タイトル:ヒイロまた実家に帰る!マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/11 17:53

●オープニング本文


●走るアホの子
「ふんっ!」
 LHの広場にてシャドーボクシングをするヒイロの姿があった。
 首からタオルをかけジャージ姿ヒイロは既に何時間も走り終わった後なのだが、元気が有り余っているのか疲れの色は見えない。
 やや遅れ追いついてきたカシェルはぐったりした様子で肩で息をしつつヒイロの隣に並んだ。
「ヒイロちゃん、相変わらず体力有り余ってるね‥‥」
「わう? カシェル先輩の元気が足りないんじゃなくてですか?」
「僕は元々、インドアだしね‥‥ふう」
 呼吸を整えるとカシェルはヒイロのシャドーボクシングを鑑賞しつつ自動販売機でスポーツドリンクを購入する。
 冷たいドリンクで喉を潤す少年の前、ヒイロは素早く拳を繰り出している。その様子は以前とは少し違うようにも見えた。
「ヒイロちゃん、誰かに教わってるの?」
「師匠は今のところいないですが、依頼に行くと何故か皆がちょっとずつ色々教えてくれるですよ」
 身体をぐぐっと伸ばしヒイロは無邪気な笑みを浮かべる。自分も努力を怠った覚えはないが、ヒイロの訓練の度合いはそれを遥かに超えている。
 ヒイロには憂いや迷いのようなものが一つも無い。素直に自分を信じ、教えを信じ、努力を信じている。
 スポンジが水を吸い込むように彼女は沢山のものを吸収していくだろう。今は未熟でもそう予感出来るのは先輩として嬉しい事だ。
「飲むかい? 少し休憩しよう」
「先輩のおごりですか!? ヒイロはありがたく人の厚意は受け取る子なのですよう〜♪」
 一気にドリンクを全て飲み干すヒイロ。カシェルは苦笑を浮かべ額の汗を拭うのであった。

●勝負再び
「――納得行きませんわっ!!」
 何か依頼を受けようと本部にやってきた二人を待っていたのは九頭龍斬子のオーバーリアクションであった。
「うー、いちいち声がおっきくてうっさいですよぅう」
「そこ、うるさいとか言わない! ヒイロさん‥‥何故ライバルであるわたくしを遊園地に誘わなかったんですの!?」
「‥‥ライバル?」
 ついこの瞬間まで存在を忘れていましたと言わんばかりのヒイロの表情に斬子は愕然とする。
「わたくし知ってましてよ! この間お友達と遊園地に行ったでしょう!」
「楽しかったです〜♪ 花火きれいだったですよう」
「だから、何故わたくしを誘わないんですの!?」
「すっかり忘れてたです。というか、何で誘うですか?」
 ぼけーっとした様子のヒイロに一方的に喋り続ける斬子。カシェルは遠い目で大体の状況を把握していた。
「えーと、君‥‥名前は?」
「斬子ですわ」
「じゃあ斬子さん。これからヒイロちゃん依頼を受ける予定なんだけど、一緒に行ってきたら?」
 あからさまに嫌そうな顔をするヒイロとは対照的に斬子は一瞬嬉しそうに目を輝かせ、腕を組んでそっぽを向いた。
「ふん、また勝負というわけですわね? 面白い――お引き受け致しますわッ!」
「ふえーん、めんどいですぅうう‥‥」
「な、何も泣かなくてもいいんじゃないかしら‥‥」
 泣き出したヒイロの頭を申し訳無さそうに撫でる斬子。カシェルは腕を組んで依頼を見繕っていた。
「これは? 山中に出没するキメラの討伐。シンプルでいいと思うけど」
「そ、そうですわね! ヒイロさん、これにしません?」
「いいですけど、なんかこれ見覚えが‥‥? あああああ――ッ!!」
 唐突に叫び出すヒイロ。そろそろ騒ぎすぎでつまみ出されるかという時、頭を抱えてヒイロは続けた。
「これ、ヒイロの実家のすぐ近くですようっ!?」
「え?」
「はい?」
 小首を傾げる二人の前、ヒイロは慌てて依頼を引き受けに向かう。
「ちょ、ちょっとお待ちなさい! 勝負だってわかってますのーっ!?」
 それを追いかける縦ロール。カシェルは額に手を当て小さく溜息を漏らした。

●参加者一覧

ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
南 十星(gc1722
15歳・♂・JG
張 天莉(gc3344
20歳・♂・GD
巳沢 涼(gc3648
23歳・♂・HD
福山 珠洲(gc4526
21歳・♀・FT

●リプレイ本文

●田舎でGO
「ここは気持ちのいい場所だな‥‥。キメラなぞには勿体無い」
 巳沢 涼(gc3648)の運転するAU−KVの後ろに腰掛け上杉・浩一(ga8766)は田舎の長閑な風景を眺めて一人呟いた。
「ほんと、平和ですよ。道もガタガタだけど」
 お世辞にも整備されているとは言い難い田舎道を走りながら苦笑する涼。とても穏やかな様子だが勿論これも依頼の為である。
 山中から現れるという猿キメラを警戒し、討伐中人里に被害が及ばぬように警戒を促す為にやってきたのだ。
 村の小さな商店街までやって来ると涼は停車し近くを歩いていた老人に声をかけた。
 キメラの詳細を聞き出す涼の背後、浩一は近くの商店でお茶菓子や飲み物を買い込んでいる。
「もしキメラが村にも現れたら、この照明銃を‥‥は? 上タン塩? 違う、照明銃! しょーめーじゅー!」
 耳の遠いらしい老人に照明銃を渡し悪戦苦闘する涼。浩一は買ったばかりの煎餅を一枚開けて齧りながら周囲を眺めた。
 シャッターの降りた店ばかりの商店街。若者の姿はろくに見えない田舎の町だ。キメラが現れたら大騒ぎになるだろう。
「静かでいい町だな」
「ああ‥‥って、上杉さん何食ってるんですか」
「煎餅だ。皆の分もあるから心配はいらんぞ」
 何かツッコみたそうな涼の隣、浩一は村人達に家の中に隠れているように指示する。後頭部を頭で掻き、涼は仲間が探索を続けているであろう山を見やるのであった。

●山中を行く
「‥‥ん。あっちから。山菜とか。キノコの気配が」
 素早く山中を駆け回っているのは最上 憐 (gb0002)とベーオウルフ(ga3640)の二人組だ。
 最初から山菜の採集が目的の一つに勘定されている憐は小さな身体で険しい山道を走り回り、キノコやら何やらを容赦なく引っこ抜いている。
「‥‥十代の子供は永久帰還でも積んでるのか?」
 食の欲求に充実に走る憐の背後、ベーオウルフは冷や汗を流しながら呟いた。かれこれずっと走り通しなのだが、憐は涼しげな様子でキノコを鷲づかみにしている。
 素早さには彼もそれなりの自信があったが、憐の素早さはかなりのものだ。いちいち採取で立ち止まってくれなければ置いていかれるかもしれない。
「しかし器用に見つける物だな。何かコツでもあるのか?」
「‥‥ん。だから。気配で」
 憐は至って真顔なのだがベーオウルフには良くわからなかった。採取を終えた憐が走り出すのを見てベーオウルフもそれに続く。
「足場には注意だぞ。躓いて怪我とかしてもツマランからな」
「‥‥ん。大丈夫。これでも。ゆっくり走ってる」
 すたすたと走る憐。実は彼女なりにベーオウルフとは足並を揃えていたりする。男は額の汗を拭い少女の後を追うのであった。

「ぎにゃ〜!?」
 その頃同じく山中では木の根に足を引っ掛け盛大に転倒するヒイロの姿があった。
 既に何度地面に顔をこすりつけたかわからないヒイロを助け起こし米本 剛(gb0843)は苦笑する。
「逸る気持ちはわかりますが、落ち着いて行動しなければいけませんよ?」
「うぅ、涼君が転ぶなと言っていたのは未来予知だったですね‥‥」
 砂と泥まみれのヒイロの服をはたき剛は彼女に怪我がないかを確認。再び共に移動を開始した。
 ヒイロは確かに素早いのだが、頻繁に転んでいるのでむしろ剛の方が移動は早いくらいである。そうして何度転んだのか数えるのが面倒になった頃、二人はヒイロの実家に到着していた。
「近道を通ったので早かったですよ! おばーちゃーん!」
「あ。ヒイロさん、だから慌てると‥‥」
 悲鳴を上げながら坂道を転がり落ちていくヒイロ。剛は涙ぐむヒイロを拾って大神家の屋敷へと向かった。
「失礼ながら挨拶は後程‥‥。御無事ですかな?」
「あらまあ? ヒイロちゃん、どろどろねぇ?」
「おばあちゃん、かくかくじかじかなのですよう」
「あらあら、わからないわ」
 こうしてヒイロに代わり剛が事情を説明する事に。ヒイロの祖母も話は聞いていたようで、討伐中は家に隠れている事を了承してくれた。
「ヒイロちゃんの面倒を見てくれてありがとう。お仕事終わったら、是非うちでお茶でも飲んで行って下さいな」
「では、お言葉に甘えさせて頂きましょうかな? さて、まずは討伐ですよヒイロさん」
「わふ! 頑張るですよ!」
 こうして二人は来た道を戻り‥‥ヒイロはまたすってんころりんと転ぶのであった。

「九頭龍さん、ヒイロさんと友達になりたいですか、もしよかったらアドバイスと協力をしますよ」
 同時刻。山中を探索する南 十星(gc1722)は同行する斬子に声をかけていた。
 斧を担いだ斬子は暫く顔を真っ赤にして固まった後、斧をびゅんびゅん振り回しながら首を左右に往復させる。
「なな、何を言ってるんですのー!? 何故わたくしがあのような犬娘と!?」
 十星はひょいひょいと斧を交わしつつ、すました様子で『なるほど、ツンデレというやつですか』と分析していた。
 地図と双眼鏡を片手に周囲を眺めつつ十星は索敵を続けている。真っ先に高めの位置取りをキープしたお陰で視界はそれほど悪くもない。
「友達になりたいときは、素直に手を前に出して『友達になってください』といえば大体の人は友達になってくれますよ」
「だ、だからわたくしとヒイロさんはライバルであって‥‥」
「ヒイロさんはちょっと素直すぎますから遠まわしに言ってもあまり通じませんから」
「ちょっと、話聞いてるんですの!? っていうかそんな片手間に――!」
 詰め寄る斬子だが、十星は人差し指を立てて沈黙を強制する。思わず黙り込む斬子も十星の視線を追うと、そこには木々の合間に動く陰が。
「キメラですの?」
「そのようですね。まずは連絡をつけましょう」
「キメラの一匹や二匹、わたくしたちだけでも十分‥‥」
「一匹二匹とは限りませんからね。仲間と合流するまで戦闘はなるべく回避すべきかと」
 斬子は斧を担いだまま鼻を鳴らし大人しく身を潜めた。その様子に十星は微笑を浮かべると通信機へと声を投げかける――。

 張 天莉(gc3344)と福山 珠洲(gc4526)の二人組は十星からの連絡を受け、移動を開始する‥‥のだが。
「猿のくせに私に立て付くか! 面白い、実に面白いわ!」
 既に数匹の猿を討伐していた二人。初対面がこれだと誤解されそうな珠洲は色々な意味で黒いオーラを纏い槍を振り回している。
「珠洲さん、そのキメラもう戦闘不能ですよ♪」
「あら‥‥? 少しやりすぎちゃったかしら?」
 くるりと振り返る珠洲はほんわかした笑顔を纏っている。『つい癖でやっちゃうんですよね〜』と和やかな様子。
「さて、総数が確定してない以上は虱潰しですねぇ。次に向かいましょうか♪」
 二人とも和やかである。とても和やかである。だが現時点において二人が最もキメラの殲滅数を稼いでいたりもする。
 にこにこしながら追いかけてくる二人の能力者、それを止める者はこの場にいないのだ。キメラは最期何を想い、倒れていったのだろうか。
 こうして各地でキメラの殲滅が続く。順調に作戦が進む中、大型のキメラが現れ騒ぎになるのはもう少し後の話である。

●強くて硬くて大きいの
「むー‥‥疲れるな。俺らが着く前に終っとらんだろうか」
「何言ってるんですか、でかいのが出たって連絡があったでしょう」
 村人への説明に色々な意味で手間取った浩一と涼は山中を仲間の下へと急いでいた。大型のキメラが現れたと連絡があったのだ。
「ヒイロちゃんのお婆ちゃんに何かある前に片付けねぇとな」
「そうだな。でないとお土産も片付かない」
「そういう問題か!?」
 二人が山を登っている頃、山中では大型キメラとの戦いが始まっていた。
 甲冑を着込んだ猿キメラ数体、そしてその中に一体サイズを一回り大きくした物が混じっている。中には剣を持つ個体もいるようだ。
「これはどう見てもキメラだな‥‥。それなら遠慮はしない」
「‥‥ん。猿は。美味しいのかな。脳みそとかは。珍味らしいけど」
「‥‥それは、どうだろうな」
 ベーオウルフと憐は近づく小型キメラをやり過ごし大型キメラへと迫る。一方珠洲と天莉は相変わらず笑顔でキメラを殲滅していた。
「さぁ、誰から串刺しにされたい!?」
「珠洲さん、一人で全部倒しちゃ駄目ですよ♪」
 笑いながら槍を振り回す珠洲に続き笠を肩にかけ天莉が蹴りを放つ。二人の奇妙な希薄に猿たちは震えていた。
「九頭龍さん、今こそヒイロさんと仲良くなるチャンスですよ?」
「だ、だからわたくしは別に‥‥!」
 こっそりとツンデレを焚き付けるのは十星だ。しかし逆に落ち着かないのか斬子はあたふたしてしまっている。
「がるるー! おっきくてもヒイロは怖くないですよー!」
 と、二人の視線の先でヒイロが腕を振り回し大型キメラに突っ込んでいく。慌てて斬子が駆けつけるが、それより早く剛が大型キメラの攻撃を受け止めた。
「っとと、ヒイロさん急に飛び出したら危ないですよ」
「はわわ‥‥剛君、ありがとうなのです‥‥」
 どうやらヒイロは大型の敵に怯えている様子なのだが、何故かそこで突撃するという妙な根性を見せてしまっている。
「ヒイロはまだやれるですよー! 剛君、見てるです!」
 そうして止める間もなく再度攻撃するヒイロ。それに続き斬子も大型キメラを叩くのだが、二人はあっさりと吹っ飛ばされて帰ってきた。
「ぎにゃーっ」
「あうーっ」
 背後で並んで見ていた剛と十星は何とも言えない表情を浮かべた。正直二人ともなんというか――弱い。
「頑張っているのはわかるんですがね‥‥。まあ、今回はこんなものでしょうか」
 二人をフォローし剛と十星が前に出る。そこへ大猿目掛けてソニックブームが飛来した。浩一と涼が合流したのである。
「ほらな、急がなくても間に合っただろ」
「意外と丁度いいタイミングだったみたいだな」
 多勢に無勢、不利を感じてか逃げようとする大猿だが、既に背後にはベーオウルフと憐が回り込んでいる。
「‥‥ん。逃がさない」
「追いかけっこはもうお終いですよ〜♪」
「何処へ行こうと言うのか、猿風情が‥‥!」
 更に笑顔の珠洲と天莉が囲いを固め得物を構える。余り走り回らなかったお陰が元気な様子の涼と浩一も準備は万全だ。
「では仕上げと行きましょうか。我流――流斧刃!」
 剛の一撃を合図に一斉攻撃が始まった。逃げる事も耐える事も出来ず、山中に大猿の悲鳴がこだまするのであった――。

●実家再び
 秋の夕暮れの中、ヒイロの実家の庭にはもくもくと煙が上がり、同時に何とも言えない香ばしい匂いが漂っていた。
 借りた七輪に団扇で風を送りながら憐は本日の戦果をじっくりと焼き上げている。ついでにと川魚も貰ったので網の上は至れり尽くせりだ。
「‥‥ん。魚にキノコ。秋の味覚。頂きます」
「ふぉおお‥‥! ヒイロもおなかすいたですよ! 一個食べたいのですよーっ!」
「‥‥ん。なら一緒に。焼いたり。手伝ったり」
 七輪の前に座り込みヒイロと憐は瞳を輝かせている。そんな様子を縁側に腰掛け剛は眺めていた。
 浩一が買ってきたお茶請けも中々の物で、山間に吸い込まれていく夕日を見送り一息というのも中々悪くない。
「あら‥‥ヒイロさん可愛い犬耳だこと。ふにふに」
「はっ!? 思わず覚醒してしまっていたですよ!?」
 縮こまって七輪を見るヒイロの背後に立ち珠洲はヒイロの犬耳を引っ張る。それからランチバスケットを取り出しにっこりと微笑んだ。
「手作りなんだよ〜これ、食べる?」
「食べていいですか!?」
「ええ、勿論〜。皆さんもいかがですか〜?」
 お言葉に甘えてと涼と天莉もやってくる。天莉と珠洲は仲良く談笑しているのだが、涼は二人の笑顔を直視出来なかった。
「‥‥確かに、俺達が着いた時にはある意味終わってたな」
「涼さん、どうかしたんですか?」
「い、いや〜‥‥なんでもないぜ? うまいなぁ、これ‥‥ハハハ」
 一方縁側組はお茶を飲みながら笑ってその様子を眺めている。ふと、思い出したようにヒイロの祖母に声をかけたのは浩一だ。
「そういえば前から気になっていたんですが‥‥」
 彼が訊ねたのはヒイロの過去についてだった。祖母は少し複雑な表情を見せた後、僅かにヒイロについて語ってくれた。
「あの子は‥‥難しい子なんですよ」
 傭兵家業の一族に生まれ、両親はキメラに殺され他界してしまった事。その場にヒイロが居合わせてしまった事。
 心を閉ざし、誰に対しても敵意を露にし噛み付く子であった事。周囲の子供に怖がられ近づかれなかった事。
 掻い摘んで語る祖母は寂しげに、しかし嬉しそうに続ける。
「今ああしてあの子が笑っているのは、きっと皆さんのお陰ね。本当にありがとう」
「前から不思議ではあったんだ。あんなに素直ないい子に何故友達ができなかったのか」
「あの子は友達の作り方がわからないんですよ。ずっと独りだったから‥‥」
 静かな田舎の町に日が落ちる。やがて沈んでまた昇り、この家を照らす事だろう。
「ヒイロ。ここに居るのが嫌なら帰って稽古でも付けてやろうか?」
 縁側から立ったベーオウルフの言葉にヒイロはキノコを咥えたまま目を丸くする。
「べ、別に嫌じゃないですよう‥‥? いい思い出はあんまりないけど、でも皆が一緒ですから」
「‥‥そうか。そうだ、斬子も一緒に来るか? 纏めて面倒見てやる」
 と、振り返ったベーオウルフの視線の先、斬子はハンカチを手にさめざめと涙を流していた。どうやらさっきの話を聞いていたらしい。
「ヒイロさん、九頭龍さんが友達になりたいようですよ。彼女は否定するかもしれませんが」
「ちょ、ちょっと十星さん!?」
 『いいから』と言って十星は斬子の背を押す。斬子は無言でヒイロの頭を撫で回した。
「‥‥? 何故、なでるですか‥‥」
「あ、あなたなんて‥‥別に友達になんかなりたくないですわーっ!」
 絶叫しながら逃走する斬子。ヒイロはきょとんとその様子を見送っていた。
「ヒイロさんにも良き戦友が居ますね‥‥」
 お茶を飲み干し、縁側で剛が呟く。きのこが焼けたからと手を振る憐の下へ彼もまた歩き出した。
「ヒイロさん、同じ体術使いとして色々お話したい事が♪」
「それはいいですけど‥‥天莉君、さっきから珠洲ちゃんがヒイロの耳をぺこってするですよう‥‥」
「ヒイロちゃん、それ生焼けだぞ」
 涼の一言で慌てて箸を引っ込めるヒイロ。賑やかなその様子を縁側から眺め祖母は優しく微笑む。
 こうしてヒイロの二度目の実家帰り‥‥ならぬ、キメラの討伐は無事に終了するのであった。めでたしめでたし。