●リプレイ本文
●城への道中‥‥
リアナ・マリーを含めた10人の仲間達‥‥それぞれは、思い思いの心境を抱えているようだった。
「中世的な廃城、そしてそこを彷徨い歩く甲冑‥‥おお、何というゴシックホラー!!」
「な、何だか凄くノリノリですね‥‥でも放って置くと大変な事になるのは確かなので、探索は必要でしょう」
何やらウキウキと興味が尽きない様子で歩いているナナヤ・オスター(
ga8771)の横で、少し冷や汗をかきながらもしっかりと周囲を見渡している辰巳 空(
ga4698)。
「一応行動の確認を。あくまで回避不能な戦闘だけを行い、基本はお二人の保護を‥‥」
「勿論分かっていますよ♪ でも私って、こういうの凄くワクワクするんです♪」
辰巳が改めて注意を促すも、ワクワクが押し寄せて止まらないナナヤ。
無事に目的を達成する事が出来るのだろうか‥‥それは神のみぞ知る。
「あー‥‥どうか、くれぐれも無理はしないで下さい。いいですね?」
「は〜い、分かっていますわ〜♪ 不思議な〜鉱石〜、不思議な〜鉱石〜♪」
最早恒例となっている、リアナに対する比良坂 和泉(
ga6549)の忠告。
‥‥そして、それを聞いているのかいないのか分からない態度もいつも通りであった。
「はぁ‥‥ホント、何から何まで不安が的中するのよね‥‥」
「‥‥お疲れ、マリー」
すぐ後ろを歩いているマリーが深く肩を落としていると、慰めるようにその肩を叩くエリク・バルフォア(
gc6648)。
「これもあれも、全てあのテレビが悪いのよ‥‥泣きたくなるわ」
「まあ概ね一週間の間だ。大丈夫に決まっ‥‥」
「リアナさ〜ん♪ ゾンビなキメラさんって〜、一体くらいなら持って帰っても大丈夫ですよね〜♪」
そっと想い人であるマリーを安心させるべく言葉を発したエリクだったが、それを途中で遮ったのはアクア・J・アルビス(
gc7588)である。
なんと、彼女の目的は『倒したキメラを回収』であった‥‥!!
「あらあら〜♪ それは私も研究に使いたいのですけど〜♪」
「うふふ〜♪ 今度是非一緒に研究を語りましょうなのです♪」
「え、ええと‥‥くれぐれも今回の本当の目的を忘れないで下さい、ね‥‥?」
だらだらと汗をかきながらも何とか言葉を搾り出す比良坂だが‥‥果たして、どうなることやら‥‥。
「城内を彷徨う怪しい鎧‥‥つまり、僕の出番だな!!」
「‥‥一番怪しい鎧、ここに発見です」
ガシャガシャ!! ‥‥と全身を白銀の甲冑で身を包んだ旭(
ga6764)が妙に気合を入れている横で、一人非常に冷静にツッコミを入れているトゥリム(
gc6022)。
「ふふふ‥‥何を言ってるのかな? この鎧は由緒正しい『神の癒し』の名を冠する鎧なんだよ!?」
「‥‥僕にはどっちでも同じ様に感じるけど」
とろんとした目で見上げるトゥリムの気持ちも分かる。
恐らく何も知らない人がこの集団を見たら、真っ先に怪しいと感じる人物ナンバーワンだろうから。
「それにしても、相変わらず能力者でないのに危険に首突っ込んで‥‥ま、人の事は言えないけど」
「ふふ、それはあちきも思ってるよ。でも、結局手伝うんだけどね?」
呆れたようで、しかし顔はそう言っていない常木 明(
gc6409)が苦笑いする。
そう、何だかんだと放っておけない雰囲気を醸し出しているのがリアナなのだった。
「ま、今回はあくまでマッピングが目的だし‥‥旭さんもそれは分かってるでしょ」
「勿論ですとも!! ‥‥でも、一度だけ勝負してみたかったり‥‥」
ポツリと漏らした言葉に含まれた意味‥‥果たして、叶う時が来るのだろうか。
‥‥そして二日後、皆は城に到着する事になる。
●城内探索‥‥前編
「やっぱり広いですね〜‥‥慌てずに、暗くなったら早めに外で休むようにしましょうか」
「そうですね。城内に安全な部屋などがあれば良いのですけど‥‥」
ナナヤと比良坂が話をしているここは、玄関の扉を開けた先にあるホール。
二人の声が大きく響くこの部屋の奥には一つの扉があり、さらに二階へと上がる階段が見える。
「さて、どこから探索するか‥‥あちきは皆の意見に任せるよ」
「とりあえず私は奥の扉が気になるのですけど〜‥‥」
常木が軽く肩をすくめると、そのすぐ後にリアナが奥を指差して首を傾ける。
「それでは、しっかりと陣形を整えて行きましょうか♪」
「とりあえず、拠点となる部屋を見つけられれたら一番‥‥」
アクアがぽわぽわ微笑んで腕を振り上げると、同調するように頷いているトゥリム。
‥‥余談だが、アクアの身長・及びバストサイズの関係上、すぐ足元にいるトゥリムが全く見えなかったのは内緒である(ぇ
「ここが応接間ですか‥‥窓は一つだけですね」
辰巳が呟いている横では、先ほど落ちかけたマリーがカキカキとマッピングをしている。
「応接間、と‥‥ちょっとリアナ? 勝手にあちこち触っちゃダメよ?」
「うぅ〜‥‥色々と興味を引かれる物が多いのですけど〜‥‥」
リアナが悲しげに呟くのはこれで10回目だ。
先ほどの玄関ホールから歩き始めて約1時間。
客室らしき廃部屋が4つに今の応接間、そして倉庫に食堂‥‥敵の気配を感じた瞬間に上手く隠れながら進んできたため、ここまで戦闘はゼロであった。
「一応半分以上は確認できたかしら‥‥後はさっきキメラの気配がした厨房に、地下階への階段ね」
「暇です〜‥‥何か起きないかな〜‥‥なんです〜」
「‥‥アクアさん? そういう事を言うとフラグが立っ‥‥」
まるでデジャブのような感覚を覚えて首を傾げた比良坂‥‥と、その時不意に廊下の気配に気付いたナナヤと常木が戦闘態勢を取る!!
「‥‥来る!!」
「や〜っと来たね‥‥さて、一仕事しようかな!!」
常木が武器を構えた瞬間、ドアが大きく音を立てて破られる。
外に立っていたのはスケルトンキメラが3体、その後ろにゾンビキメラが2体。
「こうなった以上仕方ありませんね‥‥しかしこの状態では上手く戦えません。部屋の中へ引き込みましょう!!」
辰巳の提言により数歩後ずさった皆。
それを追うように入り込んできたキメラ達を、一斉に能力者達が攻撃を開始。
「簡単には倒れんか‥‥が、まだまだ!!」
「出来るだけ傷をつけないようにしましょ〜♪」
エリクが後ろから援護攻撃をしている横では、相変わらずマイペースのアクアが超機械を唸らせている。
それほど耐久力が無いのか、あっさりと倒れていくキメラ達だが‥‥前衛のスケルトンを倒した隙に、後衛にいたゾンビ達がのしかかってきた。
『グォォォォ〜〜〜〜!!!』
「おっと!! リアナさん達には指一本触れさせませんよ!!」
比良坂の咆哮により注意を向けられたゾンビ達に、数瞬の後、思いっきり自身の大剣を振り下ろす旭!!
見事に一撃で真っ二つにされたゾンビが倒れていき、残るは一体。
「ふっふっふ‥‥僕に断てない物はありませんよ‥‥」
「え、ええと〜‥‥こういう部屋内で大剣は振り回さないで下さい、ね?」
飛んでいった自分の前髪(注:数ミリだけ)を見ながら冷や汗をかいている比良坂だが、そのすぐ後に聞こえるゾンビの断末魔を聞いて、とりあえず胸を撫で下ろす。
「ふぅ、これでラスト、ですね」
「‥‥見事な腕前」
ナナヤが二丁拳銃をホルスターに戻したのを見て、同じく自身の銃を戻すトゥリム。
「うぅ〜‥‥と、とりあえず時間も時間だし、そろそろ休まない?」
「そうだな‥‥城内で休むなら、この客室がベストだろう」
マリーが服についたゾンビキメラの体液を嫌々そうに拭いながら皆に提案すると、エリクが地図のある一部屋を指差す。
とりあえず、今日はここで休む事にしたようであった‥‥
●ひとまず休憩‥‥
今はB班が警備の時間。
A班である辰巳と比良坂は、落ち着いて今までの状況を見返していた。
「う〜ん、どうも一階にはそれらしき鉱石は無かったですね‥‥」
「まあ仕方ありませんよ。リビングアーマーキメラに会わなかっただけマシだと思いましょう」
辰巳が呟きながらコーヒーを飲んでいる横で、じ〜っと地図を見つめている比良坂。
「後は戦闘を覚悟でここを調べるか、もしくは先に二階を見に行くか‥‥リアナさん?」
「すぅ‥‥すぅ‥‥」
やけに大人しそうにしていたリアナだったが、どうやら彼女なりに疲れた部分もあったらしい。
今は彼の肩を枕に、静かな寝息を立てていた。
「ふふ‥‥動いちゃダメですよ、王子様♪」
「茶化さないで下さいよ全く‥‥でも、彼女の探究心には本当に関心させられますね」
そっと彼女の頭を膝の上に下ろし、毛布をかけてあげる比良坂に、辰巳も優しげな笑みを浮かべている。
明日もまた、探索が待っているのだから‥‥
「はふ〜‥‥一度やってみたかったんですよね、お城の一室で優雅に紅茶を飲むのを♪」
「‥‥そうなの」
ふぅっと息をついて紅茶を飲んでいるナナヤだが、トゥリムが妙に生返事を返している事に気付く。
「‥‥トゥリムさん? さっきから何を‥‥ぅわあ!?」
「‥‥声が大きい。静かにする」
彼女の手元を覗き込んだ彼が大声を上げたのも無理は無い。
なんとトゥリムは、先ほど部屋の隅でうずくまっていた『コウモリキメラ』を捕まえて料理をしていたのだった!!
「ちょ、ちょ、ちょっと!? 見るからに危なそうな匂いと色がしているんですけど!?」
「‥‥これで完成。まずは一口‥‥」
カレーの匂いに混じって、スブロフでも消しきれなかったどこか不気味な匂い。
茶色というよりはどす黒いと言った方が合いそうなこげ茶色‥‥その肉を一口、何の気負いもなく放り込む彼女を、恐る恐る見つめていたナナヤだったが‥‥
「‥‥どう、ですか?」
「‥‥固くて薄味‥‥」
‥‥どうやら彼女のお口には召さなかったようである。合掌。
「何だか妙な匂いがするな‥‥一体何の匂いだ?」
「どこかで嗅いだ感じだけど‥‥そうそう、あの子の実験室の匂いだわ!!」
「‥‥すぐに換気しなくては」
見張りをしていたエリクが顔は冷静なまま、大急ぎで窓を開けに行く。
マリーが全く動じていないのは、恐らく普段から嗅ぎなれた匂いだったからであろう‥‥
「それにしても、結局窓無しの部屋って無かったわね‥‥」
「仕方ない。二階はまた明日調べるとして、今はここがベストだったんだ」
そんな会話を二人がしていると、そこへリアナに負けず劣らずのおっとり・豊満女性アクアがココアを片手によってきた。
「ふふふ、何の会話をしていたのですかー?」
「ううん、大した事じゃ無いわよ‥‥あ、ココアありがとね」
そっと受け取ったマリーがコップを受け取り、軽く息を吹いて飲み始める。
「それにしてもー、やっぱり暇なのは暇ですねー」
「‥‥何も起こらずに探索が出来るのが一番だ。噂の鎧キメラが出てからでは遅いしな」
「そーですねー‥‥でも、静かな夜ですー‥‥」
外を見やると、真っ暗な森の中から聞こえるフクロウの声。
異臭が功を奏したのか、コウモリキメラは全く近寄ってこない。
「‥‥ずっと、こういう雰囲気なら良いんだけどね」
「‥‥そうだな。‥‥明日も早い。マリーは寝ておけ」
「そーですよー♪ 後はお任せ下さーい♪」
‥‥こうして、静かな時間が過ぎていく‥‥
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥何か話しなよ。そう黙っていると、本当に鎧の置物みたいだよ?」
「そ、そうか‥‥そんなつもりじゃ無かったんだが」
薄暗い廊下の下で、じ〜っと立っているフルプレートアーマーの旭は‥‥一見すると完全にキメラの仲間に見える。
それが原因か知らないが、幸い不意に襲ってくるようなゾンビはいなかった。
「ところで、それの手入れっていつしてるの?」
「勿論こっそり人知れず‥‥って、別に素顔を見せるのが嫌って訳じゃ無いんだけど」
「ふ〜ん‥‥」
ガチャッと音を立てて姿勢を正す彼を見て、ふ〜っと息を吐く常木。
知り合いながらも一緒の依頼は初めて‥‥という二人だが、戦闘は息の合った連携を見せていた。
「さて、と‥‥そろそろ交代の時間だね。戻ろうか」
「そうだな‥‥でも実際ずっと着込みっぱなしというのは、少し蒸れる‥‥」
「ふふふ、頑張りなよ、勇者王♪」
その言葉がどんな意味を指すのか、それは二人にしか分からない事であった‥‥
●城内探索‥‥後編
次の日。途中雑魚キメラとの戦いは何度かあったものの、無事に一階を探索し終えた皆。
そして二階・三階と順繰りに探索していったのだが‥‥
「う〜ん‥‥全く見つかりませんわ〜‥‥」
「まあまあ。今回の目的はあくまでマッピングにキメラ調査なんですから」
リアナが頬を膨らませている様子を見て、苦笑いしながら慰めている比良坂。
そんな二人を尻目に次の倉庫を開こうとした、その時‥‥
「‥‥何か、歩いてくる音が‥‥?」
トゥリムが真っ先に気付き、それに続いて皆も廊下の先を見つめる。
そして‥‥ついにリビングアーマーキメラが姿を現したのだった!!
「つ、ついに来ましたね!?」
「前衛組は予定通りに二人を逃がすまでの時間稼ぎ、後衛は周囲の警戒と後退を!!」
ナナヤが驚いている瞬間に、すぐさま皆に指示を出す常木。
そしてアーマーキメラが接近してきた時には、既に二組に分かれて行動を開始していた。
「ふ、ふふふ‥‥極めて個人的な事を言わせてもらうと‥‥この時を待っていたっ!」
「いやいやそれはマズイでしょ!? と、とにかく無理だけはしないで下さい!!」
なにやら旭が鎧からも見えるくらいにオーラを立ち上らせているのを見て、思わず声を上げてしまう比良坂‥‥とにかく、彼はリアナ・マリーを連れて後退を開始した。
「く‥‥なかなか攻撃が当たらん!!」
「あららー? あれだけ大きな身体ですのにー‥‥」
エリクとアクアの同時攻撃をあっさりとかわして、持っていた剣を振り下ろしてくるアーマーキメラ。
あやうく当たる寸前だったのを、常木と旭が同時に持っている剣で防ぐ。
「う、くぅ‥‥やっぱりなかなか強いね〜‥‥!!」
「とにかく今は守りを固めよう!! 二人が安全な場所まで離れられたら‥‥うぉ!?」
言葉の途中で、相手が振り回した攻撃をもう一度防ぐ旭‥‥それを援護すべく、トゥリムとナナヤが援護を開始。
「‥‥今は僕が牽制‥‥!!」
「何だかオバケっぽい雰囲気満載で‥‥すね!!」
二人の銃撃に思わず怯んだのか、数歩後ろへ下がってしまうキメラ‥‥そこへ辰巳の呪歌が歌われ、一瞬足が止まる。
「よし、今だ!! 退却するぞ!!」
エリクの素早い判断に皆が一斉行動を起こし、その場から離脱する事に成功。
しかし、結果としては敵のキメラにほとんど有効な攻撃を与える事が出来ないままに終わってしまったのは仕方の無いところであった‥‥
そして、今回の探索結果は‥‥一階全フロア、二階・三階の約75パーセントのマッピングに成功した。
残るは二柱の塔に地下階。能力者達の健闘を祈る‥‥合掌。