●リプレイ本文
●洞窟の入り口‥‥
周囲に散らばったツルハシやトロッコの残骸等を見ながら、感慨深げに比良坂 和泉(
ga6549)がリアナの横に立っている。
「‥‥色々ありましたが、これでリーチと行きましょうか」
「ふふ、そうですわね〜♪ 過去の事を思い返しますと、本当に色々な事がありましたわ‥‥」
「い、いけませんリアナさん!! 今の時点での回想はフラグっぽいですよ!?」
何やら慌てた様子でリアナの言葉を遮ろうとしている彼の後ろでは、最近少し雰囲気が変わった(?)ともっぱらの噂である刃霧零奈(
gc6291)がニコニコと笑っていた。
「いや〜、相変わらずお二人さんは仲良しだねぇ〜。何て言うか‥‥教科書通りの付き合いっぷりというか」
「うん、言われてみればそうかもしれないね。もしくは初々しいを絵に描いた‥‥とも言えるかも」
刃霧の言葉に同調したように頷いている常木 明(
gc6409)は、比良坂の言葉を全く気にしない様子で過去を振り返っている。
「ここまで長かったような短かったような‥‥ま、せっかくここまで付き合ったんだし、結末は見届けないとね」
「そうだね〜。‥‥ふふ、でもあたしはキメラと戦えればそれで満足なんだけど♪」
「全く‥‥好きだね」
クスクスと微笑む刃霧の横顔を見て、軽く苦笑いを浮かべる常木であった‥‥
「参考になるのはこの古い地図だけ、か‥‥ま、何とかなるか」
「ふむ、大まかな道順だけでも頭に入れておけば進むのに大きな参考になるだろうね」
入り口前で、『リアナの依頼』初参加組の寿 源次(
ga3427)とエドワード・マイヤーズ(
gc5162)が探索の作戦を練っていた。
全身を迷彩服で覆った寿が広げているのは、出発前にリアナから借りた洞窟の見取り図。
幸い、昔は採掘が行われていたお陰か、図書館の古い書物の中を探ったら出て来たという事らしい。
「それにしても、彼女はいつもこういう場所へ行くのだろうか?」
「分からないね‥‥一般人であるリアナ嬢が、これまた一般人のマリー嬢と一緒にキメラのいる場所へ好んで行くなどと‥‥」
二人揃って首を傾げていると、そこへ相変わらずの『ぽわぽわ笑み』+『ツインメロン』を兼ね備えたアクア・J・アルビス(
gc7588)が近寄ってきた。
大きな胸は正義‥‥つまり、彼女は正に天空より舞い降りた大天使なのだ!!(意味不明)
「不思議に思われるのも無理はありません〜。でも〜‥‥最近気付いた事があります〜」
「ほう、それは何かな?」
エドワードが興味深げに聞き返すと、にっこりと微笑んだ彼女は‥‥決定的な言葉を続けた。
「リアナさんは〜‥‥『面白そうな所に行く』、です〜♪ ただそれだけですよ〜♪」
「お、面白そう‥‥それだけ、か‥‥」
寿が絶句している後方では、まだ比良坂とリアナが無邪気に戯れている(?)最中であった‥‥合掌。
「エリキシルかぁ、私のようなヘッポコ化学者としても興味があるね」
「ま、あの子のする事だから、実際に何が出来るかは分からないけど‥‥」
皆とは少し離れた後方の木陰で、イスネグ・サエレ(
gc4810)がのん気に水筒のお茶を飲んでいる。
そんな彼の近くで深くため息をついているマリーは、前の方で無邪気に遊んでいる(?)リアナと比良坂を眺めていた。
「今までにもこういう事が多かったのですか?」
「まあ、ね‥‥もう思い出したくも無いくらい」
苦笑いしながらイスネグの質問に答えているマリーだったが、こちらへ向かってくるエリク・バルフォア(
gc6648)の姿を見てふっと顔を綻ばせる。
「待たせたな。どうやら入り口付近は問題無いようだ。後は‥‥中の様子だけか」
「廃鉱になって結構経ってるものね。何が起こっても不思議じゃないわ」
入り口付近の調査を終えて戻ってきたエリクに、マリーはいそいそと水筒からお茶を注ぐ。
「ふぅ‥‥やはりマリーの入れてくれたお茶は上手いな。元気が出てくる」
「ば、バカ‥‥そう真顔で言わないでよ‥‥」
「おやおや、どうやらそろそろ退散した方が良さそうですね‥‥」
急に空気が変わったのを感じたイスネグがそっと出て行ったのも無理はないだろう‥‥合掌。
●いざ、探索へ‥‥
暗闇の中、カンテラの明かりだけが周囲を照らす。
道中、何回かコウモリに襲われる事もあったが、特に大きな怪我も無く進む事が出来た。
「出てくる場所も雰囲気も、雰囲気はバッチリだな‥‥」
「あうぅ〜‥‥ジメジメした所は苦手ですぅ〜‥‥」
ジメジメした雰囲気が嫌いなアクアの前で、しっかりと光源を持った寿が前を歩いている。
そんな中、何やら他の目的を持って探索している人物が一人‥‥
「う〜ん‥‥宝箱とか無いものかなぁ〜‥‥こういう場所だったら、何か一つくらい‥‥」
「‥‥まあ気持ちは分かるが、もう少し我慢してみたらどうかね? 研究者さんの悪い癖だ」
イスネグが唸りながら歩いている傍で、軽く腕を組みながら息を吐くエドワード。
あくまで目的はエリキシルの材料なのだが、やはり他に何か‥‥と考えるところは、リアナと同じく研究肌なのだろう。
‥‥そして、そんな皆の重要護衛対象であるリアナというと‥‥
「あぁ〜ん、真っ暗ですわ〜‥‥何だか怖いです〜♪」
「い、いやそんなにくっ付かれますと‥‥色々と危険な感じ‥‥です‥‥」
比良坂の腕にぴったりとしがみ付きながら、彼の腕にその豊満なメロンを押し付けているリアナ‥‥どうやら暗い事を良い事に、普段の足りない部分をしっかりと補充しているようだ(ぇ
「ぶーぶー、出てくる敵ぜ〜んぶ弱っちいじゃん」
「‥‥刃霧。弱い敵ばかりなのは分かるが、その行為はあまり褒められた物では無い」
「え〜? だって【こ〜んなに】弱いんだよ〜?」
先ほど打ち倒したガーゴイルキメラを、これでもかと踏みつけている刃霧。
流石にこれ以上進めば、よいこの皆に見せられない映像が流れそうなので思わず止めようとエリクが彼女の肩を掴む。
‥‥というか、既に敵キメラの身体はモザイクが必要な状態なのだが(汗
「まあ何て言うか‥‥相変わらずリアナさんの依頼はグダグダになるねぇ〜」
「うぅ、まあ否定できないのは辛いけど‥‥あ、そろそろ最深部に着くわ」
常木が頭の後ろに手をやりながらのん気にぼやいている横で【ル〜〜‥‥】と泣き崩れるのを必死に堪えてマッピングを続けていたマリーがふと指差す。
明かりに照らされた先に広がる空間は、今までの狭い通路と違ってかなりの広さだ。
そしてぼんやりと見える部屋の周囲には‥‥
「う〜ん〜、何だかうっすらと光る何かが見えますね〜」
「これがもしかして‥‥目的の鉱石の原石かな?」
照らされた明かりの下、アクアとイスネグがそろそろと壁を触っている。
壁に埋もれた中ではあるが、確かに所々で光る【何か】があるようだ。
「とはいえ、これを掘り出すとなるとそれこそツルハシみたいな何かが‥‥」
「ん? ‥‥待ちたまえ。どうやら我々の【敵】がお待ちかねのようだよ」
イスネグの言葉を遮るように、エドワードがそっと手元の超機械を構える。
能力者が一気に警戒を強めたすぐ先には、そろ‥そろ‥と、ほとんど音を立てないように向かってくるローブの集団。
「さて、ついに来たか‥‥マリー、リアナと一緒に俺達の傍を離れるな」
「わ、分かったわ。‥‥気をつけてね?」
エリクが一般人である二人に声をかけ、隊列の中心に配置する。
そして‥‥戦いが始まった。
●死神との戦い‥‥
「くぅ!! なかなか強いですね!!」
「油断するな!! こいつら、見かけ以上に出来るぞ!!」
大振りに見えた鎌の一撃は予想以上に鋭く、受け止めた比良坂の腕が一気に痺れる。
周囲に声をかけている寿自身も、皆のサポートで手一杯の様子だ。
「うふふ‥‥死神さん、一戦張らせて貰うよ♪」
「転職の実験です〜‥‥行くです〜♪」
自身の傷も厭わず突っ込む刃霧を何とかサポートするべく、エレクトロリンカーになったばかりのアクアの治療・強化のサポートが追いかける。
しかし相手もそうそう簡単に倒れるわけも無く、気を抜けば中央に位置するリアナとマリーに攻撃を仕掛けてきた。
「ちょ、ちょっと危ないでしょ!?」
「あらあら〜、ではこれをあげましょ〜♪」
必死に頭を押さえてうずくまるマリーの横で、向かってきた死神に爆弾を投げつけるリアナ。
勿論目晦まし+のけぞる程度の影響しかないが、とにかく黙ってやられる性分では無さそうだ。
「見せてやろう、私の雷を‥‥!! ‥‥ふふ、キメラがゴミのようだ‥‥」
「な、何だか一気に口調が変わっていますけど‥‥よいしょ〜!!」
すっと目を細めながら超機械で倒される死神を見ながら薄い笑みを浮かべるエドワード‥‥そんな彼を若干引きつったような笑みで見ている比良坂もまた、リアナを狙う一撃を受け止めている。
「とりあえず、さっさとお引取り願おうか‥‥いい加減目的を果たさせて欲しいし、ね!!」
「遠慮せずに持ってけ。何なら‥‥冥府に送ってやってもいいがな!!」
目の前の一体を常木が切り倒し、その後ろに控えていたもう一体を寿がトドメをさす。
こういった連携のお陰か、じりじりとではあるが確実に敵の数は減っていっていた。
「しかし、全滅させるとなると厄介ですね!! どうしますか!?」
「とりあえず安全な区画を作って、そこでリアナとマリーに採掘をしてもらうか!!」
敵と応戦中の比良坂とエリクが声をかけあい、それに合わせて周囲も陣形を変えていく。
当初は全滅させてゆっくり採取‥‥という流れだったのだが、流石に敵の数と強さを考えると分が悪そうであった。
「ちょっとあんた、聞いたわね!? 早くこの辺りを削っちゃいなさい!!」
「はいはい〜♪ ではこれをこうやって〜‥‥」
ようやく採取を始める事が出来たリアナ。
後は彼女が必要数を集めるまでの時間稼ぎという事になる。
「全く、これも誰かが作ったのだろうか‥‥だとしたら、死者への冒涜以外の何物でもない‥‥」
イスネグが普段の冷静な雰囲気から一転、一瞬だけ憤怒の表情を見せるが‥‥それを見た者は誰もいなかった。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
「さ〜て、そろそろ良いでしょうか〜。皆さんお待たせいたしました〜♪」
「うふふ、もうちょっと戦っていたかったんだけど‥‥時間切れね?」
リアナの声を皮切りに、刃霧達が一斉に撤退の準備を始める。
予想以上に敵の数が多かった為、全滅はままならなかったが‥‥もうここに用は無い。
「よし、後は敵陣を突っ切るぞ!!」
「この洞窟ともオサラバだな‥‥では、行くかね」
寿とエドワードが援護を重ね、ようやく通路の奥に撤退を完了した能力者達。
こうして、何とか今回も無事に目的を達成できたのだった。
●帰りの野営中‥‥
明日には街に到着する、というぐらいの距離にある森の中。
皆は最後の野営を広げていた。
「それで、これがその原石か‥‥何だか同じ石にしか見えん」
「‥‥で、リアナ。後は何が必要なんだ?」
「後はこの宝石を溶かすための【溶剤】ですわ。とりあえず原石から宝石を磨き上げて、それからですわね♪」
大事そうに籠の中の原石を見ているリアナの後ろから、寿とエリクが不思議そうに覗き込んでいる。
一つ手に持っているエリクは、何やら転がしながら思案中のようである。
「とりあえず、帰るまでが遠足‥‥もとい依頼ですからね。最後まで気を抜かないようにしませんと」
「比良坂君も律儀だねぇ〜。ま、気が緩みすぎるよりはマシだけど」
比良坂がしっかりと周囲を見渡している横で、常木が欠伸をしながら武器の手入れをしている。
彼らにとってはもう慣れ親しんだ(?)森の為、今更どうという事態になることもないだろう。
しかし、そんな中‥‥
「む〜‥‥もう少し力があれば全滅を狙えて‥‥いや、むしろフォーメーションを‥‥」
「あー刃霧さん? あれからずっと悩んでいますね〜」
ぶちぶちと呟きながらアレコレ考えている刃霧を見て、イスネグは軽く苦笑いをしている。
どうやら死神を全滅出来なかった事をまだ悔やんでいる様子である。
「だってだって〜、もう少し練力が続いていたら〜〜!!」
「まあ落ち着きたまえ。とりあえずマリー嬢のカレーが出来るまでこれでも飲んでいなさい」
じたばたと悔やんでいる彼女を宥めるように、そっと紅茶を差し出すエドワード。
周囲には美味しそうなカレーの匂いが漂い始め、皆の空腹を誘い始めている。
「私、こういうのできないんで〜、どうやってやってるか見せてもらうです〜」
「ふふ、そんなに難しい物じゃないわよ? 後はご飯が炊き上がるのを待って‥‥」
「〜〜♪ 何だか良い匂いです〜♪」
アクアがマリーの近くでニコニコと料理の手際を見つめている。
何やらさっきから興味深そうに眺めているが、その目的は料理を覚える為なのか、もしくはただの暇つぶしか‥‥
「ふむ、流石だな‥‥レーションとは全く味が違う。野外料理に慣れているのか」
「ああ、マリーの作る料理はいつでも美味しい。僕は少なくともそう思っている」
「ちょ、ちょっと寿さんに何言ってるのよ!? ‥‥恥ずかしいじゃない」
「は〜い、和泉さん♪ あ〜んですわ♪」
「だ、だからその何て言うか今ここでは‥‥‥‥‥あ〜ん」
「今度こそ〜、今度こそ〜‥‥うふ、おいし♪」
「刃霧嬢を収めるには、美味しい料理も有効と言うわけだな。覚えておこう」
「さてさて、どんな物が出来るのか楽しみだなぁ〜。ま、今はこれを美味しく頂こうか」
「マリーさんのつくるお料理は〜、やっぱり美味しいですね〜♪」
「ふふ‥‥すべて世は事も無し、だね」
こうして、最後の夜更けは過ぎていくのだった‥‥合掌。