タイトル:孤独の瞳マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/26 23:40

●オープニング本文


「それにしてもね、さっきのあれはよくないと思うんだ」
 能力者になり、傭兵として戦場に出るようになってまだ日は浅い。それでも可能な限り駆け足で経験を積んできたつもりだった。
 それでも上には上が、その更に上には上がいる。自分の体が思い描いていた映画のヒーローには近いようで遠く、信じていた理想からはそれより更に遠かった。
 いつの間にか振り出した雨から逃れるように廃墟と化した街の中、雨宿りの出来る場所に身を寄せる。ふと、隣に立つ少年は空を仰ぎ語る。
「そりゃ、確かに能力者が戦場に出る時は寄せ集めのチームである事も多い。初対面の仲間に命を預けるのが不満、というのも分らなくはない。でも君のあの態度は少し行き過ぎていると思うよ」
 何か急に偉そうに語り出した少年を視線だけで見る。亀裂の入ったアスファルトの壁に背を預け彼は優しく微笑んでいた。
 事の顛末を思い出すのは簡単なようで難しい。彼女、スバル・シュタインにとって覚醒中の自分の言動は御しがたい物だったから。
 いつもの事だ。初めて戦闘をした時から分っていた。いつものようにきっと先走り、仲間を無視し、敵に突っ込んで‥‥それで、どうなった?
 傷ついたAU−KVを眺める。生きているのだから負けたわけではないのだろうが、恐らく似たような物だろう。腕に巻かれた包帯を目に小さく息を吐いた。
「‥‥あの、助けてくれたんですか?」
「いや。キメラは君が倒したから、助けたというのは少し違うかもしれないね。ただ、そのへんに倒れていたから」
「助けてくれたって言うんじゃないですか、それは」
 口元に手を当て、『そうなのかな?』と呟く少年。その妙に余裕しゃくしゃくな態度が何と無く癇に障る。
「あ、まだ動かない方がいいよ。相当無茶やったからね。いや、僕も人の事は言えないんだけど」
「あの、別に助けてくれなんて頼んでませんけど」
「そうだね。だから助けてないって言ってるじゃないか」
 微妙に会話が成立していない気すらする。能力者になって覚醒する事により体は以前よりずっと軽くなった。けれどそれは覚醒中だけの事。
 期限限定のヒーローはそうでない時の自分を余計に惨めにした気がする。このへんてこなバイクと共になければ、自分はただの病弱な世間知らずだ。
「話を戻すけど、さっきのあれはよくないと思うんだ」
「と、いうと?」
「心配する仲間の手を払いのけたり、指示を無視して突っ込んだり。銃持ってるのになんで殴りに行くの?」
 ぐぅの音も出ない正論であった。思わず顔を逸らす。
「他の皆さんは?」
「先に帰っちゃったかもね。君の態度に怒ってたみたいだし」
 深々と溜息を吐いた。別にそうしたくてしているわけではないのだが、そうしてしまっている以上言い訳にすらならない。
 そうやって毎度毎度ワガママを押し付けていれば誰からも信じられなくなるのは当然の流れだ。
「確かに即席の仲間かもしれないけど、命を預けて共に戦う以上最低限の信頼は必須だと思うよ」
「言われなくてもわかってます」
 それから暫しの沈黙。只管に気まずかったが、雨が地を打つ音にだけ集中していれば幾らかは気も紛れた。
 思い出すのは病室のベッドから見る窓の向こうの世界。そこにずぶ濡れになって窓から顔を覗かせる少女の事だ。
 タオルでわしわしと頭を拭きながら楽しそうに友人の事を語っていた。その両足はいつも彼女を前へと進ませ、その瞳はその先だけをじっと見つめていた。
 同じ能力者になった筈だというのに、自分はどうだ? 足は前に進んでいるようで後ろに。目線はいつも俯いたままの気がする。
「とりあえず帰ろう。もう歩けそう?」
 声に反応し覚醒してみる。恐らくそれなりの時間寝ていたのだろう、万全とは行かずとも体力は回復していた。
「問題ありません」
「じゃあ折角だからそれに乗せてってくれないかな?」
 AU−KVを指差す少年。スバルは無言で頷きそれに跨った。
「高速艇がまだ待っててくれるといいんだけど」
 そんな事を笑顔で語る少年。スバルは結局彼と特にそれ以上言葉を交わさずに別れるのであった。

 そんな少年と再び顔を合わせた時、スバルは結構露骨に嫌そうな顔をしてしまった。
 本部で次の依頼を受けようとうろうろしていた時だ。背後から肩を叩かれ振り返るとあの爽やかな笑顔があった。むしろ爽やか過ぎてちょっと気持ち悪い。
「久しぶり、スバルさん」
「‥‥ど、どうも」
「依頼受けるの?」
「ええ、まあ‥‥」
「一緒に行ってもいい?」
「えッ」
 思わず三歩くらい退いてしまった。変な汗が出てくる。
 何が狙いなのだろうか。ていうかそもそも何なのだろうか。ちょっと怖い‥‥いや、それ以上に。
「あの、貴方‥‥年下ですよね?」
 歩み寄り、肩を並べる。
「身長も私より微妙に低いですよね? なんでそんなラフに接してくるんですか?」
「言われて見るとなんでだろう‥‥? 何か昔の知り合いに似ているというか‥‥」
 口元に手を当て困ったように笑う少年。それから直ぐに気を取り直し握手を求めてくる。
「自己紹介がまだだったね。僕の名前はカシェル・ミュラー。よろしくね、スバルさん」
 スバルはその手を取らなかった。そしてその名前に何と無く聞き覚えがあったような気がしたが、結局それに関して思い出す事は出来なかった。
「あのね、握手くらいは応じたほうがいいと思うよ? 良好な人間関係はね、挨拶から始まって‥‥」
 そして何か口煩かった。半分くらい無視したまま、スバルは仕事探しを再開するのであった。

●参加者一覧

ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
グロウランス(gb6145
34歳・♂・GP
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
セラ(gc2672
10歳・♀・GD
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA
雨宮 ひまり(gc5274
15歳・♀・JG

●リプレイ本文

●恐竜園
「ああ、夢のように素敵な戦場ですわ。恐竜さん愛してますの」
 胸の前で両手を組み瞳を輝かせるミリハナク(gc4008)。傭兵達は竜の住まう廃墟の入り口に立っていた。
「恐竜、好きなんですか」
「あら、聞こえませんでした? 好きではなく愛してますの!」
 カシェルの問いに握り拳で答えるミリハナク。沖田 護(gc0208)は二人の様子に笑みを浮かべている。
「カシェル君は元気そうで何より。ミリハナクさんは『より』元気そうで何よりです。そちら側はお任せします」
 そこへ肩を並べ歩み寄るセラ(gc2672)とレインウォーカー(gc2524)。
「恐竜退治なのです! みんなでいっしょにがんばろー!」
「また会ったな、カシェル。よろしく頼むよぉ」
 挨拶を交わすカシェルとレインウォーカー。二人の間にセラもひょっこり顔を出す。
「レインさんとカシェルさんはこの間ぶりかも!」
 そんな感じでこちらは和やかに挨拶を交わしたり僅かな雑談を挟んでいる。一方‥‥。
「覚えておるか‥‥は分からんが、久しぶりだな。傭兵の道に本当にきたとはな。歓迎するぞ」
「上杉さん‥‥えっと、その節はお世話になりました」
 上杉・浩一(ga8766)と言葉を交わすスバルの様子をカシェルはじっと見つめていた。そこに護が声をかける。
「あの子、似ているね。昔のヒイロちゃん、それにメリーベルさんに」
「そう思いますか、沖田さんも」
 複雑な横顔で呟くカシェル。全員準備を整えた頃合を見計らいケイ・リヒャルト(ga0598)が声を上げた。
「準備も済んだし、そろそろ行きましょう」
 傭兵達は三つの班に分かれ、別ルートからキメラ討伐を行う事になった。ケイは歩き出すスバルの背に向けて語りかける。
「夜道も戦場も独り歩きは危険よ。ね、お嬢さん?」
 振り返ったスバルは無言で目を伏せる。そうして何も答えず、ただ走り出すのであった。

●討伐
「こんにちは。そしてさようなら‥‥」
 ガトリング砲を構え、道端に屯するトカゲ目掛けて掃射するケイ。滝のように零れ落ちる薬莢が止むとキメラも動かなくなっていた。
 A班の三名は順調に街を闊歩していた。トカゲキメラの数は多いが、彼らにとって問題にはなり得ない。
「ふむ、俺がやるまでもないな」
 一掃されたキメラを横目に空を見上げる浩一。思い返すのはスバルと出会った時の事だ。
 僅かに物思いに耽っていると、丁度上空から向かって来る飛竜の姿が。走り出す浩一に合わせ雨宮 ひまり(gc5274)とケイは弓を構える。
 五体の飛竜その全てが翼を撃ち抜かれ落下。そこを狙って浩一は衝撃波を放ち、続け自らも斬りかかっていく。
「‥‥無様ね。残念だけど少し相性が悪かったかしら」
 二丁の拳銃を構え引き金を引くケイ。弾丸は飛竜の眉間を撃ち抜いて行く。
 キメラと近接戦を行う浩一は複数のキメラが繰り出す牙を刀で受けていた。そこへひまりの矢がキメラに突き刺さり、隙を突いて浩一は首を刎ねる。
 あっさりとキメラは片付いた‥‥と思ったその時。ひまりの背後から一匹の飛竜が近づき火をこうとしていた。ひまりはその場にしゃがんで攻撃を避けるが、髪の毛が少しこげている。
 と、次の瞬間にはケイがキメラを撃ち殺していた。特に怪我は無かったが焦げた毛先を弄りつつひまりはしょんぼりした様子だ。
「はう‥‥頑張って避けたのに‥‥」
「ま、まあ無事で良かったじゃないか」
 肩を叩き頷く浩一。銃に弾を込めつつ二人の様子にケイは微笑んでいた。

「あの‥‥さっきから近くないですか」
 こちらB班。スバルは振り返り背後につくグロウランス(gb6145)に困惑気味に言った。
 結論から言うとスバルは暴走していなかった。それは同伴する傭兵が彼女の暴走に行動を合わせた結果なのだが。
 そもそも敵はそれ程危険な固体ではなく、事前に準備や打ち合わせも済ませてきた。大筋が決まっているのならスバルの行動を管理するのも難しくはない。
「兎に角、私に構わないで下さい!」
「いや、そう言われてもな」
 グロウランスはスバルについていくのを止めない。元々彼女が気になって依頼に入ったと言っても過言ではないのだから。
 正面、無数のトカゲと六体の飛竜が見える。散発的な遭遇ではなく纏まった数の敵に傭兵達も身構えるが、スバルはそのまま突撃して行く。
「やれやれ、勇ましいな‥‥。まあいい、殲滅するとしようか。淑女的にね」
 セラの別人格であるアイリスは盾を構えトカゲの群に飛び込む。そうして飛びついてくるキメラを盾で弾き飛ばして行く。
 スバルは小銃を連射してキメラに対処するが、そこへ舞い上がりつつ飛竜が炎を吹きかける。熱に焼かれても攻撃を止めないスバル、そこへグロウランスが超機械を振るう。
 竜巻は炎を巻いて竜を遠ざける。護とセラはスバルのフォローに入り、キメラを引き受ける。
「スバルちゃん、視野を広く! パイドロスなら反応できるよ!」
 数の多い敵に集中しきれずスバルは翻弄されている。護は声をかけつつ剣を振るいスバルに呼びかけた。
「言われなくても‥‥!」
 やや冷静になったスバルは拳銃でトカゲキメラを処理しつつ後退。飛び込んでくる敵はセラが阻止する。
「はははっ 熱いだろう?  痛いだろう? この赤い光は優しいものではないのだよ!」
 飛竜の炎を盾で防ぎつつ銃に持ち替える護。スバルと同時にグロウランスの竜巻に合わせ飛竜を狙う。
 一斉攻撃に次々に撃墜される飛竜。護はスバルへと笑いかけた。
「ドラグーンは器用なんですよ」

 横薙ぎに振るった斧の一撃は崩れかけた道路の舗装を無残にしつつ敵を両断する。
 適当に近づくトカゲを殲滅しつつ歩くミリハナク。その様子は依頼というよりは遠足のようだ。
「なんだか小さいのばかりで大きいのが出て来ませんわ‥‥」
「というか、敵自体見かけないねぇ」
 刀を肩に乗せつつ周囲を見渡すレインウォーカー。C班の道程は他の班より明らかに快適だった。
「この通りに敵が少ないのかな」
 と、カシェルが呟いた時だ。地鳴りに似た足音が近づいてくる。
 十字路のビルの陰からぬっと顔を出したのは巨大な恐竜であった。三人の姿を捉えるや否や大口を開け空に吼えた。
「恐竜さんですわー! 見て見て、恐竜さんっ!」
「ああ、よく見えてるよぉ」
 レインウォーカーの肩をばしばし叩きながらはしゃぐミリハナク。恐竜は凄まじい勢いで突っ込んで来る。
「素敵っ! 美しさと力強さにうっとり‥‥あ、記念写真撮らなくっちゃ♪」
「ミリハナクさん前! 前!」
 青ざめた様子で叫ぶカシェル。咆哮と共に突撃してくる巨体に散り散りになる三人。それぞれ一撃をかわし得物を構える。
 身体を旋回させるようにして尾を振るう恐竜。周囲のビルの壁が吹き飛び、瓦礫が落下してくる。
「どうした、もっと必死になってかかってこい。死にたくないならボクを殺して見せろよ」
 前転気味に攻撃をかわしながら笑うレインウォーカー。空を薙いだ竜の尾はいつの間にか斬りつけられていた。彼は立ち上がり瓦礫越しにカシェルへと通信機を投げ渡す。
「他の奴らへの連絡、頼んだよぉ」
「うわっと‥‥了解です! ていうかミリハナクさん写真撮ってないで!?」
 黄色い声を上げながら写真撮影しているミリハナクに焦りつつカシェルは他班へ連絡をつけるのであった。

●屠竜
 耳を劈く咆哮は大気を揺らす。瓦礫が震え落ちる中レインウォーカーは刃を構え駆け出した。
 尾を交わし素早く足を切りつける。が、巨体が倒れる様子はない。スライディングで駆け抜け、ミリハナクの隣に構えた。
「頑丈だねぇ。それにこの声‥‥」
 咆哮を浴びると身体に痺れるような感覚が広がる。口を開け突っ込む恐竜、ミリハナクはそれを斧で受け止めた。
 しかしそのままの勢いで引き摺られビルに突っ込んでいく。半壊したビルで尾が踊り、レインウォーカーは咄嗟に後退。難を逃れた。
「はうっ!? 恐竜だ‥‥」
 そこへA班が合流。ビルから顔を覗かせる恐竜にひまりはびくりと縮こまる。
 建造物を破壊しつつ戻って来た恐竜は咆哮。怯んだ所へA班の三名へと向かって来る。
 突撃に対しケイは恐竜の目を狙撃。片目を潰された恐竜は足を止めふらついている。
「見えないって怖いでしょう?」
 浩一は刀を手に前進。ひまりは矢を束ね恐竜の足目掛け一斉に放つ。
 連続で着弾した矢が足に突き刺さるが恐竜は止まらない。そこへ左右から駆け寄った浩一とレインウォーカーが同時に足を切りつけた。
「大型の弱点は足元、自分の重さで沈みなぁ」
 突撃が失敗し転倒しつつ滑る竜。近づいてくる竜の口目掛けケイは構えた二丁拳銃の引き金を引きまくった。
「ねぇ? 鉛の飴玉のお味はどう?」
 攻撃は効いているのだが、そのまま竜はケイへと噛み付こうとする。ひまりと共に飛び退くケイ、そこへ立ち上がった恐竜は尾を振り回す。
 間に入ったのはカシェルだ。盾で尾を受けつつ、それを強引に弾き返す。片足から崩れた恐竜は再び派手に転倒した。
 そこへB班が合流したと気付いたのはスバルが恐竜に向かっていったからだ。
 追いついたのは護だった。彼はスバルを押し退けカシェルと共に攻撃を押し退ける。
「若い時の無茶は、買ってでもしろってか‥‥下がれ、スバル嬢!」
 超機械で竜巻を起こしつつ叫ぶグロウランス。そこへ恐竜は口を開き、大量の炎を吹き出した。
「こいつも火を――!?」
 思わず眉を潜める護。広範囲が焼け、炎に巻かれてスバルは吹っ飛んでいく。
 グロウランスがスバルを治療すると同時、戦場に歌が響いた。淡い光を纏い、アイリスは恐竜に歌を聞かせる。カシェルはそのフォローにつき、残りの傭兵は攻撃を開始。
 恐竜の動きは鈍くなっていくが、中々どうして倒れない。血塗れになりつつも戦い続ける竜、それを瓦礫を押し退け復帰したミリハナクが睨む。
 不機嫌の理由は瓦礫に潰れたカメラにあった。斧を取り出し軽く振るい、恐竜目掛けて走り出す。
 身体を旋回させるようにして斧を足の付け根に叩き込む。すると巨体が僅かに浮き上がった。片足が潰れ呪歌で痺れている事もあり、恐竜は大人しく倒れこむ。
 先の旋回の勢いのまま再び回転、斧を下から空を薙ぐように振るうミリハナク。刃物で肉と骨を絶つ小気味いい音が響き、恐竜の首は空を舞っていた。
「屠竜は戦士としては夢の一つですの」
 夥しい量の血が溢れ巨体は倒れこむ。首はあるべき場所から遠く離れた道端に、何が起きたのか理解出来ない様子で転がっていた。
「滅茶苦茶だ‥‥色々な意味で」
「はっ!? セラってば何して‥‥わっ!? スバルさん怪我してるのです! 蘇生術、蘇生術!」
 冷や汗を流すカシェルの背後を飛び出しスバルに駆け寄るセラ。グロウランスの治療でほぼ傷は癒えていたがセラは慌てた様子で治療を施した。
「も、もう大丈夫ですから」
「大丈夫じゃないよ! 無茶して怪我したらセラ悲しいんだから!」
「‥‥チームでここに来た以上はそれを利用しない手はなかろう。何故、こんな事をした?」
 窘めるような口調の浩一。グロウランスはその肩を叩き首を横に振る。
「さっきまでは上手く連携してたんだがな。なあ?」
 セラに続き護も頷く。半分嘘、半分真実。少なくとも後半は上手くやっていたと思う。だから膝を着きスバルに言う。
「スバル、右手挙げてみろ」
 おずおずと手を上げるスバル。その手を叩きグロウランスは笑う。
「お疲れ、戦友」
「戦友‥‥?」
「そう、仲間なのです!」
 セラもと同じ様に手を叩く。スバルは困惑した様子で二人の顔を見つめていた。

 こうして依頼は無事に終了したのだが‥‥。

 廃墟の中心にあがる白煙。ミリハナクは倒した恐竜の肉を焼いていた。
「わぁ、豪快だね♪」
「この日の為に確り準備して来ましたわ♪」
 ホームセンターでうきうきと準備を整える様子を想像しカシェルは遠い目を浮かべた。
「って、ひまりちゃんどこ行くの!?」
 ふらっと何処かへいなくなろうとするひまりの肩を掴むカシェル。
「え? キメラがまだいないかなって」
「それならついてくから後にしようよ」
 苦笑するカシェルに足を止める。それからひまりは片手を挙げカシェルの頭にあてた。
「カーくんの背は全然低くないと思うよ」
 何故フォローされたんだろうと思いつついつもの事かと納得するカシェル。
「あっ、でも何だか痩せてない? もっといっぱいご飯食べたほうが良いよ」
「あ、うん。じゃあ折角だし恐竜ステーキを‥‥」
「キメラを食べるのは流石にちょっと‥‥嫌ですよね、スバルさん」
「論外です」
 こいつら‥‥という顔でわなわなと震えるカシェルの肩を護は苦笑しつつポンと叩いた。
「仕方ないさ。能力者も人間だよ。怪物でも兵器でもない‥‥キメラが食べたくなくてもある意味自然な事だよ」
 そうして少しだけ真面目な様子でスバルに歩み寄る。
「よく頑張ったね」
 そっぽを向くスバル。その隣にすっと腰を下ろし、キメラを焼く様子を眺めつつケイは微笑む。
「どう? たまには連携も悪くないと思わない?」
「それは‥‥」
「ただ駆け抜けるだけも快感だけれど、ね。助け合うって事、体験出来たんじゃないかしら」
 そんなスバル達の様子を少し離れた場所でレインウォーカーは見守っていた。その横顔には複雑な感情が見て取れる。
「レインさん、お肉焼けたよ!」
 骨付き肉を振りながらセラが呼ぶ。レインウォーカーは苦笑を浮かべ片手を振ってそれに応じた。
「はは、逞しいお嬢さん方だ」
 笑いながらその様子を眺めるグロウランスと浩一。年長組二人はそれぞれ今日の事を思い返していた。
「どうなる事かと思ったが、あの様子なら大丈夫かもしれんな」
 今日もスバルは暴走気味だったが、一歩踏み込めば対話が出来ない訳ではない。グロウランスには僅かだが手応えがあった。
「彼女だからこそ出来る事を見つけてくれれば安心なんだが」
 暴走の理由は自己否定や周囲への拒絶にあるような気がする。浩一は腕を組み、小さく呟くのであった。



 恐竜キメラの肉に関しては果たして食べきれたのか、そしてお味はどうだったのか定かではない。ミリハナクのように愛があれば話はまた変わってくるのだろうが‥‥。