タイトル:【千葉】NRT攻略Bマスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/05 15:40

●オープニング本文


「と、いうわけで。今回は成田空港跡に作られたバグア基地攻略作戦に参加する」
 隊員達を前に声を上げる玲子。が、隊員達は何故か疲れた顔をしている。
「どうした? 何をそんなにぐったりしてる?」
「そりゃぐったりもするわ! ついこの間中国で『郁金香』攻略作戦やったばっかだろ! あれから細けぇ戦闘があって、今度は日本かよ!」
 外山が喚くのも無理はない。何せ彼らはあれから休みが殆どない。休みが無い部隊など何処にでもあるが、今までが今までだっただけに、不満はあるのだろう。
「まあ、フットワークが軽いのはうちの隊の強みではあるけどな」
「こんなにアジア中駆け回ってる部隊、俺たちくらいじゃないかな?
 中里の言葉に内村が続く。実際は別にそんな部隊も結構あるが、それくらいしか自慢する所がないというか、そういう風に言い訳しないとやってられないというか、そんな心境だろう。
「お前達の文句はさて置き、今回は勝ち戦だ。敵は松戸昏一郎とDr.エリア‥‥彼らはずるずると敗走を続け、余力も残されていない」
「でも、敵は集まって来てんだろ?」
「ああ。元々はあっさり攻略出来る筈が、向こうにも増援が現れた。敵もここを重要視はしていないのだろうが、千葉周辺の戦況を左右する一戦ではある。増援くらいは送ってくるだろうさ」
 これにより九頭竜小隊にもお呼びがかかったのだが、UPCもこの地に増援を投入。九頭竜小隊以外にも精鋭が集結中だ。
「今回は楽が出来そうだな‥‥」
「ふ、どうだかな。我々は敵増援を叩き、成田空港基地攻略戦をアシストする。向こうの攻略は別部隊に任せるが、そちらに増援を向かわせない構えだな」
「じゃあ、増援対増援って形になるのかな?」
「しっかし、わざわざほぼ負け確定の松戸に来る敵の援軍ってのも変わってんな。何しに来たんだか」
 肩を竦める外山。内村はずれた眼鏡を直しつつ、何と無く言う。
「多分、俺たちみたいに使い勝手のいい部隊とかなんじゃないかな?」
「どこにも居るもんだな。便利に使われるパシリ隊っつーのはよ」
 そんな部下達の様子に微笑む玲子。隊の雰囲気は相変わらずだが、部下達の士気‥‥戦いに望む姿勢は変わってきている。
 彼方此方を転戦し、傭兵や様々な部隊に加わって戦い、経験してきた事が良い方向に流れを作り始めたのだろう。
「ともあれ、油断無く行くぞ。これが終われば少しは休めるだろう。諸君らの健闘を期待するよ」
 三者三様の返事に玲子は背を向ける。休暇を取れたら、彼らを労ってやろう。たまには酒に付き合わせるのもいい。そう、考えながら。

「――それで、俺たちは何をすればいい?」
 成田空港基地へと移動する三つの機影。全身を赤黒くペイントされたカスタムゴーレムが空を舞う。
「オーダーはシンプルよ。私達はこれまで通り、増援として敵の増援を討てばいい」
「こっちは負けてるんだろ。そんな面倒な所に行くのは‥‥正直だるい」
「あら、負け戦は慣れてるでしょ? 尻尾を巻いて逃げるのは得意じゃない、エウドラ」
 女の軽やかな声に男の声が沈黙する。続け、女の小さな笑い声が響く。
「ごめんなさい、冗談よ。そんなに真に受けなくたっていいじゃない。どこも小さい男ね」
「‥‥面倒だから答えないだけだ。俺は俺の好きにやらせてもらう‥‥隊長も承知の事だからな」
 そう告げ、加速するゴーレムが一機。女は背を見送りながら溜息を漏らす。
「ダビダ、エウドラを援護してあげて。あれでもうちの貴重な戦力だし、死んだら隊長が悲しむわ」
「だ、だ、だが断る‥‥お、俺別にあいつ好きじゃないし‥‥な、仲間だと思ってないし」
 息苦しいわけではないのだが、やけに小刻みに聞こえる呼吸音。女は不快感を隠そうともしない。
「あなたのその豚みたいな話し方、何とかならない? 耳が腐っちゃいそう。エウドラは死んだら困るけど、あなたは死んでもいいのよ」
「こ、これだから三次元は‥‥ひ、酷い暴言だよ。これは、個性だよ」
「ふふふ、面白いのねダビダ。それは新しいジョーク? 私、気に入っちゃったかも」
 蔑むような笑い声に沈黙する男。女が搭乗したゴーレムは軽く手を振り加速していく。
「ああ、ごめんなさい。これ以上あなたと一緒に飛びたくないから、先に行くわね。気を落とさないで、がんばって」
「‥‥これだから、ビ、ビアンカと一緒に行くの‥‥い、いやだったんだ‥‥」
 最後に取り残された一機も加速。目的地へと進んでいく。
「こ、これじゃ割に合わない。沢山殺して、捕虜も捕まえて、ぼ、僕のコレクションに加えて、コ、コスプレさせてやる」
 飛び去っていくゴーレム。九頭竜小隊と同じく便利に使われる彼の敵は、九頭竜小隊と同じ戦場を目指していた。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
皆守 京子(gc6698
28歳・♀・EP
ミルヒ(gc7084
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

「九頭竜小隊との共同戦線も久し振りだな。皆が健在で何よりだ」
 成田空港基地へ向かう敵増援を迎え撃つ為、出撃した傭兵達。白鐘剣一郎(ga0184)は周囲を警戒しつつ声をかける。
「また頼りにさせてもらう。尤も、今回は君達の力を借りるまでもないかも知れんがな」
 笑みを浮かべる玲子。一行は荒野を敵陣へ向かい走り、索敵を続けている。
「今回もよろしく頼むよ、きゅーちゃん」
 レインウォーカー(gc2524)の声に首だけ動かすフェニックス。彼は今回、かなり気合が入っている様子。
 曰く、本気の時に着る勝負服であるというピエロの格好をしたレインウォーカー。玲子は最初見た時びっくりしていた。
「おかしな衣装だと笑いたければ笑いな。これはボクなりの正装なんでねぇ」
「笑いはしないが、誰だかわからなかったぞ」
 そんな会話の一方、皆守 京子(gc6698)もまた気合十分な様子で操縦桿を握る。
「敵は敗軍、戦力もこちらが上‥‥勝ち戦ですね。言うなれば落ちている栗を拾うようなものです」
 その言葉に栗を拾う京子を想像するミルヒ(gc7084)。何か納得した様子で頷いた。
「気合が入っているな、皆守」
「弟の誕生日が近いので‥‥。最近家庭内評価が下がりっぱなしなので、ここらでお姉ちゃんの威厳を取り戻しますよ」
 小さくガッツポーズする京子。玲子は何か通じる物を感じたのか、深々と頷いていた。
「しかし、勝ち戦というのは何とも妙な物ですな」
 呟く飯島 修司(ga7951)。確かに戦場、特に傭兵が投入されるような場所は劣勢である事が多い物。
「優勢な状況から確実に勝ちを奪う、というのは存外に難しいものです。油断せず作戦を遂行すると致しましょう」
「そうですね。戦局としてはこちらに傾いていますが、何が起きるか分からないのも戦場ですし」
 修司に同意する鳴神 伊織(ga0421)。鳳覚羅(gb3095)も眉を潜め、周囲を眺める。
「気をつけた方が良い。この間の紅が投入されているかもしれないしね‥‥」
「流石にそりゃねぇだろ。全然関係ねー戦場だしよ‥‥いや、出てきたら俺は嬉しいけどな」
 前回撃破されたのが悔しいのか、歯軋りしつつ笑う外山。ジャック・ジェリア(gc0672)から見ても、九頭竜小隊の様子は以前とは少し違って見える。
「さて、小隊がどう成長したか見せてもらおう。ダメだったらブートキャンプな」
「おぉ、こわいこわい」
 無表情に呟く中里。そうこうしている間に、ぽつんと進んでいる四機のゴーレムが視界に入った。
「敵ですね」
「アレだけならそんなに問題は無いんだが、配置から見てもなんかあるよな」
 ミルヒの呟きに苦笑するジャック。もう既に数からしてこちらが圧倒しているわけで。
「楽に勝たせてくれると在り難いんだがな」
 呟く玲子。傭兵達は三班に分かれ、攻撃を開始する。
「さーて、まずは足を止めさせてもらうかね」
 土の上を滑り停止したスピリットゴーストが巨砲を構える。敵をロックし、ジャックは攻撃を開始。
 炎を吹き上げる砲門から放たれた砲弾は正確にゴーレムに着弾。黒煙を巻き上げると、それを口火に傭兵達が突き進んでいく。
 中距離からの射撃でゴーレムを攻撃する覚羅。援護を受け修司は接近、機槍でゴーレムを粉砕する。
「お仕事です。生きていくには、戦うしかないんですね」
 マルコキアスを構えるミルヒの天。ファランクスと合わせ弾幕を形成。伊織はミルヒと並んでバルカンで前衛を援護する構えだ。
 二人の援護を受け突き進む剣一郎。ゴーレムに接近し一撃の下に斬り払う。
「うわ、あっちは凄い事に‥‥でも、無人機なら私達でも‥‥!」
 息を呑み、操縦桿を握り締める京子。クノスペはショルダーキャノンで敵を狙う。
「前に出るから支援を頼む。ボクの背中、お前たちに預ける」
 前進するレインウォーカー。九頭竜小隊各機は銃撃で援護の構えだ。
「火力を集中して一気に倒しましょう‥‥!」
「俺達、援護射撃だけは上手くなったよね」
 京子の声に微笑む内村。一斉に攻撃が開始され、滅多打ちにされるゴーレムへレインウォーカーが迫る。
 敵の周囲を移動しつつ、二丁拳銃を連射。ほぼ何も出来ないままゴーレムは集中攻撃に沈んだ。
「うーむ、哀れだな‥‥」
 冷や汗を流す玲子。残るゴーレムは一機だが、彼に何が出来るというのか――と、その時。
 最後に残っていたゴーレムを背中から何者かの攻撃が貫いた。倒れ爆発するゴーレム、その炎の向こうに新たな敵が見える。
「あら、強そうなのが沢山居るわ」
「‥‥面倒だな」
 紅色のカスタムゴーレム。その襲来に覚羅は眉を潜める。
「あの塗装と武装‥‥以前戦りあった奴か‥‥!」
「本当に出やがったのかよ‥‥紅いの!」
 叫ぶ外山。二機のゴーレムは低空飛行から地を削りながら着地し、傭兵達と対峙する――。
「あれって、前回襲って来た‥‥?」
 身構える京子。あれの戦闘力は承知している。今の自分の実力では拮抗するのが難しい事も。
「楽に稼がせては‥‥くれませんよね」
「あら、可愛い。そんな風に警戒されたら悪戯したくなっちゃう」
 腰に片手をやる細身のゴーレム。京子の顔が見えた訳でもないだろうに、笑い声が響く。
「前回斬り込んで暴れたというのはコイツか」
 巨大な両腕を持つゴーレムを一瞥。剣一郎は続け細身の機体を睨む。
「こいつは話に出ていなかったな。新手ということか」
「何体居ようが関係ねぇ、前回の借りはキッチリ返してやる!」
 前進する外山機。その行く先をジャックのスピリットゴーストが塞ぐ。
「落ち着けよ。手馴れが出てくるのは想定の範囲内だろ?」
「どこかにまだ伏兵がいるかもしれない‥‥迂闊に飛び出さない方が良い」
 覚羅の声に舌打ちする外山。ミルヒはそんな事はお構いなし、マイペースに敵に声をかける。
「紅いゴーレム、派手ですね。そちらの名乗りがないと、クリムゾンと勝手に命名しますがいいでしょうか?」
「うーん、この子達に名前はないから、それでいいわよ? でも、名乗りくらいはしましょうか」
 楽しそうな女の声。ゴーレムは自らの胸に手を当てる。
「私は『デストラクト』のビアンカ。こっちはエウドラ。今、名前の売り出し中なの。良かったら宣伝してくれるかしら?」
 その名乗りに動揺が走ったのは九頭竜小隊、特に玲子だった。瞳を揺らし、敵機を見つめている。
「じゃあ、そろそろいいかしら? 大丈夫、全員は殺さないわ。評価って大事だものね――」
 動き出す敵機。傭兵達は各々迎撃に動き出すが、玲子だけが固まっている。
「九頭竜君‥‥?」
 首を傾げる京子。そんな彼らにエウドラが突っ込んで来る。レインウォーカーはその迎撃に向かい、京子も援護の構えだ。
「レインウォーカー、俺にもやらせろ! あいつには借りがある!」
 加速する外山のフェニックス。レインウォーカーと外山、二名が前衛でエウドラに向かう。
 一方、ビアンカは急加速で土煙を巻き上げながら剣一郎のシュテルンへ向かっていた。両腕から鞭状の武器を取り出し、猛然と襲い掛かる。
「わざわざ出向いて貰って済まないが、早々にお引取り願おう――!」
「つれない事言わないで。振り向かせたくなっちゃう」
 紫電を帯びた鋼鉄のウィップを機刀で払う剣一郎。敵の機体は兎に角速く、出鱈目に攻撃を繰り出して来るが、剣一郎はそれを正確に捌いて行く。
 その側面に回り混み、スラスターライフルで狙う伊織。ゴーレムは急激な加速で回避し、機体を旋回させながら伊織へ突っ込んで来る。
「イケメンもいいけど、やっぱり女の子よね」
 両腕を広げ抱きついてくるゴーレム。腕の内側に仕込んだチェーンソーが回転し、シュテルンを削る。ミルヒはマルコキアスで敵機を引き剥がし、盾を構え前進。
 そんな戦闘を横目に覚羅はもう一体の敵を探していた。きちんと確認すればその姿を見逃す事はない。
「あそこか‥‥ジャック君!」
「こっちも見つけたよっと」
 マルコキアスを構える破曉。ジャックのスピリットゴーストも砲撃の構えを取る。
 二人が攻撃したのは新手が向かってきた方向にあるなんでもない荒野。そこに三体目の敵が潜んでいた。
 迷彩を施したマントを装備しているが、その隠密性は完璧には程遠く、そもそも機体全てを覆えていない。遠巻きに視界の端を過ぎっても気付かないだろうが、目を皿にすれば当然気付く。
「い、いきなり攻撃とか‥‥ないわ」
 長銃を手にしたゴーレムの影が揺らぐ。覚羅はその姿に笑みを浮かべた。
「あまりスマートじゃないけど、仕方ないよね?」
「遠距離攻撃型、ですか。懐に飛び込んでしまえば、どうとでもなりますな」
「んじゃ、飛び込ませてあげましょうかね」
 接近を試みる修司。ジャックは引き続き遠距離から敵機を狙う構えだ。
 砲撃を行なうジャック。しかし狙いは精密ではなく、広範囲を薙ぎ払うようにつける。相手が重装甲タイプという事もあり、この牽制が実に上手く決まった。
「ちょ‥‥狙えないし‥‥」
 揺れる大地、揺れるゴーレム。それでも遠距離射撃を当ててくる腕の敵だが、スピリットゴーストは全く怯まない。
「回り込んで仕掛けます‥‥挟撃と行きましょう」
「承知しました」
 移動しながらライフルで攻撃する覚羅。敵は狙撃を諦め、大型のガトリング砲に持ち変える。
「こ、こっちくんなし」
 各部フェザー砲も合わせ、全身から火を噴くゴーレム。その迎撃に被弾し怯む覚羅。しかし修司のディアブロは盾を構え光の雨を強引に突き進んでいく。
「イ、イミフ‥‥」
 一方ビアンカの相手をするB班。ミルヒの弾幕を軽やかに回避するゴーレムに伊織は銃口を向ける。
「速い‥‥!」
「鳴神、ミルヒ、奴の動きを止められるか?」
 剣一郎の声に頷く二人。
「こちらでも隙を狙ってみます」
「がんばります」
 更にA班。こちらは格闘戦タイプのエウドラ機の猛攻にやや劣勢気味の様子だ。
 大型の爪を振り回すエウドラに鎌で応じるレインウォーカー。しかし打ち合いはエウドラが優勢。
「どうした、こんなもんか」
「んなわけねーだろが!」
 側面からブレードを構えて突っ込む外山。エウドラは攻撃を回避、二機を迂回し後衛に向かう。
「ちょ、ちょっと‥‥!?」
 突撃してくる敵機に拳銃を連射する京子。九頭竜小隊も射撃で応じるが、突破されクローで薙ぎ払われてしまう。
「ああもう、前回と同じパターンだ!」
 叫ぶ内村。漸くまともに反応した玲子がエウドラと刃を交え、足止めにかかる。
「貴様らは‥‥まさか」
 蹴り飛ばされる玲子。京子と中里が左右から射撃を行なうが、エウドラは両腕を突き出しフェザー砲を照射。二機の各所に着弾する。
「くぅ‥‥っ!?」
「負けるわけにはいかないんだよ、ボクらはぁ。行くぞ、リストレイン!」
 背後から猛然と襲い掛かるレインウォーカー。そう、彼には負けられない理由があった。
 傭兵として戦っているのも勿論だが、彼は友人と約束したのだ。それを反故にしない為に、九頭竜小隊を守らねばならない。
 振り下ろした鎌を片手で受け止められる。もう片方の腕でペインブラッドを貫こうとするゴーレムだが、レインウォーカーは鎌を手放し、敵と同じく腕を引く。
「これが僕の切り札だ‥‥!」
「お前もクロー、か」
 二機は同時に互いの機体に爪を突き刺す。そして同時に至近距離で光を集めた。
「‥‥消えろ」
「嗤え――!」
 互いに熱を放つ二機。お互いに直撃を受け、黒煙を巻き上げながら左右に吹き飛んで行く‥‥。
「ケリを着ける‥‥行くぞ流星皇!」
 砂煙を巻き上げ突進するシュテルン。ビアンカとの戦いは決着を迎えようとしていた。
 高速機動で回避運動を取るビアンカだが、その動きを伊織とミルヒの射撃が制限する。後退しつつフェザー砲で迎撃するが、剣一郎はそれをかわしながら踏み込んでいく。
「強引なのね。そういうの、嫌いじゃないわ」
 両腕のウィップ振るうゴーレム。シュテルンはそれを機刀で切り払いながら接近。擦れ違い様に機体を旋回させ、鋭く一撃を放った。
「あぁ‥‥っ! だめぇ‥‥っ、ぞくぞくしちゃう‥‥」
 更に怯んだ所を伊織とミルヒが銃撃。全身を撃たれ、ゴーレムはくるくると回転しながら後退。
「大人数で女を好きにしようなんて、素敵‥‥」
 冷や汗を流す剣一郎と伊織。ミルヒだけは小首を傾げている。
 そしてC班。懐に飛び込んだ修司は機槍でゴーレムを襲う。機動力の低いこの機体が逃れられる筈もなく、大打撃を受けてしまう。
「ちょ、追加装甲が台無しとか‥‥!」
 ガトリングを突き出すゴーレム。ディアブロはそれを剣で切り裂き、尚も進んでくる。
「おかしいだろ!!」
 続け、側面から覚羅、正面からジャックの射撃が来る。ゴーレムは武装と追加装甲を全て放棄、軽量化し舞い上がる。
「む、無理ゲー‥‥い、一抜けた」
 加速し離脱するゴーレム。その姿にビアンカは唇を尖らせる。
「早い男って最低よね。でも、これ以上やったらやられちゃいそう。今回は大人しく引き上げるわ」
 ビアンカの声を受け後退するエウドラ。膝を着いたペインブラッドのコックピット、レインウォーカーはその背中を睨む。
「待て! ビアンカ‥‥本当にお前なのか!?」
 叫んだのは玲子だ。滞空しつつ、ゴーレムは振り返る。
「その声‥‥もしかして九頭竜少尉?」
 沈黙を答えとし、ビアンカは笑う。
「こうしてまた会えるなんてね。バグアとして戦う楽しみが一つ増えたわ」
 手を振り立ち去るゴーレム。玲子はその背に叫び続ける。
「待てビアンカ! 草壁隊長は、まさか‥‥!」
 しかしもう敵が応じる事はなかった。玲子は歯軋りし、悔しげにコンソールを叩くのであった。
「終わったかな?」
「これで一段落だが‥‥」
 覚羅に続き呟く剣一郎。どうにも玲子の様子だけが妙だ。
「きゅーちゃん、私は役に立てましたか?」
 と、全く空気を読まず声をかけるミルヒ。しかしそれで気を取り直したのか、玲子も笑顔を浮かべた。
「ああ、勿論だ。後で抱っこしてあげよう。皆守も無事か?」
「大事はありませんけど‥‥」
 胸に手を当て、深く溜息を吐く京子。外山はレインウォーカーに近づき、片手を差し出す。
「あの野郎、ナメやがって。次はぜってーぶっ倒すぞ」
 フェニックスの手を借り立ち上がるペインブラッド。こうして謎の乱入を受けた彼らの戦いは終わった。
 成田空港基地へ向かう敵増援は次々に撃破され、次第に引き上げに掛かっていく。増援を阻止した以上、この戦局の行方は空港へ向かった部隊に任されたと言えるだろう。
「‥‥九頭竜『少尉』、か」
 空を仰ぎ呟く玲子。胸の中に降り積もった霞は、白い吐息と共に空に消え行くのであった。