タイトル:彼女の温泉物語‥‥マスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/25 06:44

●オープニング本文


「‥‥と言う事で、今日も一日お客様の為に良い笑顔を忘れずにお願い致します」
 従業員達に朝の言葉をかけた後、そのまま受付の椅子に座りに行く女性がいた。彼女の名前は雨宮 春香。この公共温泉施設【さらさの湯】の女将であり、さらに受付の事務員も兼任している美人女将である。
 歩く度にたなびく黒髪は美しく、また着ている着物の上からも分かるほどの豊満な『ツインピーチ』の持ち主と言う事もあり、彼女を見たいが為にわざわざ遠方からやってくる旅人もあるくらいだ。
「‥‥ふぅ、最近疲れが取れにくいですね‥‥」
 受付のパソコンを叩いている途中に、ふと上を見上げて目を閉じてしまった雨宮だが、それも仕方が無い。
 基本的に休みは週に一日。それも緊急の連絡があればすぐに着物に着替えて飛んでいかなくてはならない立場であり、本当の休める時間は宿泊客のいない夜中に限られてしまう。
「いけません、そういう事を望んでいてはサービス業失格です‥‥でも‥‥」
「女将さん〜!! 露天温泉の中に大きなおサルが〜〜!!」
 微かな苦悩を見せたのは一瞬だけ。すぐさまトラブルが起こった台所へ小走りで走っていく若女将であった‥‥

‥‥‥
‥‥



「今日も無事に終わりました、ね‥‥」
 最後のデータをパソコンに入力し終わった時刻は、すでに日付が変わろうかという深夜。ようやく彼女の短いプライベートの時間が始まる。
「とりあえずお風呂に入って‥‥後は洗濯物‥‥を‥‥」
 施設内にある自分の部屋へ戻ると、半分ぼ〜っとした目でしゅるしゅると帯を解いていく。普段は几帳面にしているように見える彼女だが、プライベートでは‥‥意外と抜けている部分があった。脱いだ着物を畳むのは良いとして、肌襦袢のまま何もつけない状態で歩き回るのは‥‥非常に目の保養になる(ぇ
「そういえば明後日のお客様は‥‥」
 備え付けのテレビは付けないまま、少し小さめのテーブルの上にビールと枝豆を置いて考えに耽っている彼女。ここは基本的に宿泊はオプションであり、メインは立ち寄り温泉である。よって部屋数は非常に少なく、せいぜい10人ぐらいが泊まるのがやっとという感じであった。立ち寄りで温泉に入る人にまで記帳をすることは無く、受付横の自動販売機で券を買って貰い、それを受付が判を押して浴場へ案内するシステムである。
 またお食事場やマッサージ施設を利用する場合は別料金で、それぞれの場所で別途お金を払ってもらう形となっていた。それだけに宿泊までするお客は少なめで、女将ともなれば1週間ぐらい先までの予約客を暗記するのは日常茶飯事となっている。
「‥‥ふぅ、これで良いですね。それではお風呂へ入りましょう‥‥」
 パタンとノートパソコンを閉じて、刺さっていたUSBも抜く。これが彼女のいわゆる【閻魔帳】であり、この中にはありとあらゆる記録・メモ・スケジュールが記憶されている。彼女はそれを大切にケースに入れると、いそいそと着替えを持って露天温泉へと向かうのだった‥‥



「ん‥‥はぁ〜‥‥やはり夜は冷え込みますね‥‥」
 誰もいないここは普段よりもかなり広く感じるが、彼女にとっては日常茶飯事だ。なんせこの時間に入る人は、基本的に自分しかいないのだから。
「いちいち沸かす必要が無いのは助かりますが、やっぱり露天だけに色々と飛び込んでくるものですね‥‥」
 彼女が少し項垂れている原因‥‥それは露天風呂の宿命とも言える様々な【落ち葉やゴミ・生き物】であった。風に吹かれて飛んでくる落ち葉はまだ風情があったとしても、ビニールや紙が湯船に浮いていたり、酷い時には近くのサルが悠々と湯に浸かっている時もある。流石に人が多い時は簡単に入ってこないが、こういう時‥‥つまり深夜に入っていかれると、朝に掃除をしに来た時には散々な状態になっている時も多い。
「‥‥幸い今日は誰もいません‥‥!?」
 不意にバシャッと湯の中へ潜った彼女が、周囲へ神経を張り巡らせる。普段から入っている彼女だからこそ分かる感覚‥‥今、どこかから見られている‥‥
「‥‥‥‥」
 すっとバスタオルを巻きなおして大切な部分を隠すと、ゆっくりと不自然に見えない程度の速度で更衣室へ向かう。この時彼女が考えていた事は一つ。
「‥‥‥‥ふふふ♪」
 彼女が何を考えていたのか‥‥それを示す彼女の暗黒顔を見た者はいなかった‥‥


‥‥‥
‥‥



「と言う事で、本日は臨時休業とします。午後から能力者さん達に来てもらって、この館内を総点検してもらいます」
 昨夜の暗黒面は全く顔に出さず、ピシッと普段どおりに着物を着こなして集まった従業員に告げる雨宮。皆にはあくまで【緊急の防災設備点検】と言う事にしてある。幸い宿泊のお客はいないので、大きな迷惑をかける事も無かった。
「女将さん? 私達はどうすれば‥‥」
「そうですね‥‥では、折角ですし臨時休暇と致しましょう。これはこちらの都合ですので、皆さんは就業扱いとします」
「「「わ〜〜い!!」」」


 そして30分後、誰もいなくなった館内のロビー。雨宮はおもむろに受付横の電話を取って、ポチポチとボタンを押した‥‥
「‥‥すみません。少し御願いしたい事がありまして‥‥内容は‥‥」

●参加者一覧

金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
アクア・J・アルビス(gc7588
25歳・♀・ER
布施川 逢介(gc7835
22歳・♂・JG
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL

●リプレイ本文

●『名目上は』囮‥‥
 冬の空に立ち上る白い湯気‥‥その麓では、見目麗しい美女・美少女達がゆったりとした時を過ごしていた。
「はふぅ〜‥‥やっぱり温泉は『命の洗濯』だね〜♪」
「ふふ‥‥まだお若いですのに、何だかご年配のようなお言葉ですわね♪」
「あぅ‥‥そう言わないでよ女将さん〜‥‥」
 あくまで『囮』としての役目を果たすため(?)、バスタオルも何も巻かない状態で半身浴をしている刃霧零奈(gc6291)。
 勿論『半身浴』とは、身体の上半身を湯の上に出し、長い時間をかけてお湯に浸かると言う浸かり方である。
 つまり‥‥湯に浮かぶ見事な『ツインメロン』が果実丸ごと見放題なのである。しかもそんな彼女がう〜んと伸びをしたりしたら‥‥
「それにしても本当に立派なお身体ですわね。同じ女性から見ても綺麗な形をしていますわ」
「も、もぅ!! ‥‥そういう女将さんだって『こ〜んなに』立派じゃない♪」
「あん‥‥♪ も、もう‥‥少しおいたが過ぎますわよ‥‥?」
 赤くなった刃霧に『むぎゅ〜っ』と抱きつかれて、少し声をあげてしまう女将。背中でそのメロンがひしゃげて潰れている様は、何物にも変え難い光景であろう。勿論『囮』なので、見る目を引き付ける『お約束』は忘れない。
「う〜ん‥‥でも、これは少し大きすぎないかな〜? これだけの大きさでどうして垂れないのかな‥‥」
「あ、あの‥‥ぅん♪ そ、そんなに丹念に触らないで下さいな‥‥」
「‥‥この温泉の効力だとしたら、やっぱり私も‥‥」
 何やら危ない光景が広がりかけているが、これも『囮』。仕方ない事なのである(ぇ



 そんな甘い声が聞こえるすぐ傍では、湯船の縁に座って冷酒をゆったりと飲んでいる常木 明(gc6409)と、長い髪を後ろで束ねてお湯に浸かっている住吉(gc6879)がいた。
 常木は言うまでも無く『ツインスイカ』の持ち主である。しかもバスタオルを巻いていないお陰で、全身あますことなく周囲の視線を受け止めているのだった(ぇ
「おやおや、何だか凄い光景が広がっているような気がするよ‥‥?」
「まぁまぁ、それは気のせいですよ♪ でも依頼で無ければもう少し呑みたかったのですけど‥‥」
 さっきまで少量の熱燗を飲んでいた住吉の頬は、ほんの少し赤くなっており、ほ〜っとした顔は普段以上に熱っぽく見える。
 そんな住吉の様子を見ていた常木が、クスリと笑いながら言葉をかけた。
「ふふ‥‥また終わってから呑めばいいさ。それより、最近あちき酒量が増えた気がするんだよ‥‥」
「そうなのですか? そういう風には見えませんけどね‥‥」
 首を傾げながらも周囲の警戒は怠らない住吉。しかし今のところは全く気配は見当たらない。
 そうこうしている内に、手の中の徳利の中身が無くなった事に気づく常木‥‥そんな彼女の目に入ったのは、真面目に周囲を見渡している住吉だった。
「‥‥そういえば知ってる? 女性の胸って、揉んだら大きくなるらしいよ‥‥?」
「え、それは確か迷信だと聞いた覚えが‥‥あの〜、何故近づいてくるのでしょう〜?」
「ふふふ、まあまあ‥‥あちき達は『囮』なんだから、少しは相手の目を引き付けるように『フリ』だけでもしないと、ね?」
 若干普段より物静かで憂いのある表情で近寄ってくる常木の顔を見て、思わずドキッとしてしまう住吉。
 どうやらお互いに少しアルコールが入っているせいか、いつもより気持ちが高ぶっているようだった(ぇ
「ふふふ‥‥ね、少しだけ試してみようか‥‥♪」
「あ‥‥わ、私は御姉様だけの身体でありたいと‥‥ぅん‥‥♪」
 周囲の警戒はそのままに、常木のされるがままになっていく少女。アルコールの力、恐るべしである‥‥合掌。



「がぅ‥‥温泉気持ち良い‥‥でも、皆大きな胸ばかり‥‥」
「え、ええと〜‥‥それは私も思うの‥‥」
 トプンと鼻近くまでお湯に浸かりながら周囲の光景をじ〜っと見つめている二人の少女・佐倉・咲江(gb1946)とエルレーン(gc8086)。今回は実に半分以上の女性がメロン体型であり、どうしても比べてしまうのは致し方の無い事であろう。
「何て言うか‥‥神様って不公平なの」
「ん‥‥とにかくする事はする。今は周囲を警戒‥‥」
 イチャイチャしている(?)周囲を見渡しながら愚痴を呟くエルレーンだが、決して彼女も小さい訳ではなく、世間では標準レベルなのは間違いない。全体の可愛さを見れば、充分高レベルな容姿をしている。
 対する佐倉も、幼げで子犬のような雰囲気。彼女を見れば誰でも思わず頬擦りしたくなるような印象を出しているのだから、もっと自信を持つべきである(断言)
「そうなの。今は気にする事を他に回して‥‥」
「温泉です〜♪ あったまって疲れをとるです〜♪」
 人の夢と書いて儚い‥‥そんなささやかな言葉を思い出したエルレーンが見たのは、こっちに向かってプルンプルンと弾みを付けながら向かってくる『ツインボム』アクア・J・アルビス(gc7588)だった。
 さっきまで身体を洗っていたのか、髪もしっとりと濡れている彼女。天然が少し入っているのか、天真爛漫に素っ裸である(ぇ
「効能は〜‥‥お肌がスベスベになるんですか〜♪ それは嬉しいですね〜♪」
「あの〜‥‥流石に少しは隠した方がいいような気がするの‥‥」
「がぅ‥‥というか隠して欲しい‥‥」
「うふふ〜♪ それはすみませんです〜♪ ではタオルで‥‥あ、あら〜?」
 先に入っていた二人が呟いた言葉を聴き、ハッとした様に『ハンドタオル』で胸部分だけを巻こうと努力し始めるアクア。勿論そんなやわな『ツインボム』ではなく、むぎゅ〜っとひしゃげたあげく‥‥

   『ポ〜〜〜〜ン♪』

「‥‥!? い、今弾けて飛んだの‥‥!!」
「が、がぅ‥‥!? そ、そんな現象が‥‥!?」
「あらあら〜? タオルが手から飛んでいってしまいました〜」
 ひらひらと風に飛んでいくタオルを追いかけていく(注:勿論生まれたままの姿)アクアを、驚愕の表情で見つめている二人であった‥‥合掌。




●任務遂行中の男達(注:二人)‥‥
「とりあえず犯人の心理を読む事から始める!! 具体的には何処が一番覗きやすいポイントか、と言う事だ!!」
「え〜と〜、何だか気合が入っていますね〜‥‥」
 お互い作業員の格好をして施設周囲を歩いている金城 エンタ(ga4154)と布施川 逢介(gc7835)。
「も〜ちろん!! なんせ愛する女将さんの頼みとあっちゃ〜仕方ないからな!!」
「そ、そうですか〜‥‥と、とにかく目星はついているのですか〜?」
 バサッと地図を広げて二人が覗き込む。布施川はまだ普通の作業員に見えるのだが、金城は‥‥何と言うか普通に可愛い女性作業員にしか見えない。
 確かに作業服は野暮ったい生地をしているが、何しろ素材が極上である。いくらメガネをしていようが、いくら化粧が軽めにしていようが関係ない。全身からにじみ出る『男の娘』オーラは隠しようが無いのであった‥‥
「‥‥ではここの配管を使って罠を‥‥」
「な〜るほど!! んじゃ〜それで行くぞ!! 待っててくれよ〜女将さ〜ん!!」
「さっさと済ませて、温泉に入るぞ〜!!」
 どうやら作戦は決まったようである。では、行動開始!!



「よ〜し‥‥ここが金城の言ってた『開閉栓』だな」
 二人の考えた作戦は至ってシンプルである。つまり『二重囮』作戦であった。わざと目立つように事故を起こし、犯人の目を引き付ける。そして『囮』に近寄ってきた所を確保、である。
「金城? そっちは俺の言ったポイントへのルートは分かったか?」
『はい、大丈夫です。ではいきますよ‥‥う、うわわ〜〜〜!!』
「‥‥どうやら予想以上に勢いが強かったみたいだな‥‥」
 遠くで水が漏れる音が聞こえ始め、その間に周囲の警戒を一層強める布施川。犯人が動くなら今‥‥
「‥‥な、何だかたくさんいるぞ‥‥? 何て言うか‥‥!?」
 布施川がゆっくりと開閉栓を締めながら感じた気配、それは全く悪意の意思を感じられない視線だった。たちまちウキャウキャと木々から飛び出したたくさんのおサル達‥‥それらは、一斉に外の森や川、そして温泉方面へと走って行く!!
「ちょ、ちょっと待てやコラ〜!! 何でこんなに痛て〜!?」
 何かが『ゴン!!』と落ちてきたショックで思わずしゃがみ込んでしまった彼が見た『何か』とは‥‥?



「ふぅ‥‥ここが布施川さんの言ってたポイントですね。では早速‥‥」
 ずぶ濡れになった彼がたどり着いたここは、布施川厳選・望遠覗かれスポットである。彼が割り出した望遠覗きポイント、そこから高度な計算(?)で逆算した結果、ここの物陰なら良い囮になれそうである。
「ぅん‥‥と、少し脱ぎにくいな‥‥よっと」
 作業着を脱いで下着姿になった金城の身体は、ほっそりとしていながらもしっかりと付くべき筋肉はついている。少し小麦色の肌は水に濡れてしっとりと光っており、軽く吐く吐息は実に色っぽい(注:こいつは男です!!)。
「え〜と、後は着替えを‥‥」

    『ウキャキャキャ〜〜〜〜!!!』

「え!? 今の声は!?」
 思わずバスタオルだけで身を隠した彼が周囲を見張ったその光景は‥‥たくさんのおサルが我先にと飛び出している状況だった。その手には‥‥
「‥‥リンゴ?」
 そう、さっき布施川の頭に当たった物、そして金城が見つけたサルが持っていた物、それらは見事な『リンゴ』だったのだ。
「‥‥どういうこと‥‥あ、布施川さんから連絡だ」
 そして彼らは事情を理解し、それを女将達にも知らせに行ったのだった‥‥



●原因、そして対策‥‥
「へ〜。結局原因って、去年植えたリンゴの木に群がっていたおサルさんだったんだ〜♪」
「はい‥‥お騒がせして申し訳ありませんでした」
 ケラケラと笑う刃霧に、少し恥ずかしそうに頭を下げる女将。そう、別に彼女達が目的と言うわけではなく、目当ては去年女将が譲り受けた『リンゴの木』に群がるおサル達だったのだ。こういう山に近い温泉施設では、時折おサルがやって来て施設内の食べ物を食べてしまう事がある。それを防ぐために、『囮』としてリンゴや桃の木を少しずつ植え始めていたのだった。
「それにしても、結構集まったもんだね〜。少し植えすぎたんじゃない?」
「は、はい‥‥お恥ずかしい限りです」
「まぁまぁ、変な覗きやキメラじゃなかっただけマシじゃない。それじゃあ憂いも無くなった事だし、気兼ねなく温泉を楽しも〜♪」
 のん気に笑いながら温泉に入りなおす刃霧の横で、少し恥ずかしげに顔を赤くしている女将であった‥‥


「何にせよ、暴れなくて良かったかな‥‥やっぱりお風呂は命の洗濯、ともいうしね」
「そうですねー。何だか少し消化不良な感じもありますけど」
 住吉がぼ〜っとお湯に浸かっている横で、少しだけ苦笑いをしている常木。もう気兼ねする事も無いので、のん気にお酒の続きを飲み始めていた。
 相変わらずタオルを付けないままでお酒を呑んでいる常木を、下から見上げて軽く嘆息。どうして彼女はこうも無防備に肢体を晒せるのだろうか‥‥その悩みは尽きない。
「ま、平和に終われるならそれが一番さ。‥‥それに、さっきの続きもあるし、ね?」
「だ、だから明様? 何と言いますかそういう方面はどちらかと言うと攻められるよりも‥‥ぁん♪」
「ふふふ‥‥何事も平和が一番、さ♪」
 何気に良い事を呟きながらも、やっている事は『豊胸マッサージ』であった‥‥合掌。



「そういえば〜、結局女将さんの真意はどこにあったのでしょ〜?」
「あ、聞くの忘れてたの‥‥一度聞いてみるの」
 アクアの言葉にハッと気付いたエルレーンが女将を手招きし、それに気付いた女将がバシャバシャと湯を分けて近寄ってきた。
 しかし、ゆっさゆっさと揺れる『ソレ』に意識を奪われてしまう彼女‥‥
「あら、何でしょうか?」
「え〜と〜‥‥何て言うか‥‥その‥‥」
「がぅ‥‥何食べたら『ソレ』ぐらいになる?」
 横からスッと割り込むように話に参加する佐倉。彼女にとっても気になる事情・〓1であるのは間違いない。
「何と申されましても‥‥好き嫌い無しに何でもよく噛んで食べる事でしょうか?」
「うぅ〜〜‥‥そんなテンプレを聞きたいわけじゃないの〜‥‥」
「‥‥何だか、自分より大きいです‥‥」
 目の幅涙を流しているエルレーンの近くで、ぼそっと小さく呟くアクア‥‥しかし、その目は妖しく光っている。
「‥‥揉んじゃうですー。自分より大きな胸は揉んじゃうですー‥‥」
「え、ええとアクア様? 何だかお顔がおかしくなって‥‥ぁん♪」
「がぅ‥‥なるほど、大きくなる理由がよく分かった‥‥」
 たわわに実った果実を丹念に『マッサージ』される様を見ながら、自分はゆったりと温泉に浸かって頷いている佐倉であった‥‥。




 ここは男子風呂である。誰がなんと言おうと男子風呂である。例えそこで、『どう見ても恥ずかしげに頬を赤らめた女の子』のような男がいたとしても、ここは男子風呂なのである。
「俺はあくまで、女の子という概念を愛するので、見た目には惑わされん。惑わされんのだが‥‥お前はほんっと〜〜に男なんだよな!?」
「当たり前ですよ!! ‥‥まあ確かに幾度も間違われていますけど」
 かくっと肩を落として項垂れる金城を見て、ようやく納得した布施川。しかし頭では納得しても体ではまだまだ納得できない部分がある。仕方無しに頭を冷そうとシャワーの方へ歩き出し‥‥
「な〜、ところで男と言う事は、だ。やっぱり女性の身体には興味はあるよな?」
「え、え〜と‥‥それは無い事は無いですけど‥‥何か?」
「いやいや、少し確認したかっただけだって。‥‥はぁ〜、マジで色々と考えじまう‥‥」
 深く息を吐きながらシャワーの栓を捻る‥‥と、何故か水が出ない。
「あれ? 何で水が出ね〜んだ?」
「もしかして、さっきの開閉栓を開け忘れてたとか?」
「いんや、ちゃんと開けた筈なんだが‥‥おい、何がおかしいんだって!?」
 つい『思いっきり』蛇口部分を拳で叩いてしまう布施川。勿論能力者の力は並以上であり、その力で叩かれると‥‥


         『バッタ〜〜〜〜〜〜ン!!!!』


「ちょ、ちょっとどうして倒れるのかな〜!? 今回は別に原因は無いでしょ〜!?」
「は、刃霧様!? タオル!! タオルを巻きませんと!!」
「おやおや、こういう展開も久しぶりだね〜」
「いや、明様、そうあっさりとした反応をされましても‥‥ま、とりあえずオシオキですね♪」
「わ、わるぎは無いのかもしれないけど‥‥やっぱり恥ずかしいの‥‥」
「あらあらー、では後で治してあげますからー‥‥遠慮なくヤラレちゃって下さいねー♪」
「が、がぅ〜!! 覗きは死刑〜!!」

 多種多様の果実は湯気で隠れていたものの‥‥彼らの目に飛び込んできた桃源郷は、決して忘れる事は無いであろう。合掌。