りに運ぶには、最初に確実に小型HWを五機落とさないと、だよ。初手が肝心だ」
 UNKNOWN(ga4276)が集中するように言った。戦略も無茶だが、戦術もなかなか無茶な事をやる模様だ。乗るか反るか。アンノーンはまた、バディと独り戦闘にならない様に、ブースト時等は合図送るように提案しておく。
「斉射で幾らかでも落ちてくれるなら問題ないが‥‥そう簡単な相手ではないか?」
 編隊を組む白鐘が言った。
「一般の敵なら十分だと思うがね。なんといったか‥‥仮にもゾディアックの何某の精鋭隊だろう。やってみないと解らない、かな」
 後方のリン機は狙わせたくない所だ。白鐘とアンノーンの二機がかりでも止められない相手となるとなかなか厳しい事になる。
「高度差をつけておきましょう」
 叢雲が言った。一射二百五十発の誘導弾を各機が乱射するのだ。万一誘爆すると厄介である。初手が肝心な以上、それは重要項目と思われたので各機はそれぞれ高度をづらして飛んだ。
 彼方より十四機のHWが爆風を巻き起こしながら突っ込んで来る。やはり正面から来るようだ。迎え撃つように十五機のKVが加速して飛ぶ。
 敵は電子戦機を狙って来る確率が高い。アンノーン機と白鐘機はリン機よりやや前方を速度を揃えて飛んだ。リンは敵機にナンバーを振り管制の不破機へと渡して各機のデータリンクを確立しておく。目標の選定を事前に済ませておく。敵がどう動くかは直前まで解らない所はあるので、あくまで仮ではあるが。
 あっという間に距離が詰まり、埃程度の大きさだったHWの機影がみるみるうちに大きくなってゆく。交戦許可が降りた。
「この場に貴方達は相応しくない‥‥ご退場頂くわ‥‥」
 ケイ・リヒャルト(ga0598)が言った。サイトにそれを合わせて言った。
 北九州の命運を分ける戦いの一つが、始まった。


 相対距離一五〇〇。各機、戦闘機動に入った。最大戦速。
「行きます!」
 月神が合図を出し、月神機、井出機、藤田機、ケイ機、クラリッサ機、如月機、叢雲機、アンノーン機、白鐘機、リン機の十機がブーストで加速する。
 月神機、井出機、アンノーン機、ケイ機は速度を合わせて飛び、クラリッサ機、叢雲機も同速、藤田機とリン機は先頭集団の後衛につける。白鐘機はその間。
 距離が詰まる。敵は緑と青の本星HWが高速で突っ込んで来ている。その後方より赤く輝くHW十二機が迫る。
 相対距離一〇〇〇、リン機は敵集団を捉えつつバグアロックオンキャンセラーを発動させた。重力波の乱れが広がり、敵の重力波レーダーをかき乱してゆく。
 相対六〇〇、如月機、青HWとヘッドオン。
「そう簡単に避けられはしませんよ」
 ガンサイトに音速を超えて迫る青HWを捉えるとF‐108‐シヴァから轟音と共に猛烈な電撃波を解き放つ。強化G放電装置だ。電撃が空を灼き焦がしながら一瞬で距離を制圧し青HWへと迫る。青HWは横に素早くスライドするもかわしきれずに電撃に焼き焦がされた。言うだけはある。命中。ワーム側は強力だがKV側も半端ではないようだ。
 青HWは激しく赤く輝くと猛然と如月機へと加速し突っ込む。相対四〇〇に入ると誘導弾を七連射した。如月機、速い。リン機のロックオンキャンセラーが効いている。全弾かわした。キャンセラーはハイレベルの攻防になる程圧倒的に効いて来るようだ。
 緑HW、誘導弾発射まで攻撃を仕掛ける者がいない? 各機の前進速度はほぼ一線。夜叉姫が緑寄りにつけている。硬いが真っ先に潰しておきたい機体でもある。緑HWは月神機へと向けて誘導弾を七連射する。
 七発の誘導弾が風を切り裂いて飛び月神機を次々に直撃した。大爆発が巻き起こり装甲が削られてゆく。損傷は軽微。非常に硬い。
 相対距離六〇〇。
「さぁパーティの始まりよ」
 ケイが言った。
「目標補足、コンテナ開放。全ミサイル投射!」
 井出が吼え、ケイ機、井出機、如月機、南部機、叢雲機、クラリッサ機、それぞれ対象を合わせてHWの五機をロックしK‐02誘導弾を連射。如月機から五百発、井出機から五百発、ケイ機から五百発、南部機から五百発、叢雲機から五百発、クラリッサ機も五百発。シヴァとAntaresはアグレッシブフォースを発動させ破壊力を増大させ、アズリエルはPRMシステムを解放して精度を高めている。五機から総計二五〇〇発の誘導弾が空を埋め尽くして飛び五機の朱色HWへと猛然と襲いかかる。
 一斉に放たれた誘導弾は次々に朱色HWへと直撃して壮絶な爆裂の嵐を巻き起こした。全弾命中。壮絶な破壊の嵐。しかしHW達は装甲の大半を消し飛ばされながらも爆炎を裂いて突進して来る。
 アンノーン機、少しタイミングをづらして小型誘導弾を撃ち放っている。五〇〇発のK‐02誘導弾が同目標に向けて牙を剥き喰らいついて追撃の爆裂を巻き起こしてゆく。朱色の五機が失速し、新たな爆発を自ら発しながら高度を下げてゆく。五機、吹っ飛んだ。
 朱色HWは七機にその数を減じたが、三機がそれでもリン機へと間合いを詰めて来る。
 藤田機は朱色HWの一機をガンサイトに納めるとその進路先を牽制するようにD‐02ライフルで弾丸を放った。解き放たれた二連の弾丸が空を裂いて飛び、朱色はなだらかに空を斜めに滑って回避する。
「ペガサス、エンゲージオフェンシブ。FOX3!」
 白鐘機、リン機へと迫る一機へと狙いを定めるとD‐02ライフルを鋭く撃ち放つ。弾丸が空を裂いて飛び朱色HWに直撃してその装甲を貫いた。
 相対距離四〇〇、朱色HWの二機編隊が叢雲機とケイ機へと襲いかかる。一機、五連、二機で十連の誘導弾を猛然と撃ち放った。キャンセラーとブーストが効いている。レイヴンとトロイメライは素早く機動して誘導弾をかわしてゆく。ケイ機はファンクス・テーバイが作動し迫り来る誘導弾の二発を空中で迎撃する。叢雲機に六発、ケイ機に三発が直撃して爆裂を巻き起こした。叢雲機損傷率四割六分、ケイ機損傷率三割。装甲の破片が空に散ってゆく。なかなか痛烈だ。ケイ機はロケット弾を撃ち返した。煙を噴出して飛ぶ八連のロケット弾をHWは急旋回して次々に回避する。
 アンノーン機、リン機へと迫る三機編隊のうち中央の一機へと狙いを定めるとエニセイ対空砲を六連射。全弾を直撃させて猛烈な破壊力を解き放ちその装甲の大半を吹き飛ばす。だが堕ちない。
 如月機はアフターバーナーを噴出して青HWへと再び機首を向けると十式バルカンで弾丸の嵐を解き放つ。青HWは急旋回して弾丸をかわすも二十発程度がその動きを捉え命中してゆく。しかし激しい赤輝を発生させて弾丸を全て弾き飛ばされた。南部機もまた青HWへと迫ると轟音と共にスラスターライフルを猛射する。青HWは赤く輝きながら鋭く機動して弾幕の嵐を回避してゆく。
 クラリッサ機は緑HWをガンサイトに納めスラスターライフルで猛射する。嵐の如く放たれる三十発の弾丸を緑HWは空を斜めに緩やかに滑って微妙な機動で回避してゆく。叢雲機が合わせてその軌道を予測してレーザーライフルを撃ち放つ。光が緑HWの脇の空を貫いていった。予測が狂わされている。感覚を惑わせる動きだ。
 月神機、相対三〇〇、朱色HWの五機、を狙うのはばらけている、少し難しいか? ブースト&スラビライザーを併発している、鋭く機首を回しリン機方面へと向かったHW三機編隊を射角に納めてロックオンを継続、猛射。総計一〇〇〇発の小型誘導弾を空に解き放つ。激しく煙を噴出し空間を埋め尽くして飛んだK‐02弾は次々に朱色HW群へと直撃して凶悪な破壊の嵐を巻き起こした。先にアンノーン機より痛打を受けていた一機が木っ端に爆ぜて散ってゆく。撃墜。月神機は緑HWへと向かう。
「狙ってくるのが判っているなら如何様にも立ち回ってみせよう。行くぞ!」
 白鐘機、月神機が巻き起こした爆炎を裂いて向かい来る朱色HWをガンサイトに納めトリガーレバーを引く。スラスターライフルが火を吹いて九十発の鉄塊が猛烈な勢いで飛び出してゆく。音速を超えて飛ぶHWへと弾丸は次々に直撃し、その装甲をぶちぬいて粉砕した。爆裂を巻き起こしながら朱色HWが地上へと堕ちてゆく。撃墜。しかし残りの一機はリン機へと突っ込んだ。
(「苦難を乗り越え優先的にお相手していただけるとは恐悦至極‥‥なんて軽口叩ける状況じゃないわね、これは‥‥!」)
 リン機、お帰り頂く為に迎撃のロケット弾を発射。朱色HWは鋭くスライドして回避しつつ五連の誘導弾を撃ち放つ。リン機もまた朱色をロックオンし二連の誘導弾を撃ち放ちつつ回避機動。ロケット弾は外れ。五連の誘導弾がBELLへと迫る。誘導弾の三発を避けて振り切り、しかし二発に喰らいつかれて大爆発に呑み込まれた。損傷率一割四分。リン機から放たれた誘導弾は一発が外れ一発が命中して爆裂を巻き起こした。
 井出機は緑HWをガンサイトに納めると十式バルカンで猛射する。二十連の弾丸を緑機は螺旋の軌道を描いて回避。直後、月神がエニセイ対空砲を五連射した。砲弾が唸りをあげて飛び三発が命中。直撃した瞬間HWが猛烈に赤く輝いて砲弾の悉くを弾き飛ばした。
(「この戦、なんとしても勝ってみせる。日本のそして、今隣にいる戦友たちのためにも!」)
 榊は敵を睨み胸中で呟くと操縦桿を切った。
「Z隊らしく行くぞ! うおらあああああ!!」
 堺機は天空より急降下するとケイ機へと射撃を加えている朱色HWへとアハトで光線を撃ち放ち突っ込む。光の帯が朱色HWを撃ち抜き、堺機はスラスターライフルで猛弾幕を張りながら突撃してゆく。九十発の弾丸が轟音と共に撃ち放たれ朱色HWを次々に穿って蜂の巣にした。依神機が迫り弾幕に衝撃を受けている朱色HWへと狙い澄ましてショルダー・レーザーキャノンで撃ち放つ。強烈な光が直撃して装甲を削り、依神はさらに距離を詰めるとレーザー砲を連射して撃墜にかかった。破壊の光をしかし衝撃から立ち直ったHWは素早く機動して回避した。光線が虚空を貫いてゆく。
 相対六〇〇、一斉砲撃には間に合わなかったがジャック機もまた射撃を仕掛けている。叢雲機へと射撃を加えているHWの片割れへとガンサイトを合わせファルコン・スナイプを発動、200mm4連キャノン砲を轟音と共に撃ち放つ。十二連の砲弾が唸りをあげて飛び、次々に朱色HWへと直撃して大爆発を巻き起こした。ジャック機の斜め後方を飛ぶ佐賀機はそれに合わせて間髪入れずにブレス・ノウを発動、衝撃に態勢を崩しているHWをロックしラプター誘導弾を猛連射する。三連の誘導弾が焔を吹き上げ激しく煙を噴出しながら空を貫き、HWへと喰らいついて三連の爆裂を巻き起こした。
「ひょおぅ! こいつは御機嫌だぜ、COPはよ!」
 佐賀が歓声をあげた。その機体でよくやる。特殊能力と僚機の打撃に重ねて連携し精度をカバーしている。
「普通の航空機ならどこに当てても落ちるもんだが、面倒だな」
 ジャック・ジェリアが呟いた。HWはまだ堕ちていない。KV対HWの厄介な所だ。旧時代の戦法の多くが異星人との戦いで効果が薄いのは、避けなくてもどうとでもなる牽制射撃は牽制にならない為だ。AIは死を恐れない。
「なかなか良い武器ですね。的が遠くても当てられますか」
 如月機は青HWへと機銃で猛射を加えてゆく。青HWは強フィールドで弾丸を弾きつつ如月機の後背へと回りこまんと距離を詰めつつ機銃を猛射する。如月機も背後を取らせまいと機銃を連射しベクタード・スラストで横滑りしながら旋回する。格闘戦。その外から南部機が青HWの後背へとつけてK‐01とスラスターライフルを撃ち放つ。青HWはそれでも数発を回避したが、その為に攻撃の手数を減らしていた。AIは大雑把に死を恐れないが、有人機では少し話が変わる。
「確かに私より速い‥‥ですが、獅子座ほど圧倒的でなく、『彼』ほど鋭利でもない」
 南部はそう呟きながら猛射を続けた。
 月神機、ブーストとスタビライザーを継続、エニセイ対空砲でリロードしつつ猛射を加えてゆく。井出機が緑HWへと隙を生み出さんとそれに合わせて十式バルカンで弾幕を張る。クラリッサ機もまたそれに合わせてスラスターライフルをリロードしつつ射撃を仕掛ける。
 緑HWは空を滑るように旋回しながら弾幕を回避するも集中射撃の前に全てはかわせず次々に徹甲弾が命中し、砲弾が直撃してゆく。緑HWは誘導弾を月神機へと連射し赤壁で攻撃を弾き飛ばしてゆくも途中で輝きの質が変わり、弾丸と砲弾に装甲を削られてゆく。しかし赤光を纏いながら極超音速で飛び輝くフィールドで月神機へと猛然とその身をぶちあてた。壮絶な衝撃が巻き起こり真紅のバイパーが装甲の破片を散らし回転しながら弾き飛ばされる。視界が目まぐるしく回転しすかさず機銃の弾丸が襲いかかり夜叉姫へと叩き込まれてゆく。月神は撃たれつつも機器を素早く操作して態勢を立て直す。損傷率一割。非常に頑強だ。力技で叩き潰すのは不可能らしい。
 朱色HWがリン機へと四連の誘導弾を連射し二発を直撃させて爆裂を巻き起こさせながら激しく赤く輝き突撃してゆく、フォースチャージだ。その途中、白鐘機がスラスターライフルとレーザー砲を猛射しアンノーン機がバルカン砲で弾幕を張りながら突撃する。リン機はロケット弾を猛射しマシンガンから弾幕を撃ち放つ。弾丸と光線が次々にHWへと直撃しロケット弾が突き刺さってHWの装甲を木っ端に吹き飛ばし、唸りをあげて迫った漆黒のK‐111の翼がHWを粉砕し叩き落とした。壮絶な破壊力。
「大丈夫か、リン」
 白鐘が言った。
「おかげさまで」
 バラバラに粉砕されたHWが焔に包まれた欠片を地上へと降り注がせてゆく。撃破。
 叢雲機へと二機のHWが突撃しながら誘導弾を連射し、叢雲はブーストを再度発動させカウンターの爆雷を解き放ちDR‐2荷電粒子砲を猛連射した。電撃がHWを捉え、凶悪な破壊の光がその装甲を猛烈な勢いで吹っ飛ばしてゆく。光を放った直後に急降下に移った叢雲機を六発の誘導弾が捉えて爆裂を巻き起こした。レッドランプが点灯しアラームがけたたましく鳴り始める。激しく赤く輝いて叢雲機へと迫る二機のうち一機、DR‐2を受けた方のHWへとジャックは狙いを定めるとファルコン・スナイプを再度発動しながら真スラスターライフルで猛弾幕を張る。佐賀機もまたそれに合わせてブレス・ノウを継続、最後のラプター一発とJN‐06誘導弾の二発を猛射した。弾丸が朱色のHWを蜂の巣にし誘導弾が次々に炸裂して爆裂と共に朱色HWを粉砕した。赤い輝きがHWから失せ黒煙を吹き上げながら大地へと落下してゆく。撃墜。しかし残る一機は極超音速でそのまま叢雲機へと迫る。叢雲、これには最大限注意している。だが注意を払いさえすればかわせるものでもない。避けられるか。操縦桿を切って急旋回。片翼の先を赤光を纏ったHWがかすめて抜けてゆく。かわした。しかし損傷率は九割一分、レッドランプがやかましい。
「乗るかそるか千載一遇の大博打だ! 死ねぇ!」
 藤田機、ブースト及びスタビライザー、SESエンハンサーの三種を併発、ケイ機へと猛烈に赤く輝きながら向かう朱色HWへと二百発の小型誘導弾を撃ち放ち、その後背へと捻り込んで突撃しプラズマ光波を猛射する。ケイ機もまたブースト、オーバードブーストを併発、藤田機の射撃に合わせてロケット弾を猛射し誘導弾を回避しながらレーザー砲を撃ち放つ。
「させるかよ!」
 さらに堺機がHWへとスラスターライフルで猛弾幕を張り、それに合わせて依神機がオメガ・レイを猛連射した。
 二機のHWの機銃より猛弾幕が集中してケイ機へと襲いかかりその装甲へと猛烈な勢いで穴を空けてゆく。二百発のドゥオーモが炸裂してHWの装甲を焼き焦がし、ロケット弾が命中して大爆発を巻き起こした。スラスターライフルの弾丸が装甲を穿ち、レーザーとプラズマ光波が突き刺さり、オメガ・レイの破壊の光がHWを貫いた。爆裂を巻き起こしながらHWの一機が落下してゆき、残る一機がケイ機へと突撃する。ケイ機はオーバーブーストで迫り来るフォースチャージに対し素早く旋回する。HWが虚空を突き抜けてゆく。かわした。
『貴方達が優れた戦士である事は判ります。ですが我々は示さなくてはなりません。いかなる障害があろうとも、人はそれを撃ち破り、この世界に平和を取り戻せるのだという事を!』
 三度、真紅のバイパーのアフターバーナーが焔を吹いた。弾丸が交錯する空。月神機は井出機とクラリッサ機の射撃に合わせ音速を超えて加速する。剣翼突撃。
『ははっ、最後の希望ね!』
 緑HWが嘲笑った。一刹那に月神機とヘッドオン。夜叉姫、恐ろしく頑健だが回避性能は低い。正面から突っ込んで来るその機体に対し、装甲の隙間へと狙いをつける。ロックオンキャンセラーの影響を受けつつも機銃で七十連射。嵐の如く放たれた弾丸のうち数十発がバイパーの堅牢な装甲の、その隙間、可動部、変形機構を持つ以上は生じざるをえない隙間へと飛び込んだ。猛烈な衝撃が巻き起こりその内部をズタズタに破壊してゆく。損傷率三割八分。
 止まらない。
 真紅のバイパーが咆哮をあげて迫り、その翼が緑HWを捉え切っ先が装甲に入る。火花と轟音と共に壮絶な衝撃力を巻き起こし緑HWを叩き斬りながら抜けてゆく。破壊の嵐が巻き起こった。瞬後、上空より真白の輝きが広がった。蒼翼の阿修羅が、太陽を背負い翼の刃から陽光を反射しつつ音速を超え急降下する。井出機が衝撃に揺らぐ緑HWへとさらに剣翼を入れ叩き斬りながら抜けてゆく。すかさずクラリッサ機がスラスターライフルで弾幕を再度叩き込みHWへの装甲を削り火花を巻き起こした。
 如月機と青HW、互いに機首を向け合い一方はジェット噴射ノズルで、一方は慣性制御で螺旋の軌道を描きながら空を音速で滑るように飛んでいる。青HWの機銃より炎が噴出し弾丸が猛射される如月機シヴァへと襲いかかる。真紅のディアブロはスライドしながら青HWの機銃射撃をかわし反撃の機銃を撃ち放つ。南部機、外周では背後を追い切れないので、軌道を読んで小回りに入りながら青HWへとK‐01とスラスターライフルで砲弾と弾幕を叩き込んでゆく。砲弾と弾丸が次々にHWへと炸裂してその輝きを消滅させ、装甲を削り取ってゆく。
「ただでさえ手強い本星型のエース仕様か‥‥相手にとって不足なし、参る!」
 さらに白鐘機が青HWへと迫った。軌道を読み、風を切って矢の如くに突撃すると銃弾と光線の弾幕を放ちながら肉薄し交差ざまに剣翼を入れて叩き斬った。強烈な一撃に青HWの装甲が穿たれ削り飛ばされてゆく。青HWは機首を北へと転じた。再度赤く輝くと猛烈な速度で加速し北へと飛んでゆく。
「この空を守らねばご先祖様に顔向けできない!」
 藤田機は朱色HWへと突っ込みながら高分子レーザー砲を猛射。ケイはオーバーブーストを継続しつつスナイパーライフルをリロードしつつ連射する。堺機もまたリロードしつつスラスターライフルを猛射し、依神機がオメガ・レイより十二発の光線を撃ち放った。HWは突撃しつつケイ機へと銃弾を猛射し赤光を纏いながら体当たりせんとする。HWが四機からの集中攻撃を受けて爆砕されケイ機が二十発の銃弾を受けて損傷八割。なんとか残した。HWが爆裂を巻き起こしながら大地へと落下してゆく。
 叢雲機、ブーストを噴出させつつ飛ぶ。HWが迫り、ジャック機が交差ざまにベアリング弾を内包した誘導弾を撃ち放つ。ミサイルがHWの進路上で爆ぜ、強烈な破壊を巻き起こしてゆく。追走する佐賀機がブレス・ノウを発動させJN‐誘導弾を猛射する。六連の誘導弾がHWを捉えてさらなる爆裂を巻き起こした。しかし堕ちない。ついでに目標も変えない。しかし、その時、彼方より七連の砲弾が猛烈な勢いで飛来して次々にHWへと直撃し文字通り爆砕した。壮絶な破壊力。アンノーン機の射撃だ。
『小娘。あんたの言う事は馬鹿げた話だ。本気である程馬鹿げてる。でも問いたくなるね、あんたは本物か?』
 緑HWは再度剣翼突撃を月神機へと再度精密射撃を繰り出した。その機体の隙間をぶち抜いてゆく。弾幕の壁を突破して剣翼を叩き込み、井出機が重ねてさらに剣翼を入れクラリッサ機がスラスターライフルで猛射する。
 壮絶な破壊力に緑HWの装甲が砕かれ茨の如き電流が洩れた。小爆発を巻き起こし黒煙を吹き上げながら緑HWが高度を落としてゆく。機関部に引火したのだろう、緑色の内部から巨大な焔が膨れ上がった。
『――ルウェリンさえ出来なかった。あんたは、何処までいけるかな』
 その言葉を最後に空に壮絶な爆裂を巻き起こしてHWは粉々に砕けて消えていった。




 かくて、バグア側の航空戦力は一掃され不破率いる爆撃隊は山岳地帯の砲群へと爆撃を敢行し、フレア弾の超爆発と共にこれを焼き払った。
 進軍上の最大の脅威を取り除いた事により戦局は解らなくなった。旅団は五分の状態にまで持ち直し、大分バグア軍に暗雲が立ち込めるのだった。
 後にボイナは死体で発見され、その経歴が確認された。
 本名はエミリア=アイゼンハワー、ボイナはコードネームであるらしい。元は大戦初期のS‐01乗りで能力者だったそうだ。
 北米でルウェリン――獅子座になる前の方だ――の旗下で優れた戦績を残してる。暗黒期を支えた古い英雄の一人だが撤退戦でルウェリンと共にヘルメットワームによって撃墜されその後は行方が知れてなかったという。




 了