タイトル:BUSHIDOOOO!マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/17 09:42

●オープニング本文


「あーあー、テステス‥‥。うぉほん! その辺の人類に告げるぅー! 死にたくなければ去れーい!」
 ここは人類とバグアが日夜小競り合いを繰り返すとある競合地区。
 拡声器を片手に何やら街に向かって叫ぶバグアが一人。UPC軍人の一人が双眼鏡でその様子を確認する。
「バ、バグアです。何か言ってます‥‥」
「本当にバグアなのか? こんな辺鄙な所、精々キメラくらいしか見た事ないが」
「じゃあ見て下さい。バグアですから」
 上官に双眼鏡を渡す部下。覗き込むと、そこには全身鉱石のような素材で構成された明らかな異星人の姿が。
「‥‥バグアだな」
「ど、どうしましょう?」
「とりあえずKV隊に迎撃させよう。馬鹿に見えるが油断は禁物だ。全員叩き起こせ、戦闘だってな!」
 現在は廃墟となった街に駐屯するUPC軍が動き出したのをバグアは遠巻きに眺め、それから背後に手招きする。
「むむぅ、奴らやる気のようだ。折角わし警告してるのに」
「‥‥大将。俺ぁ決して頭は良くねーが、普通に考えて迎撃すると思いやすぜ」
 巨躯のバグアの背後、歩いてくる影が四つ。大刀を背負った男が苦笑しつつ呟く。
「あぁ、退屈だねぇ。退屈すぎて全員で来たはいいけど、あたしゃこういう戦は趣味じゃないんだ」
 肩を長銃で叩きながら溜息を吐く女。その隣、着物姿の上に白衣をかけるという奇妙なファッションの女が並ぶ。
「エンジュがやられてこっちは戦力不足なの。灰原も死んだみたいだし、ある程度真面目に仕事してるフリするのは大事よ?」
「そういえば、ツギハギって死んだのかな? 帰ってこないけど」
 とはいえファッションに関して言えば全員奇抜もいい所なので、むしろカソック姿のこの少年は普通に見えてくる。
 横一列に並ぶ五人。特に他に戦力を引き連れている気配はない。全員緊張感のない様子でUPCの出方を窺っている。
「む? 何かわしよりでっかいのが来とる‥‥あー‥‥けぇぶい?」
「ナイトフォーゲル。人類側の強力な兵器ね。こっちにもワームってあるでしょ?」
 巨人の呟きに白衣の女が微笑む。そうこうしている間にもKVは接近してくる。
「言われて見れば見た事がある気がするのぅ。で、強いのか?」
「試してみたら如何?」
「それも、そうじゃな」
 尾を振り、走り出すバグア。その挙動は大雑把極まりないが、直進に限定すれば速度は非常識に達している。
「隊長、敵が一匹突っ込んで来ます!」
「馬鹿が‥‥! 各機迎撃! 火力を集中しろ! こんなもの避けるまでもない!」
 四機のR−01がガトリングを構え、一斉に射撃を開始する。降り注ぐ弾丸の雨、鋼鉄の竜はそれに対し更に直進を選択。
「こいつ――効いてないのか!?」
 数度の小さな跳躍の後、一気に空へ舞う。バグアはそのまま一機のKVに取り付き、装甲に拳を叩き付けた。
「痛いじゃろーがッ!!!!」
「なのに突っ込んできたのか――!?」
 ぐらりとよろけ、倒れるKV。バグアは大地に足を減り込ませながら着地し、尾を振り拳を鳴らす。
「ふん、図体だけじゃのう。貴様らからは意気も矜持も感じぬ。その力、狩るに値せぬわ」
「ふざけやがって!」
 更に別のKVがブレードで斬りかかる。これをバグアは両腕で受け止めた。正しい言い回しかこの際微妙だが、白刃取りである。
「剣っちゅーのはのぉ‥‥デカけりゃいいってもんではないのだ!」
 口から吹雪を吐き出すバグア。そうこうしている間に見物していた強化人間がぞろぞろ出張ってくる。
「助太刀しやすぜ、大将」
「‥‥つーかKVと真面目に戦うなよ」
 ブレードを大刀で弾く大男。続け、少年が槍を繰り出し、衝撃波を放つ。
「さぁて、折角新調した腕だ。調子を試させてもらうかねぇ!」
「それは構わないけど、壊したら殺すわよ」
 更にライフルと大鎌を装備した女二人が続く。その訳のわからない大立ち回りを後方から双眼鏡で覗いていた軍人は振り返り言った。
「ダメです、滅茶苦茶です。今KVが一機落とされました」
「え!? 田舎のCOPとは言え、KVだぞ!?」
「知りませんよ‥‥兎に角引きましょう。増援呼んでおきますから‥‥」
 部下から受け取った双眼鏡を覗き込む上官。視界には倒れて黒煙を吐き出すR−01の姿が確かに見えるのであった。

「――と、言う訳でだ。隣りのエリアに出現した刀狩りの軍勢を叩くぞ!」
 荒野を走る三つの影。先頭を行く朝比奈は後続の二人に声をかける。
「しかし本当に出るとは‥‥なんか都合良すぎませんか?」
「朝比奈さん‥‥どうしてここに奴らが来ると分かったんですか?」
 後に続くスバルとカシェル。二人は朝比奈に誘われ、この競合地区のキメラ掃除の為に依頼に参加したのだ。
 しかしその実彼らの狙いはこの場所そのものではなく、出現が確認された刀狩りと呼ばれるバグア一行だった。そして実際に刀狩り一行が現れ、現在そこへ向かっている所なのだが‥‥。
「まあそれはなんていうか、秘密の情報網だ」
 朝比奈を左右からジト目で見つめる二人。朝比奈は咳払いを一つ、拳を握り締める。
「な、なんでもいいじゃねえか! ラッキーだったろ? 出る気がしてたんだよ、俺はッ!!」
「幸運である事は同意です。実際、私も奴らを殺せればそれで文句はありませんから」
「えー!? 僕は山ほど訊きたい事とか確認したい事あるんだけど!?」
「カシェル、おめーは細かい事気にしすぎなんだよ」
 一人どんよりとした表情で走るカシェル。ただの偶然にしてはどう考えても出来すぎているが、問い詰めても答えそうにない。
「朝比奈さん、僕たちパートナーですよね? そういう秘密はやめて下さいよ!」
「心配するなよ相棒、俺は裏切らねーから」
「俺『は』ってなんですか! 皆裏切ってるみたいじゃないですか!」
「違うのか?」
「ちーがーいーまーすーッ!」
 二人がやいのやいのしている間に戦闘の音が近づいてくる。スバルが咳払いすると、カシェルも渋々黙った。
「兎に角、相手が相手です。前回みたいに僕に内緒で二人で勝手な事しないように」
「へーいへいへーい」
「本当に小姑みたいな人ですね、ミュラーさん」
 二人の態度に拳を震わせるカシェル。しかしいざ本当に敵が視界に入れば三人とも切り替えて戦いに望む。
「いいか、兎に角協力だ。連携以外で奴らに拮抗は出来ねぇ。あの岩の塊マジで強すぎる」
「前回瞬殺された人がよく言いますね」
「‥‥仲いいね。それじゃ、僕がディフェンスと援護」
「では、私は撹乱を」
「そして俺がぶん殴る! 作戦は以上だ、行くぜッ!!」
 得物を手に戦場へ走る。馬鹿騒ぎの戦場が今、始まろうとしていた。

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
時枝・悠(ga8810
19歳・♀・AA
館山 西土朗(gb8573
34歳・♂・CA
ラナ・ヴェクサー(gc1748
19歳・♀・PN
ヨダカ(gc2990
12歳・♀・ER
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA
雨宮 ひまり(gc5274
15歳・♀・JG

●リプレイ本文

●問答
「生身でKV倒すとか呆れを通り越して笑えるな。万国びっくりショーかっての」
 荒野を走る傭兵の一団。足を止めずに呟く月読井草(gc4439)の視線の先、既に戦闘は始まっている。
「KVを拳一発か‥‥凄えような懐かしいような」
 苦笑を浮かべる館山 西土朗(gb8573)。そういうバグアが居る事は経験済みだが、再び実際に対峙するとなればまた話は別である。
「てーか、キメラ処理の筈が蓋を開けたらこんなのとか、もうね」
 銃で肩を軽く叩きながら走る時枝・悠(ga8810)。うんざりしたその横顔に鯨井昼寝(ga0488)は笑いかける。
「むしろ当たりじゃない。選り取り見取り、どれも予測のつかないレベルの脅威なんだから」
 うんざりどころかはしゃいでいるくらいの昼寝。悠は何とも言えない微妙な表情を浮かべている。
「何かこう、報酬上乗せとか無いのか‥‥無理か。ああ、酷い話だ」
 小さく溜息を漏らす悠。一方、憂鬱げなのは彼女だけではない。一行の中には決して一口に語る事の出来ない想いを抱えている者も居る。
 過去の因縁を背負う者。憎しみを抱く者。揺らがぬ決意を持つ者。
 恐らくは彼らが一同に会し、こうして共に走っている事も一つの奇跡なのだ。想いも、願いも、終着点すら異なっている。だが‥‥。
「す〜ちゃんの口から撹乱って言葉が出るなんて、帰ったらお赤飯ですね!」
 瞳を輝かせるヨダカ(gc2990)。スバルは苦笑を浮かべ、首を傾げる。
「どういう事なんですか‥‥というか、それは一般的には友達がする事ではないのでは?」
「それはそうですが、す〜ちゃんを見守って来た一人として、それくらいの気分だという事なのですよ」
 したり顔で頷くヨダカ。二人の間には戦いを通して確かな絆が結ばれつつある。
「基本的には付きっ切りでそれぞれが対応、状況に応じて援護って感じか」
「カシェルはブガイの迎撃を頼む」
 西土朗の声に頷き、カシェルに声をかける悠。雨宮 ひまり(gc5274)はその背中を心配そうに見つめている。
「カー君、一人であんな強そうな人と‥‥大丈夫?」
「実際に一人で当たる訳じゃないし、大丈夫じゃないかな? 一応、僕もそれなりに経験を積んだ傭兵なんだしね」
 苦笑するカシェル。ひまりは背中を見つめたままぎゅっと弓を握り締めた。
 目的意識は違えど、彼らの中には互いを想う気持ちがある。それぞれの過程はどうあれ、今はそれが理由になっているのも確かな事実。
 走りながらカシェルの横顔を見やるラナ・ヴェクサー(gc1748)。向かう先、ラナにとっても忘れられない脅威の記憶が待つ。
 今はもう、怒りや憎しみで戦っている訳ではない。恐れを消し去る事は容易ではないが、失いたくないと思う物が確かにあるから。
 思い悩み、答えを探し、戦場を走る。何が始まりで何が終わりなのかは分らない。しかし時は止まない。常に決断を待ってはくれない。
 それでも六堂源治(ga8154)は前を向き走る。きっとそうする事でしか、答えは得られないのだ。
「朝比奈はナラク担当な」
「そりゃ構わねぇが、そう上手く行くかね」
 大剣を担ぎながら愚痴る朝比奈。悠はその様子に目を向ける。
「連中はタイマンよりチーム戦に優れてるんだよ。身勝手そうに見えて、『刀狩り』への忠誠という意味で一枚岩だからな。当たり方に文句はねえが、上手く行かなかったケースも想定しとけよ。したら身体の動き方も違ってくんだろ」
「くんくん‥‥まともに考える頭があったのですね‥‥」
「くん‥‥何!? 今何か無視出来ないセリフが‥‥!」
「前会った時、自分で『朝比奈君』って名乗りましたよね? だからくんくんなのですよ」
 そんなヨダカの声に唖然とする朝比奈。不満そうなので、ヨダカは続ける。
「嫌ならマダオでも良いのですよ?」
「何が良いのかわっかんねーよ! 何だその最悪な二択!」
「じゃあ、ロリコ‥‥」
「三択にすんじゃねぇ!」
 井草の頭を叩く朝比奈。その様子をカシェルは寂しげな眼差しで見つめている。
「誰もが誰かを裏切っている。そんなの当たり前ですよ、おに〜さん」
 見透かすようなヨダカの言葉。カシェルは頷き、苦笑する。
「それでも僕は信じたいし、信じ続けるよ。そういう生き方しか出来ないんだ、僕は」
「お人好しですね」
 溜息混じりに言うスバル。悠はそんなスバルに声をかける。
「スバルは遊撃として全体の撹乱を頼む。意地でも刀狩りを狙いたいとか言うなら私は止めんが、自己責任で宜しく。指示に従っても私は責任取らんけどさ」
「何ですか、それ。私、貴方のそういうテキトーな所、嫌いです」
 そっぽを向いてキッパリと言うスバル。悠は横顔を一瞥し、しかし別に気にする気配も無い。
 そんなこんなで遠巻きに見えていたKVとそれを襲う敵が近づいてくる。傭兵達は後退するKVを抜き去り、刀狩りの一団と対峙する。
「おお? 何やら見覚えのある顔もあるのぅ。小僧、元気そうじゃな」
 二本の腕を組み、源治を見据えるイスルギ。傭兵の出現に刀狩り配下も身構えるが、主の指示があるまでは動かない様子だ。
「こんな所で会えるとはね‥‥! 皆の仇、今日こそ討たせて貰う!」
 愉悦の表情を浮かべ、槍を向けるジョン。そのぎらついた視線とラナは正面から向き合う。
「気持ち‥‥痛い程、判りますけど‥‥」
 片手を左目にやり、目を伏せ呟く。今自分に向けられた狂気は、嘗て彼女が持ち得た物とよく似ている。
「判る? 何が判るんだ! 僕は何もかも失った! お前達は僕からエンジュまで奪ったじゃないか!」
「憎いから殺す。護る為に殺す。信念の為に殺す‥‥それが誰かの大事な人を殺す事になる」
 一歩前に出た源治が呟く。彼もまた、始まりは復讐だった。
 何もかもを奪われたやりきれない思いが彼を戦士とし、やがて大切な者を護る為にその刃を振り上げた。
 ジョンは言っていた。先に殺したのはお前達だ、と。
 憎しみの連鎖においてどちらが先かというのはあまり意味の無い事だ。結果、今こうなっているわけで。
「迷いは消した。この戦いの間、俺は手前の仇だ」
 刃を抜き、構える。それが彼が迷いの果てに掴んだ一つの答え。
「腑抜けた俺を殺しても、満足できねぇだろ? ジョンは俺と全力で戦って決着をつけた。ならば、ギリギリの死線を越えて立っていた者が、自分の『スジ』を通せるって事だ」
 結局の所はそう、勝てば官軍。闘争という解決手段を選択するのなら。
「俺は、俺の。お前は、お前の。エゴの為に――かかって来い、ジョン・ドゥの名を継ぐ者。ここでケリをつけよう」
 睨み合う二人。ジョンは槍を振り回し、前のめりに叫ぶ。
「さっきから勝手な事ばっか言いやがって‥‥ただ自分を正当化してるだけじゃねえか! ざっけんな! あんたの‥‥うがっ!?」
 台詞が途切れたのは背後からイスルギがジョンの頭を小突いたからだ。岩塊は胸を張り、声を上げた。
「実に見事! 全く惚れ惚れするのぅ、源治。それに引き換えぼうず、お前はなんじゃ」
 片手でジョンの首根っこを掴み上げ、溜息を一つ。
「仇討ちは戦士の華、否定はせん。だがな、それは仁義によって遂行される。ぼうずの様に自分勝手な憎悪を乗せて穢すでない」
「放せバカ! どっちの味方なんだよ!?」
「わしはな、筋の通ったモンの味方じゃ」
 重苦しく呟く刀狩り。ジョンを一瞥し、傭兵達へ向き合う。
「提案がある。わしらはこれで引き上げるので、お主らも手を引いて貰えんかの?」
 一拍。その後、場に居る全員が各々反応を示した。
「そうは言われてもな‥‥こっちも仕事で来てるんだ」
「あきれた‥‥冗談じゃないわよ、全く。どういう了見なの?」
 苦笑する西土朗。昼寝に至っては溜息をつき、がっくりと肩を落としている。
「単純な話じゃ。わしはお主らを殺したくない。全員連れてきてしまったのは失策じゃった。お主ら、全員死んでしまうぞ?」
 眉を潜める昼寝。要するにこいつは、自分達をナメているのだ。
「そっちがそれで良くってもね、こっちは戦る気で来てんのよ! はいそうですかって引くと思う!?」
「同意です。仇討ちが戦士の華なら、お前は私と戦う責がある!」
 昼寝に続き叫ぶスバル。刀狩りは困った様子で頬を掻いている。
「‥‥どうしてもやらなきゃ駄目かの?」
「僕は別に引いて貰えれば‥‥あ、すいません」
 全員から睨まれ縮こまるカシェル。刀狩りは頷き、片腕を伸ばす。
「あい分った! 然らば正々堂々、尋常の勝負と洒落込もうぞ。死んでも恨むなよ――小娘!」
 距離を取ったままの状態で各々得物を構える。荒野を走り出した両陣営を止める者はもう居なかった。

●合戦
「ったく、主様は優しいんだから‥‥あたしは容赦しないよ! 一人残らずブチ抜いてやるからねぇ!」
 まず攻撃を開始したのはムクロだ。片手で長銃を回し、傭兵達へと構える。
 それに対し同じく弓を構えるのはひまりだ。即ち狙撃手同士の睨み合い。ムクロは口の端を持ち上げ笑う。
「へぇ、面白いじゃないか。あの時の小娘かい」
「この間のようには‥‥行きませんっ」
 矢を連続で放つひまり。ムクロは飛来する矢に引き金を引き撃ち落して行く。
「そんなもんかい?」
「まだです‥‥!」
 弓を横に倒し引くひまり。同時に発射された四つの光の軌跡、その一つがムクロの迎撃を突破する。
 矢が頬を切り裂き血が伝う。ムクロは笑みを浮かべ、目を細める。
「やるねぇ。成長したじゃないか」
 その様子を背後から眺める西土朗。仲間に練成強化を施しつつ、笑みを浮かべる。
「ムクロ‥‥だったか? 奴も居るのか」
 先日、西土朗は彼女と対峙し刃を交えた。その戦いも互いの仕事、敗北の二文字に恨みはないが‥‥。
「コテンパンにされた借りは返したいな。今日はこちらが勝たせて貰うぜ」
 そうこうしている間に互いの戦力が接近。ムクロへ突っ込んでいくのは悠だ。
 腕を十字に構え、急所を守りながらの突進。ムクロは銃で迎撃するが、悠を止めるには至らない。
 強引に距離を詰め、刃を繰り出す。ムクロはそれを銃で弾くが、悠の一撃は銃身を容易に両断してしまう。
「なんだいそりゃあ!?」
「見れば分るだろ? 太刀だ」
 後方に飛び退きながら引き金を引きまくるムクロ。光の弾丸は悠の反応速度を軽く上回っており、回避も防御も間に合わない。しかし悠は倒れる事無く銃を向ける。
 撃ち合いつつ走る悠。追われるムクロ、追う悠という形で、両者の戦いが形成される。
「やばいね。真っ当にやりあったら不利か」
「姐さん、別に律儀に一対一でやる事ぁねえっすよ」
 側面から襲い掛かり、悠目掛け太刀を振り下ろすブガイ。その間にカシェルが割り込み、盾で太刀を弾き返す。
「それはこちらも同じ事です」
 ブガイの攻撃に耐えるカシェル。その背中に練成治療を施しつつ、ヨダカが声を上げる。
「残念ですけど相手の数が多すぎですね。金、銀、角に香車って所ですか!」
「刀狩り‥‥でも、まず今は‥‥!」
 銃を連射しブガイを攻撃するスバル。ブガイは巨大な太刀で銃撃を片っ端から薙ぎ払うが、その間にカシェルが飛び込みブガイを弾き返した。
「す〜ちゃん、やれば出来るじゃないですか!」
 小さく跳ねるヨダカ。そんな背後の様子に苦笑しつつ朝比奈はナラクと対峙する。
「今度はあの子達が貴方の仲間って訳ね」
 大剣と大鎌が何度も刃を交える。ナラクは頭上で鎌を回し、身体ごと旋回し周囲を黒い斬撃波で薙ぎ払う。
「刀狩りの話は聞こえたでしょう? 今の貴方はあの子供と同じ。身勝手な理由を復讐に置き換えているだけ」
「うるせえな。んな事は‥‥先刻承知だ!」
 一方、ジョンと戦うのは源治だ。源治の放つ衝撃波にジョンは槍を繰り出し暴風の刃で応じる。
「あんた達さえ現れなきゃ全部上手く行ってたんだ‥‥全部!」
 しかし真っ向勝負になれば破れるのはジョンの方である。ジョンの攻撃をいなし、猛攻を繰り出す源治。激しく打ち合う二人、そこへラナが飛び込みジョンを襲う。
 光の爪に掻かれ血を流すジョン。一対一で何とか持ち堪えていたが、ラナが加わると対処しきれない様子だ。
「くそっ、何でだ! 強くなったろうが! 努力してんだろうが!」
 繰り出される槍をかわすラナ。入れ違いに飛び込んだ源治が浴びせる一撃で怯むジョン。更に追撃を加えようとした源治に影が落ちた。
 突っ込んできたのはイスルギだ。振り下ろされる拳は源治を吹き飛ばし、大地に穴を空ける。
「止せ源治。このぼうずは戦のイロハも戦士の心得も無いただの餓鬼じゃぞ」
「邪魔をしないで欲しいッスね。これは俺達の戦いだ」
「戦いとは戦士のやる事ぞ。貴様の言う決着とは、ただ力を得ただけの素人を下してつける程度の物か?」
「さっきから聞いてれば‥‥ぎゃん!」
 小突かれて倒れるジョン。ぷるぷるしているのを無視して刀狩りは吼える。
「その決闘、わしに預ける気は無いか? このぼうずをわしが一端の戦士に育てよう。それから決闘でも何でもすれば良かろう?」
「だから――そういう訳には行かないのよ!」
 素早く飛び込み、突きを放つ昼寝。刀狩りはそれを腕一本で振り払う。
「小娘、今わしは男と男の話をしとるんじゃが‥‥」
「そっちが話を聞かないのに、こっちが聞いてやる道理は無いでしょ?」
 更にラナも超機械で刀狩りを攻撃。岩の巨人は頬を掻き、構えを作る。地が軋み、裂け、大気が震える。口から白く息を巻き上げ、異形は目付きを変えた。
「気乗りはせぬが止むを得まい。道理は拳で通させて貰う」
 びりびりと肌が痺れるような気迫。昼寝は笑みを浮かべ、怪物と対峙する。
「最初からそうしなさいよ。この喉の奥が灼けつく様な感覚‥‥久しぶりだわ!」
 拳を握り震わせる。やはりかな、これは遥か強敵。ならばこそ歓喜を隠す事はするまい。
「行くわよ、刀狩り。あんまり私をがっかりさせないでよね――!」
 と、彼方此方で戦闘が開始された頃。もうすっかり参加出来ず呆然としているKVに井草が声をかけた。
「おーいKVの兄ちゃん達、聞こえっか?」
 前の方で手を振っている小さい影。三機のKVは無線機からの声に目を向ける。
「今からあいつらと戦うんでその援護を頼みたいんだ。誤射しないようにあたしが観測するから、それに合わせてチョーダイ!」
 顔を見合わせるKV。その内一機が声を上げた。
「しかし、俺達の攻撃じゃ奴には‥‥」
「あのトカゲのおっさんにだって効いていないわけじゃないんだよ。足止めくらいにはなるなる! 頑張っていきまっしょい!」
 ガッツポーズの井草。KV達は再び顔を見合わせる。
「‥‥まあ、相手は生身だしな。いけるんじゃないか?」
「マジか‥‥」
「傭兵にだけ任せていてはUPC軍人の名が泣くぞ!」
 そんな感じで頷くKV。井草は無線機を手に戦場を指差す。
「んじゃあ本題だ。敵が傭兵と離れた瞬間や逆に敵がこちらに踏み込もうとする瞬間に出鼻を挫くように撃ってね。奴らが前衛を突破して突っ込んで来ようとしたときは、敵とあたしらの間を撃って大穴開けてビビらせてやってくれ。それだけで凄い効果があるんだよ!」
「つってもな、味方ごと吹き飛ばすかもしれないぞ」
「そこはほら、指示するからさ。ほんじゃよろしくっ! 作戦開始だー!」
 ガトリング砲を構えるKV隊。井草の指示に合わせ、攻撃を開始する。
「な、なんだぁ!?」
 銃弾の雨を浴びるブガイ。そこへひまりが矢をを放ち、カシェルは小銃を連射する。
 続けて狙うのは悠から距離を取るムクロだ。KVの攻撃は大雑把過ぎてろくに命中しなかったが、その間に悠が接近し一撃を加える。
「っつぅ‥‥これは、酒より効くねぇ‥‥っ」
 血を流しながら後退するムクロ。KVの攻撃は厄介だが、彼女の攻撃範囲から外れている以上手出しは出来ない。
「こりゃちょっと骨が折れやすぜ、姉御」
 溜息を漏らすブガイ。戦いはまだ、始まったばかりである――。

●乱戦
 ジョンを庇う形で立ち塞がる刀狩り。源治は衝撃波で、ラナは超機械で攻撃するが、怯む気配がない。
「なんて頑丈さ‥‥!」
 空に吼え、突進する刀狩り。迎撃を無視して突っ切り、源治を体当たりで吹き飛ばす。更に地を裂いて旋回、拳をラナへと振り下ろした。
「でも、遅い‥‥これなら!」
 吹き飛ぶ石礫を浴びながら飛び退くラナ。怪物は仰け反り、口から白い息吹を吐き出す。
 ラナはそれを走って回避。しかし刀狩りはブレスを放出したまま旋回、周囲を薙ぎ払う様に凍結させる。
「‥‥朝比奈さん、後ろ!」
 範囲に巻き込まれた朝比奈がブレスを受ける。剣で防いだが、そのまま地に縫い付けられてしまった。
「剣が動かねえ!」
 無防備な所へナラクの鎌が降りかかる。肩に深々と刃が沈み、黒い軌跡と共に振り抜かれた。
 大地を縦に裂く衝撃に弾かれる朝比奈。しかしラナも余所見をしている余裕はない。
「邪魔をするなよ爺さん! これは僕の戦いなんだ!」
 腕を射出するジョン。それをかわし、ラナは急接近。ジョンの身体を爪で引き裂く。
「どこ見ているのよ!」
 イスルギへ接近し、一撃加える昼寝。手応えは正に鉄を打つような物で、傷を負わせられている様子はない。
 刀狩りの挙動は重く、昼寝はそれを掻い潜り後退。代わりにヨダカと井草から治療を貰った源治が復帰し突っ込んで来る。
「す〜ちゃん、くんくんがボコボコにされてるのです!」
「何やってるんですかあの人」
 朝比奈を突破したナラクは横薙ぎに鎌を振るう。前面広範囲を薙ぎ払う黒い光が後衛の三人を襲う。
「うおーっ!? なんじゃこりゃあ!」
 大剣で光の波を防ぐ井草。ヨダカは盾を構えながらバックステップで波を弾き、西土朗は盾を地につけ防ぎ、続け飛び込んでくるナラクと対峙する。
「二人とも無事か!?」
「一撃で倒されなきゃ何とかね!」
 井草の返事。二人は既に回復を開始している。西土朗は低い姿勢からナラクの懐に飛び込み、鎌の柄に盾ごと当たっていく。
 西土朗がナラクを押し返すと、すかさず側面からひまりが矢を連射。ナラクは傷を負いながら距離を取り、自らの傷を癒す。
「皆下がれー! KV隊、撃て撃てーっ!」
 井草が叫ぶと西土朗は走り、銃撃にあわせてスライディングで退避。ナラクがそれを受けている間に井草は走る。
「ちょっと朝比奈起こしてくる!」
「す〜ちゃん、こっちなのです!」
 胸の前で手を組み、白い光に覆われるヨダカ。歌はナラクへ届き、動きを縛る。
 西土朗はエネルギーガンでナラクを攻撃。スバルもそれに続き射撃、更に急接近しナラクを蹴り飛ばした。
 一瞬交わる視線。ナラクの微笑にスバルは目を見開く。見覚えがあった。何故直ぐ気付かなかったのだろう。この敵は――。
 吹き飛びながら黒い波を飛ばすナラク。スバルは盾でそれを受けつつ後退、ヨダカの回復を受ける。
「お前は、あの時の‥‥!」
「あの時? どの時かしら?」
 血が滲む程歯を食いしばるスバル。銃を向け、震える声で叫ぶ。
「あの時、お前が来なければ‥‥! 忘れたとは言わせない、お前達が全て燃やしていったんだ!」
「ごめんなさいね。忘れたわ」
 何かがキレた。絶叫し走り出そうとするスバル、その背中にヨダカが飛びつく。
「す〜ちゃん、我慢なのです! あいつらを殺したいのはヨダカだって同じです。悔しいけど後二手詰めないと届きもしないのですよ!」
「でも‥‥だって!」
 泣きながら叫ぶスバル。敵がその隙を見逃す筈も無く、繰り出される攻撃。それを井草が回復した朝比奈が防ぐ。
「悪い、迷惑かけちまった!」
 猛然とナラクを攻撃し、押し返す朝比奈。スバルは唇を噛み締め、息を吐く。
「もう大丈夫です‥‥ありがとう、ヨダカ」
 ナラクへ向かうスバル。朝比奈と連携し、攻撃を繰り出して行く。
 一方、後衛の状況が崩れ、カシェルは押されていた。高火力な攻撃を連打するブガイを前に、持ち堪えるのも限界に近い。
「ぼうず、良く頑張るがこの辺が限度ってもんだろ?」
 両手で刃を振り上げるブガイ。前進と同時に振り下ろされた一撃はカシェルの防御をお構いなしに叩きのめす。
 腕があらぬ方向に捻じ曲がり、全身を衝撃が突き抜ける。口から血を吐き仰け反るカシェル。
 ブガイは更にカシェルの盾を片手で地面に押し込み、膝で顎を打つ。ひまりは矢を放ちカシェルを援護。ブガイの身体に矢が突き刺さるが、動きを阻害するには至らない。
「刺さってるのに‥‥カー君っ!」
「立てー! 立つんだカシェル!」
 カシェルを回復する井草。ぼやけた意識が戻り、血を噛みながら刃を振り下ろす。
 打ち合う二人。弾かれたのはブガイの方で、ひまりはその隙に弓を構える。
 矢の先端に輝きを集め、紋章を貫き放たれる一撃。ブガイの肩に突き刺さり、矢はそのまま貫通。血飛沫をばら撒いた。
「カシェル、こっちこっち!」
 手招きする井草。その間に後方からKV隊が銃撃、ブガイを牽制する。
「たーっ、こりゃ面倒くせぇなおい!」
 叫びながら銃撃を防ぐブガイ。その戦闘を横目にムクロは眼帯に手をかける。
「仕方ないねぇ‥‥奥の手を使わせて貰うよ!」
 眼帯の下、瞳が光を放つ。途端に悠の全身が硬直、身動きが取れなくなる――が。
 強引に一歩踏み出す足。更に一歩、また一歩。呪いを帯びながらも悠は前へ進む。
「ちょっと、冗談じゃないよ!」
 左右の手から実弾、知覚弾を連射する。悠はそれを防ぎながら前進。
「意外と気合で行けたな」
 胸に手を当て、赤い光を帯びる。硝子を砕くような甲高い音が響き、悠の身体は健常さを取り戻した。
「っつう! 参ったね、こいつを破られるとは‥‥!」
 片目を押さえ苦しむムクロ。悠は接近し刃で一撃、ムクロを空に打ち上げる。
「私とも力比べ、してくれよ」
 片手で銃を回し空に構える悠。ムクロは空中で銃を構え、それに応じる。
 互いに引き金を引く。悠の射撃を自らの射撃で相殺しようと連射するが、一撃の重さがまるで違う。
 光を帯びた銃弾は射撃と言うよりは砲撃。空に響き渡る異様な銃声の後、ムクロの身体は縦に回転し頭から落下するのであった。
 一方、刀狩りとの戦いに源治、ラナ、昼寝の三名は劣勢を強いられていた。ジョンを狙いたいのは山々だが、いちいちこれが邪魔に入るのだ。
 元々ジョンは真っ向勝負より援護や嫌がらせに向いている。そちらに気が向けば刀狩りが必殺を繰り出してくるのだから、目を離せない。
 加えて言えば、ラナと昼寝にとってはこの足元に広がる銀盤も厄介だった。うっかりすると、高速移動中に足を取られかねない。
「この状況‥‥あまり好ましくありませんね‥‥」
 汗を拭いながら呟くラナ。そもそもジョンを狙っているのはラナと源治だけではない。この場に居る傭兵の何人かは、隙を見てジョンを攻撃する準備がある。
 しかしこうイスルギが邪魔なのでは、ジョンを倒しきるのは難しい。邪魔というより完全にイスルギはジョンを守りに入っており、そうした意味で隙はないのだ。
「いい加減諦めてわしの言う通りにしてはどうじゃ? わしも正直女子とは戦いたくないんじゃが」
 尻尾をふりふり語りかけてくる刀狩り。昼寝は様子を窺いつつ、視線だけを二人に向ける。
「一か八かになるけど、仕掛けてみる? チャンスは一度きり‥‥同じ手は通じないと思うけど」
「そうですね‥‥タイミングを合わせれば、或いは」
 頷くラナ。昼寝は更に後方に目を向ける。他の戦闘は持ち直しているので、井草もコンタクトに気付いたようだ。
「それじゃあ一つ、行ってみましょうか!」
 声を上げる昼寝。井草はKVに指示し、刀狩へ攻撃を要請。KVの銃撃を浴びる刀狩りへ三人はそれぞれ動き出す。
 加速し、一気に走り出すラナ。刀狩りが振り下ろす拳をスライディング気味に抜け、背後のジョンへ襲い掛かる。
「ほう‥‥!」
 振り返りラナを目で追う刀狩り。そこへ昼寝が接近、爪を繰り出す。
 狙うは一点。左右の爪で舞うように打ち込み、旋回し鋭く同じポイントに二撃を重ねた。
「赤の――鯨吼っ!」
 飛び散る煌き。漸く昼寝はイスルギの身体に傷を負わせ、削る事に成功したと知る。それにイスルギが驚き体勢を整えるなら、源治が脇を通り抜けやすくもなる。
「六堂さん、先に仕掛けます‥‥!」
 閃光手榴弾を投げつけ走るラナ。光を突きぬけ、ジョンへと攻撃を仕掛ける。
「此処で終わらせる――!」
 鋭く素早い一撃は防御を掻い潜りジョンの胸を裂く。反撃をかわし、バック転で背後に跳ぶラナ。
「六堂さん!」
 入れ替わり駆けつける源治。振り上げた刃にありったけの力を込め振り下ろす。
 斬撃は大地を引き裂き銀盤のコーティングを撒き散らす。更に追撃に参加出来た西土朗のエネルギーガンを浴び、ひまりの矢に貫かれジョンは派手に吹っ飛んでいく。
「今だー、撃て撃てー!」
 飛び跳ねる井草。ラナと源治が後退すると銃撃の嵐が襲う。イスルギは走り、その弾幕の中へ飛び込んでいく‥‥。
「余所見してんじゃねえッ!」
 大剣を振り上げナラクへ襲い掛かる朝比奈。強烈な一撃でナラクを大地に叩き伏せ、反転し刃で地をなぞる。
「さぁ、ヨダカの憎悪を半分あげるのです!」
 ヨダカから飛来したラインを刃に受け、朝比奈は雄叫びを上げながら横一線にナラクを斬り払った。
 血を巻き上げながら後退するナラク。傷を癒しつつ下がり、倒れているムクロの傍に立つ。
「ムクロ、下がるわよ。これ以上は無理でしょう」
「‥‥ったく、仕方ないねぇ!」
 銃を悠に向けるムクロ。放たれた弾丸を悠が切り払った瞬間、眩い光が彼女を襲った。
 細めていた目をゆっくりと開くと、そこには悠が撃ち抜いたムクロの壊れた義手だけが転がっていた。
「こりゃやべえなっと」
 カシェルを押し返し走り出すブガイ。KVの猛攻撃を受け砂煙に覆われたイスルギは片手でジョンを拾い上げる。
「おおう!? ぼうず、また死に掛けているではないか!?」
「大将ー! こっちっす!」
 ぐったりしているジョンをブガイに投げ渡すイスルギ。そのままブガイが走り去る背中を護るように立ち塞がる。
「まさかこのわしが敗走とはな‥‥わはは、面白い! また会おうぞ、人間! 次はわしも武器を持ってお相手しよう!」
 高らかに笑いながら走り去る刀狩り。背中を追撃するが攻撃はろくに聞いていない模様で、更に走り出してから暫くすると尋常ならざるスピードで加速し始め、あっという間に見失ってしまった。
「何だあれ‥‥てか、あんなのに追い付くとか言ってんのかあの子。パネェな」
 銃で肩を叩きつつ振り替える悠。スバルは膝を着き肩で呼吸を繰り返している。
「逃げられたか‥‥だが、今回は『勝利』と言えそうだな」
 安堵の息を漏らす西土朗。朝比奈は刃を納め、黙って空を見上げた。
「カシェル、生きてるかー?」
「な、なんとかね」
 地べたに倒れたカシェルを大剣の切っ先でつんつんする井草。その様子を眺めるラナの髪を乾いた風が梳いて行く。
「何とか一人は殺したかったですが‥‥す〜ちゃん、無事ですか?」
「ええ‥‥」
 呆けた様子で膝を抱えるスバル。その姿にヨダカは口を紡いだ。そうこうしていると彼方此方からKV隊が駆けつけてくる。
「要請を受けて来ましたが‥‥」
「‥‥ちょっと、遅いです」
 目を瞑り呟くひまり。井草は駆けつけてくれたパイロット達に手を振り、状況を説明するのであった。
「依頼の目的はバッチリ果たした筈なんだけどね」
 腰に片手を当て、敵の走り去った荒野を眺める昼寝。結局戦いは終始刀狩りに引っ掻き回され、上手く行ったのか行かなかったのか‥‥。
 あの時、刀狩りが見せた強烈な覇気には身震いすらした。しかしその本懐を味わう事無く幕引きとなってしまったのは、『女だから』と加減されたからなのだろうか?
 少しもやもやとした気持ちのまま拳を握り締める昼寝。そして源治もまた、背中に風を受け荒野に佇むのであった。
「‥‥帰りましょう。私達は、勝利したのですから」
 髪を靡かせ振り返るラナ。こうして戦いは傭兵達の勝利という形で幕を下ろすのであった。
 しかしこの結果が各々にとってどのような意味を持つのか、それはまた別の話である――。