タイトル:【AP】魔術学園マスター:ジンベイ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/19 09:44

●オープニング本文


『然り、一つの強力な魔術がかつて実際に存在し、そして現在もなお存在する』
                エリファス・レヴィ『高等魔術の教理と祭儀―教理篇―』

●魔術の園
「この奥かぁ……」
 ラストホープ島、カンパネラ学園。広く、世に魔術学園と呼ばれる。
 島のあちこちにロスト・テクノロジーの残滓がある。たとえば、『AU―KV』と銘打たれた鋼鉄のゴーレムや、『KV』と呼ばれる鋼鉄の竜。他にも、電撃を飛ばして広範囲を攻撃する杖や、触れると光る剣になる筒など、様々なものが発見された。そして、今でも封印されたままの兵器があるという。
 学園の生徒、アサミは暗い穴を覗き込んでいた。高度な技術によって作られたらしい、長い階段が見える。
「ねぇ、本当に行くの? 封じられた魔物の巣だから危ないって先生が言ってたじゃない」
 眉を困らせるアリーシャに、アサミは勢いよく答える。、
「やらいでか! 魔術師たるもの好奇心に負けずに何に負けろと!」
「いや、勝ちなさいよ」
「はん、怯えっぱなしのアリーシャたんは学生寮で結界に守られながら寝てればいいよ」
「なんですって!」
 がるる、と唸るようにして睨み合う。ふいに、見回りの明かりがパッと辺りを照らす。アサミが前方に、文字の書かれた札をかざし、「オン、マユラキテイ……」と繰り返し唱えると、見回りのゴーレムは行き過ぎていった。
 洋の東西を問わず、学生には魔術師が集められている。誰が、どのような魔術を持っているかは、教員でも書類を見なければ把握できないほどに雑多である。それほどに幅広いのであった。
 この階段の先には、かつての大戦時に、学園の地下に封印された魔物がいるらしい。決して近づいてはならない、と、教員から釘を刺された。しかし、そう言われると、アサミは行きたくなるのであった。止めようとしたアリーシャを巻き込み、結局、階段を下りていく。
 真っ暗な中、カンテラの明かりを掲げる。アリーシャが何かを唱えると、辺りにボウッ、と炎が点った。最下層らしい。なにもないではないかと見回すと、キラリと、光を返すものを発見した。
「なに、これ・・・・」
 ――それは。
 巨大にして暴力的な金色の輝き。無限飛行の翼。物理を凌駕した超生物。

 超改造KVグリフォン百式!!!!

「なによこれーー!!」
 アリーシャの叫びに反応したか、その瞳が赤く輝く。のっそりと鎌首をもたげ、鋼鉄の竜は吼えた。
「うわ、こっち見た、こっち来るー!」
 バッ、とアリーシャが横を見ると、既にアサミは逃げ出しており、自分ひとりが取り残され。
「うう、やれば出来る!」
 やけになって竜に飛び込んだ。
 ――無論のこと、一撃のもとに弾き飛ばされる。アサミが報告し、非常体制となった。

※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

●参加者一覧

六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
天宮(gb4665
22歳・♂・HD
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
柳凪 蓮夢(gb8883
21歳・♂・EP
ウェイケル・クスペリア(gb9006
12歳・♀・FT
剣城 咲良(gc1298
24歳・♀・DF

●リプレイ本文

●精鋭
 講師会は紛糾していた。サボリの常習犯、ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)や、〈教団〉からの留学生である皇 流叶(gb6275)、「大魔法を使える天才」を自称するウェイケル・クスペリア(gb9006)に、母国のためカンパネラ見学中の天宮(gb4665)、さらに『剣客』六堂源治(ga8154)、空間操作者、柳凪 蓮夢(gb8883)、近接戦をこそ好む、格闘スモーカー、剣城 咲良(gc1298)と、非常に個性の強い面々が集まったためである。
 誰がまとめるのだという話であった。講師の一人もつかなければ、内外に示しというものがつかない。
「では、シュッツ先生に」
 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)。特技はフォローと後処理と目されている苦労性の新任教師である。穏やかで、優秀な先生ならばと、皆が頷いた。シンは、仕方なく、それを請け負う。
 かくして、鋼鉄の竜討伐の部隊は作り上げられた。アクの強い面々を引き連れて、シン一行は封じられた洞穴を降りていく。鋼鉄の竜の暴れる音が地下に響き渡る。荒ぶる竜の異形を前に、魔術師たちは怯まずに立ち向かう。
 
●竜狩り
「ここが魔術の殿堂、カンパネラ学園かぁ・・・・でっかい学校ッスねー」
 討伐の一行は集まっていた。噂を聞きつけて素早くやってきた源治は、薄っすらとした陽光を浴びる、学園の全景に、ため息を漏らした。その横では、まだ眠そうに欠伸をするヴァレスを、流叶が上目遣いに睨んでいる。
「私が居るからって無理しないでよ?」
 ヴァレスが龍に挑むのを止めに行ったはずが、「じゃあ手伝ってよ」と言われ、済し崩し的に流叶は参加することとなった。なにか上手く乗せられたようで、不満に頬が膨らむ。
「そんなに怒ってたらハゲちまうぞ?」
 柔和な笑顔を浮かべるヴァレスに、流叶は赤い目をギラリと輝かせた。そんな様を見ても、「ま、なんとかなるさ♪」と、軽い口調で微笑む。
「さて参りましょうか・・・・」
 ぽつりとした天宮の言葉に、封じられた洞穴の中へと、一歩を踏み出した。錬金の類か、滑らかな壁が続いている。降りていくに連れて、竜であろうか、不可思議な音が聞こえる。
 轟、と、炎が前面を舐めた。
 竜は、すぐそこにいるらしい。まとめ役であるシンがスッ、と手で合図を送った。が、すでに数人が飛び出しており、シンが後を追う形となった。鋼鉄の竜は、その顎をグパリと開いて討伐隊を迎え、首の付け根のあたりから伸びる、小さな口のような部分から、猛烈な火力が放たれる。
「歪曲・・・・」
 呟きと共に、蓮夢がゆらりと手を向けると、前衛陣の前方の空間が粘性を持ち始め、湿った泥がそうなるように、ぐにゃりと歪みはじめる。そこへ竜の息吹が突き刺さると、何が起きたか、鉄のつぶてを持つ炎は、魔術師たちの身体を反れ、洞穴のそこかしこに飛び散った。
 蓮夢の魔術の一つ、空間歪曲の一面であった。術に守られ、咲良は横っ飛びをすると、ググッ、と拳に力をこめた。煙草の先が赤熱する。肉体強化の術式を身体にまとわせ、届かないはずの距離から拳を振るった。
「疾ッ!」
 拳から、衝撃波が飛ぶ。それは進むと共に威力を減じ、竜の鋼鉄の肌を傷つけるには至らない。しかし、鎌首をもたげ、竜は、その細長い単眼を咲良へと向けた。転瞬、
「支配せよ。祖は蹂躙しせり者。吹き荒ぶは身を抉る風。魂奪う死霊の木枯らし――」
 歌声のような、詠唱の声が聞こえる。ウェイケルの『雷神の面』が怪しく光った。手に持つ扇をヒラリと揺らし、ピッ、と竜を指し示す。面の光がいっそう激しくなり、
「亡舞――生者必滅!」
 言葉とともに、どこかから風が吹き上げ、瞬く間に竜巻が起こる。鋼鉄の皮膚に無数の切り傷が走った。だが、血が垂れることも翼が千切れることもなく、猛々しく竜は彷徨をあげ、炎を吐き散らす。
「一式、二式!」
 迫る火の飛礫に、足をたわめた源治は一散に駆け出した。彼の操る『六式強化魔術』のうち、脚部強化の一式と、表面へ魔力を流し、防御力を強化する二式を発動させる。目前に迫ろうとする火に、
「四式・・・・!」
 目を剥き、かすかに顔を傾かせる。頭骨を砕く飛礫は、頬を覆う魔力の壁を撫でるに留まった。竜の咆哮が轟く中、その頭上をふわりと飛ぶ影がある。重力を魔術によって調重(コントロール)し、源治へ向いた竜の背後を取る。
「超重力弾(ブラックホールブレット)」
 ヴァレスは竜の後頭部へと、兄弟な重力を弾丸のようにして撃ち放つ。ベキリと鱗はへしゃげ、首があらぬ方向を向く。――仕留めたか。思うのもつかの間、竜の身体がフワリと浮いたかと思うと、そのまま突進してきた。
 頭部が擦れただけだが、地に着かぬままのヴァレスの身体が壁へと叩きつけられる。減重(ゼロ)によって衝撃を緩和する刹那、再び火の飛礫が飛ぶ。超重力壁(ゲート)、あるいは逆重斬断(カット)で防ぐ――には、遅い。
 重力以外の魔術も習得しておくべきであったか、と、臍を噛む刹那、
「基礎は大事ですよ」
 障壁が、ヴァレスの前に展開された。レザーグローブをはめたシンが印を結んでいる。飛礫は、その障壁に弾かれて、背後の壁へと突き刺さる。ゆっくりとヴァレスは地面に着地し、流叶の傍らに降り立った。
 そこへ、再び飛礫が飛ぶ。流叶はヴァレスを掴む。竜の攻撃が突き刺さるも、そこに二人の姿はなかった。
「ん、危ないな」
 テレポートによる緊急回避で数十メートルも瞬時に移動し、流叶は竜を見た。駆ける速度は人では追いつくまい。
 竜の足元に、不意に、無数の物体がまとわりついた。跳ね飛ばされ踏み潰され、それでもなおひしめく。あるものはシンの姿をとって誘導し、あるものは、天宮の姿をとった。竜は苛立たしげに、腹部から何か撃ち出す。
 轟炎が辺りを舐めた。弾け飛ぶ地面と壁の欠片を、シンは障壁で防ぐ。そんな中、消え去ったシンや天宮の姿をとったものの背後から、ゆらりと巨大な影が現れる。巨人。竜に比するほどの巨体は腕を振り上げる。
「どこを見ているのですか? 私はこちらです」
 天宮の声と共に、新たに一騎の影が竜へと躍った。漆黒の鎌で背後から切りつける。そちらを向こうとした竜を、巨人が、その腕でがっしりと押しとどめた。
 シンや天宮の姿をとった、定型を持たないものは、天宮の陰陽道における『式神』である。巨人、騎士は、カバラによるものだという。東西を問わぬ魔術に、竜は絡め取られ、その翼を鎌で刈り取られた。
 動きを止めた竜の足元で、ゆらりと空間が歪む。飛び散る竜の鱗を空間歪曲で弾き、蓮夢は、その脚の鱗に手を触れた。『解析』の魔術によって、蓮夢には相手の情報を知ることが出来るのだった。
(……これは)
 ゴーレム、に似るが、違う。涼しげな額を、微かに蓮夢はしかめた。生命体ではない。が、無機物と言い切れるほど、見知った構造でもなかった。ズシン、と、巨人の押さえに、竜が抗い始めたのを感じ、蓮夢は身体能力を活性化させ、素早く後方へ飛んだ。傍らを過ぎる影へ、「目、膝・・・・」と、ポツリと弱点を告げる。
 影は二つ、ある。「承知」と、言ったかどうか、片方の青髪がふわりと風に舞った。
「師匠直伝! ・・・・なんとかの極み!!」
 左側から迫る咲良が腕を振り上げ、膝の関節らしき部分へ、魔術によって強化した拳を叩き付ける。
 破砕。『く』の字型に膝が折れる。拳による純粋な打撃と共に、魔術による衝撃波が、一点を突き抜けた。咥えた煙草を吸い込みながら、咲良は体勢を崩す竜を足蹴にして後ろへ跳んだ。
 逆側から飛んだ影は、グッ、と腕に魔力を集中させる。強化魔術における五式であった。源治は四式によって飛び上がると、バタバタと音を立てる着流しの腰に佩いた刀の柄を握る。ほんの無銘の刀が、魔力を帯びた。
 しかし、抜かない。もはや竜の単眼はすぐそこにあった。刃は名刀の切れ味を宿し、手は十分な力で柄を握りながら、抜かない。間合いに入った瞬間、源治は、ピンと鍔を弾いた。
「奥義・・・・六式一閃!!」
 風を切る、ヒュッ、という音と共に、その長い目が二つに割れた。硝子の割れたような音が響く。
 二点、破壊した。源治が、そのまま様子を見ていると、どこに仕舞われていたのか、前足に鋭い刃が握られ、天宮の巨人を切り裂く。巨人の腕は飛び、源治の横を過ぎて、猛烈な音と土煙を立てて落ちた。
 さきほど、ヴァレスに飛んだ攻撃が、再び放たれようとしていた。源治は頬を引きつらせ、
「見た事ねー攻撃ッスけど、危ない事は分かるッス〜!」
 ヒュッ、とその場から離れる。転瞬、轟音と爆炎が辺りを舐め尽す。破片と衝撃波が撒き散らされ、素早く離れた源治でさえ、爆風にきりもみするように弾き飛ばされた。
 その身体を、シンが片手で受け止める。見れば、蓮夢や咲良もそこに居た。その場には風も炎も飛礫も来ていない。結界――片手を源治にやりながら、前方で、シンは杖をかざし、呪文を唱え続けている。
 その杖は、さきほどレザーグローブであった。シンの魔術の根幹となる不定型の核は、『リチュアルフォーム』と呼ばれる、杖の形を取ったのである。源治、蓮夢、咲良の空間を踏まえても、防御陣にしては、少々大仰であった。
 自由になった竜が、あたり構わず、炎の飛礫を撒き散らす。目を潰され、狙いを定められなくなったせいか、あるいは、予想外の痛手に、怒り狂っているのかもしれない。
 シンの詠唱は止まない。続く暴走に、天宮が竜を檻のように結界を張り巡らせる。だが、どれほど保つのか、再び、あの轟炎が迫る。瓦礫が飛び散り、天井がガラガラと落ちていく。
 竜の動きが、次第に緩慢になっていった。疲れが来たのか。――違う。動かなくなるのではなく、まるでスローモーションのように、動きそのものが遅くなっている。ニッ、とシンが頬を歪ませた。
「やっと気付いたみたいですが、もう遅いですよ」
 敵の速度を時間とともに遅くしていく儀式魔術。もはや、あの轟炎さえ、吐き出すには遅すぎる。シンの詠唱は、ようやく止まった。同時に、後方では勝機とばかりに、流叶がエンハンスをかけていた。
「さぁ、とっとと片付けてティータイムだ♪」
 広げ続けていた超重力壁(ゲート)を閉じ、ヴァレスはふわりと竜に踊りかかる。動きの遅い竜の懐へ入ると、手をかざし、シュッ、と空を裂いた。それに合わせるように、竜の鱗が切り裂かれる。
「逆重斬断(カット)」
 特定空間に真逆の重力を発生させ、相手を切り裂くというこの技は、エンハンスの力で増幅されている。苦悶の響きのようなものをあげ、竜の首もとにある小さな口から、ゆっくりと弾丸が放たれようとした。
「我流! 猛龍拳!!」
 突き上げる拳が、その口を粉砕する。咲良はサングラスから覗ける黒い瞳で、ヴァレスに笑いかけた。上昇中は無敵のアッパー。咲良の格闘魔術は、食らった相手が台を殴ることや灰皿を投げることがよくあるとか。
「面倒なのでさっさと倒してしまいましょう」
 残りの口へ、シンの光の矢が飛ぶ。不定形の核は、古代武器とされる『エネルギーガン』の形をとり、狙い過たず射抜いていった。その光線の援護を受け、咲良とヴァレスは距離を離す。ウェイケルの魔力が感じられたからだ。
 あの強烈な炎を吐こうと、竜は咆哮めいた叫びを上げる。
「流叶、結界で奴を囲め!」
 ウェイケルの叫びに、流叶は応えた。『ガードナー』、それは強力な結界と言うだけでなく、珍しい特性を持つ。
「これが私の剣、己が牙に刻まれよ!
 竜の炎は――。
 結界に当たった瞬間、グルリと反転して、その身を焼いた。反射。爆炎も爆風も、全て、その鱗に呑まれて行く。
「さぁ、炉に火を灯せ。地を飲み海を示し、高らかに詠うは幻想。森羅を照らし万象を見つめ、那由他の果てすら暴き明かす」
 昂ぶった様子でウェイケルは唱え、いっそう高く歌い上げた。
「天の星々でさえ焦がれるような。真っ赤な真っ赤な火を炉に灯せ――!」
 面が光る。広げた扇が舞うと共に、チラチラと放電の火花が飛び交う。その詠唱は、鮮やかに地下に輝いた。
「幽曲――神霊!!」
 扇が止まる。動きが止まる。火花が止まる――。
 そして、雷撃が竜を襲った。結界の中で雷撃は荒れ狂い、外へ漏れ出ようとした威力さえ、結界の特性で再び竜へと向けられる。火花が散り続け、目も開けられないほどの光が地下を埋めていく。
 それでも、倒れていない。雷を浴び続ける竜の威容が、結界越しに眺められた。流叶は残った魔力を計算し、一人、頷く。法術とともに、得意とする、もうひとつの系統を唱えあげる。
「魔術理論最適化・・・・さぁ、暴れてきなさい!」
 前方に、濃い影が映る。それは天宮のものと同じ召還の術式であった。しかし、カバラという理論に基づくものと、『教団』において研鑽した流叶のものは別である。命令は聞くが、何が出るかさえ分からない。
 影は形を作った。それに合わせて、流叶の頭に、その名が浮かんだ。
「風流」
 銀色の輝きが、目に入る。二足歩行のそれは、人の形を模したようでもあった。長大な筒を構えると、『風流』と呼ばれた召還獣は結界の消えた瞬間、竜めがけて、その口を向けた。
 炎が弾ける。竜はグラリと傾き、そのまま、倒れた。討伐は終わった。誰もが忘れていたかもしれないが、学園生のアリーシャが、瓦礫の下から、救いの手を伸ばしていた。

●その後
 ヴァレスは言葉通り、ティータイムに入った。コートから一式取り出す。流叶は何か言いたそうに見つめ、他のものたちは驚いたものと、あまり表情を変えないものがいた。
「なんか、似てたッスねー」
 源治が、最後の召還を思い出してつぶやく。蓮夢はチラリと、流叶へ目をやり、それから源治を見た。その視線で伝わったのか、源治は、弁解のような言葉を言って、「それに」と、剣術でもそうだが、と続ける。
「剣術は殺人術って言うヤツも居るが・・・・やっぱ力は使いようだと思うんスよね」
 竜を召還する力も同じだと、言外に源治は語っていた。そうして、蓮夢にチラリと目を向ける。小さく、蓮夢も頷いた。どこか、しんみりとした空気が流れる。
「あ、これ美味しい!」
 そんな空気を、咲良が壊す。スコーンの屑を頬に付けたさまは、ちょっと可笑しく、皆して笑った。
 シンと天宮は、いない。シンは、講師会で、今回の騒ぎについて報告していた。竜の残骸を天宮が受け取り、調べているようであったが、どうにも、不可思議な点が多く、遥か昔、この地には、なにか尋常ならざる技術があったのでは、と話した。しかし、講師陣からは、失笑を買う。御伽噺ではないのだからと。
 シンは天宮から借りた本の一節を思い出した。『然り、一つの強力な科学がかつて実際に存在し、そして現在もなお存在している』。シンは時計を見て、ティータイムを逃したと、そんなことを思った。