タイトル:【JX】女神の権利者マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/05 17:44

●オープニング本文


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●約束
「姉さんは何でも出来てすごいです! 姉さんは私の自慢の姉さんです!」
 血の繋がらない妹は瞳に星を零したかのような満面の笑みで自分に語りかけてくる。
 懐かしい日々の記憶の中、楽しかった事、楽しくなかった事、その殆どに妹の笑顔が混じっていた。
 良く手入れされた薔薇園も。広く入り組んだ屋敷の廊下も。子供が一人で暮らすには広すぎる部屋も。
 いつでもどこでも妹はくっついてきて、決まって自分のやる事に興味を持った。そう、どんな事にだって――。
 ぐずで、臆病で、世間知らずで、自分だけに懐き子犬のように付き従う妹。それは当然、可愛くない筈が無かった。
 一人きりになってしまったと思った世界の中。誰も自分を見てくれない世界の中。妹の瞳に映る自分は救いの象徴だった。
 だから、見せてしまった。話してしまった――。
「姉さん、これは?」
「誰にも内緒だよ? これはね、ボクの父さんが研究していた物なんだ」
 奇妙なまでに真四角な黒い物体。それは時折細かな溝に光を通し、淡く赤く発光していた。
 子供が持つには余りにも重い奇妙な物体。衣装箪笥の中に隠されていたそれを見て妹は瞳を輝かせる。
「ふしぎー‥‥きらきらして、つるつるしてる」
「ボクも、これが何なのかは良くは知らない。でも、これは父さんの形見なんだ」
 長い黒髪を指先で弄りながら少女は思い返す。無残な父の最期と迫害の日々。周囲の残酷な視線‥‥。
 もしカレーニイ博士が自分を拾ってくれていなければどうなっていた事か。否、きっと彼もまた、自分を監視下に置いているに過ぎないのだ。
 黒い物体をぺたぺた触る妹に目を向ける。カレーニイの人間は、自分がこの少女に近づく事を快く思っていない。
 当然だと思う。そしてそれを理不尽だとも思った。この子は何も知らない。ただ自分を、ありのまま好きでいてくれる。
「姉さんの本当のお父さんは、死んでしまったのですか?」
「‥‥うん。殺されたんだ‥‥。父さんの事を、誰もが犯罪者だって言ったよ。裏切り者だって」
 窓の向こうに目を向け、今は亡き父に想いを馳せる。
 優しかった父。けれどその記憶の殆どの中で、彼は自分に背を向けていた。
 薄暗い部屋の中、僅かなデスクライトに照らされた横顔‥‥それを今も覚えている。
「でもボクは信じてる。父さんは犯罪者なんかじゃない。父さんの研究は、素晴らしいものだったんだって!」
「私もそう思います。だって、姉さんのお父さんだから」
 無邪気に微笑む妹に思わず涙ぐむ。少女は少女の手を取り、跪くようにして目を瞑った。
「ありがとう、イリス。ありがとう‥‥。ボクは君に会えて、本当に良かった‥‥」
「この事は、二人だけの秘密にしましょうね」
「ああ。約束だ、きっとボクは夢を叶える。だからその時は――」
 唇が紡ぐ言葉。二人の少女は眩暈がするような夏の空の下、きっと叶う事の無い約束を交わした――。

●苦悩
「室長、見て下さい。ジンクスのレスポンスがここ数日で急激に上がっています」
 研究員の一人が驚いた様子でそう語りかけてきた時も、アヤメ・カレーニイは冷静だった。
 その内そうなるだろうな‥‥思っていた通りだ。それくらいにしか感じないまま、データを纏めた書類を受け取る。
「何が原因かは良くわかりませんが、こう、システムの処理速度というか、柔軟さみたいなものが‥‥まるでシステムそのものが考えているみたいです」
「‥‥まるでじゃなくて、実際にそうなんだよ」
「は?」
 首を傾げる職員を片手で追い払い、アヤメは憂鬱げに自分の席に着いた。
 ジンクスのシステム全体が進化しているのは明白だ。そしてその理由はきっと妹が作ったあの存在にある。
 イリスの行動をアヤメは全て把握していた。これまで彼女がしてきた事、そしてこれから彼女がしようとしている事‥‥全て手に取るように分る。
 理由は簡単だ。それら全てが、自分が過去に成し遂げようとして、結局成せなかった夢の欠片なのだから。
「何故なんだ‥‥。ボクは確かにあの時‥‥」
 それは嘗て、このシステムがまだライブラと呼ばれていた頃。
 その評価試験に参加する事になったアヤメは、システムの根幹に仕掛けを施し、暴走を故意に促した。
 しかし致命的だったその暴走をイリスは阻止し、試験結果はどうあれシステムをねじ伏せて見せたのだ。
 そして今、父の夢でもあった存在を仮想空間の中に構築し、自分が追い求めた理想がシステムを強力に支え始めている。
「君が‥‥ボクを追ってこなければ。君が、ボクを諦めてくれていれば。ボクが君と‥‥夢を分かち合わなければ」
 そうすれば、こんな事にはならなかったのだろうか。
 冷たい視線を向ける度、妹は寂しげに――しかし嬉しそうに笑う。
 共にいられる事が幸せなのだと、けなげに笑うのだ。
「出来ないんだよ、イリス‥‥もう」
 眼鏡を外し、泣き出しそうな顔で遠くを見つめる。
「君はどうして、そんなに簡単にボクを超えていくんだ」
 色濃い苦悩に支配されるアヤメ。だが結局思考が行き着く先は一つなのだ。
 自分の全てがそこにあった。妹は笑顔でそれを掻っ攫っていく。奪われた物は取り戻さなければならない。
「そう、どんな手を――使ってでも」

●参加者一覧

神撫(gb0167
27歳・♂・AA
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
レベッカ・マーエン(gb4204
15歳・♀・ER
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD
和泉 恭也(gc3978
16歳・♂・GD
牧野・和輝(gc4042
26歳・♂・JG
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
ニコラス・福山(gc4423
12歳・♂・ER

●リプレイ本文

●秘密
「いよいよセカンドステップですね、イリスさん」
 仮想空間の戦場、陣地前に集まった傭兵達の中、いつもの様に望月 美汐(gb6693)がイリスに抱きつく。
 いい加減慣れても良さそうな物だが相変わらずぷるぷるしているイリス。美汐は続け、アンサーにも抱きついていた。
「今回もよろしく。俺達は俺達の役割を果たすから、そちらもしっかりな」
「役割は把握しています。ヘイルも気をつけて」
 背伸びしてヘイル(gc4085)の頭を真顔で撫でるアンサー。微妙な表情のヘイルと入れ替わり、橘川 海(gb4179)はアンサーに手を伸ばす。
「えへ、交換だよっ。互いの無事を祈ってっ」
 海は自分とアンサーのリボンを交換し、それをアンサーの手に握らせる。意味が分らない様子のアンサーだが、今はそれでいい。
「みんなも気をつけてねっ! 訓練だからって気を抜かないこと!」
「橘川 海。借りたら返さねばなりません」
「そうだね。だからちゃんと、返しに来てねっ」
 仲間に声をかけながら海は笑う。アンサーは何も言わずリボンで自らの髪を結った。
「お披露目は済んでいるですし、公式で実験した方が補助とか受けられるのではないのですか?」
 そんなアンサーと海の様子を眺め、和泉 恭也(gc3978)はイリスに問う。それはヘイルも同じ気持ちだった。
「アンサーも形になってきたし、今回の訓練次第ではアヤメ女史に明かしたらどうだ? 彼女も優秀な研究者だと聞いている。彼女の協力があればもっとアンサーは良い方向に育つと思うのだが」
 それは非常に理に叶った意見である。歯切れの悪い様子のイリスを見つめる神撫(gb0167)。目が合うと、神撫は無言で頷いた。
「そう、ですね。そうしましょうか」
「その時は溜めこんでいる感情を全て晒すことだ。喜怒哀楽全てな。それが向き合う、という事の筈だろう?」
 前髪を弄りつつ、照れたようにイリスは笑う。その笑顔の裏にどんな気持ちが隠れているのかは、誰にも分らない。
 全員の準備が整うとイリスは仮想空間を後にし、いよいよ戦闘が開始される。合図と共に傭兵達はそれぞれの役割を果たす為走り出すのであった。

●進撃
「さてと‥‥狙うならこのあたりか」
 戦域中央、岩石地帯。進軍するキメラを高所から見下ろす神撫の姿があった。
 両手でガトリング砲を構え、キメラを強襲する。猛然とばら撒かれる弾丸は道が狭く、何より敵の数が多いので殆ど外れる事は無い。
「これは減らさないわけには行かないが、減らしすぎると拠点の護りがな‥‥っと」
 岩を登ってくるキメラを迎撃しつつ、傾斜を下っていく。より前線に食い込んだ位置で再びガトリングを構え、敵の大群へと掃射する。
「神撫が弱らせているし、倒すのは難しくないな。和輝、そっち三体行ったぞ!」
「‥‥ああ、分ってる」
 エネルギーガンを撃ちつつ声を上げるレベッカ・マーエン(gb4204)。岩陰の向こう、森林地帯を動く敵を牧野・和輝(gc4042)が狙い撃ちにする。
「一体一体は雑魚だが――如何にも数が多いな」
「減らしすぎると増えるからな。抜けたヤツは追うな、後ろが対処する」
 順調にキメラに弾丸を浴びせ続ける神撫。しかし前方、盾を携えた蠍のキメラが列を組んで進軍してくる。
 正面からの銃撃がほぼ無意味な事を確認し苦笑を浮かべる神撫。その間にもスタンダードは次々に突撃してくる。
「あれに抜けられたらスタンダードも抜けてくるな‥‥神撫!」
「了解。少し前に出て派手に暴れるか」
 レベッカの声で斧に持ち替える神撫。銃を連射しつつ走る和輝がその傍で足を止める。
「‥‥雑魚の対処と警戒は俺が」
 頷き合う三人。迫る蠍の砲撃をかわしつつ、徒党へと突き進んでいく。
 一方、三人が戦う岩石地帯の隣。森林地帯の最中、渡河する敵を狙う海とアンサーの姿があった。
 渡河中の敵は機動力が落ちる。そこを狙い海が拳銃で、アンサーが弓で攻撃、順当に迎撃を続けていた。
 次々にキメラを撃ち抜く海。そこへ森を抜け、恐竜型のキメラが数体突撃してくる。他のキメラと違い、渡河中も動きが鈍る気配はない。
 射撃で迎撃する二人だが、渡河中に倒せたのは一体。次々と恐竜は二人の左右を抜けようとしてくる。
「おりゃーっ! ここは通さないんだからっ!」
 猛然と恐竜に接近し、勢いを乗せて身体を捻り蹴りを放つ海。衝撃は恐竜を吹き飛ばし、道端にダウンさせる。
「アンサーちゃんの方は‥‥」
 振り返る海の視線の先、アンサーは槍に持ち替え恐竜の足を払っていた。しかし一体敵を通してしまう。
「やはり全て捌き切れませんね」
「一応ダメージは与えてるけど‥‥和泉君を信じるしかないねっ」
 休まず戦いを続ける二人。一方その背後にある本陣の前では恭也が盾を構え敵を待ち構えていた。
 現れるキメラは殆どが弱っており、倒すのはそれほど難しくはない。そこへ森を抜け恐竜が突進してくる。
「さて、皆さんの頑張りを無駄にしないように死力を尽くすと致しましょう」
 突撃してくるキメラを盾で足止めする恭也。空いた手に纏わせた黒い光を至近距離で頭部に叩き付け、恐竜をダウンさせる。
「こちらは暫く持ちそうですが‥‥あちらはどうなっていますかね」
 近づくキメラを迎撃しつつ呟く恭也。防衛、迎撃と戦う傭兵達、それとは別に動く者達の姿があった。
「進路クリアってか。あんな数一々相手にもしてられんしな」
 森林地帯にて木にぶら下がりながら双眼鏡を覗き込むニコラス・福山(gc4423)。暫しぷらぷらした後、ヘイルの隣に着地する。
 こちらはニコラス、ヘイル、美汐の三名。森林地帯を敵との交戦を避けつつ進んでいる所だ。
 いくら守り続けてもターゲットを破壊しない限り勝利は無い以上、こうして潜行する人員が必要になる。
「ん、今なら行ける‥‥かな?」
 美汐の合図で三人は進軍するキメラ達から身を隠しつつ、木々の暗がりを移動する。
「敵の索敵はザルだな‥‥まるで見つからんとは」
「その分あっちの守りに自信があるって事じゃないか?」
 呟くヘイルの肩を叩き、双眼鏡を覗き込んだままニコラスが笑う。ヘイルもそれに倣うと、森の奥に敵の拠点が見えた。
 自軍と同じく森を抜ける前に川があり、その川には蠍型キメラがずらりと並んでいる。拠点入り口付近には敵の再出現ポイントがあり、その奥に更に騎士のキメラが配置されているようだ。
「んーと、すごい数ですね‥‥」
「うっかり渡河したら狙い撃ちにされるな。これは皆で渡っても怖い」
「仕方ない‥‥時間はかかるが、岩石地帯を迂回していこう」
 こうして三人は安全なルートを探す為に移動を開始するのであった。

●巨兵
 それは唐突に岩石地帯に出現した。
 順調にキメラの迎撃を進める傭兵達の頭上に影を落とし、上空から落下してくる巨人。その衝撃だけでレベッカは転がりそうになる。
「とりあえず、一旦引こうか」
 冷静に神撫が言うと同時、三人は全速力で走り出した。立ち上がった巨人は胸部から大型の機銃を連射、岩石地帯は見る見る崩れていく。
「うわっ、でっかいのが出てるっ!?」
 エーデルヴァイスの出現は海とアンサーにも確認出来た。森の向こう陣地を守る恭也も、敵陣地前を迂回する三名も同じである。
「何時もの事ながら見事なものだ、近いうちにジンクスのKV戦対応も実装されそうだな」
「感心してる場合か? マジで死ぬかと思ったぞ‥‥」
 逃げるというよりはほぼ崖を転がり落ちるような勢いで森林地帯の外れに移動した遊撃班。逆様に転がっているレベッカを助け起こし神撫は敵を見やる。
 巨人は三人を見失ったのか、ゆっくりと陣地へと歩行を開始する。とはいえサイズがサイズなので、歩いているだけでもかなりの進行速度だ。
「仕掛けるなら下半身‥‥特に足か?」
「集中攻撃を仕掛けて何とか足止めするしかないね」
「‥‥ったく、何処まで通用するか些か疑問だがな」
 走りながらやり取りし、レベッカは二人に強化を施す。神撫は斧を肩に乗せ、岩山を駆け上がっていく。
「あれも問題ですが、敵が抑えきれない‥‥!」
 巨人の対処に追われる遊撃三人。その分彼らが取りこぼした敵は本陣へと向かっていた。必死で迎撃に当たる恭也だが所詮一人の力、限界という物がある。
「アンサーちゃん、こっちはなんとして持たせるっ! 行って!」
「しかし一人では」
 キメラを蹴り飛ばし、海はアンサーに微笑む。アンサーは黙って頷くと踵を返し、本陣へと引き返していった。
 岩石地帯を移動するエーデルヴァイス。傾斜を駆け上がりその側面に出た神撫は全力で巨人の足へと斧を叩き付ける。
 しかし巨人は倒れない。軽く足を振るうとその先端が命中し吹っ飛ぶ神撫。追撃しようとする巨人へ、遠距離から和輝の狙撃が命中する。
 精密な射撃ではあるが、やはり大きなダメージは見られない。森の中で和輝を発見し、巨人は機銃を連射する。
 立ち上がった神撫は和輝を攻撃する巨人の足元へ向かう。そこへレベッカが擦れ違い、更に強化を施した。
 再び全力でインフェルノを繰り出す神撫。続けレベッカはエネルギーガンを構え、狙いを神撫の攻撃箇所に絞る。
 無数の紋章が銃口から敵へ照準を合わせるように展開。放たれた閃光は巨人の足を貫いた。
「おぉ、膝を着いたか」
 敵陣地へと抜けつつ、最後尾を走るニコラスが笑う。エーデルヴァイスは膝を着き、遊撃班に足止めを食らっている。
「チャンスは今しかない。背中は預ける。俺は俺の役割を果たす!」
「責任重大だな、ちょっとは年寄りをいたわれよ」
 シニカルに笑うニコラス。ヘイルと美汐を先陣に、三人はフェンスを破壊し敵陣地へと突入する。
「私が押さえ込みます、行って下さい!」
 破壊目標は目前だ。その進路を塞ぐ山積みのコンテナへ盾を叩き付け、美汐が声を上げる。
 吹き飛ばされたコンテナは次々に騎士のキメラに命中。更に足止めに制圧射撃を開始する。
「ふふっ、成長してるのはアンサーだけじゃありませんよ?」
 三体の騎士と対峙する美汐。先に進んだヘイルはニコラスの強化を受け、ありったけの力で槍を振るう。
 左右の槍による連続攻撃。シールドが砕け弾けた所、ニコラスが機械刀を振り下ろす。
 僅かな静寂。美汐へ襲い掛かっていた騎士も、自軍陣地で恭也に迫っていたキメラの群れも、エーデルヴァイスも停止していた。
「‥‥終わったのか?」
 巨人の射撃を受け、倒れた木々の中で和輝が溜息混じりに言う。しかし次の瞬間――。
「ニコラス!」
 破壊した目標のあった場所が歪み、黒い手が出現。ニコラスの胸倉を掴み、ヘイルへと投げつけた。
「黒い‥‥EBだと?」
 歪としか比喩出来ない異質から出現した黒いEB。単眼のバイザーを輝かせ、大きな鎌を二人へと突きつけた。

●謀反
「えっと、イリスさん。様子がおかしいですけどこれは仕様ですか?」
『す、少し時間を下さい。こんな敵を仕込んだ覚えは‥‥』
 騎士三体に翻弄されながら問う美汐。イレギュラーの出現と同時、全ての敵が活動を再開したのだ。
 ヘイルとニコラスはイレギュラーの迎撃に追われ、美汐はキメラから手が離せない。どれも強力な敵だ、まともにやれば勝利は難しい。
「エーデルヴァイスも動き出してる! このままじゃ陣地より先に遊撃班が全滅しちゃうっ!」
 キメラの対処もそこそこに巨人へ走る海。アンサーと協力し雑魚を片付けた恭也も巨人へ向かっていた。
「このシステムに干渉できる人物は限られています。イリスさんはありえないとすると後は‥‥」
 そこで恭也は足を止める。劈く様な轟音と共に閃光、直後森に複数の火の手が上がっていた。
『エーデルヴァイスが止まらない!? 強制終了も効かない‥‥どうして』
 立ち上がった巨人はまるでリミッターを外されたかのように猛攻を開始。遊撃班は森に逃げ込み走り続けるが、追撃は苛烈だ。
『お願い、逃げて!』
 合流する傭兵達。アンサーは盾を構え、巨人の足元へと走っていく。
「意識を逸らして、時間を」
 激しい銃撃の中、盾を手にアンサーは走る。しかしダメージは深刻で、盾と鎧は砕けて吹き飛んでしまう。
「前回は‥‥助けに行けなかった。その汚名を雪ぐ時!」
 巨人の足止めに走る恭也。倒れたアンサーを回収しつつ走る彼と入れ違いに飛び込んだ海が巨人の足を蹴り飛ばす。
 外側に股を開くような状態になった所を神撫とレベッカが攻撃。今度は転倒させる事に成功する。
「アンサー、しっかりして下さい!」
 担いだアンサーに声をかける恭也。和輝は二人を手招きし、森林地帯へ下った所で応急処置を施す。
 一方敵陣地内でも苦戦が続いていた。強力な戦闘力を発揮するイレギュラーと戦うヘイルとニコラス。騎士に囲まれた美汐も既に限界が近い。
「流石にこれは‥‥っ」
 膝を着く美汐。治療を施していたニコラスもイレギュラーに蹴り飛ばされ、続けてヘイルが背後から拘束されてしまう。
「く‥‥なんなんだ、こいつは‥‥っ」
「――ただのセキュリティシステムの一部だよ、傭兵」
 唐突な声。ヘイルの視線の先、白衣を羽織った女が現れた。続け女が指を弾くと巨人に襲われていた傭兵達も一瞬で転送されてくる。
「児戯は終わりだ。大人しく武装を解除してもらおうか」
「姉さん、これはどういう事ですか!?」
 更に続け、イリスが傭兵達の前に現れる。声を受けアヤメ・カレーニイは少女を睨んだ。
「それはこちらの台詞だ。ジンクス無断使用の言い訳は考えてあるんだろうな?」
「そ、それは‥‥」
「その傭兵達にも事情を訊く必要があるな。君の謀反の協力者らしい」
 アヤメは傷ついた傭兵達を眺め、肩を竦める。
「痛めつけられて少しは冷静になっただろう?」
「酷いよ姉さん‥‥皆は関係ないのに‥‥」
「こいつも関係ないのかい?」
 傷ついて倒れたアンサーの髪を掴んで引き摺るアヤメ。イリスは慌てて駆け寄ろうとするが、黒いEBに拘束されてしまう。
「君達もイリスに騙されていただけだろう? 大人しく調べに応じてくれれば悪いようにはしない」
「一つだけ聞かせてください。貴方は‥‥イリスさんが嫌いなのですか?」
 傷を庇いながら恭也はアヤメに問う。姉は感情の無い瞳で妹を一瞥、当然の様に言った。
「嫌いに決まってるだろこんな奴。顔も見たくないね」
 険しい表情を浮かべる恭也。それでもアヤメは続ける。
「ジンクスの無断使用、『アンサー』の開発‥‥どちらも明確なプロジェクトに対する裏切りだ。何らかの処分は覚悟するんだね」
 更に指を鳴らすアヤメ。次々に現れた黒いEBが傭兵達に刃を突きつけその動きを封じる。
 アンサーの存在は開発室に暴露され、イリスと傭兵達がこれまでしてきた事は全てが公にされる事になった。
 傭兵達は『被害者』という事になり、特に何のお咎めも無く開放された。
 しかし、『嫌い』と言われて泣きじゃくっていたイリスがその後どうなったのか、彼らがそれを知る術はなかった――。