タイトル:【ODNK】空虚の玉座マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: イベント
難易度: 難しい
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/19 18:54

●オープニング本文


 福岡空港、そして春日基地。
 戦いの果てに、北九州に残る主要なバグア基地は、今やこの二つとなっていた。
「――『長かった』」
 九州軍司令が放った言葉に、傍にいた士官が眉をひそめる。
「分かっている。まだそれを言うべきではないということは」
 まだ勝利ではない。ルウェインが墜ちた時もあのダム・ダルを討った時も、彼はこの言葉を飲み込んできたのだ。
「‥‥だがそれでも、春日を落とせば北九州でバグアが大きな作戦をとってくることは難しくなるだろう。それが叶った時、そろそろここで私に一度、『長かった』と言うことを許してもらえないだろうか」

「――そして贅沢を言わせてもらうならば、諸君らの手によって、『長かった』と振り返る日々を一日でも短いものにしてもらいたい」

 『長き日々』を『短く』。そのために、諸君らの奮戦に期待する。
 そう締めくくり、九州軍司令は作戦を発令した。

●劣勢
「――さて、どう立て直した物ですかね」
 九州を支配する残り僅かなバグア基地の一つ、春日基地。ダム・ダル亡き今、急遽司令官としてこの地を治める事になった男は暫しの間作戦図と睨み合った後、小さくそう呟いた。
 自分が所詮名ばかりの司令官である事も、ダム・ダル程の力を持たない事も、彼‥‥郭源自身が最も良く知る所。口元に手を当て作戦図を指で撫でる。
 UPC軍が春日基地を包囲しつつある事、そして各地で大規模な反攻の兆しを見せている事、共に彼の頭を悩ませる要因である。
 この状況を逆転させるような策があれば良いのだが、状況は明らかな劣勢。名のある指揮官が次々に倒れ瓦解しかかった基地なのだ、当然と言えば当然なのだが。
「せめてあと幾許かでも増援があれば策も練れたのですが‥‥それはどうやら期待出来そうにもありませんし」
 この地に既に戦略的価値はない――それがバグアの中で主流となりつつある考え。そしてそれはあながち間違いとも言えないだろう。
「仕方がありませんね。このような物言いは不本意ですが‥‥手持ちの戦力で可能な限り抵抗を試みるしかないでしょう」
 片目を瞑り、ステッキでかるく床を叩く郭源。口調とは裏腹に落ち着き払ったその様子に部下の一人が問う。
「宜しいのですか? このままでは増援である我々も‥‥」
「そうですね。ですから貴方達も精々適度に力を尽くす事です。死に場所とするには、ここは少々馬鹿馬鹿しい」
「‥‥は? と、言いますと?」
「命を投げ打ってまで守り通す程の価値は無いと言う事です。無論、この地を完璧に死守出来れば万全。ついでに敵をきっちり駆逐出来れば僥倖ですが」
 黒いコートを翻しながら振り返り、郭源は微笑む。部下達は顔を見合わせ、それから再び問う。
「恐れながら‥‥では何故この地へ?」
「そうですね‥‥まぁ、嫌がらせの類ですよ。或いは個人的な杞憂‥‥義兄弟達が来ているから、と言うのも理由になるでしょうか」
 目を瞑り微笑みながら頷く郭源。部下達に彼の考えを読み取る事は出来なかったが、そこに不満や心配は無かった。彼は元々こういう性質なのだ。
「命を投げ打つのならばトレアドル様の為に‥‥。何、分の悪すぎる戦いという事もありませんよ。勝率に満足がいかない、というだけで」
 机の上の作戦図を見下ろし思う。ある意味この戦いの目的、真の敵は人類ではなく――。
「総員警戒を怠らないように。負けそうだから負けた‥‥というのは、言い訳とするには少々不恰好が過ぎますからね」

●反攻
「死ぬっ!」
 頭を抱えながら叫ぶ部下を見やり九頭竜 玲子は深々と溜息を漏らした。
 いよいよ春日基地攻略戦を目前とした今になっても部下の士気は低かった。低いにも程がある。
「まだ覚悟が決まらないのか? 全く、お前達と言う奴は‥‥」
「だって死にますよ!? なんで他の隊の連中は周辺の敵の掃討なのに俺達の隊が直衛隊に突っ込まなきゃいけないんですか!?」
 涙目で訴える部下の言葉に腕を組み思案する玲子。今回の作戦、九頭竜小隊に与えられたのはULTの傭兵達と共に春日基地に正面から進攻する事であった。
「つーかもっと他の大部隊とかエリートとか腕利きの連中が突っ込めばいいでしょ! なんで俺達が!」
「そういう連中が春日基地以外の戦力を叩くのだろう? 我々は所詮連絡役と言うか‥‥傭兵についていって状況を観察、報告するだけの仕事だ」
 基地に突っ込むと言うと聞こえは物騒だが、ほぼ何もしないで傭兵についていくだけ‥‥そんな情けない役割が彼らには与えられていた。
 実際この小隊がついていった所でバグアの精鋭相手にまともな戦闘が出来るとは思えない。しかしかといって他の戦域で活躍出来るのかと言われると首を捻らざるを得ない。
「ある意味全ての部隊で最も楽で最も安全な仕事だろう」
「そりゃあ攻略をほぼ傭兵に任せるって事ですからね‥‥。でも、集まった傭兵が弱くて全滅したりしたらどうするんですか!」
「いや‥‥多分我々よりは強いぞ、彼らは」
「そんなの当然でしょう! その傭兵がやられたら俺らもう死ぬしかないじゃないですか!」
 額に手を当て溜息を漏らす玲子。毎度の事ながら隊の足並みは揃う気配すらない。
「大丈夫だ。何があってもお前達を死なせたりはしない。何があっても、だ」
 真面目な表情で静かに呟く玲子。先程まで騒いでいた部下達もそれで急に静かになる。
「お前達は後方で連絡役に従事し決して前に出たり手柄を立てようなんて思うな。傭兵が防衛戦力を壊滅させれば基地そのものに突入をかけるのは我々UPCの役目‥‥手柄ならそこで立てればいい」
「‥‥なんか、そんなんでいいんですか?」
「良いに決まっている。お前達が死ぬより百倍良い‥‥が、傭兵だけに押し付けられん。故に私は戦闘に参加する」
 言っている傍から滅茶苦茶な自覚はある。それでは小隊を組んでいる意味が無いし、自分の実力と行動が吊りあっていないのも事実だ。
「お前達はそのまま精々おっかなびっくり彼らについていけば良いさ。私は信じるよ、傭兵の力を」
 過去に何度か経験した彼らと共に戦った戦場を思い出す。そうして爽やかな笑みを浮かべる玲子に部下は言った。
「‥‥でも結局ほぼ傭兵に丸投げですよね。無責任ですよね」
 冷や汗を流しながら黙る玲子。そんな彼女達の状態に構わず、作戦開始時刻は刻一刻と迫っていた。

●参加者一覧

/ 榊 兵衛(ga0388) / 地堂球基(ga1094) / 須佐 武流(ga1461) / 終夜・無月(ga3084) / 櫻小路・なでしこ(ga3607) / UNKNOWN(ga4276) / アルヴァイム(ga5051) / 飯島 修司(ga7951) / 六堂源治(ga8154) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / アーク・ウイング(gb4432) / ハミル・ジャウザール(gb4773) / 孫六 兼元(gb5331) / ソーニャ(gb5824) / 夢守 ルキア(gb9436) / ソウマ(gc0505) / ジャック・ジェリア(gc0672) / ヨダカ(gc2990) / 張 天莉(gc3344) / 巳沢 涼(gc3648) / ミリハナク(gc4008) / ティナ・アブソリュート(gc4189) / ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751) / 立花 零次(gc6227) / 美空・火馬莉(gc6653

●リプレイ本文

●開戦
「いよいよ作戦開始か‥‥ところでこれはどういう事なんだ?」
 冷や汗を流しながら目線を隣に向ける玲子。UNKNOWN(ga4276)は涼しげな様子で応じる。
「どういう事、とは?」
「私達の隊が前に出すぎている‥‥というか、何だこの布陣は?」
 九頭竜小隊のKVは一纏めにされ、左右にドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)とジャック・ジェリア(gc0672)、後方に夢守 ルキア(gb9436)を置きさながら包囲されたような状況にあった。
「援護してあげるってだけですよ。左側は任せて下さい」
「楽しい楽しいブートキャンプの開幕だな」
 ドゥとジャックの声に困った様子の玲子。振り返りルキアに助けを求める。
「夢守君‥‥以前一緒になったよしみだ、助けてくれ」
「UNセンセのお願いだしね‥‥随伴機も欲しかったし丁度いいと思ってたんだケド」
「確かに世話になった恩もある、君を守るのは吝かではないが」
 納得しそうになっている玲子の声に部下は思わず悲鳴を上げる。
「勘弁してくれ、何で俺達まで!」
「これじゃ話が違う!」
 喚いている軍人達の声を聞きつつUNKNOWNは煙草に火をつける。紫煙を吐き、続けて言った。
「グズ、ポチ、タマ、五右衛門。さあ散歩に行くぞ」
 何の事かというか誰の事だか分らない一行。黒衣の男は朗らかに微笑む。
「今日はいい天気だ、な。さあ準備急いで」
 隊員がぎゃあぎゃあと喚く様子がそれぞれの機体にも聞こえてくる。それにヨダカ(gc2990)は苦笑を浮かべた。
「きゅ〜ちゃんの部隊がなんだか大変な事になっているですね‥‥」
「えーと、九頭竜小隊‥‥正規軍、なんですよね? どうしてあんなに‥‥士気が低いんでしょう‥‥?」
 実に素朴な疑問にハミル・ジャウザール(gb4773)は眉を潜めた。巳沢 涼(gc3648)は心配そうに応じる。
「個人的にはあまり無茶してほしくねぇな、UPC軍との連絡役でもあるわけだし」
 何より知り合いに死なれるのは御免だ‥‥心の中で呟く。ティナ・アブソリュート(gc4189)は玲子のフェニックスに機体を寄せて語りかける。
「先日お渡ししたアレ、持ってます?」
 首から提げたネックレスに手をやる玲子。ティナは笑って告げる。
「それはですね、幸運を呼ぶだけでなく、魔よけの効果もあるんですよ?」
 遠ざかるティナの機体。それを見送り玲子は言った。
「なあ黒ずくめ。可愛いよなぁ、あの子」
 春日基地が迫る。傭兵達のKVはそれぞれの役割に適した隊列を組み、北九州決戦の地へと赴くのであった。

●戦士たち
「いよいよ春日基地の攻略か。長かった北九州での戦いもこれで一区切りが出来る」
「丸投げ、大いに結構ですな。傭兵なぞ、金と命を天秤に載せるものです」
 榊 兵衛(ga0388)に続き呟く飯島 修司(ga7951)。二人の機体は最前線を進み、敵指揮官を目指す。
「さあ、楽しい楽しい戦争のお時間ですわ。今回はどんな敵がいるのかしら」
 同じく指揮官を狙う上機嫌なミリハナク(gc4008)。しかし直ぐに眉を潜める。
「あら、ゴーレムばっかり。指揮官機は奥‥‥ま、当然と言えば当然ですわね」
「‥‥行きましょう。此処での戦いを避けて通る事は出来ません‥‥」
 目を細め嘗ての敵を想う終夜・無月(ga3084)。ここは自らが屠って来た敵から連なる戦場、そして何より‥‥。
 振り返り九頭竜小隊を見る。彼らに伝えた言葉が状況を良く転がしてくれれば良いのだが‥‥今は彼らが何かを感じ取ってくれる事を信じベストを尽くすしかない。
「友軍の砲撃に続き防衛線を突破、敵指揮官に仕掛けます。各機連携を密に――行きますよ」
 アルヴァイム(ga5051)の声に隊列を組み前進する指揮官対応の傭兵達。そして彼らの行動を口火に戦闘が開始された。
「春日基地攻略もあと一歩です。後続の為にも基地戦力を全力で落としてみせます」
 急ブレーキをかけ巨大な砲を構える櫻小路・なでしこ(ga3607)のマリアンデール。狙うは敵の中枢。
「まずは露払いです。道を開けて貰いますよ」
 巨砲より放たれた光がゴーレムの布陣を薙ぎ払っていく。その隣につけ涼のセガリアも砲を構える。
「脇役は素直に雑魚のお掃除だ、ヤバいのはエースの皆さんにお任せってね」
 涼が砲撃を開始するとアーク・ウイング(gb4432)とハミルも遠距離から攻撃を開始。敵陣へ向かう仲間を支援する。
「九州の戦いもいよいよ大詰めだからね。今回の戦いもばっちり勝たないと!」
 ゴーレム隊へ進撃する傭兵達、そんな彼らを後方からTWの砲撃が襲う。ゴーレム達はそれぞれ幾つかの隊を構成し、TWを守る構えだ。
「今回集まった皆さん‥‥負ける事はなさそうですが‥‥」
「あれじゃみんなやり辛いしね」
 ハミルの声に頷くアーク。二機は左右に散らばり、それぞれTWを目指す。
「涼さん、私はTWのプロトン砲を攻撃してみます! 上手く行けば無力化出来るかもしれません!」
 援護射撃しつつ語る張 天莉(gc3344)に応じ涼は機体を進ませる。
「了解、こっちも前に出る! 何なら壁にでもしてくれ。コイツの正面装甲、易々とは抜けねぇからな!」
 砲撃しつつ前進する涼、それに追随する形で天莉も前進していく。
 剣を盾代わりに構える涼のセガリアにTWの砲撃やゴーレムのフェザー砲が飛来する。傷つきながらも進む涼の背後、天莉は停止してライフルを構える。
「すみません涼さん‥‥行こう、マオ!」
 アンカーを展開し、身体を固定して狙いを定めるリンクス。狙いは一か八かだが、試してみる価値はある。
「距離30‥‥目標プロトン砲。これで――っ!」
 連続して火を噴くライフル。放たれた弾丸が狙うのはTWのプロトン砲、そしてそのタイミングは――砲撃の直前。
 砲台を完全に破壊するには至らなかったが、砲身を捻じ曲げる事には成功する。結果プロトン砲は暴発、砲台ごと爆散した。
「やるねぇ‥‥っと、そらそら、こっちに注目だ! お前らの相手は俺だぜ!」
 砲撃しつつガトリング砲を構え、近づくゴーレムを迎撃する涼。それを横目に天莉は次の得物を狙う。
「当たると痛いぜ? こいつはよ!」
 轟音と共に火を噴く涼のセガリア。それにソウマ(gc0505)のディアブロが並ぶ。
「巳沢さん、撃ち漏らしは僕が処理します。一気に道を開きましょう」
 TWを守るゴーレム達にハンドガンを向けるソウマ。涼は砲弾を散弾に切り替えゴーレム目掛けて射出する。
「この美しき銀の嵐、かわせるかな?」
 涼と連携し敵に弾丸を集中させるソウマ。その中の一機が剣を手に突っ込んで来ると涼が剣で攻撃を受け止めソウマがハンドガンを手に接近する。
「喰い破れ‥‥!」
 装剣したハンドガンを装甲に捻じ込み引き金を引く。ゴーレムが倒れると後方の天莉がTWの砲台を先程と同じ要領で破壊。続けソウマと涼もTWを狙う。
 三機の一斉射撃に撃ち抜かれ倒れるTW。襲い掛かるゴーレムを相手にしつつ三機は次の敵を目指す。

「援護します‥‥側面から仕掛けましょう」
 TWを守るゴーレムを迂回し、荷電粒子砲を一発放っては移動し、足を止めないように仕掛けるハミル。アークはゴーレムのフェザー砲を盾で受けつつ側面を駆ける。
「近づいて一気に壊したいんだけど‥‥守りが堅い!」
 スラスターライフルを連射しながら移動するアークをTWのプロトン砲が襲う。閃光に飲まれないように盾を構えるアーク、その視界を味方の機体が過ぎる。
 アークを狙うゴーレムに急接近し、旋回するようにして斬り付ける須佐 武流(ga1461)。そのまま通り過ぎたシラヌイ・改はUターンし、刃と化した翼で再び敵を襲う。
「やれやれ‥‥春日基地に攻め込んだはいいが、直衛戦力は俺たちに丸投げとはね」
「正念場、というやつですかね。敵にとっても、私たちにとっても」
 地堂球基(ga1094)と立花 零次(gc6227)の二名が武流に続きゴーレムに仕掛ける。遠距離攻撃から入り、それぞれ白兵装備を構える。
「正念場、か。やるしかないのが辛い所だ。ま、期待に応えてやるだけやりますか」
 肩を竦める球基。は機杖を手にゴーレムに向かう。高めの構えを取り、ゴーレムが繰り出す剣と打ち合う。
「予測通り直線的な動きだな。足元お留守だぞ」
 球基の声を受けゴーレムの背後から接近する零次。擦れ違い様、機刀でゴーレムの足を薙ぎ払う。
「そこっ!」
 片足を切断され崩れるゴーレム、そこへすかさず球基が杖を突き立てる。距離を取りつつ二機は銃撃を加え、このゴーレムを撃破する。
「よし、今なら!」
「交互に仕掛けましょう‥‥援護します」
 体勢の崩れたゴーレム隊を一気に突破し錬剣を繰り出すアーク。すかさず離脱するアークに代わりハミルが荷電粒子砲を撃ち込む。
 続けスラスターライフルでアークが射撃、注意を引いた所にが剣を手にTWに近づく。その首に剣を突き刺し、引き抜くと同時にハミルは後退。更にアークが錬剣を振るう。
「これでっ!」
 擦れ違いながら光の刃を繰り出すシュテルン・G。出力強化された閃光は砲台ごとTWを引き裂き、無力化に成功する。
「おっと、お前の相手はこの俺だ」
 そんな二人を攻撃しようとするゴーレムを斬り付ける武流。爪で地を裂き急停止し、すかさず反転して襲い掛かる。
「悪いが遠慮はしない。破壊するまでブッ叩く!」
 袈裟に食い込む光の翼がゴーレムの息の根を止める。倒れる敵を見届けず武流は次の得物に向かう。

「ポチタマは左右チェック、五右衛門は前方にポイントを。グズは前に出ず、まずは戦場把握だね」
「んな事言われても!」
 一方、UNKNOWN達に前線につれてこられた九頭竜小隊の足並みは揃わないままだった。
「いい加減にしろ! 俺達はただの連絡役なの! こんな事する必要な‥‥ひいーっ!?」
 喚く小隊員のS−01頭上を対空砲の弾丸が飛んでいく。見れば小隊の前に立つUNKNOWNが銃を構えていた。
「じょ、冗談でもそういう事はやめろ‥‥当たったら死ぬだろ! 自分の銃の威力を良く確認してからやれっ!」
 最早泣き出しそうな声で叫ぶ隊員。そこへTWのプロトン砲が飛来する。
 悲鳴を上げる隊員達。しかし攻撃は彼らの前に立ち塞がるK−111改は光を物ともせず散らしてしまう。
「今回は私が障壁代わりだ、ね」
「UNセンセ、正面ゴーレム三機とTW一機、こっち狙ってるケド」
 ルキアの声に小隊機は慌ててK−111改の影に隠れる。とりあえずそこだけは安全なのだ。
「く‥‥っ! UNKNOWN、部下を頼む!」
「待てきゅーちゃん、どうするつもりだ」
「決まっている、叩っ斬る!」
「やめろ、面倒が増える。それに、あー‥‥戦場での誤射は、後ろからが多いよなー?」
「脅しのつもりか?」
 切れ長の目がジャックの機体を睨む。ジャックはぽりぽりと頬を掻き、咳払いして語る。
「脳筋前衛突撃型なら、自分が戦ってる時回りがどう援護してくれたら楽に戦えるか想像しろ。というか、早めにそうしてくれる味方を作って連係をしないとそのうち本当に孤立して死ぬぞ」
「あいつらを見ろジャック。あいつらに戦闘なんて無理だ。私が一機でも多く敵を落とす、それが最善の生存への道なんだ」
 そうこうしている間にもなんかK−111改はバカスカ撃たれているが特になんともなかった。
「九頭竜玲子ちゃん‥‥優しい子なんだね。その優しさで部下を殺さない様にね」
 レーザーライフルでゴーレムを攻撃しつつ語りかけるソーニャ(gb5824)。反撃を次々にかわしつつ小隊を援護する。
「ボクらは一人で戦っているわけではないよ。仲間がボクを守り、ボクが仲間を守る。ボクが落ちればその分仲間が危険になる。仲間が落ちれば、ボクの危険度も増す‥‥」
「‥‥それは」
「ボクはボクとボクの仲間を守る為に戦う。そしてそれは戦う力を持たない人たちの為」
 レーザーライフルでゴーレムを撃ち抜き、旋回。地を駆けていくロビン。
「エルシアン、行くよ。ちょうどいい、生き残り方ってのを見せてあげる」
「‥‥で、どうするんです? 隠れてるだけですか?」
 ドゥの声にびくりと背筋を震わせる隊員達。玲子は操縦桿を握り締め叫ぶ。
「余計な事をするのは止めてくれ! 私が戦う、それでいいだろう!? 嫌なんだもう‥‥部下が死ぬ所を見るのはっ!」
 剣を構え前進しようとするフェニックス。その行く先、ゴーレムに襲い掛かる武流の機体の姿があった。
「くず子さんよ、軍人てのは死ぬことが仕事だ。だが、無駄に死ぬことは違う」
 ゴーレムと格闘しつつ、武流は玲子に叫ぶ。
「部下を死なせたくねぇ、傭兵に頼りたくねぇってのはわかる。だからって自分だけでやんな。そこは任せときな! 俺達や――あんたの仲間達に!」
 足を止め呆然と立ち尽くすフェニックス。そこへぽつりと呟きが聞こえる。
「わ、わかってるさ‥‥ビビってるだけだって」
「俺達は誰にも期待されてない。そりゃそうさ、皆ヘマして飛ばされたろくでなしだ」
「だからってここまで馬鹿にされて黙ってられるかよ!」
 K−111改の影から離れそれぞれ機銃を構えるS−01三機。一人が叫んだ。
「どうすりゃいい、黒ずくめ! 俺達は‥‥どうしたら勝てる!?」
 紫煙を吐き、灰皿に吸殻を押し付けるUNKNOWN。顔を上げ、静かに笑みを作った。
「――ポチタマ、左右から流し撃ち。挟み込む。グズ、抜刀」
 了解の声が重なった。どちらが傭兵でどちらか軍人だかわかったものではない。
「玲子君、突っ込んだら心霊スポットデートだよ。で、部下のヒトは私がデータリンクする情報を確認。敵の増援に警戒して皆へデータ送信」
「‥‥あ、ああ、それは怖い。全く‥‥敵わないな、君達には‥‥」
 ルキアの声に寂しげに微笑みながら頷く玲子。隊員達はルキアやジャックに指示されつつ何とか役割をこなそうと努めている。
 九頭竜小隊が確かに機能し始めた。その様子を横目にティナは槍を振るう。
 流れは確実に変わっていく。かつてはゾディアックの戦士が守ったこの場所も今となっては伽藍の堂も同然。
「全てを纏める王を欠いた城がどうなるかは分かりきってます」
 傭兵達の攻勢に押されゴーレムもTWもその数を減らしつつある。守りの向こう、敵の指揮官もいよいよ前に出てくるしかない。
「ここで終わりにしましょう」
 呟きゴーレムから槍を引き抜く。戦いの本番は、まだこれからだ。

●闘牛士
「全くぞろぞろと‥‥邪魔ですわね。きゅーちゃん砲撃行きますわよ〜!」
 道を塞ぐゴーレム達に口を開くミリハナクの竜牙。放たれた荷電粒子砲「九頭竜」の光で敵を散らし、後方の指揮官機を目指す。
「ふふっ、ぎゃおちゃんの足止めをするのにこの程度じゃ役不足ですわ」
「雄雄しい物です」
「ああ、頼もしい限りだよ」
 修司の言葉に苦笑を浮かべる兵衛。だが言葉は本心から来る物だ。
「有終の美を飾る為に俺達も全力で当たることとしよう」
「――有終の美、ですか。敵に言われてこれ程気に食わない言葉もそうないでしょうね」
 正面、赤と黒のカラーリングを施されたタロスが待つ。レイピアを胸の前で構え、敵指揮官である郭源は微笑む。
「ろくな持て成しも出来ず申し訳ありません。物足りないでしょうが、精々我が剣にて歓迎しましょう」
「‥‥ケープとレイピアとはマタドールでも気取っているのか? そうだとしても相手が悪かったな」
 機槍を構え、穂先を突きつける兵衛。
「刺突攻撃ならば、槍士として俺にも譲れぬものがあるからな。我が槍先に掛かってもらおうか」
「怖い怖い‥‥ふふ、お手柔らかに」
 機体を後退させる郭源に代わり二機のタロスが剣と盾を手に前に出る。
「近衛の騎士と言う所ですかな」
 呟きながら後方を顧みる修司。どうやら九頭竜小隊は他の傭兵に守られつつ順調に戦闘を進めているらしい。
 小さく息を吐き眼前の敵を見る。これらは強敵、恐らく九頭竜小隊では相手にもならないだろう。
「‥‥これは我々の仕事、ですな」
 戦争が終われば傭兵はお払い箱かもしれないが軍人はまだまだ沢山の仕事が残る。
 この投げやりな戦場にも文句は無い。ただ与えられた役割を果たし、傭兵は傭兵らしく命を交えるだけだ。
「あぁん‥‥目移りしちゃいますわ。狙いは指揮官機ですのに‥‥ねぇ、黒子さん?」
 ちらりとアルヴァイムの機体に目を向けるミリハナク。しかし特にアルヴァイムは動く様子がない。
 ミリハナクが小首を傾げたその時、二機のタロスに側面からマリアンデールの砲撃が飛来する。
「お待たせしました。そちらの二機、引き受けますね」
 微笑みながらなでしこが言う。彼女の機体にを追い越し三機、KVがタロスに迫る。
「北九州戦役もいよいよ最終ラウンドなのでありますよぅ。北九州攻略の締め括り、シスターズを代表し末妹の火馬莉が挑むのであります」
 タロスに向かう美空・火馬莉(gc6653)のヨロウェル。その横に六堂源治(ga8154)のバイパー、そしてヨダカのペインブラッドが並ぶ。
「九州で戦うのはこれで4回目くらいか。いよいよ決戦‥‥ここが踏ん張りどころだ。一気に行くッスよ!」
「ヨダカの憎悪と殺意、お届けに参上なのです!」
 仲間がタロスと交戦するのを横目にアルヴァイムは呟く。
「敵指揮官機を孤立させます。位置を調整し攻撃、増援にも注意して下さい」
「りょーかいですわ」
「手合せ願います‥‥」
 ミリハナクと無月がほぼ同時に返事をし、郭源の指揮官機を狙う。郭源のタロスは地上を滑るように駆け、ケープの下からフェザー砲で傭兵を迎撃。捕まらないように常に移動を続ける。
 次々に降り注ぐフェザー砲の光を掻い潜りながらレーザーガトリング砲で反撃する無月のミカガミ。二機の攻撃は互いに命中しない。
「ほ〜ら、逃げなさい逃げなさい!」
「やれやれ、物騒なお嬢さんですね」
 ミリハナクが放つ荷電粒子砲をスピンしながらケープで弾く郭源。閃光は闘牛さながらあらぬ方向へすっ飛んでいく。
 アルヴァイムはミリハナクに続き電磁加速砲を連射。兵衛と修司のいる方へと追い込みをかける。
 立ち塞がる兵衛へレイピアを繰り出す郭源。二機は数度互いの得物を打ち合い、兵衛が空振ると郭源は修司の方へ。
「互角か‥‥修司!」
 剣を構え郭源を迎撃する修司。繰り出される連続突きを受け止めた直後、ケープの影から至近距離でフェザー砲が放たれる。
 光の直撃を受け尚怯まないディアブロ。更に突きつけられたレイピアからプロトン砲が発射され、旋回気味に繰り出された体当たりで弾き飛ばされてしまう。
「ふむ‥‥成程、良く動く」
「一応破壊するつもりでやったのですがね。まるで問題無しですか」
「そんな事はありませんよ。少し装甲が焼けたようですからな」
 肩を竦め後退する郭源。修司は兵衛の機体に並び、槍を構える。
「凡そですが見切りはつけました」
「ああ、次は貫いてみせる」
 特に慌てる気配も無い二人に郭源は呆れたように溜息を漏らす。
「やれやれ‥‥やはり私はこうやって実際に剣を取るのは向いていないようです」
 故に、と。両腕を広げふわりと舞い上がるタロス。
「貴方達の相手は、適当に見繕わせていただきます」
 その声と共に春日基地を覆うドームの扉が解放される。現れたのは初期配置と同等のゴーレム、そしてTWであった。
「往生際が悪いですね‥‥」
「うじゃうじゃうじゃうじゃ、うっとうしいですわね」
 思わず呟く無月とミリハナク。そんな二人の目の前をアルヴァイムの放った弾丸が通過、増援のゴーレムを貫通する。
 増援の出現は想定済。迅速に増援に対処し、攻撃を継続する。
「――敵増援出現。ゴーレム十のTWが四‥‥元の木阿弥だね。アルヴァイム君が早速一機撃墜したみたいだから、残りナンバリングするね」
 通信機から聞こえるルキアの声に交戦中の各機が増援に目を向ける。折角敵を片付けつつあったのだが‥‥。
「増援か‥‥。最後の最後で躓くとかごめんだし、きっちり片付けるとしよう」
 残っていたゴーレムの一機を斬り伏せユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は呟く。タロス班の援護に向かおうと思っていた所だったのだが、その前にやる事が増えたようだ。
「もう少し数を減らすとするか」
 増援との第二ラウンドが始まる。ゴーレムの一気に槍を突き刺し撃破したティナは槍を引き抜きながら眉を潜める。
「また新しい敵‥‥くっ、玲子さんの力になりたいのに‥‥」
 既にこれまでの戦闘でティナの機体は消耗していた。また同じ数の敵が押し寄せるのだ、苦戦は必至だろう。
 気を取り直し増援を見据える。TWの砲撃の射線から身をかわしつつ前進すると、後方からUNKNOWN達と九頭竜小隊が追いついてくる。
「ティナ君、無事か!」
「玲子さん‥‥こんなに前に出てきて大丈夫なんですか?」
「存外にうちの隊の男共が気概を見せてな」
 小隊はK−111改という壁に守られドゥとジャックの援護を受けて前進しつつゴーレム隊と戦っていた。その姿は意外と様になっている。
「私が至らぬばかりに心配をかけてしまったな‥‥。だがもう気負う必要は無い。一緒に行こう、ティナ」
 二機は連携し敵を迎撃する。その様子を眺め、ドゥは頷く。
「大分落ち着いたみたいですね。それじゃちょっと行ってきていいですか?」
「どうかしたのか?」
「ちょっとした個人的な要件です」
 列を離れ敵司令官へ向かうドゥ。ジャックはそれを見送りながら苦笑する。
「九頭竜小隊が意外と頑張ってるしな。いざとなれば俺が守るし、まあなんとかなるか」
「そうカナ? 思いっきり敵指揮官機に向かってるケド」
 ルキアの声に冷や汗を流すジャック。そんな彼らを背にドゥは交戦中の郭源へ向かう。
 状況は完全に乱戦だ。アルヴァイムが郭源を分断しに掛かっている所へ来たのが運が良かったといえば良かったのだろうか。
「えーと、どうも‥‥もしかして誰かお待ちしてました?」
「‥‥? 何ですか、貴方は?」
「名前をお聞きしてもいいですか? 貴方と待っていた人の名前」
 郭源は攻撃を回避しつつ舞い上がり、機体を旋回させる。
「やれやれ‥‥そんな事を敵である私がわざわざ教えるとでも?」
「そうですか‥‥詮索してすみません。最後に余計なお節介ですけど、悔い無いよう頑張って」
「ええ、全く‥‥余計なお世話です」
 レイピアを向けプロトン砲を放つ郭源。ドゥの機体は直撃を受け悲鳴を上げる。
「ドゥさん、何をしているのでありますか! そんな所にいないで早く下がるのでありますよぅ!」
「い、言われなくてもそうするって! 流石に怖い‥‥っ」
 ドゥの傍に駆けつけ槍の先端から閃光を放つ火馬莉。郭源のタロスには通用しなかったが、一先ず追撃から逃れる事は出来た。
「全くドゥさんは世話がやけるのですよぅ‥‥おっ?」
 振り返る火馬莉。自分が抜けた上に敵増援まで現れているのでタロス対応班はかなり不利な状況になっていた。慌てて引き返し、味方を援護する為に槍を振るう火馬莉なのであった。

●勝利の為に
「火馬莉さん、急に隊列を離れられては‥‥!」
「も、申し訳ないのであります。その分ちゃきちゃき働くのでありますよぅ」
 なでしこの声に慌てて戦線に復帰する火馬莉。しかしフリーになったなでしこにタロスは接近。剣でマリアンデールを斬り付ける。
「きゃあっ!?」
「なでしこさん!」
 接近しドラゴンスタッフで殴りかかる火馬莉。タロスはそれを盾で受け、後退しながらフェザー砲を放つ。
 なでしこを守り盾を構え耐える火馬莉。槍を構え、タロスを狙う。
「裁きの雷、食らうのでありますよぅ。発動、ラインの黄金」
 連続して繰り出される光を掻い潜り、時には盾でやり過ごすタロス。マントをはためかせ、再び突っ込んで来る。
「ちょこまかとすばしっこいのでありますよぅ」
 なでしこも加わり迎撃を試みるがタロスを止める事が出来ない。地上を滑空するように突っ込んで来るタロスの剣を防ごうと二人が身構えたその時であった。
「ガッハッハ‥‥おっ? 何かと当たったぞ?」
 タロスの進行方向上に突然割り込んできた孫六 兼元(gb5331)が咄嗟に槍でタロスを弾く。そのまま手元で槍を回し構える。
「不意打ちとは卑怯な‥‥! 油断も隙もないぞ!」
 タロスと対峙する兼元を後方から見つめる二名の女子。何と無く彼が通ってきたらしい道をみるとゴーレムが何機か潰れていた。
「ダム、我が友よ。遂にワシは此処まで来たぞ!! 貴様を追う事一年余り! 幾度と無く交えた刃の因縁に導かれ、遂にワシはこの地に辿り着いた!」
 顔を上げ、春日基地を見やる銀色のオウガ。友と呼ぶべき男の戦いの行く末、見届けもせず何が友か。
「タロスか‥‥ガッハッハ! いいだろう、かかって来い! 奴と比べると少しばかり物足りんがな!」
 タロスへと突き進む兼元。その様子にヨダカは安心したような心配なような複雑な心境にあった。
「向こうは持ち直したみたいですが‥‥」
「あれならもう大丈夫ッスよ。さて、こっちはこっちでやるッスよ、ヨダカ!」
 両手で機槌「ガイア」を腰溜めに構える源治のバイパー。巨大な黄金の槌は鈍く輝きを放つ。
「俺の新しい相棒の初陣だ。シッカリ使いこなしてやっからな‥‥行くぜ!」
 タロスへと突撃する源治。繰り出す機槌を当然タロスは防ぎにかかるが、お構い無しに源治は攻撃を繰り出す。
「こいつの威力を甘く見ない方がいいッスよ!」
 轟音と共に拉げるタロスの盾。吹っ飛んだタロスはよろけながら何とか体勢を立て直し、慌てて源治から距離を取る。
「喧嘩はビビったら負けだぜ? ヨダカ! 一気に決めるッスよ!」
「六堂さんはもう策とか関係ないのですよ‥‥。ヨダカはまともにやっても勝てないですからね。まともじゃない策で勝負なのです」
 タロスにとって大事なのは源治に近づかない事なのか、ヨダカの接近には特に引き下がる気配もない。
 敵の盾目掛け練鎌を繰り出すヨダカ。当然攻撃は防がれるが、続けて蹴りを叩き込む。
「油断してくれてありがとうなのですよ」
 そのまま身体を捻り、盾の内側に鎌を捻じ込む。
「『く』の字武器はそもそも盾を越す為に作られたのですよ?」
 歪んだ刃の軌跡がタロスの腕を切断する。源治の一撃で腕が損傷していた事もあり、ヨダカの一撃は面白い様に成功した。
「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いなのです。だから首置いてけなのですよ‥‥六堂さん!」
 逃れようとする敵に至近距離で両腕を広げるペインブラッド。拡散する閃光に焼かれて弾き出された所へ源治が回り込む。
 飛んできたボールをバットで打つかのようにタロスの背に食い込む機槌。
「釣りはいらねえ。とっときな」
 腕を突き出し、パイルバンカーを放つ。杭で頭部を貫かれたタロスから腕を引き抜き、爆発から逃れる為源治は後退する。
 一方もう一機のタロスは兼元と刃を交えていた。なでしこと火馬莉の援護もあり、戦況は優勢である。
「再生する暇なんて与えないのですよぅ」
 火馬莉が断続的に放つ槍からの攻撃でぐらつくタロス。兼元は敵に突撃し槍で剣を受け、片手を盾の隙間に捻じ込む。
「KV柔法・入身! ぬおおっ!」
 真デアボリングコレダー から放出される電撃がタロスを焼く。その隙になでしこはマリアンデールの砲を構える。
「下がってください!」
 慌てて飛び退く兼元。マリアンデールは電粒子加速砲を突き出すように構え、その引き金を引く。
 次々に攻撃を浴び吹き飛ぶタロス。力を抜くように機体の体勢を緩め小さく息を吐いた。
「おっと、もうケリがついてたか」
 そこへ増援のゴーレムを排除しつつユーリが合流する。敵増援を砲撃しつつ、傷ついた仲間を見やる。
「とはいえ結構やられたみたいだな。ここは俺が引き受けよう」
「いえ、まだ大丈夫です。援護くらいは出来ますから」
 なでしこの返事に頷くユーリ。双機刀で近づく敵を切り裂くと駆けつけた源治が機槌を手に横に並ぶ。
「残りの雑魚掃除、手伝うッスよ」
 一方その頃、郭源を担当する傭兵達にも決着が近づいていた。
 ミリハナクとアルヴァイムは郭源を囲い込むように十字砲火を仕掛けつつ、横槍を入れてくる増援の相手を担当。兵衛、修司、無月の三名が郭源に白兵戦を挑む。
「成程‥‥わざわざ私を狙ってくるだけの事はある」
 郭源と刃を交える兵衛の雷電。至近距離でファランクス・アテナイによる迎撃を行いつつ、身を引きながら槍を横薙ぎに繰り出す。
 本来の間合いよりも伸びた機体の腕は引きながらの攻撃を郭源へと届かせる。同時に入れ替わりで修司が突っ込み、機槍を突き刺した。
 後退する敵を機関砲で追撃する修司。逃れるように移動する郭源の背後、白銀のミカガミが回り込む。
「何‥‥速い!?」
 次の瞬間練剣「雪村」の閃光が瞬いた。その場で舞うように回転しつつ次々に斬撃を放つ無月。光の剣は郭源のタロスを半壊させるに至った。
「く‥‥っ、ケープの護りがまるで紙切れとは!」
 そのまま一気に舞い上がるタロス。逃亡を試みる敵機にミリハナクの竜牙が吼える。
「逃がしませんわ――ぎゃおちゃんっ!」
 ケープのシールドを展開し閃光を弾く郭源。しかし守りが限界だったのかケープは爆発、片腕を吹き飛ばされ郭源は苦々しく振り返る。
「私の負けですか‥‥いくら劣勢とは言え情けない。この屈辱は決して忘れませんよ。次は必ず‥‥」
 そのまま飛び去っていくタロス。兵衛はそれを見届け振り返る。
「逃げたか‥‥では残りの片付けと行こうか」
 まだ敵は残っているが、その数も僅かだ。彼らが殲滅に加わればそう時間をかけずに戦闘は終了するだろう。
 こうして春日基地防衛戦力との戦いは傭兵が優位のまま推移し、決着を迎える事になるのであった。

●自由の風
「これが最後の一機‥‥!」
 ゴーレムを機刀で袈裟に斬り倒し呟く零次。刃を収め振り返るとかなりの数のゴーレムの残骸が春日基地周辺に散らばっており、相応の激戦であった事を物語っている。
「今ので最後だよ。周囲に敵影ナシ、お疲れ様」
 零次がゴーレムを撃破した事を確認しルキアが友軍機に通信を飛ばす。作戦は終了したのだ。
「これからUPCのKV隊が春日基地の制圧にかかる。ご苦労だった‥‥諸君らの助力に感謝する」
 玲子の声で引き上げの準備を開始する傭兵達。それと入れ違いにUPCの部隊が春日基地へ向かっていく。
「お疲れ様‥‥相棒」
 膝をついた愛機の傷を眺めながら呟くドゥ。また相棒に無理をさせてしまったが、それもこれで最後だと誓う。
「ドゥさん」
 そこへ火馬莉の機体が近づき同じ様に膝をつく。二人は並んでUPCのKVが頭上を飛んでいく様子を見上げていた。
「ぎゃおちゃんの九頭竜の一撃はどうでした? 同じ名前だけに惚れ惚れして羨ましいでしょ」
 ドゥと火馬莉が話している場所からは離れた所で玲子はフェニックスを見上げていた。そこへミリハナクがどや顔で近づいていく。
 玲子は腕を組み、なにやら複雑そうな表情でミリハナクを見つめ、それからその金色の髪を撫でた。
「九頭竜か‥‥そうだな、私と違って大した武器だ」
「きゅーちゃん、何故撫でるんですの」
「いや‥‥なんか、君すごく似てるんだよ。妹に‥‥」
 そんな二人の様子を眺めるUNKNOWN一行に九頭竜小隊の隊員が近づいていく。
「あのー‥‥なんか、結果的にはありがとうございました」
「何だその煮え切らない感謝の言葉は」
 思わず苦笑するジャック。そこへ別の男が歩み寄り手を差し伸べた。
「あんたの戦い、勉強になったよ。ありがとう」
 手を取り握手を交わすジャック。残り最後の隊員だけはそっぽ向いたままだった。
「俺は礼なんか言わねえぞ! 殺される所だったんだからな!」
 隊員達を眺め微笑む玲子。そこへ天莉と無月が声をかける。
「彼らもこの戦いで‥‥何か感じ取ってくれたようですね‥‥」
「ああ、君達のお陰だな。感謝する」
「それで、斬子さんの事なんですけど‥‥」
 玲子の妹と知り合いな二人はこの作戦が始まる前に彼女の話をしていた。玲子は空を見上げ、風に吹かれながら言った。
「あの子はあの子の道を歩き出したのだ。最早私が口出しする事ではないよ」
「玲子さん‥‥」
「斬子は良い友人に恵まれたな。どうか愚妹と末永く付き合ってやってくれ」
 爽やかに微笑む玲子。と、そこに咳払いしつついつの間にか接近していた黒ずくめの男が一人。
「うん、話は纏まったようだね。良かった良かった。ではグズ、これに着替えようか」
「は?」
 UNKNOWNが手にした大量の衣装に青ざめる玲子。逃げる事も出来ずに捕まった彼女の悲鳴が春日の空に響き渡った。
 長きに渡り続いた一つの戦いの一つの区切り。傭兵達はそれぞれの思いを抱え、北九州の空へと想いを馳せる。
 この日防衛戦力を排除された春日基地はUPC軍により占領。バグアの重要な軍事拠点の一つが地図上で塗り替えられる事となった――。



「‥‥そういえば玲子さん、何でそんなのを着てるんです?」
「これか? これはキャットスーツと言ってな‥‥」
 背を向けたまま答える玲子。ティナはその寂しい背中に小首を傾げるのであった。