タイトル:あ〜られ〜や こんこんマスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/13 20:49

●オープニング本文


「そういえば、もう一ヶ月くらいになるのかしら‥‥ふぅ、あの時はひどい目にあったわね」

 まだ夜明け前の少し暗いロビーで軽くため息をついているのは、明るい水色の法被を着た20歳代前半くらいの女性であった。どうやら彼女はここの旅館の従業員らしく、お客が目覚めるまでに館内温泉の掃除をしようと向かっている途中だったらしい。
 ここの旅館はかつて、奇妙なキメラに襲われた過去があった。おかげでその時はお客が激減し、本気で旅館が潰れるかどうかの瀬戸際にまで追い込まれたのであった。幸いすぐに来てくれた能力者達が無事にキメラを退治してくれたから良かったものの、まだまだ油断が出来ない状況であることは間違いない。じわじわと戻りつつある顧客を引き止める為にも、より一層のサービスを心がけなければならないという事だ。

「さて、と‥‥そろそろ行きましょうか。あまりゆっくりしていると気の早いお客様が来てしまうしね」

 ゆっくりと椅子から立ち上がり、温泉場に向かう彼女。ここの館内温泉は朝の5時から6時までと、昼の14時から15時までを清掃時間として利用不可としている。つまりはその間に掃除を済ませておかないと、お客とバッタリ‥‥なんて羽目になってしまう。女湯と男湯は別々ではあるものの、出会うと気まずくなってしまうのは確かだ。少し早めの行動を心がけている彼女は、5時になる10分前に女子用更衣室に到着していた。‥‥とそんな時、中でパシャっと湯の跳ねる音が彼女の耳に入った。

「あら?何か中で音がするわ‥‥もしかしてぎりぎりまで入っていたのかしら?」

 もしそうだとすると、そろそろ出てもらわないと困る。彼女はそっとドアの向こうから中に向けて声をかけた。

「あの〜、大変申し訳ありませんが‥‥もうすぐ清掃時間なので‥‥」

 しかし応答が無い。もしかして倒れているのでは‥‥だが湯の音は明らかに継続中だ。そうこうしている内に5時になった。申し訳ない気持ちを抑えつつ、ゆっくりと中に入る‥‥と、明らかに異常な量の湯煙が温泉場の視界を覆っていた。手を伸ばしたら指の先も見えないほどだ。いくら気温が低い地域とはいえ、完全かけ流しの温泉にこれほどの温度は無いはず。

「これは一体どうなって‥‥って、ちょっと何よあれは!?」

 湯煙を何とか掻き分けて中に進んでいくと、そこには温泉にゆっくりと浸かりながら汗を流している雪だるまの姿があった。頭にはバケツの代わりにタオルを、腕は木の枝の代わりにホースみたいな伸び縮みする素材、つぶらな瞳はオレンジの石鹸を埋め込んだ不気味な雪だるまであった。そんな異質な物体が熱いはずの温泉に浸かり、流れる汗(?)を拭おうともせずじっと佇んでいた。その体はまったく溶ける気配も見せず、悠然と湯の中に入り込んでいる。

「そ、そんな‥‥また雪だるまなの〜!?しかも今度は温泉に浸かっちゃってる〜!?」

 愕然とした彼女を見つけた雪だるまは、ニヤリと笑った(?)ように振り向き‥‥口部分から強い温風を噴出してきた。すると、なんとその温風に当てられた彼女の法被が徐々に溶け出していくではないか。しかも痺れ成分が混じっているのか、吸い込んだ時点で彼女の体が少しずつ体が動かなくなっていった。そうなると言わずもがな‥‥まるで裸婦デッサンのモデルに使えそうな魅惑の素材が一体出来上がり、というわけだ。

「‥‥そ、そんな〜〜!!ちょっと誰か来て頂戴〜〜!!」

 美しい裸体を晒した状態である彼女の叫び声もむなしく、邪魔者がいなくなった事を確認した雪だるまはゆっくりと温泉に浸かるのであった‥‥

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
旭(ga6764
26歳・♂・AA
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
セラ(gc2672
10歳・♀・GD
沙玖(gc4538
18歳・♂・AA
ジュナス・フォリッド(gc5583
19歳・♂・SF
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN
リル・ミュー(gc6434
15歳・♂・DG

●リプレイ本文

●男湯の死闘
「お、温泉に入った雪だるまか‥‥一体何がしたいんだ?」

 更衣室からひょこっと顔を出して覗き込んでいる旭(ga6764)が、実に微妙な顔をしていた。流石に温泉にゆったりと浸かっている雪だるまという存在を見て、すぐに頭が理解をしてくれないのだろう。お湯の供給を止めようかとも考えたが、下手にお湯を無くして足元が滑っては敵わないと断念した。

「この宿も本当に運がないな‥‥だが、放っておくわけにはいかない」
「さっすがジュナス、頑張りやさん。もし俺が痺れちゃったらタ・ス・ケ・テ・ネ♪」
「安心しろ。そうなったら全裸のまま冬山の中へ放り込んでやる」

 真剣な顔をしながら前を見つめているジュナス・フォリッド(gc5583)の後ろで、茶化すようにニカッと笑いかけるリル・ミュー(gc6434)。以前からの知り合いである彼らは、前回の戦いのように軽口を叩きながらも準備は怠っていないようだ。‥‥多分。

「‥‥何はともあれ、迷惑なキメラであることは確かだ。一気に片付けるぞ‥‥」

 向こうに気付かれる前に片をつける、そう考えた沙玖(gc4538)が皆の先陣を切って温泉内へ入り込んだ。流石に気付いたのか、雪だるまも顔をこちらへ向けるが上手く動きを捉えられないようだった。

「先手必勝だ‥‥まずはこれをくらえ‥‥!!」

 脚部に取り付けた装甲型の超機械で回し蹴りを放つ沙玖。しかし雪だるまは少し震えたものの、動きを止めることは無かった。そしてかえって敵の攻撃を受けやすくなる位置に立ってしまった沙玖へ向けて、逃さずブフ〜っと白い温風を噴出す雪だるま。上手く直撃は避けれたのだが、鎧の内部で何か股間部分がスースーする感覚を感じ始めた。

「‥‥‥‥‥‥」
「あれ、沙玖の動きが鈍くなったよ?」
「まさか‥‥奴の鎧の下で何かが起こったのか!?」

 まさかスパッツに穴が開いたとは気付かないジュナスは、慌てて沙玖に近づく。しかしそうはさせまいとホース状の腕を振り回しながらブレスを吐く雪だるまの周りは、一気に白濁と化し視界が悪くなっていった。こうなると最早どれが湯気でどれが奴の息か分からない。

「く‥‥こうなったら温泉に潜って攻撃をしかけるしかないね!!」
「それじゃ〜俺は後ろから援護攻撃〜っと。‥‥くく、湯気で見えない以上不可抗力だもんね〜‥‥」

 旭が煙の届かない温泉の中へ潜り込んで雪だるまの元へ向かうのを見た後、リルは小銃を構えて援護攻撃を仕掛ける。‥‥何やら別の狙いもあるようだったが、気付く者はいなかった。

「くっ、大丈夫か!?」
「‥‥すまない。奴に知覚武器は効きにくいようだ‥‥」

 何とか煙を逃れたジュナスと沙玖は、背後の非常口を開けて難を逃れたようだ。その際に若干ジュナスの手足が痺れかけたが、大事には至らなかった。その間にも中では激しい銃声が聞こえており、戦いは続いている。

「ぶくぶくぶく〜〜〜!!(訳:これで終わりだ〜〜!!)」

 水中剣を思いっきり雪だるまの足元に突き刺すと、何故かそこから雪崩状に雪だるまの身体が溶けていくではないか。一気に冷たくなったお湯から思わず顔を上げた旭が見たものは、あっさりと湯に溶け出してしまった雪だるまの成れの果てだった。

「表面は硬いが、一旦割れば内部は熱に弱いままだったのか‥‥」
「‥‥確かに。これで次の戦いがやりやすくなる‥‥」
 
 崩れ去った雪だるまを何とか視認できるころには、ようやく視界が戻ってきた。今回の戦いで雪だるまの弱点が分かった事は大きい。4人はすぐさま次の戦い方を考え始めるのであった‥‥


●女湯の激闘
 そして時を同じくして、女湯のほうでも戦いはクライマックスに到達しようとしていた。男湯でも判明した事だが、知覚系が効き難く表面はかなり硬い雪だるまの装甲を削るにおいて、彼女達は特に時間がかかってしまっていた。

「こ、こんな姿を殿方たちに見られでもしたら、私‥‥うぅ」
「気にしない。今は女同士、恥ずかしがるのは後にしろ」

 巫女装束がうっすらと溶けて、抜けるような白い肌を点々と晒しながら顔を赤くしている石動 小夜子(ga0121)に対して、極めて冷静にセラ(gc2672)が言葉を発した。そんな彼女の衣服はまだ無事に見えるが、後ろから見るとお尻の辺りで花柄の可愛い下着がふんわりと見えている。

「うぁ‥‥で、でも今は気にする時じゃないね!! とにかく一刻も早く倒さないと!!」
「は、はいぃ‥‥でもこのままでは皆さんが丸裸になってしまいます‥‥」

 今いる女性達の中で一番効果的な攻撃方法を持っている刃霧零奈(gc6291)だが、接近する特性上どうしても一番被害が大きくなってしまっていた。ぷるんと隠すものも無くなった豊満な乳房を揺らしながら必死に攻撃しようと試みるが、うかつに吸い込むと行動が出来なくなると言うこともあって手を出し損ねていた。そして動きを止めようと華麗に舞いながら呪歌を歌っていた天戸 るみ(gb2004)だったが、敵の動きは鈍くなっても一度立ち込めてしまった煙はどうしようもなく、石動と同じような半裸状態の巫女姿を晒しながら顔を真っ赤にしている。

「このままではジリ貧だ。私と石動が隙を作るから、その間に接近しろ」
「分かったよ‥‥それじゃ〜やってみようか、ね!!」

 知覚武器が効き難い以上、とにかく突撃するしかない‥‥覚悟を決めた刃霧がぎゅっと拳を握り締める。その後ろでは小銃を構えた石動と赤く光る盾を向けたセラ、そして舞を続けている天戸がスタンバイする。

「皆さん、どうかお願いします。私はこのまま敵の動きを鈍らせておきますので‥‥」
「銃は苦手なのですけど‥‥援護は任せて下さいね」
「よ〜し‥‥いっけ〜〜!!」

 力を込めて雪だるまの前に駆け出した刃霧を合図に、後ろから一斉に援護攻撃が飛び出す。銃弾が表面を削り取り、光が目をくらませている隙に刃霧が下半身の玉(言葉どおりの意味である)に一撃を打ち込んだ。

「ぶふぉ〜〜〜〜!!」

 威力としてはひびが入った程度だったのだが、やはりそこから一気に温泉のお湯が流れ込み、断末魔の息吹を吐き出しながら雪だるまの身体はお湯に溶けていった。ちなみに最後の断末魔息吹によって、更に皆の被害が大きくなった(主に乳や尻などが丸見え)のだが‥‥と、そこへ皆の耳に至近距離での破裂音が聞こえた。

「あ、あら? 殿方の方から‥‥何の音でしょうか?」
「男湯とを隔てる壁からだな。‥‥流れ弾か?」
「と、とにかく今はこの状況を何とかしませんか〜?いくら男の人がいないからって恥ずかしすぎます‥‥」
「そ、そうだね‥‥早く服を着替えて次に行こうよ、ね?」

 流石に裸体を晒しながらのんきに会話はできないと考えてか、顔を赤くした天戸と刃霧が首を傾げる二人の腕を引っ張って更衣室に連れて行こうとする。向こうでは無事に戦闘が終わったのか‥‥とにかく、4人は服を整えて次の集合場所のロビーへと向かうのであった。


●露天温泉でのバトル
「本当に2体がお湯に入っていますわ‥‥ふふ、仲良しさんなのですね」
「でも、おかげで今回はお湯に潜って回避という手段が取れないな‥‥多少の被害はやむをえないか」
「‥‥多少の‥‥被害、か‥‥」

 石堂がにこにこと離れた場所から眺めている横で旭が苦渋の顔をしていた。あの息吹は吸い込まなくても被害が出る‥‥それを深く感じていたのか、沙玖の顔はどこか不機嫌そうである。

「だ〜いじょ〜ぶだって!! いざとなったらジュナスが何とかしてくれるって!!」
「まったく、お前のその自信はどこから出て来るんだか‥‥って、結局俺なのか!?」
「ほらほら二人とも。今はさっさとあいつらを何とかしようよ、ね?」

 リルとジュナスがお決まりの漫才を繰り広げようとしたとこりで、ポンポンと二人の肩を叩いて笑いかける刃霧。つい先ほど戦ったばかりなだけに、相手の弱点をしっかりと対策済みなのか、全体の雰囲気は軽い。

「そ、それでは作戦を開始しましょうか。確か男女で分かれて挟み撃ちでしたよね?」
「うん、わたしはそ〜聞いてるよ〜♪ それじゃ〜がんばろ〜!!」

 天戸が皆におずおずと話しかけると、横でにぱ〜っと笑ったセラが大きく手を振り上げた。そして、男女で分かれて挟み撃ちを仕掛けると決めた8人が上手く配置を取り戦闘が開始する。雪だるまも最初はまったく気付いていなかったらしいのだが、流石に視界に武器を持った侵入者を認めると敵意をあらわにして温風を吐き始めた。

「ふっ、二度も同じ手が通じると思うな!」

 先ほどの恨みがあったのか、今回の沙玖は気迫が違った。敵が行動を起こすよりも一気に飛び込み忍刀で凄まじい斬撃を繰り出すその黒鎧姿は、まさに鬼神のごとくである。相手も思わずブレスを吹き付けてきたのだが、その方向は明後日の方向を向いて‥‥ひらりとリルがかわした後に立っていたジュナスへ直撃した。何の防御もしていなかったジュナスの身体は一瞬で痺れ、均等の取れた引き締まった肉体を隠す物も無く、己の息子とともに全員の目の前に晒された。(幸い女性陣の方までは見えなかった)

「‥‥リル。前回に引き続き、またしても‥‥」
「い、いや〜んジュナス〜。怒っちゃや〜よ♪」
「だ、大丈夫?とりあえずこれで治ればいいんだけど‥‥」

 慌てて旭が前線から戻ってきて、痺れるジュナスにキュアをかける。おかげで身体の自由は徐々に戻ってきたのだが‥‥恐らく最初のターゲットは決定だろう。そうこうしている内に一体の雪だるまが崩れ去っていくのが皆の目に見えた。残るは一体‥‥

「今度は皆さんも一緒なんです‥‥わ、私の歌を聴きなさ〜〜い!!」
「わたしをなめてると〜、いった〜い目にあっちゃうよ〜♪」
「今度は先ほどのようには‥‥いきません!!」

 天戸の呪歌で若干動きが鈍くなった雪だるまへセラが援護攻撃を仕掛け、石動が口元へ向かって一気に飛び込む。先ほどのような室内と違って、石動の動きが段違いであった。上半身をくまなく切りつけている間に、静かに息を整えていた刃霧が下半身部分をめがけて仕掛ける。

「こ、今度は男陣の目があるんだし‥‥吐かれるわけにはいかないから、ね!!」
「ブフォ〜〜〜〜〜!!」

 全身をくまなく切り刻まれた表面へ渾身の一撃を叩き込まれた雪だるまは、やはり崩れ去る前に断末魔の息吹を吐こうとした。‥‥が、口元がぼろぼろになっていた為、温風は超至近距離にしか流れなかった。そして間の悪いことに雪だるまが崩れ去った後、男性陣の目を遮る物は何も無かった。‥‥結果、石動と刃霧の美しい裸体が隠す間もなく一瞬で全員(今度は男性陣も含む)に晒される。

「‥‥み、見続けたら、怒ります‥‥」
「う、うぅ‥‥見ないでよぅ‥‥」
「だ、大丈夫ですか!?」
「こ〜〜ら〜〜!! 男達はあっち向いてろ〜〜!!」

 ペタンと座り込んで涙目で睨みつける石動(何とか大事な部分は隠せているようだ)と、しゃがみ込んで真っ赤になった刃霧(隠そうとはしているのだが、腕の間から乳がはみ出ている)には、すぐさま天戸とセラが上着やバスタオルをかぶせたのだが‥‥

「‥‥‥‥(タオルを持ったままじっと後ろを向いている)」
「は、早く降りないと風邪引いちゃうから‥‥(子供姿であたわた)」
「‥‥GJ!! 痛!?(見続けようとして殴られる)」
「‥‥とにかくすぐに降りるぞ。早く身体を温めないとな(殴った腕を振りながら誰かの耳を引っ張っていく)

 誰が誰の反応なのか‥‥1ついえる事は、男性陣4人の脳内保存は完璧ということだけだろう‥‥合掌。

 
●温泉を満喫‥‥?
「ふ〜〜、今度ばかりはホントにどうなるかと思ったわよ。でもやっぱり温泉は最高よね〜♪」
「そ、そうですね‥‥」

 少し粘質のある良質なお湯が豊満な身体にまとわりつき、うっすらと電灯に照らされながらう〜んと腕を伸ばしている刃霧。その横では先ほどのことがまだ尾を引いているのか、顔が真っ赤になっている石動がポチャンと口元まで浸かっていた。

「あ〜、石動さん大丈夫〜? お顔がまだ真っ赤だよ〜?」
「しっ。駄目ですよ‥‥今は静かにしてあげませんと」 

 まったく身体を隠す気も無く湯船を歩こうとするセラを、そっと天戸が引き止める。幸い今回の事件でぼろぼろになった服は旅館側が全く同じものを揃えてくれた為、持ち物が減ることは無かったが心の傷までは保障してくれなかった。

「そういえば聞きたかった事が‥‥ふっふっふ〜。天戸さ〜ん?」
「え、ええと‥‥何でしょうか‥‥何だかお顔が怖いですよ‥‥?」
「今日ずっと思ってたんだけど‥‥どうやったらそんなに肌が綺麗に保てるのかしら、ね!?」
「きゃう!?ま、またそんな所をいじられるだなんて〜〜!!」

「‥‥‥‥ふう」
「石動さ〜ん、元気出してね〜? セラは石動さんの身体、好きだよ?」
「あ、ありがとう、セラさん。もう大丈夫ですから、一緒にお話しましょうか?」
「わ〜〜い♪どんなお話〜?」

 ざばざばとお湯を掻き分けながら豊満な身体を直接押し付けながらうりうりと恥ずかしがる天戸に頬擦りする刃霧と、無邪気に励ますセラに対し微笑みながら口を開く石動。そんな彼女達に、今新たな脅威が迫ろうとしていた‥‥

‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

「い、いじられる‥‥!? ど、どこをいじってるのかな〜‥‥?」
「‥‥残念だが、またお前の考えてる事が分かった。どうやら前回の一撃が堪えていなかったようだな」

 前回を彷彿とさせるような二人のやりとり(壁に張り付くリルに向かって、桶を片手に歩いていくジュナス)を、旭が面白そうに湯船から眺めていた。今回は色々と企画外の敵だっただけに、精神的にも疲れた沙玖は本当にぼ〜っとしている。‥‥顔はあくまで無表情だったが。

「‥‥‥‥温泉はゆっくりと浸かるべきだ」
「はは、確かに気持ちは分かるけど僕も沙玖と同意見だな〜」
「大丈夫だよ〜‥‥今回はあくまで覗くだけだから、さ‥‥ほらほら、ジュナスも一緒に‥‥ぎゃん!!」
「‥‥まったく。お前はどこへ行っても変わらないんだからな‥‥ご丁寧にこんな穴まで開けやがって」

 最初の戦いでリルが企んでいた小銃攻撃は、どうやらこれの事だったらしい。よく見ないと分かりにくいが、女湯と男湯とを隔てる竹製の壁に小さな穴がぽつぽつと開いている。その向こうから桃源郷を思わせる風景が広がっているのだが、どうやら悪は滅びたようだ。

「うぅ‥‥メロン‥‥アップル‥‥ピーチ‥‥」
「ほ、本当にきみってそういうのが好きなんだね‥‥その心意気は感心するよ」
「‥‥ジュナス。お前も大変だな」
「‥‥言わないでくれ‥‥」

 ぶつぶつと不満を漏らしながら恨めしげに壁の方を見ているリルを、冷や汗をかきながら苦笑いしている旭。そして黙ってポンとジュナスの肩に手を置いて慰めている沙玖‥‥今日も男湯は平和なようだった。