タイトル:ゆ〜き〜やこんこんマスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/15 21:12

●オープニング本文


「こ、このままでは本当にうちが潰れてしまうぞ!!」

 かなり広めのロビーに、オーナーらしき人物の悲痛な声が響き渡る。
 そこは地元ではかなり有名な、スキー場兼温泉旅館である。部屋から広がる見事な絶景に裏山のスキー場、そして館内と山の中腹あたりに設置されている天然かけながし露天温泉を売りとして、毎年多くの観光客が押し寄せる。
 本当なら今の季節は一番の稼ぎ時である時期なのだが、集まっている従業員達は‥‥‥

「オーナー!! 今日もキャンセルの電話が続いています!!」
「あぁ〜〜ん!! 私の給料はど〜なっちゃうのよ〜!?」
「これも全て‥‥‥あの変な化け物どものせいだ!!」

 揃ってオーナーと同じ表情をしていた。それもそのはず、今年に入ってからある噂が流れて以来ぱったりと観光客が来なくなってしまったのだ。

【スキー場にキメラが出で、次々と見境無く客を襲っている】

 聞きつけた地元の警察や自警団も調査に乗り出したが、噂が真実だと判り命からがら逃げだして来た次第である。彼らも決して油断をしていた訳では無いのだが、相手がキメラではどうしようもない。今のシーズンらしい積雪量に、操作要員がいないとリフトなどを使用できない不便さ、そして何より不用意に近づくと何かするより先に雪だるまにされてしまうのだ。
 
「こうなったら温泉だけでも武器にして、何とかキャンペーンを‥‥‥」
「無理だ!!温泉も同じ裏山にあるんだぞ!?」
「第一、このままあんな奇妙なずんぐりダルマに好き勝手させてたまるか!!」
「よろしい、ならば戦いだ!!」

 皆がざわざわと騒ぐ中、オーナーは何とかならないものかとずっと頭を抱えているのであった‥‥‥

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
蓮角(ga9810
21歳・♂・AA
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
九条・葎(gb9396
10歳・♀・ER
ジュナス・フォリッド(gc5583
19歳・♂・SF
リル・ミュー(gc6434
15歳・♂・DG

●リプレイ本文

●麓での一団
「何はともあれ、まずはリフトを動かさないことには山頂組が登れませんからね。‥‥寒いですけど、皆さん頑張っていきましょう」

 このような寒さの中でもしっかりと巫女服を着込み、その上から寒さを防ぐための外套を羽織った石動 小夜子(ga0121)が周囲をしっかりと見張っている。普段はゆったりとした性格ながら、いざ任務となると真剣になるその姿を、新条 拓那(ga1294)が頼もしく見守っていた。

「ああ、もちろんだ。助けに来た俺たちが雪だるまになってしまうのはゴメンだからな」
「ん‥‥リフトの操作は、こんな感じ‥‥」

 二人が励ましあっている中で、一緒に連れて来た従業員から細かにリフトの操作方法を受けていた九条・葎(gb9396)がぽつりと呟く。飲み込みの早い彼女は、教えられた操作方法を早くも完全に覚えたようだ。いくらか風の届かない操作室の中で、改めて操作を確認している。

「‥‥これで、安全に‥‥山頂組を‥‥運んでいけます」
「よし、それじゃあ俺達は先行している天戸が帰ってくるのを待って‥‥」
「皆さ〜ん! それらしきキメラを発見しましたよ〜!? 初級コースの麓あたりに大きな影が〜!」

 新条が声を聞こえた方向へ振り向くと、雪煙をあげながらバハムートに乗って走ってくる天戸 るみ(gb2004) の姿を発見した。どうやら先に先行して偵察に向かっていたらしい彼女は、AUーKVから降りるなり疲れた顔で息を吐く。

「は〜‥‥本当に大変だったんですよ〜? あやうく戻る前に雪だるまにされそうでした〜」
「ふふ、本当にお疲れ様でした。でも大事なのはこれからですよ?」
「そうだな。上手い具合に天候も落ち着いてきたようだし、従業員を送り届けたら早速探索開始だ」

 にこにこと暖かい飲み物を差し出す石動を横目に見ながら、新条は空を見上げる。幸い風は収まってきて、視界も少しはマシになってきたようだ。行動するなら今のうちだと感じ、従業員及び山頂組の送り迎えを九条に任せて、三人は天戸が発見したという雪だるまがいる初級コースへゆっくり歩いていった。


●いざ、山頂へ
「いやぁ‥‥寒いですねぇ。さっさと片付けて温泉に入りたいですよ」

 ぶるぶると虎柄のケープを震わせながら、蓮角(ga9810)が息を漏らしている。彼を含む山頂組の4人は、無事にリフトを使って山頂の近くまで登ることが出来た。そして次に周辺の探索を開始したのだが、麓とは打って変わったかのような悪天候にフローラ・シュトリエ(gb6204)は寒そうにゴーグルの隙間を布で覆っている。

「ホント、雪山を甘く見てると遭難しかねないわよね〜。一応地図は覚えてきたけど、注意しないとすぐに迷ってしまいそうだわ」
「大丈夫ですよ、フローラさん! いざとなったら俺が直接暖めてあげますから! それも人肌で‥‥」
「そんなに元気なら大丈夫そうだな。おいリル、ちょっとその崖の下を見に行ってくれ。キメラがいたら一人で頑張るんだぞ?」

 メンバーで唯一の女性を相手に俄然張り切っているリル・ミュー(gc6434)に対して、暖かい(?)言葉をかけるジュナス・フォリッド(gc5583)。その視線は寒風に負けないくらい冷たい。

「い、イヤだな〜、ジュナス。俺はあくまで皆の寒さを和らげようと冗談を言っただけだよ〜?」
「‥‥お前の言動は冗談に聞こえないんだよ」
「ほらほら皆さん、あんまり雑談しているとキメラを見逃してしまいますよ〜?」

 蓮角がやけに雅な提灯で周囲を照らしながら、皆に声をかけた。着物に提灯という少し寒めの和風スタイルではあるが、マフラーとケープのおかげで寒さは凌げている。そんな彼の視線は、油断無く周囲の景色を見渡していた。

「あ、そういえば俺こんなの持ってきたんですけど‥‥」
「あら、それってもしかしてお酒?」

 ごそごそと懐から数本のスブロフを取り出すリル。それを見てフローラが、ひょいと一本取って眺める。その様子を眺めていたジュナスが何かを考え込む。

「アルコール、か‥‥試してみる価値はありそうだな。何本持ってきたんだ?」
「ええと‥‥全部で3本かな」
「とりあえず一度試してみましょうか。運良く燃えてくれたらバンザイということで」
「上手く良くといいけどね。‥‥あ、いたわよ!?」

 ひょこひょこと戻ってきた蓮角もそれを見て頷く。ライターが付くかどうかを確認していたジュナスも同じく頷き、作戦が決まった。後はキメラを探すだけ‥‥と、その時フローラが何かに気付き、前を見つめて皆に警告する。さあ、戦闘開始だ。


●雪だるまキメラとの対決(麓編)
「‥‥ま、まああの図体ならそんなに早く動けない、だろ?」

 ただひたすらぼ〜っと突っ立っているように見える巨大雪だるまを前に、新条は少し拍子抜けをしていた。その大きさもさることながら、つぶらな瞳・木の枝で作られたような目・そして頭のバケツが更に奇妙さを深めている。しかし相手はれっきとしたキメラであり、観光客を減らしている原因なのだ。

「気をつけて下さい‥‥危険だったらすぐに戻って下さいね?」
「いざとなれば、私が盾になりますので‥‥」
「だいじょ〜ぶ〜! 私もいるから頑張ってね〜!」

 山頂組と違って、男性一人に女性三人。リルが見たら激しく羨ましがりそうな光景だが、あくまで冷静に進んでいく新条。‥‥と、

「‥‥…グォ〜〜ン!」

 約10メートル辺りまで近づかれて、ようやく武器を持った能力者に反応したのか大きく声をあげ始めた雪だるま。その咆哮を聞くなり新条は、スブロフを片手に一息に敵へ飛び込んだ。そしてアルコールをかけて着火するまで約2秒。フォースフィールドは熱にも反応するらしいが、それでも雪が溶けるのは止まらない。しかし‥‥

「あぁ!溶けた水によってすぐに消えちゃいました〜!?」
「いけません‥‥! 拓那さん!」

 確かに一瞬炎が燃えてその部分はぼろりと溶け落ちたのだが、後から流れる水によって火は長続きしなかった。追撃を狙っていた新条へ向けて、雪だるまがぼ〜っとした表情とは不釣合いなほどの猛烈な吹雪をあびせてきた。しかし雪だるまになる直前で飛び込んできた石動によって難を逃れる。すかさずそこへ天戸が竜の咆哮をあびせ、雪だるまを僅かに後退させる事に成功した。

「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ‥‥助かった。しかしこれじゃ直接攻撃しかないのか?」
「いえ、どうやら嫌がってるのは確かみたいですよ? それでは、今度は私が‥‥」

 バハムートを装着した天戸が、にっこり微笑む。その懐から取り出したスブロフは‥‥何と五本。何本かのスブロフを借りた九条は、少し相手から離れた位置に場所を取って投擲の構えをする。その様子を確認した天戸は、注意を引き付けるようにわざと大き目の音を立てて背後に回り込もうとエンジンをかけ走り出した。と、そこへ二人まとめて巻き込まんと雪だるまの口部分が開いて、

「そ〜んな風なんかに当たりは‥‥ふみゃ!?」
「あ、九条さん!」
 
 少し離れてしまったため、庇おうとした天戸の動きが届かず吹雪が覚醒していた九条の体を覆う。その姿が一瞬で雪に覆われ、頭だけが飛び出た雪だるまになってしまった。どこかユーモア溢れる姿ではあったが、このままでは動く事が出来ない。そこへ体制を立て直した新条と石動が戻ってきて、大急ぎで雪を叩き落とす。それはあっさりと崩れ落ちたが、九条はようやく自由になれた体をぶるぶると猫みたいに震わせると‥‥

「もう〜〜許さないんだから! いっけ〜〜!」

 お返しとばかりに頭狙いでスブロフを投げつけまくる。それは見事な命中率で頭部に当たり、じっとりと上半身を湿らせていく。そこへ火を付けた最後の一本を天戸が背後から投げつけ、一気に炎が燃えていく雪だるま。流石に5本分の量となると大きく体が崩れ始めてきたようである。そこへ息の合った新条と石動の連携攻撃が重なり‥‥

「グォ〜〜ン‥‥」

 立て続けに攻撃を浴び、断末魔の叫びを上げたかと思うとゆっくりと崩れていく。その様子を見ていた4人は、更に敵がいないか周囲を警戒するのであった。


●雪だるまキメラとの対決(山頂編)
「うわわ〜〜! あっぶな〜〜!」
「くそ、なかなか隙が出てこない!」

 頭から燃やしてやろうとスノボーで近づこうとしたリルだが、頭部分を回転させながら吐いてくる吹雪に大急ぎで戻ってくる羽目になった。ジュナスが援護しようと隙を伺うが、ここのキメラはくるくると360度頭を回転させて吹雪を吐いてくる。おかげで周囲の木や石は全て雪だるまになっていた。そんな大小様々な雪だるまが乱立する中で、何とか援護しようとエネルギーガンを放つフローラ。

「ふぅ、あんまり時間はかけたくないんだけどね〜」
「それじゃ、俺がオトリになって注意を引き付けますか‥‥こっちだよ、ノロマな雪ダルマ!」


 大きな雪だるまの影に隠れて吹雪をやり過ごしていた蓮角が、刀を抜き放って表へ飛び出て相手の目の間を走り回る。その姿を発見した雪だるまは、くるくる回る頭を止めて狙いを一点に集中し始めた。しかし上手く障害物(全て雪だるまだが)を利用して走り回る蓮角を捕らえることは出来ない。隙が出来た瞬間を見計らって、予めスブロフをしみ込ませた新聞紙を巻きつけたメイスを片手にリベンジとばかりに飛び出すリルを、援護するように後方からミスティックTで攻撃を仕掛けるジュナス。背後から近づく気配に気づくのが遅れた雪だるまは、あっさりと頭にメイスが突き刺さるのを許してしまった。しかし流石に頭に異物が刺さるとなるとキメラも黙っていない。追加で残ったスブロフもぶっかけようとしていたリルへ、くるりと頭を回転させる。

「ああ〜〜〜っと!? ジュナス〜、助けて〜〜!」

 慌てて上から飛び降りて逃げるリルの背中に、ぽっかりと空けた雪だるまの口から吐き出される吹雪。慌てて彼を庇うように表に立ったジュナスは、あっさりと体部分が雪だるまと化してしまった。頭部分だけが端正な顔に、体部分が丸々とした雪だるま(枝の腕付き)というのはなかなかにシュールな光景ではあるのだが‥‥

「‥‥貸し一つだからな」
「ま、ま〜ま〜、すぐ掻き出してあげるから♪」
「ちょっといつまで漫才してるのよ!? さっさとこっちも手伝いなさい!」

 じとっと見つめる視線はどこまでも冷たい。アハハと苦笑いしながら雪を落としていく間に、背後からエネルギーガンを撃ち続けているフローラが二人に叫んだ。幸いスブロフはしっかりと頭にかかり、同じくアルコールがしみ込んだメイスも刺さったままだ。完全に雪にしみ込むまでに火を付けないと意味が無い、そう感じ取ったフローラは狙いを一点に絞る。そしてそれを見た蓮角が新たに注意を引き付けようと流し斬りの一撃を叩き付ける。

「ふぅ‥‥ここで占有されてると迷惑なのよね。ということで倒させてもらうわ!」
「別にあんたに恨みは無いんだけどね〜‥‥でも仕方ないで、しょ!」

 死角からの斬撃に注意を削がれた雪だるまの頭にエネルギーガンが命中し、運良く頭部分が燃え上がった。スブロフ3本分の量はなかなかのもので、動きが鈍くなった所へ一気にリルが飛び掛り、ジュナスが援護攻撃を仕掛ける。少し時間が掛かったものの、何とか雪だるまを崩すことに成功した。その後も警戒を続けていたのだが、どうやら追加の雪だるまはいないようだった。


●そして温泉へ
「ふぅ〜、やっぱり無事に任務が終わった後の温泉は最高よね〜♪」
「はい、心から染み渡る気分です‥‥。今頃あの人も同じ空を見ているのでしょうね‥‥」

 う〜んと腕を伸ばして豊満な体を惜しみなく晒しているフローラの横で、のんびりと湯を体にかけて夜空を見上げている石動。標準体型な体ながらも、艶やかな湯に濡れるその肌は白磁のようななめらかさを持っている。そんな彼女達の前では、じ〜っと半分湯に顔を浸けた九条が目の前に浮かぶ双球を見つめていた。

「‥‥大きくなるには‥‥どうすべきでしょうか‥‥」
「あら、葎ちゃん?どうかしましたか?」

 体を洗い終えた天戸が湯船に足を入れようとした時、その光景に気づいて九条に近づく。彼女もまた細身な体ではあるが、上品で落ち着いた体型をしている。ぶくぶくと振り向いた九条はそれを見て、ざばっと体を起こす。覚醒をしていない状態の彼女はまだまだ発展途上の体型だが、少し粘り気のある湯がその身体をゆっくりとしたたり落ちていく様は、その手の趣味の人種が見れば思わず頬擦りしたくなるつややかさを持ってる。

「‥‥どうすれば‥‥あんな風に大きく‥‥」
「ふふ、そんなに気にしなくてもすぐに大きくなりま‥‥」
「ちょっと〜、何そっちでこそこそと話してるのよ〜?」

 言葉を遮ってざばざばと湯を掻き分けながらやってくるフローラの身体を見て、思わず言葉を止める天戸。‥‥目の前にはどうしても現在では越えられそうに無い二つの塊が二人の前で圧倒していた。そして少し気を取り直したように言葉を続ける。

「‥‥殿方は適度な大きさが一番好みなんですのよ、葎ちゃん?」
「あ〜、なんだか今私の事をバカにしたでしょ〜!? そんな天戸さんには〜、お仕置きよ!」
「ちょ、ちょっとそんな所をくすぐらないで下さい〜〜!」
「ふぅ〜‥‥本当に彼女達は楽しそうですね〜」

 ざばざばと湯を撒き散らせながら裸で戯れる二人を横目に、避難してきた九条はぼ〜っと揺れる双球を見つめ続け、石動はその様子をにこにこと優しげに見守っていた。


「そ、そんな所ってどんな所なんだろう〜ね〜?」
「‥‥残念ながらお前が考えている事があっさりと分かってしまった。一応言っておくが覗きは考えるなよ?」
 女湯と男湯を遮る竹製の壁。その向こうから聞こえてくる魅惑の声を聞こうとびたっと体ごと張り付いて耳を押し当てているリルを、じろっと見ていたジュナスがため息とともに声をかけた。

「だってお前は気にならないのかよ!? フローラさんのマスクメロン! 小夜子さんの肌! 葎ちゃんの恥ずかしげな表情! そしてるみさんの濡れた黒髪!」
「‥‥もし小夜子を覗いたら‥‥殺すよ?」

 いつでもたらいを投げつける準備を整えている新条の静かな殺気も、興奮のあまり気が立っているリルには聞こえない。そんな様子を蓮角は苦笑しつつも見守っているだけだ。

「ま、お約束ってヤツですか。失敗しても骨は拾いませんよ?」
「へーきへーき、ちょっとだけちょっとだけ‥‥」
「‥‥ジュナス、きみが止めないなら俺が殺ってしまうよ?」
「新条、お前も落ち着け。‥‥まったく、のんびり雪見風呂といきたかったのだがな‥‥」

 本当は一人でゆっくりと入りたかったのだが、明らかに下心満載のリルの様子を見て渋々と一緒に付いて来たジュナス。そして予想通りの展開にため息をつきながら、横に積んであったたらいを振り上げるのであった。