●リプレイ本文
●城内散策再開‥‥
「久々のお手伝いだし、気合を入れていっくよ〜!! ‥‥ゾンビやスケルトンは怖いけど‥‥」
「無理はしないで下さいよ? 幸い地図は結構出来上がっていますので、まずはこのベースキャンプを目指しましょう」
高い天井が広がるメインロビーに、自身の髪色と同じ緋色の鉢巻をしめた刃霧零奈(
gc6291)の声が響き渡る。
そんな彼女の横では、前回の探索でマッピングした地図を広げている比良坂 和泉(
ga6549)がいた。
「勿論無理なんてしないよ? ‥‥でも、戦いの中で我を忘れちゃう‥‥なんて事はあるかもね〜♪」
「え、ええと〜‥‥何とコメントしていいか迷いますね‥‥ハハ‥‥」
何やら一瞬、クスリと妖艶な笑みが垣間見えた気がしたのは‥‥とりあえず見なかったことにした比良坂。
そんな彼や彼女達の後ろから歩いているのは、周囲をきょろきょろと見渡しながらマッピング用紙を広げているマリーと、相変わらずのポワポワ笑みを浮かべているリアナだった。
「前回で行けなかった部分を行くには‥‥まずはここからこう行って‥‥」
「何だか難しそうなマップですわね〜。一体どこに例の鉱石があるのでしょうか〜」
ひょっこり首を傾げているリアナに、横で警戒をしていたエリク・バルフォア(
gc6648)が声をかける。
「ふむ‥‥なあ、リアナ。もう少し具体的な情報とかは見つけてないのか?」
「情報ですか〜? う〜ん‥‥きっとあの鎧キメラさんを倒せばいいんですわ♪」
「‥‥いや、いい。すまなかった‥‥」
にこやかな笑顔で最大の問題をぶつけてくるリアナの顔を見て、エリクは深く項垂れるのであった‥‥
「そういえば、以前の鎧キメラは呪歌が効いたんでしたよね?」
「確かに動きを鈍らせる事が出来た‥‥ならば、勝機はある!!」
「‥‥ま、そう簡単にいけば良いのですけど」
苦笑いしながら言葉を発している辰巳 空(
ga4698)の横では、何やら普段以上に気合が入っている旭(
ga6764)の姿。
前回足止めぐらいしか出来なかった事を結構気にしているようだった。
「今度会ったときはこ〜してあ〜してフルボッコに‥‥!!」
「あー、旭さん? 気合が充分なのは結構だけど、皆に被害が出るような事をしちゃダメだよ?」
ガシャガシャとフルプレートの甲冑を軋ませながら歩く旭の後ろから声をかけるのは、最早リアナの依頼の常連となった常木 明(
gc6409)。
今日も立派な『ツインスイカ』を実らせた胸をたゆませながら、クスクスと微笑む。
「ま、そんな事は無いと思うけど‥‥あんまり周囲を忘れるような事はナシだよ?
「ふふ‥‥勿論心得ているさ!! だが何と言うか、この高揚する気持ちは抑えられんというものだ!!」
「ハ、ハハハ‥‥本当に気合が入っていますね‥‥」
旭の『フルボッコ』という言葉に一抹の不安を隠せない辰巳であった‥‥
「へ〜、なかなか楽しそうな城じゃないか。調べ甲斐があるってもんだよ♪」
「空言さん? 前回は地下の方と塔を調べ切れていませんでしたから、まだまだ油断は禁物ですよ」
バシッと両手を組み合わせて豪快な笑みを浮かべている空言 凛(
gc4106)の姿を見て、少し釘を刺しておくナナヤ・オスター(
ga8771)。
空言は前回いなかった為、直にリビングアーマーキメラを見ていない。
それだけに、ナナヤも少し心配する部分もあったのだろう。
「あくまで本来の目的は鉱物の捜索ですから、無闇な戦闘は避けましょうね?」
「分〜かってるって。とりあえず現れた端からぶっ飛ばしていけばいいんだろ?」
「‥‥本当に分かってるんですよ、ね‥‥」
分かっているのかいないのか、頭の後ろに手を合わせて口笛を吹き始める空言。
心配するナナヤだが、皆を見てふと思った事があった‥‥
「‥‥今回、何だか戦闘を望む人が少し多い気が‥‥?」
果たして、彼の不安はどうでるのだろうか‥‥中編へ続く。
●地下階の散策
ひんやりした空気に湿気の高い地下‥‥
散策を始めた次の日、皆はスケルトンやゾンビを相手に戦闘を続けていた。
「よ〜いしょっと!! これで三匹目だね!!」
「相変わらずスケルトンやゾンビの類は多いです‥‥まあ俺達ならまだ大丈夫ですけど」
刃霧の一撃で崩れ去るスケルトンを見ながら、軽くため息をつく比良坂。
地下階の探索を開始した能力者達だが、やはり暗いせいか不意打ちの起こる確率が多い。
幸い皆の能力が高いせいか、大きな怪我などは全く無かった。
「それにしても牢屋やら倉庫やら、結構色んな部屋がありますね‥‥」
「‥‥そのどれもが使い物にならなかったがな」
辰巳がぼやきながら戸を開けて中を覗き込んでいる後ろで、エリクがカンテラをかざしている。
何か使い物にあれば‥‥と思った彼だったが、中の道具や武器の類は全部ボロボロになっていてガラクタ同然の状態であった。
「出てくるのは嫌な空気かキメラか‥‥とりあえずさっさと探索を終えないとな」
「う、うぅ‥‥ホントごめんなさいね?」
「い、いや別にマリーが謝る必要は無い‥‥ホントだ」
そっと横に近寄ったマリーがエリクの耳元で呟く。
こういう時はいつも彼女が皆のフォローに回ることが多い‥‥理由は言うまでも無いが(ぁ
「ま、こういう空気に惑わされて、大事な鉱石を見落としたりしないようにしなくちゃ‥‥」
「お、おい? あの奥にある扉‥‥何だかやけに怪しいんだけど‥‥」
常木がぼやきながらも横の壁を調べていると、空言がふと奥を指差す。
その先に見えるぼんやりした明かりの先には、何やら『明らかに』秘密倉庫といった風体の豪華な戸が鎮座していた。
「う〜ん、何だか『いかにも』って感じだけど〜‥‥」
「‥‥怪しすぎる。だが、開けない訳にもいくまい」
刃霧がひょっこり腕を組んで首を傾げているも、旭が何の気負いもなくズンズンと進み、思いっきりドアを開ける‥‥と!?
「う、うぉ〜〜!?」
「あ、旭さん!?」
思わず仰け反った旭の居場所を、思いっきり振り下ろされたバスターソードが地を穿つ。
なんと、扉を開けた中には見事にリビングアーマーキメラが待ち構えていたのだった!!
「くっ!! こんな狭い通路じゃまともに戦えない!!」
「倉庫の中は広そうだ!! とにかくあいつを中へ押し込むんだ!!」
ナナヤが思わず苦渋を漏らすと、すかさずエリクが中の様子を確認したのか『キメラ押し込み作戦』を提案する。
それを聞いた旭・刃霧の前衛物理メンバーが全力で部屋の中へ切り込み、押し込む。
「うぉ〜〜〜〜!!」
「いっけ〜〜〜!!」
流石にW攻撃に耐え切れなかったのか、リビングアーマーキメラも部屋の中へ押し込まれ、バランスを崩してしまった。
そこへあらかじめ詠唱を完了させていた辰巳の呪歌がキメラを束縛する!!
「さあ、どうします!? 逃げますか、それとも‥‥」
「へへ、この期に及んで逃げるのは無しだろうよ!! 折角だ、前に行かせてもらうぜ!?」
辰巳の言葉を遮りながら、空言の見事な脚力が相手の懐へ迫る。
そして殴りつけた一撃は‥‥見事に相手の腹部分を叩き割った!!
「おっしゃ〜〜!! どんなもん‥‥!?」
「あ、危ないです空言さん!!」
確かに大きな穴を開けた筈のリビングアーマーキメラだったが、全く意に返さぬ様子で大剣の反撃。
全く彼女に避けれる隙は無かったが、危機一髪で潜り込んだ比良坂がハイペリオンで受け止める!!
「す、すまない!!」
「大丈夫です!! とにかくこのチャンスを生かしていきますよ!!」
まさか防がれると思っていなかったのかその後の攻撃が一瞬鈍ってしまうキメラを見て、比良坂が皆に号令をかける。
それを聞いて真っ先に飛び込んだのは‥‥何だか『少しだけ』雰囲気の変わった刃霧であった。
「あは、スリルを味わう絶好のチャ・ン・ス‥‥♪」
「な、何だか今までの刃霧さんとは‥‥違う?」
マリーが思わず冷や汗をかいたのも気付かないまま、両手に持った薙刀を妖艶な笑みのまま振り下ろす刃霧。
思わず飛びのいたキメラだったが、その腕部分の甲冑が見事に切り裂かれた!!
「うふふ‥‥快感〜♪」
「‥‥とにかく奴の動きは鈍いままだ!! 畳み掛けるぞ!!」
「もっと楽が出来るかと思ったんですけど‥‥仕方ないですね!!」
「おっしゃ〜〜!! さっきのお返しだ〜〜!!」
エリクの号令により、後方からナナヤの援護射撃が撃ち込まれ、空言の急所を狙った一撃がキメラに迫る!!
能力者達の連携攻撃に、流石のリビングアーマーキメラもついに膝を付くときが来た。
「ビンゴ♪ 旭さん、その空き缶野郎潰したってー♪」
「オッケ〜!! これで消し飛べ!! ライト‥‥ブリンガ〜〜!!」
常木の言葉を背に、まるでセイ●ーを思い浮かべるような光の奔流を放ちながら、思いっきりデュランダルを振り下ろす旭。
その一撃により、ついにリビングアーマーキメラを打ち倒す事に成功したのだった!!
「よっしゃ〜〜!! これで、これで僕の目的は達成された〜〜!!」
「うふふ、おめでとうございますわ♪ ‥‥でも、何か忘れているような‥‥?」
「いや、鉱石でしょ鉱石!! ‥‥でも、この砕け散った破片って‥‥」
のほほんとリアナが彼を褒めている足元で、カチャカチャとリビングアーマーキメラの破片を集めているマリー。
そう、何とこの破片こそ、彼女が求めていた鉱石そのものだったのだ!!(ぇ
「あらあら〜、探索が楽しすぎてすっかり忘れていましたわ〜。でも流石マリーです♪」
「‥‥私、こっちの専門じゃない筈なんだけど‥‥」
「‥‥気にするな」
項垂れるマリーの肩を、ポムと叩いて慰めるエリク。
とにかく、先に地下を探索したお陰で思いのほか早く鉱石を入手する事が出来た能力者達一行であった‥‥合掌。
●夜、最後の時間‥‥
城を出たのは、もうすっかり夜更けになった時間である。
皆は出発を明日の朝にすることに決め、今日はここでキャンプをすることになった‥‥
「塔を登らないで済んだのは幸いだったけど‥‥なんか消化不良だよね〜」
「怪我をして後々に響くよりはマシだろう。それより、今回の君は少し‥‥いや、何でも無い」
「ん〜? どうかしたのかな〜?」
首を傾げる刃霧を見て、エリクは黙って近くで寝ているマリーの横顔を見ている。
何だかんだと皆に付いて回った彼女だけに、今日は特に疲れきったのであろう‥‥エリクと話す時間もそこそこに、寝床に入ってしまった。
「でもリアナさんもマリーさんも、ホントに頑張るよね〜。一般人だってのに、最後までついてくるんだし‥‥」
「それだけ想いが強いという事だろう。僕達はそれを支える為に、最後まで付き合うだけだ‥‥」
「ふふ、何だか大人な意見だね〜? マリーさんより年下なのに♪」
「‥‥マリーとは関係ないだろう」
にやにやと微笑む刃霧を見ないように、顔を逸らしながらマリーの寝顔を見ているエリクであった‥‥
「はい和泉さん‥‥あ〜ん、ですわ♪」
「あ、あのリアナさん? 何と言うかその‥‥少し恥ずかしいんですけど‥‥」
「何と言うか、見ているこっちが赤面ものだね‥‥」
マリーと同じく行動していたはずのリアナだが‥‥全く疲れていないのか比良坂の傍を離れようとしない。
そんなベタベタ・甘々空気を見ているのは、軽くため息をつきながらも手元の刀の手入れを欠かさない常木の姿であった。
「な〜んていうか、マリーさんの方と違って彼女達はからかっても面白みが無いね」
「またそういう事を言う‥‥幸せな事は良い事なんだぞ?」
「ま、それは分かっているんだけど」
ようやく決着を付ける事が出来た事が嬉しいのか、どこか気持ちが高揚している雰囲気のある旭。
相変わらずのプレートアーマー姿だが、彼は本当にこの姿で暑くないのだろうか?
「とにかく下手に長引かないまま終われたのだから良いでは無いか。明日は街へ帰るだけだしな」
「ふふ、そうだね。‥‥あ、彼の様子が‥‥」
すっと目を細めて微笑んだ常木だったが、その視界に入った光景は‥‥もう見慣れたものであった。
「だ、だからそんなに接近されますと‥‥」
「あらあら‥‥良いじゃありませんか♪ 和泉さんのお身体、こ〜んなに熱くなっている事ですし、ね?」
「あ、あぅ‥‥もう‥‥ス・ミ・マ・セ・ン‥‥ガク」
耳元での囁き+腕に押し付けられたメロン‥‥ついに限界を超えたのか、いつものように崩れ落ちる比良坂。
しかし、そんな彼を優しくリアナが膝元へ誘うのもまた、いつもの事である。
「ま、あれも一つの繋がりなんだろうね」
「‥‥言ってやるな。彼は結構気にしてるんだろうから」
「〜〜〜♪」
「おや〜? 何だかご機嫌みたいだね〜」
空言がどっかりと火の近くに座ってココアを飲んでいる横では、軽く鼻歌を口ずさんでいるナナヤ。
手入れをしている銃のパーツを組みなおすと、それをホルスターに納めて彼女に振り組む。
「おや、聞こえてしまいましたか。知らず知らずの内に口に出していたようです」
「いいんじゃないの? 案外上手く行った事だし、私だって気分は良いんだぜ?」
「そういえば空言さんの動きも凄かったですよね〜‥‥あ、そういえば‥‥」
ナナヤがのん気に話しかけていると、空言も満更ではない雰囲気で会話を続けている。
普段は豪快に見える彼女ではあるが、決して乱暴な性格では無い。
こうやって優しげに会話をしている顔は、本当に優しげな女性に見える空言であった‥‥
「ふふ、私もその会話に混じらせてもらっても良いですか? 何だか楽しそうな雰囲気が伝わってきましたので‥‥」
「ええ、勿論構いませんよ? そういえば、今回は辰巳さんが影の功労賞といっても過言では無いんですよね」
三人分のカップを持って近くに座り込んできた辰巳がにこやかに話しかけると、ナナヤもそれを受け取って笑いかける。
「そんな大それた事はしていませんよ。ただ相手を止めようと必死だっただけで‥‥」
「いんや、ホントに助かったぜ。あのまま部屋で暴れられていたら、こう上手くいかなかっただろうしな」
空言も気を抜いた様子で、にこにこと辰巳に笑いかけている。
‥‥余談だが、豪快に背伸びをしている彼女は‥‥非常に見事な『ナイスアップル』を二つ持っていた(ぇ
「さて、そろそろ交代の時間ですよ。お二人とも、後は御願いしますね?」
「分かりました。辰巳さんも朝までゆっくり休んでください」
「さ〜て‥‥退屈な見張り作業に戻るかな〜」
立ち上がる二人を見ながら、自分は近くのテントに入り込む辰巳。
そんな皆を照らしつける夜空は、満点の星々で埋め尽くされていたのだった‥‥合掌。
‥‥ちなみに、手に入れた鉱石を巡って彼女がまた何かを仕出かすのだが、それはまた別の話である‥‥