●リプレイ本文
●竜の冒険?『バトル:−生か死か−』
「ザマス!! ザマス!! ザマス!!」
「ZAMASU!! ZAMASU!! ZAMASU!!」
その集団は国道(何度も言うが歩道側)を目一杯に埋め尽くしながら一心不乱に歩いている。最早彼女(?)達を止める事の出来る勇者はいないのだろうか‥‥町の住人がそんな願いを抱いたその時‥‥!!
「待ってください皆さん!! 話し合えば分かります!!」
「そ、そうです‥‥ぼ、ボク達の話を聞いてください‥‥うぅ、臭い‥‥」
ザマス集団の前に躍り出たのは、鼻を洗濯バサミで押さえているため若干声が変になっている春夏秋冬 立花(
gc3009)と、逆に異臭対策が無かったためにかなり顔が歪んでしまっているレイル・ミフィア(
gc6853)の、黒髪美少女コンビだった。見目麗しき二人の姿は、まさにヴァルハラよりやって来た戦乙女を彷彿と‥‥させるには少し残念な姿ではあったが、まずは集団の足を止める事に成功した。
「何ザマスか、あなた達は!? 私達はこれから『話し合い』に向かっている最中ザマス!! そこをどくザマス!!」
「しかも何ザマスかその鼻につけた洗濯バサミは!! 最近の若者達の『ふぁっしょん』とやらはホントに致命的に残念ザマスわね!!」
「分かったらさっさとそこをどくザマス!! ないむねちびっ子オコチャマ達はさっさと家に帰って勉強をするザマス!!」
ザマス集団の心理攻撃!! 二人の心に深い傷を与えた!! 怒り心頭に達した春夏秋冬がわき目も振らず集団に飛び掛かろうとし、レイルが彼女を後ろから羽交い絞めにして止めようとしたのはほぼ同時だった。
「だだだだ誰がないむねだぁぁ!! いくら何でも言って良い事と悪い事があるだろぉぉ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて下さいヒトトセさん!! 口調まで変化していますよ!?」
「離して〜〜!! お願いだから奴らを殺らせて下さい〜〜!!」
じたばたと暴れる二人の姿に一瞬あっけに取られたものの、すぐに自分達の目的を思い出したザマス集団。もはや二人の事など忘れたかのように、どかどかと猛牛大行進を開始し始めた。
「いけないザマス!! こんな所で時間を取られていたら夕方のスーパー特売に間に合わなくなるザマス!!」
「そうザマスそうザマス!! 人に背中を向けて話す失礼な子供達に用は無いザマス」
「ザマス!! ザマス!! ザマス!!」
「ちょ、ちょっと今どこを見て背中と言った〜〜!! そこのザマスだけは私が‥‥ぎゃ〜〜!!」
「だ、だから今は我慢して下さい〜〜!! 殴るんなら後でボク‥‥ああ〜〜!!」
ドドドドド‥‥‥‥と砂埃が舞い散り、先ほどまでの騒ぎが嘘のように静けさを取り戻した国道。後に残ったのは悪臭の残り香と足跡、そして紙切れのようにペラペラになった二人だけであった。‥‥その後、彼女達を見た者は誰も‥‥
「ちょっと待った〜〜!! まだ死んでないわよ!!」
「あ、あの〜、誰にツッコミを入れてるんですか‥‥?」
ぼろぼろになった彼女達を、どこかの空でキラリと星が光ったような気がした‥‥(ただし、今は昼間)
●設営準備【ただいまお仕事中】
「‥‥春夏秋冬さんに一人一人当たって貰ったら‥‥キメラかどうか簡単に判別付いた気がしますね‥‥」
「ん‥‥? 今何か言った?」
「‥‥いえ、何も」
豊満な体のラインを隠そうにも隠せないようなセーラー服を身に纏ったBEATRICE(
gc6758)がポツリと呟いたのを、パーカーを羽織りながら作業をしている天羽 恵(
gc6280)がひょこっと聞き返す。現在彼女達は公園の端のほうで、これから開かれるコンサートの設営準備を行っていた。どうやら第一作戦『必死に説得すれば大丈夫♪』が失敗した為、これから第二作戦『イケメンライブ【炎の爆弾】』を行うようである。
「‥‥? それにしても先ほど見たけど、本当に全部キメラにしか見えないわね‥‥」
「‥‥確かに‥‥でも、とにかく早く終わらせたい」
「そうよね‥‥ところで少し聞きたかったのだけど、どうしてベアトリーセさんはそんな格好を‥‥」
「‥‥何か、見える?」
「い、いいえ!! ‥‥な、何だかベアトリーセさんの雰囲気が‥‥」
今にもこぼれそうな胸を押し上げているセーラー服姿は、その手の趣味の人達が見れば歓喜の涙を流すのだろうが‥‥彼女にとっては恥ずかしいだけであった。その証拠に顔には出さないものの、やけにせわしなく手を動かしているその背中からは妙な迫力がかもし出されている。たまにちらちらと見える白い素肌は、一般男性の目の保養間違いなしであろう。
「イメクラにしか見えないとか‥‥チェンジとか‥‥思った人はあとで殴りますね‥‥」
「だ、誰に向かってツッコミをしてるのですか‥‥と、とにかくこれで完成かしら。後は成り行きに応じて水も用意しておかなくちゃ」
「‥‥上手くいけばいいのだけど‥‥あ、そろそろ来たわね‥‥」
「うぅ‥‥酷い臭い‥‥ステージのほうは大丈夫かしら‥‥」
そうこうしている内に段々と悪臭が漂い始め、集団が公園に近づいてくるのが二人に分かった。後はコンサートの成り行き次第‥‥果たして、結果はいかに? 二人はそれぞれの持ち場へ移動しつつ、上手くこの作戦が成功するよう祈っていた。
●あなたの胸に『突撃!! 愛の心』
ベアトリーセと天羽が設営準備をしている同時刻‥‥
「あー‥‥ホントにこんなので良いのか‥‥?」
「もっちろんだよ〜♪ これでマダムのハートはク・ギ・ヅ・ケ♪」
ここは公園の舞台裏。今回の作戦第二段階として、突発イケメンライブ『炎の爆弾』を予定しているメンバーが集まって最後の詰めを練っていた。かなりカッコよく衣装を着込んだ沙玖(
gc4538)が若干恥ずかしげに自身の格好を見下ろしている横で、昔からの知り合いでもあるセラ(
gc2672)がパチパチと拍手を送っていた。
「これで最後の拍手会も合わせれば、作戦成功間違いなし!! 頑張ってね〜♪」
「わ、分かった‥‥こうなったら歌でも踊りでも何でもやってやろうじゃないか!!」
「うんうん、その調子その調子♪」
「こっちの準備は終わったよ〜!? そっちはどうかな〜!?」
にこにこと談笑している二人に、少し離れた場所からぶんぶんと手を振って声をかける刃霧零奈(
gc6291)。片手に持った拡声器はどうやら商店街の人達から借りてきたものらしく、【○○商店街】とマジックで書かれている。
「いや〜、何だかおじさん達がとっても優しくて、少し話が盛り上がっちゃった♪」
「『そりゃ‥‥そんな格好をしていれば‥‥』」
後ろから少し恥ずかしげに顔を赤らめてノートに字を書いたのはエルト・エレン(
gc6496)。どう見ても女の子にしか見えないが、れっきとした【男】である。彼女達はつい先ほどまで商店街やあちこちでこのコンサートのチラシを撒いてきたようだ。
「ん〜、そんなに変かな〜エルトさん?」
「『うん‥‥少し』」
彼が【少し】と書いたのはまだ控えめな表現であろう。なんせ刃霧の格好はかなり際どいキャットスーツであり、彼女のメロンのような胸やお尻部分がこれでもかというほどに強調されていた。それにつけてネコミミに尻尾もついているとなると、最早狙っていると言っても過言では無いであろう(断言)。
「もしターゲットが男性だったら、刃霧さんやベアトリーセさんをしっかり参加させるんだけどな〜」
「まあまあセラさんもそう言わないの。それじゃ、そろそろ近づいてきた事だし‥‥早速行ってみよ〜!!」
「『さて、忙しくなりそう‥‥』」
「‥‥こうなったらやってやる!! 行くぞ!!」
観客席には既にサクラのお客さん(主に商店街の人達)がざわざわと集まっている。さあ、戦闘開始である‥‥。
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
「ザマス!! ザマス!! ザマ‥‥‥何ザマスか、あの人の集まりは?」
「きっと売れない芸人のパフォーマンスザマス!! 気にすることなく先を急ぐザマス!!」
「そうザマス!! あの女の洗濯バサミから見て、どうせさっきのないむねオコチャマコンビのお仲間ザマス!! とにかく今は‥‥‥」
「今をトキメクイケメン俳優『サク』の突撃ライブ&握手会を行いまーす!! まさに今しかチャンスは無い!! お早めにご覧下さい〜〜!!」
「『どうぞ見てください‥‥』」
妙にわざとらしく集団の方向へ向けて拡声器を使って声を張り上げるセクシーネコミミ美女(洗濯バサミ付き)、そしてその横では少し恥ずかしげに宣伝看板を持っている男の娘がアクセントとなりザマス集団の足をまずは止めさせた。しかしまだまだ懐疑的な集団を前に、物怖じせず刃霧はにこにこと笑顔を向ける(ただし鼻に洗濯バサミ)。
「今度は何ザマスか!? 今忙しいザマス‥‥」
「あらあら〜? そんな事言っちゃって良いんですか〜? 今見ないと絶対後悔しますよ〜?」
「『後悔します』」
「ふん、そんなに言うんだったら写真を見せるザマス!! どうせカッコいいなんて宣伝だけで、実際は‥‥フォ〜〜〜〜!!」
「何ザマスか奥さん!? 一体ナニを見て‥‥フォ〜〜〜!!」
「「サク〜〜〜〜〜!!」」
刃霧達はザマス集団に『サク』写真を見せた。効果は抜群だ!! 集団は一斉にステージに向けて走り出した!! ‥‥まるで単純RPGのような流れだったが、どうやらザマス集団は予想以上に単純だったらしく一斉にステージに向かって怒涛の進軍を見せた。
「よ〜し、何とか皆ステージに向かったねぇ。それじゃ私達も行こうかな〜?」
「『うん、行こう』」
こうなったら後は最終仕上げに移るだけである。絶対にこの公園で片を付けようと二人は次の準備のためその場を離れたのであった。そしてその数分後、ステージでは‥‥
「さぁ、俺の動きに見惚れてしまえ!! そして俺の歌を聴け〜〜!!」
「ふふ、沙玖さん張り切ってるな‥‥よし、私も頑張るかな」
ステージに立って完全にノリノリ状態の沙玖に、冷静かつ正確無比にキーボードを叩くセラ達が燃えるライブを繰り広げていた。そして観客席は地獄となっている‥‥その声は大地を揺るがし、悪臭は空飛ぶ鳥をも落とし‥‥既にサクラの皆さんは公園を離れ、遠巻きに様子を眺めていた。
「そろそろ演出ですね‥‥行きます」
会場の様子を見ながら、空からシャワーのように水を噴出する装置を動かすBEATRICE。もしキメラが混じっていたなら何かしら反応があるはずなのだが、果たして‥‥
「あ、ちょうど集団の真ん中に反応が!!」
「しかし、あの位置では流石に行動を起こすわけには‥‥」
いち早く発見したのは刃霧だったのだが、場所を見て天羽がため息をつく。今あのど真ん中に突撃するのは完全に自殺行為だろう、もみくちゃにされて踏み潰されるのがオチ‥‥
「見〜つけたぞ〜〜!! この恨み〜〜!! はらさでおくべきか〜〜!!」
「ちょ、ちょっとヒトトセさ〜ん!! ボクを置いて先に行かないで下さ〜い!!」
「ふはははは!これぞ、恨みを返しつつ助ける必殺技〜〜‥‥はぐぅ!?」
「ひ、ヒトトセさ〜〜ん!? 大丈夫ですか〜〜‥‥ひゃう!?」
その時、空に春夏秋冬とレイルのにこやかに笑った顔が光ったという‥‥合掌。
「‥‥‥‥‥」
「‥‥ま、まあ後で屍は拾ってあげようか、な?」
「『バカばっか』」
深々とため息をついた天羽と刃霧、エルトだったが‥‥もうすぐ第三作戦『握手会でGO!!』が待っている。最早キメラの場所は分かっているので、握手会で離れた所を狙い打つ作戦で決まりだろう。握手会をする沙玖、その手伝いをするセラとエルトはそのまま会場に残り、残りのメンバー3人でゆっくりその場を離れていった。
●最後の幻想4『●天王とのバトル』、そしてまだまだ終わらない終末‥‥
集団が一斉に沙玖の方へ向かい、ポツンと取り残されたザマスキメラの周りを、刃霧・天羽・BEATRICEが取り囲む。もう言い逃れ(?)は出来ないと悟ったザマスキメラは、最後の悪あがきとして天羽と刃霧の間へ向かって突撃した。
「さ〜て、そこから逃げられるなんて悪い子の相手はあたしがしようかな〜‥‥いっけ〜!!」
「‥‥止めを刺します。受けなさい」
突撃するキメラに向かって刃霧が炎拳を打ち込み、天羽が刀を振り下ろした‥‥その時、
『カチ〜〜ン!!』
「ちょ、ちょっと何なのこの厚化粧装甲!? 顔面で受け止められたよ〜!!」
「うぅ‥‥この虎の毛皮風装甲は凄まじい硬度です‥‥」
「‥‥後は私が。接近戦は嫌いなのですが‥‥仕方ありません」
予想以上の装甲に慌てて体制を立て直す二人の後ろから、やけにアクティブに二刀の小太刀を振り回しながら突っ込むBEATRICE。二人の攻撃した部分を同時に狙った一撃はザマスキメラの装甲に確実にヒビを入れることが出来、キメラも慌てて後ずさる。その隙を狙って刃霧が炎拳を叩き込むと、流石の厚化粧装甲も完全に砕け散った。
「よ〜し!! 後は同じ部分を狙って‥‥そ〜れ〜!!」
「ZA、ZAMASU〜〜!!」
断末魔の悲鳴をあげてガラガラと崩れ落ちるザマスキメラを背景に、まだ会場では握手会が続いていた。素に戻った沙玖が必死に笑顔で握手を続けている横で、冷静にセラが見守っており‥‥
「お、お〜〜い!! もう終わったんじゃないのか〜〜!?」
「ふふ、どうやらまだ終わらないようだよ。まあこれも君の魅力の責任だ、頑張れ」
「ひ、ひえ〜‥‥臭いし手は痺れるし臭いし‥‥まだなのか〜‥‥」
「『‥‥疲れました』 」
握手だけならまだしも、中にはやけに熱い目で流し目を送ってきたり(目から出た視線を浴びた猫が気絶)、慌てて厚化粧の上から更に化粧を重ねていたり(完全に能に使われる面状態)、一度並んだ後でまた最後尾に戻って並びなおす厚かましい面々も含まれており(止めようとしたボランティアが二つの合わせ技で失神)‥‥。先ほどまで覚醒状態で何とか燐光で図を描いていたエルトだったが、流石に疲れてしまい今は必死に筆談でボランティアの人達に指示を出している。
‥‥どうやら、まだまだ彼らの受難は終わりそうになさそうだ。しかし、本当の試練はこれからである。会場が終わった後に進軍を再開するザマス集団をいかに止めるか、そして結果小学校は無事に守られたのか、今度は無事に皆で仲良くコンサートを開けたのか‥‥結末はまた、別のお話である‥‥(重ねて言いますが、これはエイプリルフール+フィクションです)。
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
「‥‥ねえ、ボク達、完全に忘れられているような‥‥」
「お母さん、どうか私たちを見守っていて下さい‥‥‥」
公園でまだペラペラになっている二人を、優しく夕日が照らしていた‥‥‥合掌。