タイトル:【AP】暴走メカヒイロ!マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/12 06:55

●オープニング本文


「ついに完成したぞ! これぞ俺様の最高傑作だ!」
 白衣を脱ぎ捨て上半身裸になったツギハギが声高らかに宣言する、そんなある日の午後。ドールズと呼ばれた強化人間達は午後のティータイムの真っ最中だ。
「煩いわね‥‥今度は何を発明したの?」
 鬱陶しそうな様子でクッキーを齧りつつルクス・ミュラーが問う。それにツギハギに代わり、白衣を羽織った少女が答える。
「人類を抹殺する超兵器です。今回はツギハギだけではなく、私も手伝いました」
「キャロルが? あんたらたまに仲いいわね」
「わかってねぇな、ルクス。俺達はマッドサイエンティスト‥‥! 興味と利害の方向性が一致すれば、団結するのは当然!」
 ツギハギとキャロルは手を取り合いその場で回転。それから前以って打ち合わせていたかのようにピタリと謎のポーズを取ってみせる。
「ウザ‥‥。で、その超兵器はどこに?」
「焦るなって。ほら、このリモコンを持って『カァアアムヒァアア!』とか叫んでみろ」
 やけに古めかしいデザインのリモコンを手渡され戸惑うルクス。そこへキャロルが続ける。
「『出ろぉおお!』とか『発進!』とかでも可です」
「な、なんであたしがそんな事しなきゃいけないのよ」
「いいからいいから」
 二人に背中を叩かれ、舌打ちしながら仕方なくルクスは咳払いを一つ。
「カ‥‥カァアアムヒァアア!」
 しかし何も起こらない。固まるルクスの背後から背伸びをしたキャロルがリモコンのボタンを押した。
「別にボタン押せば来るんですけどね」
「‥‥首刎ね飛ばすぞクソガキ」
 顔を真っ赤にするルクスの視線の先、アジトの奥からキュラキュラと妙な音を立て、何かが近づいてくる。
 現れたのは人型の謎の兵器であった。実に古めかしい‥‥というか、メカメカしいデザイン。下半身はキャタピラで両手はトング。首が絶え間なく回転している。
「何これ」
「ですから、超兵器です。目からビーム、口から炎とか出ます」
 キャロルの首根っこを掴み、テーブルに顔面を叩き付けるルクス。大地に頭部を減り込ませ、キャロルは暫くじたばたしていた。
「本当に実用性あるの? あたしには強そうに見えないんだけど」
「実はこいつは試作機でな。ある傭兵の思考パターンとロマンを凝縮してある」
「ある傭兵?」
 頷きツギハギが指差す方向、いつの間にか簀巻き状態のヒイロ・オオガミが床の上に転がっていた。
「‥‥どうしたのアレ」
「実はこの間たまたま道端で拾ってな。話が合ったもんで、つい」
 無言でツギハギを蹴り飛ばすルクス。男は派手に吹っ飛び、壁を突き抜けてダウンした。
「わふー‥‥ヒイロ、おなかぺこぺこさんで死んでしまう可能性が無きにしも有らずなのですよ‥‥」
「ヒイロ・オオガミ‥‥何捕まってんの」
「あ、カシェル先輩のお姉ちゃんだ! ヒイロなんか捕まったですよ!」
 アホの笑顔を見ていると頭痛がしてくる。こめかみを指先で揉みつつ、ルクスはヒイロの縄を解いた。
「もういいから帰りなさい。どうせこのアジトの場所も覚えてないんだろうし‥‥」
「でもヒイロ、メカヒイロが戦う所まだ見てないから‥‥」
「メカヒイロ?」
 満面の笑みで頷き、ヒイロは例の怪しい兵器を指差す。成程、言われてみると何と無くヒイロっぽいような気がしないでもない。
「ツギハギ君とキャロルちゃんが言うには、ヒイロがここに捕まってれば誰かが助けに来るですよ」
「‥‥まあ、場所が分ればそうでしょうね」
「そしたらヒイロは『きゃーたすけてー』って言うので、メカヒイロとみんなが戦うですよ」
「あんた‥‥ヒーローになりたいんじゃなかったの? 自分でメカヒイロと戦えばいいじゃない」
「でもヒイロ‥‥メカヒイロやっつけるのかわいそうで‥‥」
 両手の人差し指を胸の前でちょんちょん突き合わせながらしょぼくれた顔をするヒイロ。ルクスは遠い目で弟の苦労を察した。
「ったく、下らないわね‥‥こんなもんがあるからいけないのよ」
 徐に大剣を手にメカヒイロに近づくルクス。そのまま炎を纏った斬撃でメカヒイロの首を狙った‥‥のだが。
「――無傷!?」
 それどころか打ち所が悪かったのかメカヒイロは口や耳のような部分からもくもくと白煙を吐き出し始める。
「これだから脳筋は‥‥。ルクス、貴女の所為ですよ。メカヒイロが壊れてしまいました」
「脆いんだか頑丈なんだか‥‥って、あたしの所為!?」
「説明しよう! メカヒイロの首の後ろの部分には制御ユニットが装備されていて、それが破壊されるとメカヒイロは暴走モードに突入するのだ!」
「正に激熱‥‥!」
 手を取り合い頷くマッドサイエンティスト二名。ヒイロは目をきらきらさせてワクワクしているので、もうルクスがどうにかするしかない。
「ったく‥‥ヒイロには悪いけど、ぶっ潰させて貰う!」
「あーっ! だめなのですよ! メカヒイロを苛めちゃだめなのですよぅ!」
 しかしそこで背後からルクスに縋りつくヒイロ。二人が揉み合っているとメカヒイロがぷるぷるし始め‥‥。
「ワフー! ワフー! オナカヘッタデス!」
 メカヒイロは腕を伸ばし、キャロルの首根っこを掴む。次の瞬間大口を開き、キャロルを丸呑みにしてしまった。
「キャロルちゃんがあああ!?」
「いや明らかに口の大きさとかメカヒイロ自体の大きさを考えるとキャロル丸呑みはおかしいわよ!?」
「このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません」
「ツギハギ君が何いってるのかヒイロわかんない」
 そして次の瞬間目から交戦を放ち、口から火炎放射、全身の至る所からミサイルを発射し、両腕を振り回しながら回転。一瞬でドールズのアジドは廃墟と化すのであった‥‥。
「って、死んでたまるかボケェ!」
 廃墟の地下鉄よりヒイロとツギハギを連れて脱出したルクス。彼女の視線の先、廃墟の町はメカヒイロの手により更に破壊し尽くされていた。
「ツギハギ、メカヒイロを止める方法は無いの!?」
「首の後ろにある制御装置という名の停止ボタンを押せば止まるんじゃねえか?」
 倒れているツギハギの脇腹を何度も蹴り飛ばすルクス。動かなくなった男を残し、ヒイロを片手に廃墟を駆ける。
「ヒイロ・オオガミ‥‥あんたなら奴の思考パターンが分るはず。あたしに指示しなさい。あんなわけのわからない物、生かしてはおけないわ」
「でもメカヒイロはいい子なんですよ? 話し合えばきっとわかりあえる!」
「言葉が通じてないでしょ明らかに」
「ボディランゲージで!」
 こうして不毛な言い争いをしつつ、大剣とヒイロを片手にルクスはアジトを滅ぼした悪魔へと戦いを挑むのであった――。

※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。

●参加者一覧

鷹崎 空音(ga7068
17歳・♀・GP
上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
張 天莉(gc3344
20歳・♂・GD
犬彦・ハルトゼーカー(gc3817
18歳・♀・GD
三日科 優子(gc4996
17歳・♀・HG
茅ヶ崎 ニア(gc6296
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

●アバン
 今からそう遠くない未来――。人類が機械に敗北し、支配されるようになった未来。
 地球の支配者としての地位をロボットに奪われた人類は、荒廃した世界でしぶとく生き残り、抵抗を続けていた‥‥。
「あれだけあったアジトも潰され、残るはここだけ‥‥へっ、ついにケツに火がついちまったか」
 何か濃い顔つきの外人の男が呟く。セリフは英語で再生してください。
「諦めるな、まだ最後の希望が残っている」
「冗談だろドクター。今や地上はリンボ同然‥‥このアジドも直に見つかり、俺達は全員仲良くあの世行きさ」
「ならばその未来を変えるまでじゃ」
「まさか‥‥完成したっていうのか? あの装置が」
 頷くドクター。彼の視線の先には作業台の上に横たわる犬彦・ハルトゼーカー(gc3817)の姿があった。
「変えるのじゃ――過去の歴史を。そして、滅びの未来に希望を‥‥」
 その時、遠くから爆発音が聞こえて来た。地下にあるこのアジトにも崩壊の時が近づいているようだ。
「ヘイ、ドクター! ヤツら直ぐそこまで来てやがるぜ!」
「いかん‥‥! 犬彦を送るのじゃ、過去に!」
 謎の装置が起動し、犬彦が光の中に消えていく。次の瞬間研究室に雪崩れ込んだ機械の軍勢に二人は射殺されるのであった。

 そんな未来より時を巻き戻した現代――。

「発注したメカヒイロの出来はどうやろ。わくわくすんな」
 廃墟を楽しそうに歩く三日科 優子(gc4996)の姿があった。
 メカヒイロ‥‥。彼女が生み出してしまったその悪魔の兵器が未来を変える脅威の発明であった事を、今の彼女が知る由も無い。
 そしてこの時から決まった未来を変える為、最後の希望を託された者達の戦いが今、幕を開ける‥‥!

●Aパート
「ヒイロさん! 助けに来まし‥‥ぅゎ」
 時は現代。嘗てドールズとかなんとかいう連中のアジトがあった廃墟にて絶句する張 天莉(gc3344)の姿があった。
「ヒイロさんが誘拐されたと聞いて居ても立ってもいられくなって来たが‥‥なんだ、あれは、どういう状況だ」
 天莉の隣、腕を組んだ上杉・浩一(ga8766)が遠い目で惨状を見つめている。
 彼らの目の前ではヒイロをおんぶしたルクス・ミュラーと謎の人型機動兵器が激しい戦闘を繰り広げている。ヒイロはくっついているだけだ。
「天莉君、浩一く‥‥ぎにゃーっ!」
「というかなんでドールズの一人が生きている‥‥というかなんだこのツッコミどころ満載のあれは、というか‥‥どうしてこうなった」
 メカヒイロの口から放出される大量の炎。それを大剣で受けつつ、大きく跳躍してルクスは傭兵達の傍に着地する。
「あんた達は‥‥もしかしてこの子を助けに?」
「ルクスちゃんヒイロのお尻が燃えてる! ヒイロ尻尾も燃えてるのですよ!」
 ルクスは炎の剣を使うからか、服に耐火能力があるのだ。だから炎を食らっても平気だぞ!
「ヒイロは平気じゃないのですよ!?」
 尻尾を振りながら走り回るヒイロ。鷹崎 空音(ga7068)はやや状況についていけないのか、苦笑しながら暴れるメカヒイロを見やる。
「‥‥流石に暴走したこれをほっておくわけには‥‥ねぇ」
「メカヒイロ‥‥壊しちゃうですか‥‥?」
 気付くと空音の足にヒイロが縋りつき、うるうるした目で見ている。うるうる‥‥うるうる‥‥。
「その子は任せるわ。あいつの中にまだ仲間が捕まったままなのよ」
 剣を構え直し、ルクスは再びメカヒイロへと向かう。空音の足に引っ付いたままのヒイロを浩一と天莉がひっぺがし、三人は改めて状況を見渡す。
「かくかくじかじかなのですよ」
「首の後ろのスイッチか‥‥うん、わかりやすいところで助かるや。これが『肩甲骨の後ろの2本のトゲの中央にあるトサカの下の逆鱗の右の以下略』‥‥とか言われたら、間違って変なところ攻撃しそうだしさ」
 ヒイロのスマートな説明を受け、頷く空音。さて戦いに行こうかという空気になった時、天莉が不敵な笑みを浮かべる。
「ふふふ、こんな事もあろうかと私も秘密兵器を用意していたんですよ。ぽちっとな♪」
 謎のボタンを押す天莉。
「どこからともなく勇壮なBGMが‥‥」
「‥‥むっ、あれはまさか!」
「浩一さん、知ってるの?」
「いや知らん」
 がっくりと肩を落とす空音。そこへ飛来したのは超兵器メカクズコであった!
「いけー、メカクズコー!」
「ザンコデスワー」
「天莉君、くず子はザンコじゃなくてキリコですよ!?」
 ヒイロの慌てた説明に小首を傾げる天莉。ネタなのか本気なのかは彼に限っては僕もわからない。メカクズコは斧を振り回しながらメカヒイロへと向かう。
「へぶっ!」
 途中でルクスを轢いたが気にしない。
 二体のメカは激しく激突。メカクズコはドリルのような髪を射出するが、メカヒイロは口を開き、メカクズコの頭部をマルカジリにした。
「あ、マミった‥‥」
 ほけーっとした顔で呟くヒイロ。何故か満足げな天莉の隣、浩一が頷く。
「やはり今回も駄目でしたね。猪突猛進で玉砕が華ですからいいんですけど♪」
「‥‥次はこれを見ている人にも手伝ってもらった方がいいな」
 カオスな三人の様子を横目に冷や汗を流す空音。ふと、メカヒイロの口に光が収束しているのが見える。
「な、なんかピカーってしてるんだけど‥‥」
「む、あれは!」
「浩一さん、知ってるの?」
「いや知らん」
 次の瞬間メカヒイロの口からくず粒子砲‥‥今考えたわけではない‥‥が発射された!
 大地を薙ぎ払い空を焦がす破滅の閃光。天莉は傘を広げ、仲間達をくず粒子砲から守った。
「凄い威力‥‥! こんなの連射されたら!」
 光に腕を翳しながら唇を噛み締める空音。光が一度止むと、天莉は叫ぶ。
「ヒイロロボさーん! 首の後に肉がくっついてますよー!」
 と、ビーム発射体勢のまま首だけで後ろを向くメカヒイロ。ビームは背後へと放たれ、その瞬間傭兵達は走り出す。
 振り返り、炎を吐き出すメカヒイロ。傘を広げた天莉がそれを防ぎ、影から飛び出した浩一が刃を振るう。
 二刀の連撃の後、打ち上げる一撃で宙を舞うメカヒイロ。そこへ回り込んだ空音が蹴りを放つ。
「必殺、ダイナマイト・キーック!」
 ガキーンという効果音と共に蹴りが炸裂。空音の爪先はポチっとメカヒイロの停止ボタンを押す事に成功した、だが‥‥。
「ボクの気のせいかもしれないけど、余計暴走してるような‥‥はにゃ〜〜っ!?」
「空音ちゃーん!」
 ドバっと大量の武器が全身から飛び出し、一斉放火を浴びた空音が目をグルグルにしながら吹っ飛んでいく。
「この化物!」
 遠距離から大剣を振り下ろすルクス。炎を纏った斬撃は地を砕きメカヒイロに直撃するが、無傷である。
「今のカシェル先輩なら重体ですね」
 ほけーっとした顔で呟くヒイロ。メカヒイロの猛攻を前に傭兵達が窮地に立たされていたその時‥‥。
「なんか偉い事になっとる」
 遅れて姿を現した謎の女の正体とは!? 後半に続く!

●Bパート
「なんか偉い事になっとる」
 彼女の名前は三日科 優子。何を隠そうメカヒイロを発注した張本人である。
 今日はメカヒイロが完成したとの事で様子を見に来たのだが、何か戦闘になっていた。
「優子ちゃんだ。どうしてここに?」
「おぉヒイロ。そうそう。メカヒイロ見たか? あれ、ウチがツギハギにお願いして作って貰ったんよ。しかし、よう出来とんな」
 と、本物のヒイロのほっぺをむにむにする優子。メカヒイロ含め全員が止まっている。
「ヒイロは本物のヒイロなのですよ」
「あぁ、通りでよく出来てる思ったわ。して、本物のメカヒイロは?」
 全員が同時にメカヒイロを指差す。優子は口元に手を当て眉を潜めた。
「‥‥どっちが本物のヒイロや?」
 全員が同時に冷たい目線を向ける。咳払いを一つ、優子はメカヒイロの肩を叩く。
「冗談や冗談、ちゃんと見分けつくって。な、ヒイロ?」
「うわーん! 優子ちゃんのばかあーっ!」
「あ、ヒイロさん!」
 泣きながら何処かへ去るヒイロ。慌てた様子の空音の背後、優子は冷や汗を流す。
「メカが喋っとる‥‥」
「あっちが本物だよ!?」
 次の瞬間メカヒイロは優子にかじりつき、むしゃむしゃと丸呑みにしてしまった。
「優子さーん!」

 三日科 優子、暁に死す。空に浮かぶ彼女の笑顔(BU参照)を僕らは忘れない――。

 と思いきや優子は生きていた。見た目の数十倍広大な内部で転がっているキャロルとメカクズコの頭部を無視し、優子は思い出す。
 大量に並んでいるボタンの中に確か自爆ボタンがあったはず。それを押せばこの騒動は収まるはずだ。
 内部で優子がボタンを押した瞬間、メカヒイロはミサイルを発射。何故か吹っ飛ばされた空音がぐったりして転がっていた。
「誰‥‥あんなに変てこな武装満載に積んだの‥‥」

 ででっでっででん‥‥。ででっでっででん‥‥。

 どこからとも無く流れるBGM。時計台の上に雷が落ち、何かが光と共に出現する。
「あれは‥‥!?」
 三度目の呟き、浩一。炎を背に現れた犬彦は傭兵達の前に立ち、メカヒイロと対峙する。
「うちは未来から来たアンドロイド犬彦。革命軍のリーダーになるヒイロを保護し、スカ‥‥機動兵器軍団の元となったメカヒイロを破壊する為に来た」
 メカヒイロと組み合う犬彦。二体の兵器はシリアスに戦っているがもう誰もついてこれていない。
「中の人聞こえるか。こいつを無力化するには体内にある自爆装置を起動させるしかない!」
「今探しとるんやけどなぁ」
 テキトーにボタンを押しまくる優子。
「なんやこのボタン。でんじゃー?」
 いかにもなボタンを押した時、メカヒイロを光が包む。飛翔したメカヒイロは赤い月から飛来した追加ユニットと合体。巨大なロボットへと変形した!
「この状況、開発者としてのコメントをお願いしますツギハギさん」
「もうどうにでもなればいいさ!」
 上半身裸のツギハギにマイクを向ける天莉。浩一と空音は呆然と空を見上げている。
「まだや。諦めるにはまだ早い!」
 空の彼方を見つめる犬彦。遥か彼方、この世界に残された最後の希望が動き出す。

「敵性ロボット出現ですって!? くー、燃える! こういうのを待ってたのよ!」
 何処かの裏山にある基地。裏山‥‥? まあいい、裏山。
 パイロットスーツ姿の茅ヶ崎 ニア(gc6296)がやけに長い通路を走る。その先の格納庫には巨大ロボットが膝を着いていた。
「出番よ雷神! まわせーッ!」
「雷神、発進シークエンス開始! ドスコイジェネレータ出力安定!」
「目標座標セット! 真空管コネクト! 出撃承認!」
「ハイパーSESカタパルト起動! 進路クリア、発進どうぞ!」
「起動準備よし、コンタクトー! 雷神いきまーすッ!」
 裏山が二つに割れ、巨大ロボ雷神が出撃する。空より飛来した雷神は廃墟の街に降り立ち、親指を立てる。
「来たぜ、ダチ公!」
 同じくサムズアップで返す犬彦を肩に乗せ、雷神はメカヒイロと対峙する。今、地球の命運を賭けた決戦が始まる!
「あれは雷神‥‥!」
「どうせ知らないんでしょ‥‥って知ってるの!?」
 四度目の浩一は知っていた。振り返る空音の前方、雷神はメカヒイロに猛攻を仕掛ける。技は基本的に相撲だ。
「キャロル、逃げるんや! こいつを自爆させる!」
「え? いやもう遅いような‥‥」
 メカヒイロのお尻から放出されるキャロル。体内に残った優子は自爆ボタンを押した。
「ニア、もうええ! 自爆ボタンを押した! みんなを連れて逃げるんや!」
「あんたはどうするのよ!」
「このまま宇宙に離脱する。これはウチの罪‥‥ウチが背負えばいい事やからな」
 翼を広げ、宇宙へと舞い上がるメカヒイロ。崩れ始める鋼の巨体を見上げ、ニアはフットバーを蹴る。
「いらんことすなぁ! 雷神!」
 バーニアを吹かし雷神も舞い上がる。二体の巨大ロボはもつれ合いながら宇宙へ舞い上がっていく。
「えー‥‥」
 もう完全についていけないので空音はそう言うしかなかった。
「あかん! もう雷神は限界や!」
「雷神は男の子、大気圏離脱くらい気合でいける! 今よ犬彦ッ!」
 組み合った二体の間を飛び移る犬彦。メカヒイロの体内に侵入すると優子を抱きかかえ、力強く頷く。
「皆で生きて帰るんや」
「犬彦‥‥」
 赤熱し、雷神の装甲が剥がれて行く。バラバラになりそうな衝撃の中、ニアは激しいGに歯を食いしばり耐えていた。
「まだだ雷神‥‥! まだ、やるべき事がある! これが私達の最初で最後の――大仕事ォオオオ!」
 拳を振り上げ、雄叫びと共にメカヒイロの胸を穿つニア。次の瞬間大爆発が巻き起こり、空に星の瞬きが一つ増えるのであった‥‥。
「‥‥みんな、あれ!」
 ヒイロが空を指差し、項垂れた傭兵達が顔を上げる。
 空に一つに光。半身を吹き飛ばされ首を失った雷神はその掌の上に犬彦と優子を乗せ、ゆっくりと舞い降りてくる。
「一件落着か。その‥‥何だ。迷惑をかけた」
「べ、別にあんたたちの為に戦ったわけじゃないんだからね!」
 照れた様子で浩一に背を向けるルクス。空音も、天莉も、ヒイロも、ツギハギも、キャロルも。仲間の帰還に手を振り声を上げる。
「‥‥未来は変えられる。何時でも、何度でも」
「犬彦‥‥行ってまうん?」
 半壊した犬彦は風に髪を靡かせる。雷神の手の上で空を見上げ、静かに目を閉じた。
「また地獄で会おうぜ、ベイビー」
「バイトの人ーっ!」
 光の粒になり消える犬彦の体。地上に戻る前に消えてしまうだろう。
「未来で待っとる」
「すぐ行く! 走っていく!」
 サムズアップを残し、犬彦は風と共に消えていった。
 夜空に浮かんだ犬彦の姿を仲間達は肩を並べて見送った。空の犬彦は『アイルビーバック』と言ったとか言わないとかである。



「――って事があったんですよ、斬子さん」
 とある四月一日の昼下がり。LHのオープンカフェでお茶を飲みながら微笑む天莉に斬子は溜息を一つ。
「ひどいオチですわ‥‥」
 それは四月一日が見せた夢。もしかしたら本当にあったかもしれないもう一つの未来。
 優しい春の日差しを見上げ、天莉は悪戯な笑みを浮かべるのであった。