タイトル:無秩序ノ来訪マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/08/17 06:36

●オープニング本文


「余所者は出てゆけぇー!」
 目を見開き絶叫する老婆。カシェルはその迫力に圧倒されていた。
 森の者ルリララと親しくなったカシェルが次に受けた依頼、それは森の住人との接触。そして可能なら彼らを森から連れ出す事であった――。

「マグ・メル‥‥それが彼らの狙いだったわけね」
 前回の依頼後、再びグラディスに会ったカシェル。そこで入手した情報を全て報告した。
「それがあの森にある以上、バグアはまた来るでしょうね。そしてUPCもほっとかないでしょう」
「森が戦場になるとすると、住人が危険ですね」
「そうね‥‥。それじゃあ少年、次の依頼なんだけど‥‥」

 腕を組みながら森の隅で回想するカシェル。グラディスは簡単に住人を森から出せなんて言うが、取り付く島もない。
「ほらねー、やっぱりボクの言った通りじゃないか」
 頭の後ろで手を組み呟くルリララ。彼女は最初からこの話に乗り気ではなかったが、カシェルの頼みで仕方なく村へ案内したのだ。
「この森は危険なのに‥‥どうしてわかってくれないのかな」
「危険だとかは関係ないんだよ、きっと」
 森はバグアの地球侵略後、彼らの制圧下に置かれた。そしてそこは誰も近寄らない場所となった。
 それでも森を案じてやってきた環境保護団体の人々が森の者の源流である。そも、危険等最初から承知の上なのだ。
「君達だってそうでしょ? 危険な仕事だけど、それをやるだけの理由があるんだ。だから簡単には止められない」
「そう言われると痛いな‥‥」
「もし自分の好きに生きられないのなら、人生に意味ってあるのかな? こうじゃなきゃいけないって、誰かが決めた枠に嵌っていなければ存在してはいけない命なんて‥‥あるのかな?」
「少し前の君からは考えられないセリフだね」
 茶化すようなカシェルの声にルリララは顔を赤らめる。
「ボク、外の世界を見て思ったんだ。世界は広くて色々な人がいる。イイモノ、ワルモノ‥‥でも、全てをそれで括る事は出来ないって」
 そして最後にはこの森に帰りたくなった。故郷というヤツはそんなものなのかもしれない。
「君はこれまで出会ったどの強化人間とも違う。その理由がわかったよ」
 溜息を漏らすカシェル。そう、ルリララはどこまでも自由なのだ。
 考え方も生き方も全てが真っ白。善悪や秩序よりも感情を優先する‥‥そんな自由さがこれまでの敵とは違うのだ。
「そんな君達の生活を守りたいんだ。だからせめてマグ・メルの調査が終わるまでの間だけでも‥‥」
 その時、ルリララの傍らに寝そべっていた狼が面を上げた。直ぐにルリララも同じ方向に目を向ける。
「何か来る」
 森の木々の間を疾走し飛び出す陰。それは大地の上を滑るようにして着地すた。
 大斧を肩にかけた、長身の黒衣の女。紫のメッシュが入った黒髪を揺らし、村ぐるりと眺める。
「誰だ! ボクらの村に何の用だ!?」
「‥‥はあん。その口ぶりからして、アンタが森の者ってヤツらかい」
 今にも飛び掛りそうなルリララ。カシェルは慌ててルリララを庇うように前に出る。
「UPC軍の方ですか?」
「何故そう思う?」
「襟の階級章です。少尉さんですよね」
 自らの上着を一瞥し、女は鼻を鳴らす。
「少し違うね。アタシは傭兵だよ。UPC軍からの軍略的な作戦だけを請け負ってはいるがね‥‥」
「そうでしたか。僕はこの村の住人との交渉を依頼されている――」
 言葉は最後まで続かない。女は突然斧を構えるとカシェル目掛けて突撃してきたのだ。
 咄嗟に盾で受け止めるが、強烈な一撃に弾き飛ばされるカシェル。女はそのままルリララの首を薙ぐように一撃を繰り出した。
「うわっち! 何すんのさー!」
「マグ・メルってのを知ってるね? アタシはそいつについて調べに来た。ついでに親バグアであるこの村の住人を抹殺する仕事も請け負ってる」
 巨大な斧を身体の一部のように扱う女。カシェルはこれまでの付き合いと比較し、彼女の力量が図抜けている事を把握した。
「下がれルリララ! その人は強い!」
 しかし言葉は通じず、狼が飛び掛ってしまう。女はその牙を軽くいなし、すかさず斧を脇腹に叩きこんだ。
 血を流しながら吹っ飛ぶ狼。ルリララはその様子を目撃し、怒りを露に短剣を抜く。
「やったなあ! 許さないぞ、お前!」
「待てルリララ、戦っちゃダメだ!」
 二人は直ぐに戦闘を開始してしまう。カシェルは剣を抜き、その間に割り込んだ。
 剣でルリララを、盾で女を受け止める。カシェルが守るのはあくまでもルリララであった。
「バグアに加担するのかい? そいつは見過ごせないねえ」
「加担しているわけじゃない! 事を穏便に済ませたいだけだ!」
「そいつが加担してるっていうのさ! バグアは皆殺し! バグアに与する者も全て皆殺し! それがアタシら能力者に役割ってモンだろうが!」
 ルリララを下がらせ斧の連撃を受けるカシェル。女の力量は想像通りかなりのもので、カシェルでは抑え切れない。
「これ以上邪魔をするなら容赦しないよ。とっととそこを退きな」
「カシェル、何で止めるんだよ! カシェルはあいつの味方なの!?」
「ち、違う‥‥そうじゃなくて、君がUPCと衝突すると問題があるんだよ! だから今は下がっててくれ!」
 複雑な状況を伝えようにもルリララの頭は足りていない。カシェルは冷や汗を流しながら状況打開の策を練るのであった。



「ここが例の森ですか。成程、隠し場所にはうってつけですね」
 その頃、森の入り口には二つの影が立っていた。
 片方はピンク色の塗装を施され、女性的なシルエットの機械バグア。もう片方はアニメにでも出てきそうなヒロイックなデザインのバグアだ。
「グェド、わかっていますね? ここにシュトラウトを破壊した敵がいる可能性が高い。最早平和的な交渉は無意味でしょう」
「今はジライヤでーす。拙者良くわからんでござるがー、とりあえず皆殺しでOK?」
「構いません。処刑人として、不利益を生じさせるバグアは処罰せねばなりません。そもそも私は他に行く所があるのです。この件は手短に済ませたい」
「拙者もでーす。ジジイとミュウがさっさと戻って来いと煩いのダゼ。ペイルヘッジ、仕事はスマートに済ませるに限りまくりんぐ!」
 目的を確認すると、二体は森へ向かって歩き出す。そんな二人に続き、大量の機械型キメラが森への侵入を開始するのであった。

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
緋桜(gb2184
20歳・♀・GD
御沙霧 茉静(gb4448
19歳・♀・FC
加賀・忍(gb7519
18歳・♀・AA
ヨダカ(gc2990
12歳・♀・ER
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA
雨宮 ひまり(gc5274
15歳・♀・JG

●リプレイ本文

●人、森、機
「ボクはこの森を守る使命がある! あんな危ない奴を前にしてほっとくなんて出来ないよ!」
 カシェルの制止を聞かずに弓を構えるルリララ。飛来する無数の矢に対し、女は大地を斧で強く叩く事で対応する。
 爆発にも似た音と共に大量の土砂が舞い上がりルリララの矢を弾き飛ばす。そうして塞がれた視界を超え、女はルリララへと襲い掛かった。
「えっ、うそ‥‥速い!?」
「バカ正直だねぇ。戦闘経験の違いってヤツだよ‥‥!」
 振り下ろされる斧。驚きながら身構えるルリララ、その前に御沙霧 茉静(gb4448)と月読井草(gc4439)が立ち塞がる。
 二人はお互いの得物を交差させるようにして構え、女傭兵の一撃を受け止めていた。ぎしぎしと鋼が軋む音が響き、女は舌打ちを一つ。
「どういうつもりだい?」
「これ以上はダメ‥‥」
「双方動くな! 動けばこの竜の鱗より削り出した闇剣が、セラミック装甲をも貫くぞ!」
 硬直する状況。女傭兵は呆れたように息を吐くと、顔を寄せ二人に言った。
「言った筈だよ。邪魔をするなら――容赦しないってねぇ!」
 女は力を込め、二人を一撃で弾き飛ばす。二体一でありながら、膂力は完全に圧倒していた。
「のわーっ! このオバちゃん、すごい力だ‥‥!」
 傭兵の中には時折そういう者が居る。たった一人で強敵を倒してしまうような、たった一人で戦況を覆してしまうような、そんなイレギュラー。
 この女もまたその中の一人。生涯の全てをただ強くなる事に、敵を討ち滅ぼす事だけに費やしてきた一人なのだ。
「退いてな。アタシも好き好んで『人殺し』する程酔狂じゃあない」
「彼女達は人間ではない‥‥とでも?」
「そう言ったつもりだよ」
 鋭く力強い視線を負けじと見つめ返す茉静。しかしやはり同じ傭兵同士で思う所はあるのか、UPCの傭兵も問答無用で斬りかかっては来ない。
「二人とも邪魔しないで! これはボクら森の者の戦いなんだ!」
「耐えろルリララ、この村を戦場にしちゃダメだ」
 顔だけで振り返る井草。そうして自分達の背後にある村を指差す。
「ここでお前が戦えば村の皆が死ぬ。村を守る者が村を戦場にしてどうするんだ、ルリララ!」
 はっとした様子で振り返るルリララ。そう、ここは森の者の村から目と鼻の先の場所にある。
 先のUPC傭兵の一撃を見てもわかるように、能力者同士が本気でやりあえば周囲への影響は避けられない。それは強化人間であるルリララも同じ事だ。
 何の力も持たない一般人である森の者にとって、高速で飛来する石礫ですら致死の一撃。決してここでの戦闘は許される事ではない。
「ボ、ボクは‥‥。ごめん、イグサ‥‥君の言う通りだ」
「落ち着いたならいい。でもまだ力を抜くな‥‥まだ何も終わってないんだ」
 UPCの傭兵は煙草に火をつけながらこちらの様子を伺っている。しかしまたいつ戦闘が再開されてもおかしくない状況だ。と、その時。
「森に何かが入ってきています。この音‥‥前にも聞いた音です」
 刀を鞘から抜きながら振り返る緋桜(gb2184)。その言葉通り、木々の奥から無数のモーター音が接近してくる。
「ルリララ、その人とやりあうとまずいのですよ。それより鉄いのが着たからこっちへ来るのです!」
 駆け寄るヨダカ(gc2990)。しかしルリララは傷ついた狼の傍から離れない。
「でも、この子が‥‥」
 見れば狼の傷はかなり深い。この狼も高い戦闘力を持つ筈だが、女の斧は的確に急所を狙っている。
 すかさず練成治療を施すヨダカ。それでもこの傷を癒しきる事は出来ない。
「これで何とか歩ける筈なのです」
「あ、ありがとう! さあ、君は村の皆の所へ行って!」
 まるで礼を言うように小さく鳴き声を上げる狼。村の方へ走り去るのを確認し、ヨダカはルリララの手を引く。
「何してるですか? カシェルも来るのですよ!」
「でも、彼女をこのままほっとくわけには‥‥」
「あいつの相手は俺がする。カシェルはバグアの方を頼むッスよ」
 鞘に収めた太刀を片手にUPCの傭兵と対峙する六堂源治(ga8154)。その言葉にカシェルは頷く。
「‥‥わかりました。六堂さんなら大丈夫でしょう。お任せします!」
 既に小型の機械キメラとの戦闘が始まっている。村への侵入を阻む為、ヨダカはカシェルとルリララを連れて加勢に向かった。
「ちっ、バグアかい‥‥ついてないねぇ」
「今の私達が戦うべき相手はバグアの筈‥‥それでもまだやるつもり?」
「そいつはアンタ達が相手をするんだろう? それに、個人的にここまでナメられて引き下がるってわけにもねぇ」
 茉静の言葉に笑みを浮かべる傭兵。源治は茉静と肩を並べ、村を背に立ちはだかるのであった。
 一方、キメラに対処する面々。雨宮 ひまり(gc5274)は仲間の目の届かない所を通過するキメラを次々に撃ち落していく。
「数が多すぎる‥‥このままじゃ村が戦場になっちゃいます。やっぱり森の住人さん達には避難して貰わないと‥‥」
「そうは言うけど、皆ここから逃げたりしないよ?」
 浮遊する小型キメラを蹴りで粉砕し、続けて短刀で斬り付けるルリララ。その表情は微妙な感じだ。
「ルリララも村のみんなを説得するんだよ! このままじゃ皆危ないんだ!」
「第一、このままここに残っていてどうするつもりなのです? ただ戦いに巻き込まれ、無意味に死ぬだけなのです! それでいいのですか!?」
 井草とヨダカの言葉に黙り込むルリララ。するとそこへキメラだけではなく、得体の知れないバグアが姿を見せた。
「逃げられては困ります。この森の人間には、マグ・メルの在り処を訊ねる用があるのですから」
 現れたのはピンク色の装甲を持つ機械型バグア。そして一部傭兵には見慣れた‥‥。
「ジライヤ! ここで会ったが百年目なのです!」
「ワーオ、何やら見覚えのある面子デースね!」
 ビシリと指差すヨダカ。忍者型のバグア、ジライヤは肩を竦めている。
「こんな所でまた会うなんてね」
 キメラを両断しながら呟く加賀・忍(gb7519)。UNKNOWN(ga4276)は帽子を片手で押さえながら顔を上げる。
「マグ・メル‥‥確かそれを探しているのだったね?」
「探しているという言葉は適切では無いかも知れませんが」
 会話中にも次々と新しいキメラが出現し、村を襲おうとしてくる。傭兵達はそれらキメラを次々に撃破していた。
「もっと横に広がらないと対処しきれないわ。一つでも通したらお終いよ」
 背後に跳びながら指示を出す忍。キメラ一体一体の戦闘力は大した事はないのだが、如何せん数が多すぎる。
「何故貴方達がここに居るのかは知りませんが、些細な事です。シュトラウトの仇討ちをここで果たすとしましょう」
「シュトラウト‥‥いい奴だったデース。泣けるゼ!」
 ジライヤを無視し、全身の装甲を展開するペイルヘッジ。そこから桃色の光が溢れ、各関節から光の剣が出現する。
「『処刑人』ペイルヘッジ。その命、頂くとしましょう――」
 キメラに紛れ急加速するペイルヘッジ。こうしてバグア、傭兵、森の者、立場の違う者達が交わる混迷の戦闘が開始されるのであった。

●乱闘
 大地を滑るように移動しながら片手を前に突き出すペイルヘッジ。そこから放たれる光線をUNKNOWNは左右に跳んで回避する。
「さて、どう対処したものか」
「何やら特徴的な方々ですね‥‥」
 これまでに遭遇した処刑人、シュトラウト、バルガガン、そしてジライヤ。この三体については詳細が判明している。
 しかしこのペイルヘッジに関しては完全な初見であり、どのような力を持つのかは戦ってみなければわからない。
 素早く木の陰に飛び込み、上体だけを出して銃撃を加える緋桜。ペイルヘッジは飛来する弾丸を全身から突き出た知覚剣で踊るように叩き落す。
「そのような使い方ですか」
 接近して来たペイルヘッジが斬撃を放つ。飛び退いた緋桜だが、彼女が身を隠していた大木は両断されてしまった。
「ジライヤ、この者達は私が相手をします。貴方はテスラの部下を確保しなさい」
「合点承知の助デース」
「ルリルリさんが狙われてる‥‥?」
 スラスターを展開し高速で駆けるジライヤ。ひまりはその移動を妨害するように矢を放つが、木々の合間を縫うように潜り抜けてくる。
「こいつ! こんな森の中だっていうのに‥‥!」
 ヨダカが起こす竜巻を回避するジライヤ。木々を蹴り、空中で高速移動を繰り返す。
 瞳孔だけでその動きを追い、攻撃を仕掛けるヨダカ。しかしまるで狙いが追いついていない。
「――ふむ。これは、むしろNINJAに有利な場所、だね」
「ひまりの矢がまともに当たらないのにあたしの剣が当たるかよー!」
 地団駄踏む井草。しかし今は泣き言をぼやいている場合ではない。
「ルリララ、森の住人と一緒に逃げるんだ! ここは皆に任せろ!」
「で、でも‥‥!」
「バグアさんはルリルリさんを狙っています。捕まってしまったら誰が森を守るんですか?」
 傍に立ち、手を取るひまり。そうして井草と共に強引に村へ向かって離脱を始める。
「ちょ、ちょっと二人とも!?」
「そんなわけなので、後はお願いします」
 走り去っていく三人を見送るカシェル。ジライヤはその後を追いかけようとするが、傭兵達はそれを全力で阻止にかかる。
「村へは行かせないのです! カシェル、こっちで盾になるですよ!」
 ほしくずの唄を歌い始めるヨダカ。ジライヤは妨害の為にクナイを投げるが、カシェルがそれを打ち払う。
「よくわからんが逃げられると困りマース!」
 無理矢理突破しようとするジライヤ。そこへUNKNOWNが放つ火球が飛んで来る。
「逃がしはしないよ」
「チィッ、面倒な奴らデース」

 走り去る少女三人。それをUPCの傭兵も視界の端に捉えていた。しかし彼女の前には源治と茉静が立ち塞がっている。
「バグアを‥‥敵を殺す事。命を奪う事だけが私達に与えられた使命なの?」
「はん。他に何があるって言うんだい?」
「未来への道を切り開く人達を守り、平和な世界を作り上げる道程を築くのが私達の使命の筈。そしてこの森の人は、これからの未来を築き上げるのに必要な人達の筈‥‥」
「必要? 何が必要だって言うんだい?」
 茉静の言葉に冷静な、しかし厳しい眼差しを返す。そうして女は村へ目を向けた。
「奴らがこの森に居る所為でアンタらは戦闘に巻き込まれてる。奴らは自分のエゴを振り翳しているだけさ」
「未来ある人達の為の捨石となれるなら、それが私の本望だから‥‥」
「アンタはそれでよくても、奴らの所為で他の人間が死ぬかもしれない。いや、死ぬ事になる。マグ・メルってやつの所為でね」
「手前はマグ・メルが何なのか知っているのか?」
 源治の問いに対し女は首を横に振る。彼女もまたマグ・メルの正体については何も知らない。だがしかし‥‥。
「バグアが回収に来るんだから必要な物なんだろう? UPCもマグ・メルの為に部隊を展開するだろう。この森の住人が本当に森と自分達を平和を望むのなら、さっさとマグ・メルってやつを差し出せばいいだけの事だ」
 その言葉はある意味において真実である。結局森の住人も身勝手な事に変わりはない。本当に自分達の事を思えば、さっさと森から出てしまえばいい。
「奴らは意図して戦争を助長している。そんな奴らが本当に平和を作れると言うのかい? 甘ったれんじゃないよ。人間のエゴがそう簡単に改善したりするものかよ」
 巨大な斧片手で振るい、女は二人に得物を突きつける。
「もうこの森が戦争に巻き込まれるのは決まってるんだ。だったら善良な一般人や軍に被害が出る前に、最小限で処理するのが能力者の仕事じゃないのかい?」
 女の言葉は狂気からではなく、間違いのない冷静さから来る物だ。そうでなければとっくに殺し合いが始まっている筈。しかしそうだとしても、それがわかったとしても、二人が引くわけにはいかなかった。
「手前が『能力者』の代表みたいなツラしてんじゃねぇよ。何が『役割』だ。【極北】やらで何を見てきたんだろうな、お前は」
「地獄なら幾つも見てきたさ。だからこそ『秩序』が必要なんだ」
「それは手前が勝手に作った『秩序』だろ? あいつらにはあいつらの、俺達には俺達の『秩序』がある」
 森の住人はマグ・メルを知らないと言っていた。確かに知らないでは済まない事かも知れない。だが‥‥。
「思想や戦う理由なんてのは人それぞれだ。絶対なんてないし、そこに貴賎は無い。だが、お前自身が掲げた『戦う理由』の落とし前は付けなくちゃな」
 刃を抜く源治。髪が見る見るうちに白く染まり、瞳は真紅に輝いた。
「『皆殺し』を奉じるんなら、自分が殺されても文句は言えないッスよ? その覚悟はあるか?」
「アタシに刃を向けるという事の意味、わかっているんだろうね? 粋がりじゃ済まないよ」
「人を傷つけるのだから、それなりの覚悟は出来ている‥‥」
 同じく、刀を抜きながら覚醒する茉静。女は煙草の吸殻を粉々に握り潰し、斧の一振りで消滅させる。
「‥‥馬鹿野郎が」
「俺達が負けたら好きにすりゃ良いさ。でも俺達が勝ったら、俺達のルールに従って貰う。さて、始めますか『少尉殿』。階級が下の俺に負けたら、恥ずかしいッスよ?」
 最早衝突は避けられない。三人は各々の主義主張を通す為、刃を交える事を強いられていた‥‥。

 激しい三つ巴の戦闘が繰り広げられる中、井草とひまりはルリララを連れて村人達の所へ戻ってきていた。既に戦闘の気配を察知し、村人達は全員集まっている。
「ばっちゃん、みんな!」
「ルリララ‥‥何がどうなってるんだい?」
「バグアと人間が両方いっぺんに襲ってきたんだ。このままじゃ村も危ないかも‥‥」
 村人達にどよめきが走る。彼らも危険は重々承知なのだが、逃げるという選択を中々下せずに居た。
「みんなでここから逃げましょう。今はまだ大丈夫ですけど、直ぐに敵が雪崩れ込んで来ます」
「ばっちゃん達は逃げて欲しいんだ! 森の事はボクが守るから!」
 ひまりに続き説得するルリララ。しかし井草は首を横に振る。
「いいやルリララ、お前も一緒に逃げるんだ?」
「えぇ!? 何でさ!?」
「お前がここを動かない限り婆さんや他の住人達も逃げないだろう。それは何も外の世界を知らないからではないよ」
 ルリララと向き合い、その両肩に手を置く井草。真剣な様子で語りかける。
「良く聞いてルリララ。村の皆が心配してるのは‥‥あんたなんだ!」
「ボ、ボク?」
「鉄の者やあの女傭兵は強い。幾らルリララが強くても一人では敵わない。でもあんたは戦って、そうして死ぬだろう。お婆さん達はきっとあんたに死んでほしくないと思ってる。君はこの村皆の子供なんだよ」
 呆然と村人達を見つめるルリララ。老婆は困った様子で俯いた。
「そして婆さん達が逃げない限りルリララは守護者の務めを果たそうとするだろう。今のルリララでは戦っても犬死するだけだ。あたしらはどう思われてもいい。あの娘を守るためと思って避難してほしい」
「‥‥確かにねぇ、全部あんたの言う通りだよ。でも‥‥そう言うわけにはいかないのさ」
 井草に歩み寄る老婆。そうしてルリララの頭を撫でる。
「どうしてですか? 今起きている争いが終っても森を守る人たちが必要なんです。だから今避難することは間違った事ではないんですよ?」
 困ったように問いかけるひまり。しかし住人達はばつの悪い顔をしている。
「この森は私達が絶対に守ります、お願いです‥‥信じて下さい」
「そういう問題じゃあないんだよ。あんた達が私達と誠実に向き合ってくれたのは嬉しい。けどね‥‥ダメなんだ」
「まさか‥‥それもルリララの為、なのか?」
 呟く井草。ひまりも何と無くその言葉の意味に気付いて黙り込む。当の本人だけが不思議な顔をしていた。
「どういう意味なの?」
「ルリララさんも、もふもふさんも‥‥バグアだから、ですか?」
「そうさ。この子達はね‥‥この森の中でしか生きていけないんだよ」
 ルリララは強化人間で、狼はキメラだ。本来ただの人間と相容れる事は叶わない。
 外に出れば村人は保護されるだろう。しかしルリララはどうなる? 強化人間の末路は悲惨だと相場が決まっている。
「ここでなきゃ、ルリララと一緒に生きられない。バグアと人間は‥‥一緒に生きられないんだよ」
「それじゃ、ボクは‥‥皆を守ってたつもりで、本当は守られてたって事‥‥? どうして、そんな!」
「そこのお嬢さんが言っていただろう? 私達にとって、ルリララは本当の娘だからさ」
 わっと一斉にルリララに集まる村人達。もみくちゃにされながらルリララは黙って目を閉じ唇を噛み締めていた。
 生まれて初めて涙を流した。心から皆を守りたいと思った。自分もまた、彼らを家族のように感じていたから。
「ありがとう‥‥これまでボクを守ってくれて。ボク‥‥皆の事が大好きだよ」
「ルリルリさんの事は任せてください。きっと悪いようにはしません」
「猫は仲間を見捨てないんだ。救えるかはわからないけど‥‥共に生きる事は出来る」
 顔を見合わせる住人達。老婆は真っ直ぐに二人の少女を見つめる。
「信じても‥‥いいのかい?」
「皆さんとっても強いんです、だから大丈夫! 井草さんなんてこう見えて何でも出来るんですよ、十徳ナイフより便利なんです」
 ひまりの言葉に渾身のどや顔の井草。それに効果があったかは不明だが、村人達は逃げる覚悟を決めたようだ。
「森の外までお送りしますね」
「外に出ても心配しないで。カシェルが何とかするって言ってたしね」
 村人を連れて森の外へ向かう事になった二人。彼らを護衛しつつ、ルリララと共に森を走る。
「ボク‥‥イグサやヒマリ、皆に会えて良かった」
 笑い返す井草とひまり。ルリララもまた涙を流しながら笑った。
「信じてもいいよね。いつかボク達が誰にも罰せられず、一緒に生きられる日が来るって‥‥」
「きっとなんとかしてくれるよ‥‥カー君が」
「完全に他人任せか!」
「じゃあ井草さんが」
「あたし任せか!」
 三人はいつも通りにそんな話をしつつ、戦場から遠ざかっていくのであった。

●楽園
 ペイルヘッジは知覚攻撃に特化したバグアである。
 身体の各所に知覚刀を隠し持ち、両手からは光線を発射する。全身を使用した演舞の如き独特の攻撃動作は先読みが難しく、受けが困難である。
 膂力よりは機動力に長けておりしかし知覚攻撃を防御に転用したバリアを使用する事で軽量装甲の脆さを補っていた。
「‥‥という所かな?」
 光線を回避しながらペイルヘッジを眺めるUNKNOWN。村を守る戦いは激化の一途を辿り、周囲には機械キメラの残骸が無造作に列を作っている。
「皆様が説得に応じてくれれば良いのですが‥‥」
 飛行する小型キメラを撃ち落す緋桜。ペイルヘッジはキメラをけしかけてばかりであまり積極的に攻めようとはしてこない。
「全く以って不可解な人間達ですね。何故敵である筈のバグアを庇っているのですか?」
 それは至極当然の疑問だろう。そして問いを投げかけられた時、緋桜はその答えを持ち合わせていなかった。
 何故、ここで彼らを守って戦っているのか。彼女にとって親バグアの人間とは仇以外の何者でも無い筈だ。だというのに、心のどこかでルリララの無事を望んでいる自分すらいる。
「バグア及び関係者は徹底的に根絶‥‥そんな彼女の様に考えられれば楽なのでしょうが」
「まさか、貴方達も狙いはマグ・メルですか」
 片手を突き出し閃光を発射するペイルヘッジ。その威力は緋桜を易々と木々ごと薙ぎ払う程だ。
 光の矢を受け血を流す緋桜。そこへUNKNOWNが駆けつけ、緋桜を庇い背中に直撃を受けた。
「く‥‥っ、それほど、マグ・メルという物が大事か?」
「別に大事という事はありませんが‥‥テスラはバグアを裏切った異端者です。故に処罰せねばならない」
「裏切り‥‥だと?」
「テスラはこの地でマグ・メルという名の兵器を研究していました。しかし彼女は在ろう事かその提出を拒否しこの森に引き篭もったのです」
 バグアは裏切り者を決して許しはしない。如何なる理由があろうとも、テスラは処罰しなければならないのだ。
「その為の我々『処刑人』です。我々の役目は裏切り者を殺す事。故にその戦闘力は同族殺しを前提としています。貴方達人間では荷が重いでしょう」
 ゆっくりと歩み寄るペイルヘッジ。UNKNOWNは緋桜を抱き締めたまま顔だけで振り返る。
「貴方達の相手をしている暇は無いと理解しましたか? この森のどこかにあるマグ・メルを回収しテスラを処分する‥‥我々は忙しいのです」
「では、マグ・メルの正体については知らないのだね?」
「さあ? どうせ異端のバグアが作った無価値な道具でしょう」
「――うむ。サンクスだよ」
 突然振り返りクローで襲い掛かるUNKNOWN。これを光の盾で防ぐペイルヘッジだが、既に回復していた緋桜が擦れ違い様に刃を叩き込んだ。
「まさか‥‥演技」
「訊きたい事は聞いたし、そちらの手の内は把握した。さて、次はこちらの番だね」
 反撃を開始するUNKNOWN。緋桜と連携し、ペイルヘッジにダメージを与えていく。

 同時期、ジライヤと戦う傭兵達。森の中を走りながら忍は一つの事実に気付きつつあった。
 あらゆる空間を自在に飛び回り、目にも止まらぬ一撃を繰り出すジライヤ。その戦闘力は前回よりも増している‥‥否、恐らくこれまで手加減していたのだ。
 疾風を思わせる光の剣を受け止められたのは過去の経験のお陰だ。目と思考が追いついているからこそ、真正面からでも打ち合う事が出来る。
「相変わらずね。そういえば、燕尾服は一緒じゃないの?」
「ジジイとミュウとは別行動中デース。拙者フリーダムでござるが、こっちが本業でゴザーイ」
 強烈な打ち合いについていく忍。しかし彼女が一度剣を振る間にジライヤは二度三度と斬撃を捻じ込んでくる。
「余計な事を気にしてる場合デースか? 注意力散漫デース!」
「うっ!?」
 ガードを弾かれ冷や汗を流す忍。そこへヨダカが超機械で竜巻を放つ。
「これ以上お前の好き勝手にはさせないのですよ!」
 左右に手にした超機械を交互に連射するヨダカ。ジライヤは木々の間を自在に飛び回りそれを回避する。
「ジーザス! なんともしつこい幼女デース!」
「今度こそ年貢の納め時ですよ、エセ忍者!」
 両腕を前にゆっくりと差し出しほしくずの唄を発動するヨダカ。ジライヤは木の上で地団駄踏む。
「ノォウ! 止めるデース! なんとも言えない嫌な感じがするデース! 黒板を爪で引っかくような!」
 空中を疾走しながらクナイを投擲するジライヤ。カシェルはこれを剣で薙ぎ払う。
「邪魔デース!」
「邪魔をしているのはお前達の方だ!」
 空中を回転し踵を叩き込むジライヤ。カシェルは盾で受け止めると同時にスキルを使って弾き返す。
「加賀さん!」
 飛んでくるジライヤ目掛けて走る忍。背後から強烈な一撃を叩き込むと、スラスターが破損したのか若干動きが鈍くなってきた。
「手応え有り‥‥行ける」
「かくなる上は!」
 背中から大量の霧を放出するジライヤ。しかしそれが戦場を支配するより早く、ヨダカが超機械を振り翳す。
「種は割れてると言いましたよ!」
 団扇を振るうヨダカ。青白い光を纏った竜巻が吹き荒れ、一瞬で霧を晴らしていく。しかしジライヤは既にヨダカの目の前にまで接近していた。
 繰り出される蹴り、それをカシェルが受け止める。続け蹴りを軸に回転した連続蹴りからの肘打ち。カシェルは動きが追いつかず直撃を食らう。
 カシェルを怯ませ、ヨダカに刀を繰り出すジライヤ。しかしカシェルが手を伸ばし代わりに突きを受け、刃を掴んだままジライヤを蹴り飛ばした。
「チィッ! 何故死なん!」
「他に取り得もないからね」
 大剣に持ち替えたカシェルと忍が挟撃を仕掛ける。刀を落としたジライヤはクナイで二人の攻撃を弾いていく。
「伊達に何度も戦っていないわよ」
 前後から挟み込むように連携して連続攻撃を叩き込む二人。ヨダカは三度ほしくずの唄で混乱を誘う。
 すかさず大剣を思い切り叩き付けるカシェル。ジライヤは足が痺れたようにプルプルし、その直後忍が強烈な一撃を叩き込んだ。
「せ、拙者がやられるなんて‥‥」
「確かに貴方、燕尾服より強かったわよ」
「ま、まさか‥‥ユー!?」
「燕尾服は傍らに居たわよ、血糊でね」
 ぷるぷるしていたジライヤは力尽きたようにがくりと倒れるのであった。

 一方、UPC傭兵と戦う源治と茉静。こちらの戦況は拮抗していた。
 素早く移動し、ヒット&アウェイで攻める茉静。傭兵はこれを何無く大斧という得物で捌いている。
 茉静のバックステップからのエアスマッシュを素手で握り潰す女。源治は入れ替わり、太刀による接近戦を挑む。
 女傭兵は源治の読み通りAAなのだろう。その膂力は源治にまるで引けを取らない。
 二人の武器が激突する度に凄まじい轟音が鳴り響き、周囲の木々が揺れ大地が爆ぜる。
「加減してるのかい? 言葉の割りには優しいじゃないか」
「手前を殺せばこっちの立場が悪くなるからな」
 背後から接近し刃を繰り出す茉静。これに対し女は思い切り周囲を斧で薙ぎ払う。
 十字に衝撃が広がり血を流しながら吹き飛ぶ茉静。源治はその一撃に耐え、ありったけの一撃を繰り出した。
 攻防の中で発生した両断剣・絶。女もやはり両断剣・絶で応じる。激しい衝撃に互いに傷付きながら、源治はすかさずローキックを繰り出した。だが――。
 女は大地に斧を立て、逆立ちするようにして回避。そのまま縦に回転しソニックブームを纏った両断剣を放った。
 木々が根こそぎ吹っ飛び縦に出来た大穴。源治はギリギリでそれを受け流していた。
「何故避けられたのか不思議だって顔だね」
 キックのタイミングは万全の筈だった。隠し球としてこれまで使っても居ない。だがしかし。
「逆に怪しむだろう? 能力者はSES搭載兵器でしか有効打を出せない。アンタのそれが飾りって事はないだろうからね」
「俺の脚の装備を見て‥‥か」
「アンタだってアタシが後ろに下がって違う武器を出したら警戒するだろう?」
 笑う女。しかしそれ以上戦闘は発展しなかった。
「獲物には逃げられちまったしね。今日の所は引き上げるよ。次はアンタ達も本気でやった方がいいね」
 二人とも彼女を殺すつもりはなかった。むしろ負傷させたら治療するくらいの気持ちだったのだ。それがわかってしまった以上、彼女も引かざるを得ない。
「アタシの名前はレイディ・ボーンだ。次に会ったら容赦はしないから、この名前、覚えおきな」
 踵を返し立ち去る女。それと同時期、ペイルヘッジも引き上げに掛かっていた。
「止むを得ませんね。油断したのは此方の方でしたか」
 大量のキメラを更に追加で呼び出すと背後に飛び退きジライヤに目を向ける。
「グェン、いつまでそうしているつもりです?」
 するとジライヤは飛び起き、素早くペイルヘッジの隣に並んだ。
「し、死んだフリですか!? セコすぎなのです!」
「フハハー、逃げるが勝ちなのデース。バーット‥‥」
 急にコミカルな雰囲気が消え、ジライヤは傭兵達を一瞥する。
「お前達は強い。ミュウとシルバリーを倒したのだとすれば、間違いなく脅威だと言える。そろそろ俺もふざけている場合じゃないな」
 きょとーんとするヨダカ。ジライヤはペイルヘッジと共にその場を離脱して行く。
「次は本気で相手をしてやる。お前達は俺が殺す‥‥『処刑人』として、な」
 なだれ込むキメラ達をを全て処理した頃には二体の姿は既になかった。
「本気じゃなかったとでも‥‥言うつもりですか」
 キメラの残骸を蹴飛ばしながら呟くヨダカ。こうして混迷を極めた三つ巴の戦闘は一応の終わりを向かえるのであった。



 その後、森の住人達はグラティスの協力もあり、森から退去する事になった。
 ルリララはそんな彼らを見送り森に残る事になった。それは森を守る為であり、自分が彼らと共に生きる為である。
「マグ・メルを、探そうと思うんだ」
 それがある限り、森を巡る戦いは終わらない。だからこれは停滞ではなく、進歩。
「協力してくれないかな? この戦いを終わらせる為に。ボク達がまた、一緒に暮らす為に‥‥」

 そして彼らは知る事になる。マグ・メルの正体、そして森を巡る戦いの結末を。
 楽園を求めるバグアとUPC軍。その双方の求めに応えるように、マグ・メルはその姿を現そうとしていた――。