タイトル:【CB】内通者を追え・月マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/17 12:02

●オープニング本文


 裏切りという行為を好意的に感じる人は少ない。
 かつての味方からは、問答無用で恨まれる。
 かつての敵からは要注意人物として扱われる。
 裏切りという行為に手を染めなければならない理由は様々だが、その末路は総
じて平坦なものではない。むしろ、茨の道が待ち受けていると言っても過言では
ない。

 ――だが。
 それでも選ばなければならない者たちも、確実に存在する。

「士官学校出のエリートと思っていましたが‥‥」
 広州軍区司令部にて、UPC軍人達が囁き合っている。
 話の中心は常に広州軍区司令部付事務補佐官ドゥンガバル・クリシュナ少尉で
ある。
 『新兵であっても銃を取って戦う事ができるならば、前線へ出て戦うべきだ』
と司令部内で主張してきたクリシュナだが、今やその声も聞くことはできない。
 何故なら、クリシュナは突然失踪してしまったからだ。
「やはりな。信用できないヤツだとは思っていた」
「それより、姿を消した理由は知っているか?」
「知らん。何だというのだ?」
 小声で噂話をする軍人達。
 理由を語ろうとする軍人は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「それがな。あいつはバグアに通じる内通者だったらしい」
「なに!? それが原因で姿を消したというのか‥‥」
 聞いた軍人が思わず大声を上げた。
 この情報が既にUPCの各拠点で囁かれるようになり、本部も本腰を上げてク
リシュナの素性を調べ始めた。その結果、士官学校入学時に裏金を使って出自を
偽っていた事が判明。この裏金の出所も親バグア派から供給された物である事が
分かり、情報は真実味を帯び始める。

 では、姿を消したクリシュナは何処へ行ってしまったのだろうか。
 誰もがその行方を気にしている最中、上海から数キロ南下した漁港が中国大陸
の残党バグアに占拠されたという情報が入った。
 陸戦兵器を導入してまで占拠したバグア達の目的は不明。
 だが、占拠したバグアの一団にクリシュナの姿があったという。

 行方不明だった裏切り者が姿を現した。
 この情報を入手したUPC軍は、ULTへ協力要請。
 裏切り者のクリシュナ捕縛に向けて、UPC軍は大きく動き出そうとしていた。

「クリシュナ少尉の裏切り、か‥‥」
 フェニックスのコックピットの中、九頭龍 玲子は小さく呟いた。
 『士官学校出のエリート』――玲子にとってクリシュナはその程度の認識しかない間柄だった。
 特に親しくも無いのだから、特に討つ事に戸惑いも無い。命令が下された以上、それに従うのは軍人として当然の事だ。
「評判悪かったですからね、クリシュナ少尉。かく言う自分も実はいけ好かないと思ってたんですよ」
 進む玲子の隣、S-01に乗った部下が言う。特に返事もしない玲子に彼は続ける。
「あんまり良い噂聞きませんでしたからね。あの人の下で戦うなら、バーフィールド軍曹の怒鳴り声を聞いてる方が幾分かマシですよ」
「良い噂、か。私はクリシュナ少尉の事に詳しくはないのだが‥‥彼は何を思って反旗を翻したのだろうな」
 これまでの玲子の人生は恵まれていたと断言しても良い。
 家庭に恵まれ、何の苦労も迷いも無く成長し、士官学校に入りまるでそれが当たり前であったかのように小隊長となった。
 クリシュナに理解を示すつもりは無い。だが同時に思うのだ。彼はどんな気持ちでこの道を選んだのだろうか、と。
「親バグア派から受け取った裏金を使って、士官学校に入り‥‥そうまでして、成し遂げたい夢があったのだろうな」
「‥‥隊長、まさか同情なんてしてませんよね? 悪い癖ですよ、見知らぬ相手に思い入れするの」
 案ずる声に玲子は苦笑を浮かべる。成程、確かにこれは悪癖だ。どうせ自分は何かを変える気すらない無いというのに。
 先日孫少尉が捉えた不審な資材の流れ。バーフィールド軍曹が遭遇したバグア、キーオ・タイテム。
 この地で起きていた様々な違和感は今ここで束ねられ、最悪の解を弾き出した。それはもうどうしようもない事なのだ。
「この役目を引き受けたのが私達で良かったと思うよ。私達なら、何も想わず『敵』を斬れる」
「本音ですか、それ?」
「‥‥ふっ、半分くらいな。私が思うに本当に辛いのは孫少尉だろう。彼の苦悩は察するに余りあるよ」
「孫少尉ですか? あの顔がいいだけの?」
「仕事も出来るさ。彼はワーカーホリックなのだから」
 なにやら孫少尉を邪な理由で快く思わない部下。その声に少しだけ気を紛らせ、玲子は笑う。
「さて、お喋りはこれくらいにして――汚れ仕事と行こうか。傭兵と合流し、防衛戦力を叩く」
「元々先行偵察って話だったような‥‥」
「少々派手な威力偵察だと思え。孫少尉の露払いだ。バーフィールド軍曹の怒声が聞きたくなかったら愚痴らず戦う事だな」
 戦場が近づいてくる。自分はまだ迷う余地が無いだけ気が楽だ――玲子は心の中で呟く。
 気乗りはしない戦いだ。馴染みでなくとも、元々は共に戦った『仲間』。その志まで共に出来たかは、最早定かではないが。
 今は往く。『仲間』を死なせない為に。この混乱をここで収める為に。光の当たらぬ、月を落とす為に――。

●参加者一覧

飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
美空(gb1906
13歳・♀・HD
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
D・D(gc0959
24歳・♀・JG
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
ヨダカ(gc2990
12歳・♀・ER
高林 楓(gc3068
20歳・♀・CA
ティナ・アブソリュート(gc4189
20歳・♀・PN
ゼクス=マキナ(gc5121
15歳・♂・SF

●リプレイ本文

●合流
「‥‥裏切りか。何を思ってその道を選んだんだろうか」
 戦場へと歩みを進める傭兵の一団の中、上杉・浩一(ga8766)が零すように呟いた。
 これから彼らが向かう戦場は『裏切り者』を討つ為の物だ。浩一とて同情するつもりは無いが、それなりに思う所もある。
「事情は斟酌しません。統制を成しえる士官なのですから、行った責任は取るべきですね」
 浩一の呟きに応じるように番場論子(gb4628)が言葉を紡ぐ。彼女の言う通り、恐らくこの戦いの結末はシンプルだろう。しかし複雑な想いを禁じえない者もいる。
「またバグア派か‥‥。なぜ‥‥いや、そんな事を考えている場合ではないな」
 迷いを振り切るように頭を振るシクル・ハーツ(gc1986)。落ち着きを保つシクルとは対照的にヨダカ(gc2990)は逆撫でられた感情を強く噛み締めていた。
 敵に与する、敵を助ける――そういった行為は理解に及ばない。眉を潜め、近づく戦場を少女は見据える。
「‥‥裏切り者なんて絶対に逃がさないのです。そんな奴は街頭に吊るされると昔から決まっているのですよ」
 近づく戦場、その道中、傭兵達は九頭竜小隊と合流する。玲子のフェニックスは片手を掲げ、傭兵に声をかける。
「九頭竜小隊隊長、九頭竜中尉だ。助力に感謝する。噂に名高いULTの戦士の手並み、拝見させて貰う」
 何せ私はKV操縦は苦手なのでな――と、何やら不穏な事を笑いながら語る玲子。彼女の声にティナ・アブソリュート(gc4189)は首を擡げる。
「もしかして、関係あったりするのかな? 後で挨拶ついでに妹さんとかいるか聞いてみよっと‥‥」
 近づく漁港では既に別働隊の戦闘も始まっているだろう。戦場を守るように配置される敵の巨影、傭兵達は真っ直ぐにそこへ突き進んでいく。

●縛られた戦い
 敵の配置はシンプルだった。漁港の周辺を守るように配置されたゴーレムが四機がまず彼らを出迎える。
「美空の読み通りの配置でありますよ。予定通り、ゴーレムの相手は任せたであります」
 何やら気合十分な様子の美空(gb1906)。ゴーレムの背後に控えるRC、倉庫街に配置されたTW、それらの配置は彼女の予想通りだ。
 ゴーレムを迂回するように美空の破曉が移動を開始すると、それに続きTWに対応する傭兵達が次々側路を移動し始める。
「さて、周囲になるべく被害を出さず‥‥敵を早めに撃破しなければな。なかなか厳しい事だ‥‥」
 次々に飛来するフェザー砲の閃光を盾で受け止めつつ高林 楓(gc3068)は呟く。この光が、そして自らの光が仲間を焼かぬようにしなければならない。
「だが‥‥分の悪い賭けは嫌いじゃないな。高林 楓――参る!」
「お互いの位置関係に気をつけて、連携を密にして下さい」
 前線を移動しつつ論子が仲間に告げる。が、その横をヨダカの放った閃光が突き抜け、少女は盾を構えゴーレムに突撃して行く。
「さぁ、行くですよ! ナハトファルケン!」
「良くわからんが、仲間を落とされなければ良いのだろう?」
 更に続け、突撃していく玲子のフェニックス。論子は小さく溜息を一つ、その後を追う。
「わたしの話が聞こえないんですか‥‥?」
「‥‥まあ、こちらでフォローすれば良いだろう」
「集中集中‥‥っと。まずは端の敵から狙いますね!」
 浩一とティナの機体が左右に回り込むのを横目に論子はスナイパーライフルを構えた。
 ゴーレム対応班が交戦を開始した頃、TW対応班は倉庫街へと足を踏み入れつつあった。そんな彼らをTWに近づけまいとやや前方に配置されたRCが砲を構える。
 放たれた光の矢が捉えたのは前進する飯島 修司(ga7951)のディアブロだ。砲撃は直撃、しかし赤い光を突き抜け彼の機体は瞳を輝かせる。
「‥‥さて、どう攻めた物ですかね」
 盾を構えたディアブロは無傷、彼にしてみればRCの攻撃は大した事はないが――倉庫街が巻き込まれる事を思えば無視は出来ない。
「無傷とは素晴らしいのであります。そんなわけで、そいつはお任せするのであります」
 美空はRCも無視して倉庫のTWへ向かう。そんな彼女を追ってRCが振り向けば、必然その攻撃は倉庫街へ向く事になってしまう。
 その時RCの側面に弾丸が命中する。修司のやや後方、スナイパーライフルを構えたD・D(gc0959)のガンスリンガーの姿があった。
「狙えSCORPIO‥‥それが役目だ」
 D・Dの攻撃で再び向きを変えるRC。前進してくる敵を前にシクルはレーザーライフルで牽制しつつ、接近を試みる。
「なんとか近づければ‥‥!」
 下手に射撃で倉庫を破壊するわけにもいかず、その狙いは常に水平より上を捉えている。やり辛そうな彼女のサイファーへRCの砲が向けられた。
「――っ! 下手に躱すこともできないか‥‥!」
 盾を構えるサイファー。放たれた光は地を焦がし、海を照らし彼方へと消えていく――。

●殲滅
「お前らにはヨダカの八つ当たりに付き合ってもらうですよ!」
 盾を構え、一体のゴーレムに突撃するヨダカ。ゴーレムの剣を盾で受け、強引に蹴りを放つ。
「そこに跪くがいいのです!」
 ゴーレムを蹴倒すヨダカだが、彼女の機体に残りのゴーレムが狙いをつけていた。そこへ左側面からティナが、右側面から浩一が向かう。
「耐え忍ぶのが灰かぶりの戦いではありませんよ! 行きます!」
 掛け声と共に数歩大きく踏み込むティナのアッシェンプッツェル腕を引き、勢いをつけて大振りに槍を繰り出した。
 機盾槍はヨダカを狙っていたゴーレムの腕を貫く。引き抜いた槍でゴーレムのフェザー砲を弾き、続けフレックブレイドで斬りかかる。
 一方浩一は射撃で慎重に牽制しつつ、フェザー砲の迎撃を受けながら剣を手に取る。
「避けられんからな。悪いがこのまま行かせてもらうぞ」
 攻撃で傷つきながら接近し、大きく刃を振り下ろす。浩一がゴーレムと刃を交える頃‥‥。
「お前の相手は俺だ‥‥。付き合ってもらうぞ、短い間だろうがな‥‥!」
 システム・ニーベルングを起動した楓のパラディンは槍を構え、突撃を開始していた。ヨダカの背後に迫っていたゴーレムを貫き、二機は縺れ合うように旋回。
「零距離なら流れ弾も関係ないな‥‥。この一撃、食らえ――!」
 槍を繰り出した状態のままショルダーキャノンを放つ楓。続け槍を引き抜き、白兵戦を展開する。

「‥‥ただ攻撃すればいいという訳にはいかんか」
 一方、倉庫街。RCの脇を抜けたゼクス=マキナ(gc5121)は倉庫を掻い潜りつつ、二体鎮座するTWの一体へと迫っていた。
「味方歩兵部隊に配慮した戦いをしなければならないか‥‥。うむ、戦い辛いな」
 周囲の状況を確認しつつ呟くゼクス。特に彼が対峙するTWは倉庫街に踏み込んだ位置にある事もあり、ここでの戦闘はより慎重さを求められる。
 建造物の影に隠れつつ接近を試みるゼクスだが、そこへTWのプロトン砲が飛来する。隠れている事もあり狙いは大雑把にも程があるが、倉庫の一角が吹き飛んで行った。
「隠れているわけにもいかないか‥‥!」
 幸い敵は中心部に背を向けているので砲撃は友軍に影響する物ではないはずだが、倉庫街の破壊は望む所ではない。
 飛び出したゼクスは一気に距離を詰め、機関砲を連射する。更に拳に装備したドリル繰り出すが――。
「堅い‥‥!」
 連続で拳を振るうゼクスのノーヴィ・ロジーナ。しかしTWを砕くには至らない。
 至近距離で突きつけられた砲口に構えるゼクス。光は彼の機体を焼き、吹き飛ばしていく――。

「く‥‥っ! こっちだ、こっちに来い‥‥!」
 倉庫街からRCを引きつけつつ傷ついた機体で後退するシクル。それを援護するようにD・DはRCへの射撃を続ける。
 デュアルフェイスシステムを起動し遠距離攻撃を繰り返すD・D。そこへRCが砲身を向けた時であった。
 RCに急接近した修司のディアブロがロンゴミニアトを繰り出す。槍はRCの首の付け根に刺さり、劈くような音と共に爆ぜた。
 首周辺の肉を吹き飛ばされたRCの攻撃は中断、ディアブロは槍を引き抜き、液体火薬の薬莢を排出する。
「お二人のお陰で奴の防御特性を見極められました。さて、後は‥‥」
「この間合いなら――!」
 よろよろと接近するRCへ槍を繰り出すシクル。続け放たれたD・Dの弾丸がRCを撃破へと導いたのであった。
 RCが撃破される頃、ゼクスと同じくTWへ向かった美空は煙幕銃を使用。TWの砲撃を撹乱した上で最短ルートを進軍していた。
 迷うように砲身を揺らすTWの正面、煙幕を突き抜け美空の破曉が現れた。その手には禍々しい打撃武器が握られている。
「――本日は久しぶりの亀狩りなのであります。気張っていくのでありますよ」
 そんな少々可愛らしすぎる声の直後、振り下ろされた鈍器がTWのプロトン砲を叩き潰した。
 一撃、二撃、三撃と振り下ろされる攻撃。遂に甲羅が破壊され、TWは悲鳴を上げながらもがき後退する。
「まだ始まったばかりなので、簡単に倒れられては困るのであります」
 ワイヤーで繋がった対の鈍器を手に紅い破曉はTWにゆっくりと接近して行くのであった‥‥。

「さぁ、ヨダカの憎悪をたっぷりと受け取るといいのです!」
 転倒したゴーレムに執拗に剣を振り下ろすヨダカ。その目尻には涙が浮かんでいる。
「ヨダカは父様も母様もお婆様も喪ったのです。奴らを! この星から叩き出すまで! 絶対に! 許したりしないのです!!」
 既に動かぬゴーレムにレーザーカノンを撃ちこむヨダカ。その姿を横目に玲子は悲しげに呟いた。
「‥‥やはり戦場に少女が立つなど間違っている。悲しい事だ」
「良いお姉さんなんですね、玲子さん」
 ティナが相手をするゴーレムの背後から接近し、ブレードを突き刺す玲子。同時にゴーレムの正面からティナが槍を突き刺し、二人は同時に得物を引き抜く。
「妹の知り合いなのか?」
「珍しい苗字だと思っていたが‥‥やはりか」
 思わず笑みを浮かべながらティナに代わり応える浩一。ゴーレムの剣と打ち合う彼の側面、論子の繰り出した機槌がゴーレムの頭を叩き潰す。
「お喋りは後にしませんか?」
「こちらは任務完了。残りも直に片付くだろうが‥‥」
 最後のゴーレムから槍を引き抜き楓が呟く。四機のゴーレムは無事に殲滅したが、まだこれで戦いが終わったわけではない。
「一人で無理をさせてしまいましたね。後は任せて下さい」
 倉庫街ではいよいよ残ったTWへ修司、シクル、D・Dの三名が向かっていた。修司は傷ついたゼクスに声をかけ、前線を行く。
 TWはプロトン砲にて修司を迎撃。しかし眩い閃光が通り過ぎた後には盾を構えた彼のディアブロが何事もなかったかのように立って居るだけだ。
「この距離は――余り気分の良いものではないな」
 刃を手にD・DのガンスリンガーがTWへと接近、鋭く刃を走らせる。続けシクルが機槍ユスティティアを構え、加速する。
「もらった!」
 甲羅を突き破り二又の槍はTWの肉を深く抉った。堪らずTWは手足を甲羅に仕舞い込んで防御の構えを取るが、そこに修司が歩み寄る。
 お構い無しといわんばかりの勢いで大剣デモンズ・オブ・ラウンドを叩き込むディアブロ。堅く閉じこもったTWは文字通り両断され、甲羅に収まったままそれは動かなくなった。
「残りは美空さんですか」
「こっちはもう終わってるのであります」
 その口調は何やら物足りなかった様子にも聞こえる。紅い破曉の背後、何やら無残な状態になったTWが見えた気がした。
「なんとか、こちらは終わったな。向こうの方も無事だといいが‥‥」
 小さく安堵の息を吐くシクル。こうして無事に傭兵達は敵戦力の殲滅を完了するのであった。

●戦いの後
 KV隊の戦闘が終わった後も漁港に突入した別働隊の戦いは続いていた。
 暫く周囲の警戒に当たっていた彼らに突入班からの連絡が入り、本当の意味でこの戦いが終わったのは間も無くの事であった。
「そうですか。そう、なりましたか」
 ディアブロのコックピットの中、通信に修司は呟く。別段この結末に思う所は無い彼は当たり前に空を見上げる。
 敵を討ち、味方を守り、そして生き残った。ここは戦場‥‥事情や心情を否定するつもりはないが、場所を選ばなければ当然の結末だと感じる。
「何だか思っていた以上にあっけない幕引きであります」
 かなり気合を入れてやってきた割に彼女の機体は殆ど傷ついていない。背筋を伸ばしつつ、美空は溜息混じりに呟いた。
「では此方は一足先に引き上げる‥‥。助力感謝するよ」
 歩兵部隊に礼を言うとD・Dは引き返していく。戦闘は完全に決着したのだ。後は全ての部隊が引き上げるだけだ。
「全く‥‥もう戦い難い戦闘は御免だな」
 傷ついた愛機の中で呟き戦場に背を向けるゼクス。彼の背後ではそれぞれの理由で戦場に残った者達が静かに漁港に立っていた。
「引き上げないのか?」
 機体から降り、海を眺める玲子に背後から浩一が声をかける。浩一の視線の先ではUPCの軍人に労いの言葉をかけているヨダカの姿があった。
「戦争とはやはり、色々とやり切れない物だな‥‥と、当たり前の事を考えていた」
「‥‥損な役回りだったな、『彼』も」
 振り返る玲子に並び、潮風を受ける浩一。更に玲子はヨダカへ視線を移した。
「私にはこの世界の仕組みはわからん。どうすれば平和になるのかもわからん。だが、世界が変わらねばならないという事だけはわかる」
 腰から下げた刀に片手を置き、女は悲しげに目を伏せる。そこへ歩み寄るティナの気配を感じ、優しく笑顔を繕ってみせる。
「此度の助力には感謝せねばならんな。ありがとう、傭兵」
 玲子は二人に背を向け再び海と向き合うと、風に髪を靡かせながら暫くの間佇んでいた。
 内通者クリシュナを追う戦いはこうして終結し、何事も無かったかのようにまた世界は動き出していく。
 まるで彼が存在したという事実を、忘れたがっているかのように――。