タイトル:【OMG】ムーン・ダイブマスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/20 07:00

●オープニング本文


 月面基地――通称『崑崙』。
 度重なるバグアの妨害を受けながらも、軍と傭兵の活躍により着実に建設を進め‥‥そして。とうとう、駐在人員の派遣を迎える日がやってきた。
 ‥‥しかし。

「‥‥! 月方面、敵部隊が観測されました! その数多数‥‥母艦も出撃していると思われます!」
 オペレーターが、悲鳴に近い声を上げる。
「‥‥面倒臭ぇ、やっぱこうなんのかよ!
 ったく連中、見下してた相手が這い上がってくるのが、よっぽど気に食わないと見える」
 エクスカリバー級巡洋艦『オニキリマル』、艦長の土橋桜士郎(gz0474)は、いつも通り唯面倒臭そうに言った。
 そう、いつも通り。ここまできたら、やるべきことを為すのみだ。何が相手でも。
「まあ、何とかなんだろ。月面降下作戦は予定通り決行するぞ。
 ――邪魔な連中は蹴散らすだけだ」

 一方、バグア母艦。
「――ふ。再び強者と見えるか‥‥!」
 敵指揮官ダークミストは、人類の月面基地の完成を許したというこの事態に、むしろ笑みを浮かべていた。
「さあ、人類よ。本気で死合うぞ! 全軍前進! 月面基地を叩き潰す!」
 この状況ならば‥‥さぞかし、必死で抵抗してくるだろうな?
 ダークミストは嗤う。これまでの戦いはあくまで力試し。今こそ全力でぶつかりあう舞台は整ったのだ、と。

 人類は宇宙へさらなる一歩を刻むのか。宇宙の覇権をかけた闘いが、始まる。

「リェン、分ってるな」
「あーはいはい、分ってるわよ。要するに、月への降下ルートを確保すればいいんでしょ?」
 リギルケンタウルス級宇宙輸送艦『ベネトナシュ』。そのKVハンガーにて機体に乗り込むシン・クドウとリェン・ファフォの姿があった。
 彼らの役割は一つ。月へ降下する部隊の為に道を切り開き、彼らを無事に月へと降ろす事だ。
『えー、言わなくても分っているとは思いますが、ベネトナシュは自衛能力を持ちません。なので、クドウ君とファフォ君はそこも気をつけて下さいね』
 形ばかりの艦長であるコジマの声にリェンは目を丸くする。それからジト目で視線を逸らし、
「‥‥艦長が喋ってるの、初めて聞いたかも」
『我々も頑張ってはみますが、うん‥‥基本的には、我々だけではどうにもならないんですよ。皆さんも帰る場所がなくなっては困るでしょうし、一つお願いしますね』
『以上、コジマ少佐からのお言葉でした。艦長の言う通り、ベネトナシュは戦闘に参加出来ないわ。今回はかなりの乱戦になる事が予想される為、ただ下がっていれば良いというわけでもないの。周囲の艦隊と連携はするけど、気に留めておくのは忘れないで』
 引継ぎで聞こえるウルスラ・ホワイトの凛とした声。リェンは唇を尖らせ挙手する。
「ねぇウルスラ、いい加減ベネトナシュにも他のパイロット入れたら?」
『あら、必要ないわよ。だって今回も貴女達には傭兵という心強い仲間がついているもの。彼らが一緒なら大丈夫よ‥‥そうでしょう?』
 微笑と共に向けられた無茶ぶりにシンは目を瞑る。リェンはああいっているが、シンの方は別段どうでもよさそうな具合だ。
『まずは私達が担当する降下予定ポイントまで道を切り開くわ。その後、ポイントを死守。敵の迎撃は激しいだろうけど、何としても輸送艦を守って』
「防衛かぁ‥‥何かを守りながらの戦いって向いてないのよね、あたし」
「グズグズしていないで出るぞ。作戦開始だ」
 開かれたハッチから戦場へ出撃するシンの天。遅れ、リェンのハヤテが発進して行く。
 目的地への道では既に戦闘が開始されている。飛び交う光と声、激戦の光景へと突っ込む。
『キメラやヘルメットワームは兎も角、巡洋艦タイプの火力は侮らないで。まともに食らえばアウトだと思っていいわ』
「リェン、巡洋艦タイプへの対処法」
「えーと‥‥巡洋艦タイプは頑丈でしかも再生能力が高いから、G兵器をぶち込んで倒せばいいんでしょ?」
『偉いわリェン、良くお勉強してるじゃない』
「‥‥そこはかとなくバカにされている気がする‥‥」
 微妙な表情を浮かべるリェン。ウルスラは笑みを浮かべ、通信を続ける。
『要するに艦隊戦になるわ。だけどエクスカリバー級もやはり自衛能力は高いと言えないの。巡洋艦を落とすつもりなら、十分火力を削ってからにする事ね』
「はいはいわーかーりーまーしーたー! 言われなくてもちゃんとやるってーの!」
 加速するリェン機。その背中を眺め、シンは溜息を一つ。
「‥‥大きな戦場に立つと思い出すな」
 今と昔は違う。宇宙においても人類はバグアに拮抗出来る程の力を手に入れた。だから‥‥。
「行くぞ、相棒。俺達はまだ生きてるって事を、あいつらに教えてやろうぜ」

「たった数ヶ月でここまで来る‥‥成長する力、それが人類の力なのかもしれないな」
 バグアの巡洋艦の一つ、大型のヘルメットワームへ一人のパイロットが乗り込む。
 人類は宇宙へ上がってからわずかな時間でここまで勢力を拡大してきた。環境に適応し、劣勢を対策し、状況を逆転させる‥‥それが人類という種族が持つ才能なのだとすれば。
「全く、下等種族の分際で‥‥楽しませてくれる」
 ヘルメットを被り、笑みを浮かべる。バグアと人類、その優劣は決して埋まらない。だがただ優劣だけでは語れない何かがある。
「お待ち下さいヨルク様! そのヘルメットワームはまだ改造途中で‥‥!」
「飛べば構わん。心配せずとも本気でやり合うつもりはない。適度に戯れたならここに戻ってくるつもりだ」
 整備を担当していた異形のバグアが走ってくるが、男はひらひらと手を振るだけで降りる気配が全く無い。
「お前達は船を下がらせておけ。帰る場所がなくなっては困るからな」
「ヨ、ヨルク様‥‥あー! まだハッチ空けないで下さい、色々片付いてないから‥‥あああーっ!」
 悲鳴を無視して出撃するヘルメットワーム。複雑な機動で蛇行運転を繰り返し、戦場へと近づいていく。
「‥‥何やら機体がガタついている気がするが‥‥まぁ、持つだろう」
 流星のように闇を翔ける影。それが戦場に到達するのは、もう暫し後の話である。

●参加者一覧

煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
海原環(gc3865
25歳・♀・JG
久川 千夏(gc7374
18歳・♀・HD
月野 現(gc7488
19歳・♂・GD
大神 哉目(gc7784
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

「あれがバグアの艦船‥‥なんて禍々しい‥‥」
 月の大地を背景睨み合うUPCとバグアの艦隊。互いに搭載戦力を次々に発進させ、宙域に戦線を構築して行く。
「凄い数の敵ね。一体どこから沸いてきたのやら」
 赤宮 リア(ga9958)の言葉に続き呟く久川 千夏(gc7374)。傭兵達の眼前より黒き異形の艦隊が迫っている。
「しかし、こっちもこれだけ戦力を用意してたんだ。これも想定内って事だろ? 何かこう、面倒事が多い割には実入りがイマイチだよなぁ、この仕事」
 溜息交じりの時枝・悠(ga8810)。最初からUPCもそのつもりだったなら、追加報酬は期待出来ないだろう。あの連中の相手も依頼に込みなのだから。
「バグアの巡洋艦か。初の宇宙戦闘‥‥どこまでやれるものか」
 ぽつりと呟く月野 現(gc7488)。リアはそこへ笑顔で声をかける。
「大丈夫、こちらにも心強い味方が居ます! 力を合わせて一隻でも多く沈めてしまいましょう!」
 そう、彼らにもまた友軍がいる。同行するエクスカリバー級が四隻、そして輸送艦であるベネトナシュ。この作戦の肝はUPCの艦隊といかに連携するかに掛かっていると言えるだろう。
『ベネトナシュの傭兵、聞こえるか。我々もお前達と共に敵艦護衛戦力に攻撃を仕掛ける。くれぐれもエクスカリバーの主砲に飛び込んでくれるなよ!』
「ああ、承知している。要請の快諾に感謝する」
 並走するリヴァティーからの通信に応じる煉条トヲイ(ga0236)。日野 竜彦(gb6596)も友軍へと声をかけた。
「戦って、目的を達成して、生きて帰る‥‥傭兵も正規軍もやる事は同じですよ。必ず作戦を成功させましょう」
「よーし! それじゃあ今日もゼロ災害で行きましょう!」
 握り拳で声を上げる海原環(gc3865)。大神 哉目(gc7784)は操縦桿を強く握り締め、前を見据える。
「私に出来る事‥‥私は、どうして‥‥」
 きつく目を瞑り、頭を振った。気を抜くと余計な考えに取り付かれそうになる。
「今は何も考えず‥‥戦って、壊して、全部忘れていたい‥‥だから」
 迷いを捨て、再び戦場へと飛び出すしかない。それが過去を先送りにした逃避に過ぎないとしても。
「全部喰らい尽くすぞ――ジェヴォーダン!」

 互いの戦力が動き出した。大量に放出されたキメラとHWの混成部隊が迫る。これに対しUPC軍も攻撃を開始、傭兵達はその先陣を切っていく。
「敵艦へ突撃し、火砲を無力化させます! 可能な方は援護を!」
「さっさと片付けて帰るぞ。これ以上面倒な事になるのは御免だ」
 戦闘機形態でブーストし、敵陣へ突っ込む二機のアンジェリカ。互いに連携し、障害となる敵をレーザーで撃ち抜きながら突破していく。
「俺達も続くぞ。エクスカリバーはG光線の発射準備を頼む。こちらで安全を確保し次第、砲撃に向かってくれ!
 アサルトライフルでキメラを処理しつつ前進するトヲイ。UPC軍も船を前進させつつリヴァティー隊で攻撃を開始する。
「全体的に攻めに比重を置いている分、守りの負担も増える。今回は前回のようには行かないぞ」
「これは気合入れて守らないと。気付いたら帰る母艦がなくなってましたなんて、洒落にならないしね」
「カバーする範囲が広いんだから、多少前に出ないと‥‥って事で、お先に!」
 こちらは後衛。シンと環の会話の途中、リェンは飛び出していってしまう。
「ファフォさんは相変わらずのようだけど、大丈夫なのかしら。クドウさんはちゃんとお守りしてあげているの?」
「あんな奴の事は知らん‥‥というか、俺は別に世話係じゃないんだ」
 千夏の声に深々と溜息を吐くシン。ともあれ乱戦が予想される以上、護衛も易々とは行かないだろう。
「まぁ、リェンは好きにやらせておいた方が強い。俺達で穴埋めをするのが無難だろう」
「それって前回と同じ様な気がするんだけどなー」
 環の言葉に眉間に皺を寄せ、人型形態で迎撃を開始するシン。環もそれに続き前に出る。
「さてと。数の多い戦場でこそ電子戦機の能力が生かせるってものね」
 人型に変形し両腕を広げるピュアホワイト。三つの瞳を輝かせ、二十キロ半径に観測の網を張り巡らせる。
「せっかくの月面基地をバグアに落とされたら堪らないわ。皆さんには頑張って貰わないとね」
 ロータス・クイーンの効果は全ての敵に及ぶ。その支援を受け、傭兵達は次々に敵を撃破していく。
「敵の動きが見える‥‥これなら!」
 片手に盾を構え、バルカンで敵を攻撃する現。一機ずつ撃墜していくのではなく、手当たり次第に手をつけ意識を引くのが狙いだ。
「火力不足でも、戦いようは‥‥ある!」
 キメラが放つ光線を盾で防ぎながら下がるコロナ。そこへ入れ違いにトヲイが飛び込み、G放電装置でキメラを薙ぎ払い、HWをリニア砲で貫いた。
「いい援護だ。一気に片付けるぞ、現!」
 一方、現以上に敵の集団に飛び込んでいるのは竜彦だ。八基のエミオンスラスターで四方八方からの攻撃を回避し、敵をひきつけている。
「人型でも立体的に機動けるのはなかなかご機嫌だな!」
 アサルトライフルで適度に反撃しつつ翔ける竜彦。そこへ哉目のタマモが突っ込んでいく。
「ご馳走だぞジェヴォーダン、残さず食べな!」
 左右の手に構えた実弾とレーザーのガトリングを乱射する哉目。次々にキメラが打ち抜かれ散っていくと、Uターンしてきた竜彦が太刀を抜き、HWを両断する。
 黒い軌跡に切り裂かれ爆発するHW。それでも敵は一向に減っている気がしない。
「まったく‥‥! こいつら蟻の群れときたら!」
「私の前に出てくるなら‥‥食い尽くすだけだ!」
 一方、敵艦へと向かう悠とリア。二機の後方、リヴァティー部隊が放ったミサイルが二人を邪魔する敵を燃やしていく。
「露払い感謝します! 後は私達で!」
 開けた道の向こう、異形の黒船が待ち構える。強力な主砲を避けて回り込むが、側面に装備された無数のフェザー砲が光を放ち、ミサイルが二機を追ってくる。
「おいおい、豪勢だな」
「迎撃が激しくても、船に取り付いてしまえば――!」
 旋回しながら大量のプラズマミサイルを発射するリア。バグア艦はこれをフェザー砲で迎撃、闇の中に無数の光が花開く。
 悠は光を突き抜け敵艦へ真っ直ぐに落ちていく。迎撃をかわしながらレーザー砲を撃ちこみ、更に擦れ違い様ウィングエッジで一撃加えた。
「今なら!」
 戦闘機形態で突っ込み、途中人型へ変形。更に回転し、機体を真っ直ぐ船目掛けて落とすリア。両足を突き刺すような勢いで甲板に降り立ちレーザーライフルを構える。
 ライフルを連射し次々に砲台を破壊するリア。自分達の巡洋艦目掛け攻撃出来ずうろうろするHWを悠が次々に撃破して行く。
「どんなに硬い装甲だろうと‥‥焼き切り裂くのみですっ!!」
 主砲へ突き刺した雪村をそのまま真上まで振り上げる赤い光の剣が立ち上ると同時、バグア艦で爆発が起こる。
「今ですっ! Gブラスター砲をっ!!」
 跳躍し、戦闘機に変形。悠と共に離脱するリアと入れ違い、リヴァティーと共に突っ込んできた一隻のエクスカリバーが主砲を放つ。
 強烈な光がバグア艦の側面に直撃し、大穴が開くと同時に轟沈を開始する。二人はその様子を確かめ、補給へと戻った。
『素晴らしい腕ね。無理はしないで一度補給に戻って。この調子ならいけるわ』
 通信と共に補給準備をするベネトナシュへ戻るリアと悠。敵艦が一隻沈んだ事もあり、他のエクスカリバー隊もより前に出始める。
「右も左も敵で嫌になっちゃうよ!」
 飛び回りながらミサイルを乱射する環。シンとリェンも飛び回り敵へ対応しているが、防衛側は実に大忙しで手が回りきらない。
「私の事は気にしないで。自分の身くらい自分で守れるから」
「そうしてくれると助かる。海原、リェン、もっと下がれ! これ以上敵を通すな!」
 千夏の声に頷くシン。ベネトナシュの守りも重要だが、後方の輸送艦隊を攻撃されては話にならない。
「ちょっと全体的に前に出すぎなんじゃないの!? あたし達だけじゃ抑え切れないわよ!」
「ミサイル撃ち尽くしちゃったけど、補給に戻ってる暇がないねー!」
 アサルトライフルを連射しながら苦笑を浮かべる環。そこへエクスカリバーの放ったミサイルが飛来、敵を薙ぎ払う。
『前線はあんたらの仲間のお陰で大丈夫そうだ。俺達は防衛に専念する!』
 リヴァティー隊が近づいていた敵を撃ち落す。環は一息入れ後退。
「シン、リェン、そろそろ補給しておいたほうがいいよ! 今がチャンス!」
「先に行ってなさい! こっちは一人ずつでいいわ!」

 飛び交う敵味方の攻撃の中、環はベネトナシュへ引き返して行く。一方前線ではバグア艦への攻撃が続いていた。
 既に一隻が沈んだ為、残り三隻。一隻目が瞬く間に落とされた事を危惧し、陣形を作り迎撃に乗り出している。
「迎撃が激しすぎる! これじゃまともに接近出来ない!」
「このままでは降下予定時間をオーバーしてしまう‥‥どうする?」
 叫ぶ竜彦に続き現が呟く。状況はむしろ優勢だが、攻めきれずに居る。そこへベネトナシュより通信が入った。
『時間が無いわ、もう輸送艦を降下させましょう。幸い前線はかなり押してるから、貴方達がそこで抑えてくれれば問題は無い筈よ』
「止むを得ないか。俺達は引き続き敵艦を攻める。そっちは‥‥」
「お話中ごめんなさい。新しい敵が接近中です。動きからして、明らかにカスタムタイプね」
 割り込む千夏の声に敵を睨むトヲイ。予想外の方向から単機で飛来するHWは防衛ラインを抜けて輸送艦へ迫る。
『拙い‥‥もう降下は開始してる! 今更離脱出来ない!』
 反転し敵の迎撃に向かうトヲイ。HWはその動きに合わせ、高速で接近する。
「船が落ちたのか。犬に手を噛まれるとは、無様な」
 戦闘機形態でアサルトライフルを連射しながら追跡するトヲイ。HWは攻撃をかわし、更に加速する。
「所詮は下等種族‥‥どこまでついて来られるか」
 増設したブースターから光を放ち舞うHW。異常な機動と速度にトヲイは眉間に皺を寄せ追従する。
「――良いだろう。お望み通り遊んでやる‥‥!」
 闇の中を飛び回る二機。トヲイはブーストし機体の性能をフルに引き出し追撃するが、HWを捉えきれない。
 右へ左へ舞い踊る二つの光。その遥か下方、ベネトナシュのハッチが開く。
「新手か。どうする赤宮」
「あの動き‥‥放置は出来ませんね。煉条さんの機体はもう錬力が持たない筈です。代わりに私が行きます」
「了解。月野も代わってやるから下がれ」
 HWへ向かうリア。悠はブーストで一気に加速、前線へ舞い戻る。
 一方前線では現が盾を構え何とか踏ん張っていた。敵の数が多すぎる上に敵艦三隻の攻撃もあり、良く耐えているが最早限界が近い。
「敵を引きつけ過ぎて無理をしてもいけないな。後は頼む‥‥!」
 変形し飛び去る現。竜彦は人型に変形、攻撃を回避しつつHWをアサルトライフルで撃ち落す。
「ミサイルは弾切れか‥‥!」
 両腕にマウントした剣でキメラを切り裂く哉目。こちらも消耗は激しく、長くは持たないだろう。しかし補給に戻りすぎれば戦線が手薄になってしまう。
「煉条さん、後は私が!」
「‥‥すまない。直ぐに戻る!」
 擦れ違う二機。リアはミサイルを発射しつつHWを追跡するが、向こうは次々にミサイルをかわしてしまう。
「速い‥‥でも、いつまで逃げ切れますか!」
 大量のミサイルを放出するリア。HWはこれを回避、何箇所かにミサイルを纏めスピンしながらフェザー砲を放ち薙ぎ払う。
「あの機体の動き‥‥前にどこかで‥‥」
「シン、余所見してないで撃って撃って! 輸送艦を守らないと!」
「同感です。ここが一番デリケートな部分なのだから‥‥」
 輸送艦は既に半分が降下済。ベネトナシュはその近くで援護に周り、傭兵達は近づく敵を迎撃している。
『幸い此方に手出しはしてこないみたいね。このまま船を下ろしきれば勝ちよ』
 頭を振り戦闘に集中するシン。ふと、リアは目の前のHWの様子がおかしい事に気付く。
「‥‥何でしょう? 何だか急に遅くなったような」
 良く狙い、レーザーライフルを放つ。これが見事に直撃、あっさりとHWは逃げ出していく。
「あららっ?」
 戦域から離脱するHW。パイロットは制御でてんてこ舞いになっていた。
「武装がフェザー砲しかない上に、急にブースターが停止するとはな‥‥」
 飛び去る敵を追いかけていられる程の余裕はなく、リアは困惑しながら前線へ戻るのであった。
 補給に戻っていたトヲイ、現が前線へ戻ってくる。輸送艦も月へ下ろし終わり、ベネトナシュを含めた防衛戦力も前に出てきた。
「良く持ち堪えてくれた。ベネトナシュへ戻ってくれ」
 深く息を吐いて頷く竜彦。続き哉目も補給へ。二機を追ってくる敵は現が引き受ける。
「味方の為に耐え切ってみせる。俺を簡単に落とせると思うな」
「よし、一気にケリをつけるぞ――!」
 リアと悠がペアで端の敵艦へ向かい、トヲイと現も反対側の敵艦へ向かう。
 現はスキルを発動し、盾を構え真っ直ぐに敵艦へ向かいバルカンで攻撃。トヲイはその間に回り込み人型に変形。後方から前へ抜けながら敵の砲台を錬剣で破壊していく。
 リヴァティー隊と護衛に回っていた傭兵も合流し攻撃に参加した為、周辺の防衛戦力も粗方片付きつつあった。そこへ竜彦と哉目がベネトナシュより発進する。
「一気に全快だ。これなら出し惜しみは無しで‥‥!」
 二機は揃ってミサイルを放つ。残る中央の船も集中攻撃を受け、殆ど機能停止に陥っている。そこへエクスカリバー級がぎりぎりまで接近、次々に主砲を叩き込んだ。
「周辺に敵影なし‥‥どうやら終わったみたいね」
 千夏の声が作戦完了を告げる。激しい戦闘に傭兵達はすっかり疲れ切っていたが、輸送艦は無事に月へと降りたようだ。
『お疲れ様。後は月面の部隊に任せて私達は撤退しましょう』
「だってさ。行くよ環、何やってんの?」
「いやー、月のウサギを探してるんだけど、見つからないなぁ」
「あんた‥‥まさかもう飲んでんの‥‥?」
 冷や汗を流すリェン。千夏は溜息を一つ、それから笑みを浮かべるのであった。

 こうして傭兵達は多少時間をかけたものの安全に輸送艦隊を月へ降ろす事に成功。ベネトナシュと共に帰還するのであった。
「あのHW‥‥まさかな」
 闇の向こうを振り返るシン。仲間達に続き、彼もまた帰路へ着く。そして知るのである。
 これは月を巡る闘いの緒戦に過ぎず、本当の戦いはこれから始まるのだと‥‥。