タイトル:【BS】ラブハート☆撃編マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/24 06:45

●オープニング本文


●ラブ封筒到着☆
 LH内、某喫茶店内部。
 テーブルの上に置かれた2通の封筒。表にはこの手紙を持ち寄った者の名が書かれ、裏には差出人の名前代わりに、ハート形のシールが貼られていた。
「このハートマーク‥‥まさか、な‥‥」
「まさか‥‥ですよ、ね‥‥」
 そう声を零すのは、キルト・ガング(gz0430)とカシェル・ミュラー(gz0375)だ。
 この封筒に貼られたシール。実は、目にするのは2度目だったりする。
 1度目は遊園地が襲撃された時、そこの入り口でキメラに渡された封筒に貼られていた。
 そして2度目は今回、各々の自宅のポストに入っていた。
「‥‥どうする?」
「‥‥どうしましょう」
 差出人の想像はつく。想像がつくからこそ、行かなくて良いのなら行きたくない。
 だが封筒の末尾には、ちゃっかり注意書きが添えられていた。
 ――イケメンボーイ(1名はイケメンズ♪)が来ない場合、無人島に集まったカップルは皆殺しよん♪
 文面は非常に怪しい。
 それでも差出人が想像通りの者である場合、これはただの脅しではなく、警告文と成り得るだろう。
「行くしかないか‥‥つーか、これってカップルで行けって事なのか?」
「‥‥その事ですけど、こんなのも書いてありますよ‥‥えっと『イケメンボーイ(1以下略)は一緒に来ればカップル判定で入れるわよん』‥‥だそうです」
「あ?」
「‥‥つまり、僕たちが一緒に行けば――」
「!? い、嫌だぞ! この組み合わせでカップルとかマジで止めろ!! つーか、女呼べ、女ぁッ!!!」
 見苦しく叫ぶキルトを他所に、顔色青く手紙を見直すカシェル。
 どちらにせよ、傭兵たちが到着する前に情報収集する必要がある。無人島と言う事は、人の手が入っていないと言う事。
 何処にどのような仕掛けがあり、危険な生き物がいるとも限らない。
「‥‥諦めましょう。こういうのは覚悟を決めていくのが一番です」
「っ‥‥」
 あまりに冷静な物言いに、キルトは思わず口を噤んだ。
 これを良しと取ってカシェルが頷く。
「そうと決まれば本部に報告してちゃっちゃと出発しましょう。あ!」
「な、何だよ‥‥」
「どっちが女性になります?」
「!? ひ、必要ねえだろっ!!!」
 そう叫んだキルトに、店員の周囲が飛んだのは、言うまでもないだろう。

●タダより安いモノは‥‥
 商店街で行われた福引きの景品として出された『カップル限定企画☆無人島へ一泊ご招待!』という景品。
 バレンタイン特別企画と言う事で突如提案され、特賞としてこの景品が置かれた。
 その招待数は、2名1組のカップルが計10組。総勢20名が無人島へご招待となった。
「この無人島には、た〜くさんのカメラが仕込んであるの。勿論、甘い罠も、から〜い罠もた・く・さ・ん♪」
 トロピカルジュースを片手にそう零すのは、無人島各所の映像を眺めるピンク頭のマッチョ――ディレクターだ。
 彼は奇妙に腰をくねらせて振り返ると、そこへ控える自分に良く似た男にハンディーカメラを差し出した。
「カップルたちはココで真実の愛を確かめるの。例えば、こんな風に‥‥」
 言って彼が示したモニターには、全身タイツを身に纏う人型キメラに襲われるカップル――否、2人組の男の姿だ。
 彼等は襲来するキメラに立ち向かうと、難なくそれを撃破してゆく。但し、表情は蒼白と言うか、何か納得いかなげだ。
「くそっ、何なんだ。このジャングルみたいな無人島はよぉ!」
「みたいではなく、ジャングルですよ。ひとまずここで別れましょう。キルトさんはそっち行って下さい。僕はこっちに行きますから」
「そっちって‥‥ああ、こっちか」
 そう言うと、キルトは目の前にある看板を見て息を吐いた。
 看板には『そっち』『こっち』の文字があり、『そっち』には猿のマーク。『こっち』にはハートマークが書かれている。
「‥‥何か、悪いな。まあ、何かあれば連絡してくれ。傭兵連中にも状況報告しなきゃだしな」
 ハートマークと言えば、アレ。
 どうやらカシェルは「アレ」を引き受けてくれるらしい。その事に礼を述べつつ、キルトは猿のマークに足を向けた。
 その姿に、ふとカシェルが声を掛ける。
「キルトさん。そのマークですけど、目がハートになってましたので、気を付けて下さいね」
「え゛‥‥」

●慣れとは恐ろしい
「ウェールカーム! ようこそ、あたしの城へ!」
 ジャングルに鳴り響く妙に甲高い声に足を止めるカシェル。背後から聞こえたのが、振り返ったら負けな気がする。
「ていうか島でしょ‥‥」
 仕方なく振り返るとやはりというかなんと言うか、ディレクターが立って居る。ウィンクと共に投げキッスを射出するその顔をカシェルは極めて冷静な様子で眺めていた。
「ちゃぁんと招待状は届いたみたいねぇ。あーた達ならちゃーんと来てくれるって信じてたわん♪」
「どういうつもりですか? 招待状なんて送らなければ、邪魔も入らなかったでしょうに」
 招待状を片手で掲げながら問うカシェル。そもどうやって送ってきたのかとか気になるが、まあ細かい事は気にしないでほしい。
「わかってないわねぇ〜? 邪魔が入るのがいいんじゃないの〜」
 くねくねとポーズを取る男。筋肉を隆起させつつ微笑む。
「簡単に叶う夢なんて夢じゃないわ。理想は常に高く、障害に阻まれているべき物なのよ♪」
「‥‥まあいいでしょう。いい加減貴方の悪ふざけにも飽き飽きして来ました。ここで終わらせて貰いますよ」
 剣を突きつけるカシェル。ディレクターは唇に指を当て微笑む。
「いいわよん、今回はあたしがちゃんと相手したげるわ。ただし、あたしを捕まえる事が出来たらね♪」
 その場でターンし、クルクルしながらジャングルの中に入っていくディレクター。カシェルは唖然としすぎて固まっている。
「あはは〜うふふ〜♪ さあ、あたしはこっちよー! 捕まえてごらんなさーい!」
 猛然と走り去るディレクター。カシェルはその場に屈んで暫く頭を抱えていた。
 あれはあれでちゃんとバグアで、油断すれば返り討ちにされそうな敵でもある。更に何を考えているのかは不明だが、突拍子もなく仕掛けて来るふざけた馬鹿騒ぎは多くの人を巻き込む危険性も孕んでいる。要するに、誰かが相手をしてやらなきゃいけないのである。
「誰か‥‥助けて‥‥」
 弱音を吐いて立ち上がる。ふとジャングルを歩いていると、あからさまなトラップを発見した。どうやら踏まれる事により作動し、対象をロープで吊り上げる仕組みのようだ。
「こんな幼稚なトラップ、誰も引っ掛からないでしょ‥‥はぁ」
 スルーして歩くカシェル。とりあえず仲間を呼ぼうと無線機を手にした時、丁度キルトから連絡が入った。
「キルトさんからだ。どうしたんだろう?」
 こうしてディレクターを追撃し撃破する、最後の馬鹿騒ぎが幕を開けるのであった‥‥。

●参加者一覧

上杉・浩一(ga8766
40歳・♂・AA
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
御法川 沙雪華(gb5322
19歳・♀・JG
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA
雨宮 ひまり(gc5274
15歳・♀・JG

●リプレイ本文

●変態の島
「変態め、寒いのにもう出たか‥‥」
 肩を竦める赤崎羽矢子(gb2140)。カシェルと合流した傭兵達は変態の消えたジャングルを遠い目で眺めている。
「‥‥バグアには面白い人がおるんだな」
「アレと毎回付き合っているカシェルには同情を禁じ得ないが、意外と余裕がありそうだな?」
 上杉・浩一(ga8766)の呟きに続きカシェルを見やるヘイル(gc4085)。少年は光の宿らない目で微笑んでいる。
「まあ、慣れっていうか‥‥」
「皆まで言う必要はありませんよ‥‥全てはキルトさんの為、ですね?」
 目を瞑ったままカシェルの肩を叩く御法川 沙雪華(gb5322)。そっと目を開き、空を見上げる。
「キルトさんは心に傷をお持ちでしたから‥‥それをカシェルさんが癒して差し上げたのですね。美しいお話です‥‥」
「はいっ?」
「お二人の為に、私も微力ながらお力添えさせて頂きます‥‥」
 笑顔で小さく握り拳を作る沙雪華。カシェルは頭を抱えている。
「この感じ‥‥余計にややこしい事になってるこの感じ‥‥」
「ういーすカシェル。なんだ、てっきり女装してくると思ったのになー」
 そこへやって来る月読井草(gc4439)と雨宮 ひまり(gc5274)。カシェルは井草の口を塞いだ。
「まあ‥‥女装ですか‥‥?」
 口元を隠しつつ驚く沙雪華。冷や汗を流しつつカシェルはひまりに目を向ける。
「で、君はその荷物は何?」
「これ? 無人島って何を準備すれば良いか分からないから時間掛かっちゃった」
「毎度の事だけど、何しに来たのか分ってるかい?」
「カップル限定企画☆無人島へ一泊ご招待?」
 地に膝を着くカシェル。ヘイルはその背中に冷や汗を流す。
「ほんじゃま、あたしらは先回りしてるから。追跡はカシェル達に任せるよ」
「えー!? ずるいですよ赤崎さん!」
「別に奴とキャッキャウフフしたくないから別行動するわけじゃないんだからね!」
「本音ダダ漏れですけど!?」
 そんな訳で、変態追跡班と変態先回り班の二つに分かれ傭兵達の追いかけっこは幕を開けた。

「やっと来たわね。さぁ、あたしを捕まえて御覧なさーい!」
 律儀に待っていたディレクターが腰をくねらせ走り出す。それでもかなり足は速い。
「ディレクター、映画撮影は飽きたのかー?」
「ご心配なく、あたしの美しい分身達がやってるはずだから♪」
 井草の声に投げキッスと共に返すディレクター。ヘイルはそこに容赦なく発砲する。
「アウチッ!? ちょっと、後ろから撃つなんて卑怯じゃない!」
「変態相手に情けなどかけない!」
 トラップをかわしつつ走る傭兵達。ふと、ひまりはカシェルの上着の裾を引く。
「カー君、カー君‥‥」
「どうしたの?」
「私を抱いて!」
 木の根に足をかけ派手に転倒するカシェル。一瞬消えたが、猛然と走って追いついてくる。
「急に君は何を言ってるのかな君は」
「カー君顔が泥だらけになってるよ」
 背後からの攻撃が収まり振り返るディレクター。するとそこには異様な光景があった。カシェルはひまりを肩車し、ひまりはその状態で弓を構えている。
「まさに二身一体攻撃! あんまり揺らさないでね」
「無茶言わないでよ‥‥」
 ディレクター目掛け矢を放つひまり。鋭く放たれた一撃はディレクターのケツに突き刺さった。
「アムゥーッ!?」
「おぉ、お見事だな」
 感嘆の声を上げるヘイル。ひまりはカシェルの頭に捕まったままぼんやりしている。
「は〜、楽チン‥‥」
「君やりたい放題だな――」
 遠い目で呟くカシェル。そうして傭兵達は暫くディレクターを追い続け‥‥。
「そこまでです‥‥」
 走るディレクターに飛来する矢。ディレクターはそれを二本の指で掴み停止する。
「いよっと‥‥また会ったね」
 木陰から飛び出してきた羽矢子。続け浩一と沙雪華が立ち塞がる。
「正面から‥‥ですって? どういう事かしら?」
「教えてあげるわ。あんた同じ所グルグル回ってるだけだから――先回りしたのよ!」
 指差し叫ぶ羽矢子。ディレクターはハンカチを取り出しそれを噛み締めた。
「その発想は無かったわ! キーッ!」
 冷や汗を流す浩一。ディレクターは妙なポーズを取りつつウィンクする。
「でもあーた達、あたしが仕掛けたスウィート☆トラップを良くここまでかわしたわね」
「ご説明申し上げましょう‥‥。無人島ですから、人の手が入っている場所は怪しいですし‥‥追うにしてもあなたの足跡を辿れば良い事です」
 沙雪華の言葉に愕然とするディレクター。ともあれ、傭兵達は補足に成功したのだ。まる。
「フフフ、なーんてね。追いかけっこはただの余興よ。向こうの撮影の邪魔にならない所に誘き出したかっただけよん」
 腕に力を込めるディレクター。そこから全身の筋肉が隆起していく。
「ここなら大暴れ出来るわね。さぁ、お邪魔虫は纏めて叩いて潰しちゃうわよー!」
「変態でもバグアはバグア、か」
 刃を構える浩一。ディレクターは雄叫びを上げ傭兵達へと襲い掛かった!

●筋肉乱舞
「やいやいディレクター! 今日こそはお前をサジタル面切断してやるよ!」
 剣を掲げどや顔で告げる井草。それから振り返りカシェルに駆け寄る。
「カシェルにひまり! 見て見て、闇剣サタンだよ! 禍々しいオーラでしょ? さるコレクターから買ったんだ〜!」
「月読さん、前向いてないと怪我しますよ」
「猫に小判なんじゃ‥‥」
 二人に一蹴され、井草は剣を抱えて木陰で膝を抱えた。
「ディレクターと言ったか。報告書を拝見したが映像に拘る姿勢にはいたく感服した次第。是非とも話を伺いたいのだが」
「あら? あーた中々見る目あるわねぇ♪」
 声をかけるヘイルと嬉しそうなディレクター。その様子を傭兵達は各々の反応で見守っている。
「流石に人質を取る手法には賛同できないが、映像に対するその情熱は素晴らしい。サインなど頂けないだろうか」
「申し出は嬉しいけど、あたしサインはしない主義なの。本当にいい映画を撮れたその時まではね」
 ウィンクし腰をくねらせる変態。そうして空を見上げる。
「映画は地球の文化の極みよ。永遠の一瞬、そして永久の美‥‥。素晴らしい映画に比べれば、バグアが積み重ねてきた知識なんて大した価値もないわ。あたしにとって映画を撮る事は本能‥‥内より湧き上がる欲求そのものなのよ」
「話が長い!!」
「アムゥ!?」
 背後からディレクターのケツを蹴り上げる羽矢子。変態はケツを抑えながら後退する。
「やってくれたわねぇ‥‥許さないわよーッ!」
「こちとらあんたと三度も会うのは御免なのよ‥‥じゃなくてこれ以上一般人を巻き込ませないよう、ここでケリをつけさせて貰うよ!」
「赤崎さん色々酷いですよ」
 カシェルの突っ込みを無視する羽矢子。ともあれ、戦闘開始である。
「では再開といこう。逃がす心算など元より無いがな――!」
 駆け出すヘイル。ひまりと沙雪華は矢を放つ。ディレクターはこれを身体に受けるが、怯まずポーズを取っている。
「まあ、たくましい‥‥」
「頭に刺さってるのに死なない‥‥」
 接近し槍を繰り出すヘイル。更に浩一が刀を繰り出し挟撃するが、ディレクターは腕を左右に突き出し回転。二人を弾き返す。
「筋肉、筋肉ゥーッ!」
「くばたれ変態ー!」
 剣を手に飛び掛る羽矢子。ディレクターが繰り出す怒涛のラッシュを回避し、素早く反撃を入れていく。
「しゃらくせぇ! あたしのこの手が真っ赤に燃えるゥー!」
 拳に光を収束させるディレクター。ヘイルはその瞬間ディレクターの顔に狙いをつけ引き金を引き捲くる。
「わざわざ付き合ってやる義理もないのでな!」
 流石に怯むディレクター。そこへ井草とカシェルが走る。
「行くぞカシェル、同時攻撃だー!」
 素早く接近し転がりながらディレクターを斬り付ける井草。カシェルは跳躍し、頭に思い切り剣を叩き付けた。
「アウチ! やってくれるわねぇ、大根役者!」
 反撃を盾で受けるカシェル。井草は飛び退きつつ超機械を使用、竜巻がディレクターを覆う。
「ふんっ!」
 両腕を振るい風を散らすディレクター。沙雪華は直ぐに矢を放つが、ディレクターは回転しながら空を舞う。
「こっちよー!」
 飛来する筋肉。繰り出される蹴りを浩一は受け止め沙雪華を守る。
「く‥‥っ」
 更に矢を放つ沙雪華。ディレクターはそれを拳で薙ぎ払う。続けひまりは背後から矢を連射、ディレクターの背中に次々に突き刺さった。
「なんで死なないんだあいつ‥‥」
 冷や汗を流しつつ走る羽矢子。背中を斬り付け、反撃を屈んで回避。更に連続で斬り付け最後に蹴りを放つ。
「まだまだよォオオ!」
 両腕を左右に突き出したまま回転、烈風を纏い突進するディレクター。カシェルは盾を構えそれをひきつける。
「うわー!?」
「あ、カー君がまた」
「あいつ毎回吹っ飛ばされてないかー?」
 木に激突するカシェルを冷静に見送るひまりと井草。
「上杉、ヘイル! さっさと終わらせるわよ!」
 声をかけ走る羽矢子。一瞬でディレクターの懐に潜り込み蹴りを放つ。
「色男のとこに飛んでけーっ!」
「はうっ!?」
 蹴り飛ばされ勢い良く吹っ飛ぶ筋肉。飛来するそれに複雑な表情を浮かべ、浩一は刃を振り上げる。
「おおぉっ!」
 振り上げた刃が光を纏いディレクターに叩き込まれる。ディレクターは大地に減り込み、周辺に亀裂が広がった。
「ここで仕留めるぞ、続いてくれ!」
 起き上がろうとするディレクターのに弓を構える沙雪華。狙いすました一撃は額に突き刺さった。
「おりゃー! まだまだ行くぞー!」
 超機械で風を巻き起こす井草。カシェルは剣を収め盾を手に走る。
「ひまりちゃん!」
 足を止め振り返るカシェル。その盾に乗ったひまりを空に弾き上げる。
「カー君、踏まれるの好きなのかな‥‥」
 空を舞いながら弓を構えるひまり。真上から降り注ぐ光の線は全てディレクターの頭頂部に突き刺さった。
「――くたばれ変態が!」
 紅く輝く紋章を握り駆けるヘイル。突きのラッシュでディレクターの筋肉を粉砕していく。
「まだ‥‥まだよ。まだ‥‥こんなもんじゃないわよー!」
 立ち上がり吼えるディレクター。体中から血を流し、それでも瞳に闘志は失わない。
「あたしの映画への情熱‥‥美への愛! この程度で挫けると思わない事ね!」
「いい加減往生しろ!」
 苦笑を浮かべ襲い掛かる羽矢子。傭兵達は一斉に猛攻を仕掛けるが、中々ディレクターは倒れなかった。
 最終的に流れが変わる事はなくディレクターは地に倒れたが、傭兵達もすっかり息が上がってしまうのであった。

●巨星墜つ
「フ、フフフ‥‥参ったわ、あたしの負けよ‥‥」
 大の字で倒れるディレクター。何故か晴れやかな様子で微笑んでいる。
「本当にたくましい方でしたね‥‥ディレクターさん」
 額の汗を拭いながら呟く沙雪華。ヘイルはハッと思い出したように手を叩きディレクターに歩み寄る。
「そうだ変態、ミドラーシュというバグアについて何か知らないか?」
「悪いけど、あたしは他のバグアについてはノータッチよん‥‥夢を追って、一人でやって来たから‥‥」
 目を瞑り微笑むディレクター。そうして息を吐く。
「そうね、一人だったわ。あたしにはマイクとカメラ‥‥あの子達しかいなかったのね。今更気付いても遅いんだけど‥‥」
 目を開き周囲を見渡す。そうして傭兵達の中から井草を手招きする。
「猫の子、ちょっと来なさい」
「なんだー?」
 ディレクターはどこからか8mmフィルムを取り出し、それを井草に手渡した。
「あーた、欲しがってたでしょ。あーた達が映ってる映画よ‥‥未完成だけど」
「ディレクター‥‥」
「さぁ、あたしの代わりにあたしを撮るのよ‥‥そしてこの無人島での撮影は‥‥物語は幕を閉じるの‥‥」
 カメラを受け取り撮影する井草。ディレクターは血を流しつつサムズアップする。
「ここで‥‥感動的なBGM‥‥カモン‥‥」
 そして息絶えた。井草はその瞬間をカメラに収め、ディレクターに駆け寄った。
「ディレクター‥‥ディレクターッ!!」
「何だこれ‥‥」
 叫ぶ井草の背中にカシェルは呟く。
「美しいお話です‥‥」
「そ、そうかなぁ?」
 沙雪華の言葉に首を捻るカシェル。何はともあれ、変態は無事に討伐されたのだ。
「ディレクターさん、何時も楽しそうにしていて良い人でしたね‥‥」
「お前の事は忘れない‥‥ぜ」
 ディレクターの手を取り涙を流す井草の背後に立ち、そっと肩を叩くひまり。そして笑顔で告げた。
「また何処かできっと会えるよ!」
「いや君達今倒したからね!? 本当にやりたい放題だな‥‥!」
 二人の背中に叫ぶカシェル。ひまりは振り返りのそのそとカシェルの背後に回る。
「まぁまぁ‥‥。疲れてるみたいだし、肩でも揉んであげようか?」
「ありがとう‥‥でもそう思うなら最初から僕を疲れさせないようにすればいいんじゃないかな‥‥」
「カシェル、そんなにツッコんでて疲れないの?」
 肩を竦めながら笑う羽矢子。カシェルが凄い顔で追ってきたので早足で逃げた。
「まぁ、これで面白いバグアに好かれたカシェルさんの憂鬱も終わるだろう‥‥」
 腰を叩きながら呟く浩一。ヘイルは腕を組み、空を見上げた。
「変態は死すべき‥‥だな」
 南の島に風が吹く。ここに生粋の変態は倒れた。だが、第二第三の変態がまた現れるだろう。何故なら、カシェル・ミュラーは『そういう星の下』に生まれたのだから!!
「赤崎さん変なナレーション入れないで下さい! 混乱するでしょ!」
「いやぁ、纏めようと思って‥‥わっ、ちょっとそんなムキになって追いかけなくても‥‥あ、もしかしてお姉さんのお尻が恋しいのか‥‥うわっ!?」
 そんなわけで、無事ディレクターに纏わる騒動は解決。したのであった。めでたし、めでたし‥‥。



「さて‥‥では早速、キルトさんに会いに行きましょうか‥‥さぁさぁ」
「あの、御法川さん‥‥多分何か勘違いしてると思うんですけど‥‥ちょっと‥‥」