タイトル:森ノ者、鉄ノ者マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/14 06:34

●オープニング本文


●森ノ者
「ルリララ! あれ程余所者と口を利いちゃいけないと口をすっぱくして言っておいたろうに!」
 森の中に響く奇声。独特の衣装を身に纏った少女ルリララは森の中で正座していた。
 傍には相棒の狼キメラが横になっており、少女を見下ろすように小柄な老人が杖を振り回している。
「そうは言うけどさー。口を利かなきゃ相手が誰なのかもわかんないじゃないかー」
「誰かなんて気にする必要ないんだよ! お前は敵の前に姿を現すんじゃない!」
 魚のようにぎょろりと剥いた目を輝かせる老婆。少女はしょんぼりしながらジト目でそれを見上げている。
「外の連中と関わるとろくな事が無いよ! あいつらはこの森に災いを運んでくるんだ! 恐ろしい、ああ恐ろしい!」
「そっかなー。鉄の連中をやっつけてくれたんだけどなー」
「グルかもしれないじゃないか! それにね、人間というのは執念深いんだよ。一人でも仲間を殺したら大挙として押し寄せてくる!」
「だから姿も見せちゃ駄目なんでしょ? ばっちゃんの話はもう百回くらい聞いたからわかってるよー」
「分かってないじゃないか! ルリララ、あんたの身に何かあってごらん! この村はもうお終いだよ!」
 それはルリララも分かっている。この村を守れる人間は自分しか居ないという事くらいは。
 ここは森の中にひっそりと存在している村。村と呼ぶのもおこがましい程度の規模で、人がやっとこ暮らせる程度の小屋が三つほど並んでいる。
 バグアの支配下にありながら、ここでは人間達が自由な生活を営んでいる。勿論相応の枷はあるのだが‥‥ルリララはその内容を良く知らない。
 彼女にとってこの村と森が世界のすべてであり、他の事は興味すらなかった。外にも人間が居るという事すら信じて居なかったほどだ。
「ボクは死なないよ。だってばっちゃんや森のみんなが大好きだから。森に生きる全ての命が大好きだから。だからボクは誰もここには近づかせない。それは空と大地がひっくりかえっても変わんないよ」
 小柄な老人は溜息を吐き、ルリララの額を杖で小突く。
「分かってないねぇ。村のみんなもお前の事が大好きなんだよ。だから危ない事はして欲しくないのさ」
「ばっちゃん、ボクかなり強いよ? 余所者なんか相手にもならないと思うけどなー」
「それは自惚れさね。外の世界にはあんたより強い奴なんて幾らでも居るさ」
 唇を尖らせるルリララ。確かにこの間会った連中は強かった。野生の獣にも気配を悟られない自信があるし、放つ矢の一撃は天すら切り裂く威力だと自負していたのだが。
「兎に角! ぜーったいに、危険な事は避けるんだよ! 森の者は争いを決して望まないのだからね!」
「わかってるってばー。なにさー、ボクは強いんだから負けないもん。もういいよ、行こうレオン」
 大柄な狼が立ち上がり小さく鳴き声を上げる。ルリララはバック転でその背に立ち、木の実を齧りながら森の中へと消えていく。
「こらー! ルリララー! 危ない事はするんじゃないよー! いいねー!」
 老婆はその背中が見えなくなるまでずっと杖を振り回し叫び続けていた。

●鉄ノ者
 広大な森の中、ゆっくりと歩く二つの影があった。
 片方は巨漢。身長は三メートル近い怪物だ。もう片方は細身で、相方程ではないが二メートル程の図体を持っている。
「何故私達がこの様な無意味な探索を続けねばならないのか‥‥実に理解に苦しむよ」
「まあそう言うな。それが俺達の仕事なんだからな」
 二人は共に人間ではなく、機械で作られた身体を持つ。異形の機械人形ではあるが、互いに人間風の衣装を身に纏っている。
「私は非効率的であると言っているのだよ。何もこの森の中をわざわざ歩いて探索する必要もなかろう?」
 大地に届くほどの非常に細長い腕をしならせ顎を撫でるバグア。その隣、巨漢はのしのしと歩いている。
「俺もそうは思うがな。この森の中には生々しい命が充満しすぎている。正直長居したい場所ではない」
「やれやれ、だ。こういう場所はグェド・イェンあたりが適任なのだがな」
「あいつ、どうしたんだか」
「さあ? この星の小さな島国の古臭い風習に憧れて飛び出してから随分経つが‥‥奴の様な者は一族の面汚しよ」
「そうか? こんな所をノコノコ歩いている俺達も似たような物だと思うがな」
 二人して歩みを止めて溜息? のようなものを漏らす。
 こんな森、さっさと焼き払ってしまえばいいのだが‥‥そうはいかない事情が彼らにもあった。
「仕方あるまいよ。であるが故に、この私シュトラウトと‥‥貴様、バルガガンが来ているのだ」
「ああ。いつも通り、探索機を放つ。『マグ・メル』を早い所見つけて宇宙に切り上げたいもんだ」
 二人の背後、プロペラで飛行する小型のキメラが接近する。それらは森の彼方此方に向かって放たれ、二人はその様子を黙って見送る。
「さて、往くとしようか。人間の軍勢が入ってくる前に、全ての決着を」
「ああ。全く、面倒くさい仕事に当たっちまったもんだぜ」
 のそのそと動き出す二人。深い深い森の中、闇へと姿は溶けて行った。

●参加者一覧

六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
加賀・忍(gb7519
18歳・♀・AA
ラナ・ヴェクサー(gc1748
19歳・♀・PN
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA
雨宮 ひまり(gc5274
15歳・♀・JG

●リプレイ本文

「さてと。今回は前回とは違う場所を探索してみるかね」
 地図を片手に呟く六堂源治(ga8154)。傭兵達は前回とは違う場所から森に入り、今回の方針を語りつつ歩いている。
「それにしたって広すぎだろ。どうする? 話に聞いた遺跡を目指してみるか?」
「いいんじゃないかな。とりあえず遺跡を目指す感じで」
 頬をぽりぽりと掻く時枝・悠(ga8810)に月読井草(gc4439)が応じる。今回の目的地は遺跡で決まったようだ。
「地図には載ってるが、結構遠いッスね」
「うーん、雑魚との戦闘は避けてく方向でいいんじゃない? どうしても時間かかっちゃうし。それでいいかな?」
 源治の言葉に頷き振り返る井草。ラナ・ヴェクサー(gc1748)はそれに同意する。
「構いませんよ‥‥私は今回からの参戦ですし、方針に従います」
「私も特に異論はないわ。戦闘がないと退屈ではあるけど」
 腕組み頷く加賀・忍(gb7519)。とりあえず一塊になって動くという事で決定したようだ。
「はあ。敵をぶっ潰せ、的な依頼の方が目的がハッキリしてて気楽なんだが‥‥」
「私もそれは同じ事ね」
 歩きながらぼやく悠と忍。カシェルは首を傾げる。
「じゃあ、なぜこの仕事を‥‥」
 二人は足を止め、それぞれ考えるポーズ。それから口を揃えて言う。
「何でだろう?」
「そういう貴方は‥‥相変わらず飛び回って、戦い続けている‥‥のね」
「他にする事もないですからね、僕は」
 ラナは微笑みながらカシェルに語り、背後からその肩に手を置く。
「肩でもお揉みしましょうか‥‥?」
「い、いやいや! 大丈夫です、健康なので!」
 慌てるカシェル。一方井草は後頭部で手を組み、とことこ歩いている。
「ルリララにまた会えるかなー。なんとなく話が通じそうだったし」
「ルリララさんはバグアから森を守ってるいい人なんです。しかもとっても強い。これはもう協力しない手はありませんよね」
 したり顔で語る雨宮 ひまり(gc5274)。カシェルは苦笑を浮かべる。
「どうやって協力するんだい?」
「方法はこうです。ルリララさんを探す→フルーツ牛乳を渡す→おいしい→なかよし」
 ろくろを回す姿勢でどや顔のひまり。カシェルは無言でその肩を叩いた。
「ていうかカシェルはボーイミーツガールな展開に何かリアクションすべきだろ」
「君はいつも僕に何を期待しているんだい?」
 井草に苦笑するカシェル。そんな様子を源治が眺めている。
「まあ、何も分かんねーもんな。この森の事も、ルリララ‥‥というか森の者の事も。バグアなのか、たまたまキメラを手懐けた地球人なのか」
 それが見えてくれば、何を成すべきかなのかも分かってくるだろう。それまでは気長にピクニックを楽しむしかない。

 こうして傭兵達は探索を続ける。道中キメラと遭遇もしたが、やり過ごす事で時間の節約に当てた。
 ラナはそんなキメラ達を持参のカメラで撮影する。自然な姿のキメラは、結構いい写真に写ってしまったりした。
 ここで一つ分かったのだが、どうもキメラ達は避けている限りはあまり襲ってこないらしい。むしろ一匹でも撃破すると集まってくるという感じか。
 森は兎に角広い為、遺跡に近づいたのは数時間後であった。それでも戦闘等は避けた為、錬力消耗は無いに等しい。
「‥‥見えました。この先に開けた場所があります。恐らく‥‥例の遺跡でしょう」
 樹上から周囲を偵察していたラナが飛び降りてくる。悠は水筒に口をつけ、首をこきりと鳴らす。
「もうついたのか。結構早かったな」
「歩き通しだと流石に疲れましたね。休める場所ならいいんですが」
 カシェルに続き傭兵達は遺跡へ向かうった。
 そこには泉が広がっていた。開けた場所に石造りの建造物が並び、足元を水が満たしている。
 原型でも理解出来なかったであろう謎の遺跡はその殆どが崩れ木々に侵食されており、ここがどんな場所だったのか知る事は出来ない。
「綺麗な場所ですね‥‥」
 カメラで撮影するラナ。その時水音が鳴り、全員そちらに視線を向ける。
「あれ? どっちでもない者だ」
 水中から顔を出したのは裸のルリララだ。カシェルはとりあえず目を瞑る。
「ルリララさん、こんにちは〜」
「ここに何しに来たのさ。ここは森の聖域なんだ。森の者以外は入っちゃいけないんだぞ」
「その前に服を着なさい、服を!」
 慌てて叫ぶカシェル。特に他の面子はルリララの裸を気にしていない。が、カシェルは源治を見やり冷や汗を流す。
「一応六堂さんもこっちに‥‥」
「ん? いや、俺は別にガキの裸を見ても何とも思わないから大丈夫ッスよ?」
「いや一応、絵的に‥‥」
 引っ張られていく源治。その間にルリララは複雑な衣装を手早く纏っていく。
「ルリララ‥‥そなたの森を騒がせてすまない。我らは鉄の者を追ってきた。話を聞かせてくれないか?」
「別に今日はみんな騒いでないよ。だから君達にも気付かなかったんだけど」
 作画が変化した様子で語る井草。ルリララが指笛を吹くとどこからか狼キメラが跳んでくる。
「でもボク、悪いけど君達と話をするなって言われてるんだ」
「もう話してるぞ」
 悠の指摘にはっとするルリララ。そこへひまりがフルーツ牛乳を差し出す。
「私はルリララさんのことをもっと知りたいからお友達になりに来ました。ささ、これをどうぞ」
「ナニコレ?」
「板チョコも如何ですか?」
 最初は疑心暗鬼だったルリララだが、餌付けに屈して目を輝かせている。
「これはうまい! 君達はいい奴だな!」
「ルリララさんはいつからここに来るようになったの〜?」
「最初からだよ。ボクはずっとここで育ったからね」
「この森ってどんな所なんですか〜?」
「わかんない。ボクは森を守るのが仕事だからね。ただ、長老は森を『マグ・メル』って呼んでた」
 意味不明な単語に首を傾げるひまり。そこへラナが写真を取り出す。
「これらの人物に‥‥心当たりはありませんか?」
「あるよ?」
 意外な反応に驚くラナ。ルリララは写真を見つめる。
「この人達は外の人間だけど、森に入れていいんだって言われてるよ」
「そうですか‥‥あ、一枚宜しいですか?」
「私も一緒に撮ってください!」
「それならあたしも!」
 ルリララを挟み井草とひまりが並ぶ。その様子をラナは写真に収めた。
 狼キメラの上に乗っかりもふもふしているひまりと井草。その様子を忍は冷や汗を流し見守っている。
「良かった、着替え終わってる」
「おー、おかえり少年。カシェルも何か訊いてみたら?」
「いや、僕は遠慮しとくよ‥‥っていうか何してるの君達」
 戻って来た源治とカシェルは謎の光景に困惑している。
「それで、鉄の者ってなんなの?」
「何でもボクに訊かないでよ。ボクだって知らない。ただ、最近になって来るようになったんだ」
「ルリララ君も、自分の役割以外の事は知らない‥‥という事ですね」
 話を纏めるラナ。と、そこで忍が背後の気配を察知し刃に手をかける。
「何か来るわ。かなりの数よ」
 近づく怪音。全員が同時に武器を構える。森から飛び出してきたのは無数の機械型キメラであった。
 数は八機。一斉に突っ込んで来るが、傭兵達はルリララを加え一瞬でこれを撃破する。擦れ違った時には既にキメラは墜落していた。
「子機が相手にならないか。中々の腕だな」
 森から姿を現す二人の異形。ひまりは首を傾げる。
「喋る人型機械バグアさん、まるでどこかであったような‥‥?」
「忍者かぶれのジライヤを思い出すなー」
 その名前と姿には忍とラナも覚えがあった。源治は刃を構えたままで視線を向ける。
「知り合いッスか?」
「似ているというだけね。本物はもっと頭の悪そうな奴よ」
 忍としては苦い記憶を伴う敵である。尤も目の前の敵がなんであれやる事は変わらないが。
「ほう、これはどういう事だねルリララ? 強化人間の分際で人類と仲良くお喋りとは」
「キョーカ‥‥? 別に仲良くしてるわけじゃないよ」
「ピクニック中って面じゃないな。探し物かい?」
 悠の声に細長い方は胸に手を当て応える。
「ああ。尤も、諸君らには関係のない事だがね」
「わざわざこんな森の中まで来るなんてすっごく怪しいです」
「それはお前らも一緒だろうが」
 大きい方がひまりに応じる。三つの陣営はここで睨み合いの様相となった。
「ルリララ、手を組まないッスか?」
「手を?」
「鉄の者の事は、どっちでもない者の問題でもある。ちなみにボスってアレかい?」
 源治と悠の声。ルリララは思案し頷く。
「そうだよ。二人とも凄く強いんだ」
「なら、俺達の力が必要じゃないッスか?」
 悩むルリララ。それから渋々と言った様子で頷いた。
「わかった。協力するよ。但し、聖域は壊さないでね」
「話は纏まったかしら。それじゃ、戦闘開始で構わないわね?」
 刃を握り締める忍。バグア二名は顔を見合わせ困った様子で笑う。
「人間と共闘だと? どこまでも愚かな」
「ああ。お前はやっちゃいけない事をした。故に俺達はお前を抹殺する」
 両腕を突き出す巨漢。その腕が変形し機銃を形成する。
「処刑人バルガガンだ。ま、適当に死んでくれや」
「同じく、処刑人シュトラウト。その名を刻み死の大河を渡るが良い」
 急加速し舞い上がるシュトラウト。その間にバルガガンは両手の機銃を乱射する。
 広範囲高威力の弾幕。カシェルは盾を構え味方を守り、傭兵達はそれぞれ対応する。
「うわっち! 隠し武器か!」
 カシェルに隠れる井草。そこへ空中から細身のバグアが襲い掛かる。
 両手を輝かせ、光を帯びた爪での一撃。カシェルはそれに堪えるが、バグアは回転し両腕で周囲を薙ぎ払う。
「うおっ、速いなあいつ」
「うわーやめろー! 聖域を壊すなー!」
 機銃乱射に青ざめるルリララ。悠はそれを横目にシュトラウトを斬りつけるが、斬ったのは残像で本体は背後に回りこんでいる。
「そういう君は遅いな」
 跳躍し、遺跡を蹴って舞い上がるラナ。真上からの射撃でシュトラウトを狙うと、敵は高速で背後に移動し回避する。
 両指を揃え、長い腕で交互に突きを放つシュトラウト。ラナはそれを次々に回避するが、攻撃は速度を増していく。
「やるではないか。ではもっと早くしよう」
 長すぎる槍が嵐のように飛来する。が、ラナはこれも物ともしない。
「では、更に倍」
 背後から新たに腕を二本展開するシュトラウト。手数が倍になり、ラナは咄嗟に背後へ飛ぶ。
 一方、バルガガンへソニックブームを放つ源治。これを受けながらバグアは装甲を展開する。
「効くな。こっちもどんどん行くぜ」
 両肩から発射されるミサイル六発。これが空中から源治に降り注ぐ。
 連続し舞い上がる炎。忍はこれを突破しバルガガンへ斬りかかった。頑丈な腕に刃は阻まれ、スキルを発動。連続攻撃を叩き込むが、大きな腕に胴体を掴まれてしまう。
「ちゃんとメシ食ってるか?」
 大地に叩きつけられる忍。陥没した岩から引き抜いたその身体を遺跡目掛けて投擲する。これを間に入ったカシェルが受け止め、共に着地した。
「加賀!」
 叫ぶ源治。バルガガンは脚部からロケット弾を発射。源治はこれを両断して対処する。
「早く撃退しないと遺跡さんが‥‥!」
 束ねた矢を同時発射するひまり。これらはそこら中を乱反射し、一斉にシュトラウトに直撃する。
「なんと!? この私の影を捉えるだと!」
 すぐさま接近し太刀を繰り出す悠。シュトラウトの身体が宙に舞い上がる。
「これなら避けられないだろ?」
 空中に銃を連射する悠。シュトラウトはそれでも回避や防御を行なうが、悠の一撃はあまりに重すぎる。
「一気に決めるぞー! 総攻撃だ!」
 狼の背に乗った井草が跳躍。シュトラウトに狼と同時に一撃を加える。続けラナが擦れ違い様に爪で引き裂き、ひまりが駄目押しの矢を放つ。
「ぐおおお‥‥! 馬鹿な、何だこの力は‥‥!?」
「シュトラウト、死ぬなよ。俺が面倒になる」
 源治と忍の猛攻を受けるバルガガン。こちらも装甲が引き裂かれ、状況は切迫している。
「ここいらで手打ちにしないか。このままやり合っても得る物無さそうだぞ、お互い」
「人間風情が偉そうに‥‥だがそれも真実。私達も油断が過ぎたようだ」
「ああ。まさかこんなに腕利きが揃うと思ってなかったしな。悪いがそうさせてもらおう」
 ロケット弾を撃ち込むバルガガン。それが大量の煙を撒き散らし、二人は森の中へ姿を消すのであった。

「驚いたなあ。君達強いんだね」
 感心した様子のルリララ。傭兵達も負傷はしていたが、行動に差し障る程ではない。
「まあ、何だかんだで色々な強敵を倒してきたからなー」
 仲間の怪我を治療する井草。えっへんと胸を張る。
「かなり強かったと思うけどな、あいつらも」
 腕組み頷く悠。とはいえ、大分余力を残しているのであまり説得力はない。
「そういえばルリララ君‥‥戦っていましたか?」
「ボクは遺跡守るのでいっぱいいっぱいだったよ」
 ラナの質問にえっへんと答えるルリララであった。
「でもショックだよ。ばっちゃんの言う通りだった。ボク一人じゃあの二人を追い返せなかったと思う。皆よりボクの方がずっと弱い‥‥」
「そんな落ち込むなよ。聖域を守ってたから戦えなかっただけだろー?」
 ルリララをてしてしする井草。少女は立ち上がり涙を拭く。
「ありがと、イグサ。この借りは必ず返すよ。森の者は恩人を忘れないんだ」
 そして胸から提げていた木彫りのネックレスを差し出す。
「この森の中で困ったらボクを呼んで。いつでも助けに行くよ」
 どうやらそれは笛になっているようだった。井草は一度吹いてみた後、カシェルに手渡す。
「とりあえずカシェルに渡しとくわ」
「まあ、そうだろうね‥‥」
「じゃあボクはもう行くよ。あと、ここは聖域だから入っちゃだめだからね!」
 狼に飛び乗り走り去るルリララ。ひまりは暢気に手を振る。
「ルリララさん、またね〜」
「‥‥さて、何だか妙な事になってきたッスね」
 頭を掻く源治。どうやらルリララは強化人間のようだが、鉄の者と対立しているのは間違いないように見える。
「あの二体のバグア、並以上の実力なのは間違いないわ」
「それがどうして揃ってこんな所をうろついているのかって事だよな」
 考え込む忍と悠。ラナはカメラを確認している。
「二体の姿も記録出来ました。詳しい事は戻ってから‥‥ですね」

 こうして傭兵達は聖域から引き返していく。
 謎が深まったような、深まらなかったような。とりあえず異文化交流を進め、この日の調査は終了するのであった。