タイトル:私が囮なんて・・・マスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/21 06:54

●オープニング本文


「クマさんキメラ、ですか〜?」
「そうよ。以前町内の掲示板に貼ってたんだけど、最近街中で奇妙なキメラが出るって噂なのよ」
 今日はリアナの店が休業日である。久々に自身の研究を進めたいとフラスコの中に緑色の液体を入れて揺らしているリアナだったが、マリーが机の上に置いた紙を見て手を止める。
「え〜と〜、【奇妙なクマさんキメラ現る!! 見かけたらすぐに連絡を】ですか〜」
「しかも下の方を見て。今までに何人もの女性が被害にあってるわ‥‥あんたなんか、真っ先に狙われちゃうわよ?」
 確かに下のほうを見ると、細かい記述が記されている。特徴は‥‥


1:基本的に街中でしか現れない
2:例え明るくても出現し、一人で歩いている女性を狙って背後から襲い掛かる
3:襲い掛かられた女性は、全員が例外なく巨乳である
4:見た目はどこかクマに酷似しているが、顔と体の比率が1:2ほどのデフォルメ体型
5:敵わないと判断したら真っ先に逃走。その速度はかなりのもの。
6:顔はかなり可愛げなクマさんに見えるが、恐らくコグマ型キメラと思われる


 その他、細かい質問は随時連絡先に聞いて欲しいと締めくくっていた。
「う〜ん‥‥何だかただの痴漢さんに見えますが〜」
「ま、まあ普通に痴漢よね‥‥でも一応これからは私もここで寝泊りするから」
「あら〜、でもお仕事は大丈夫ですか〜?」
「大丈夫。ちゃんと3日間の有給を取ってきたわ。つまり3日以内にカタをつけなくちゃね」
「分かりましたわ。ではこのオクスリの研究はまた今度にしましょうか〜」
 手の中のフラスコを少し残念そうに戻しながら、かたっと立ち上がって出かける準備を始めるリアナであった。




「う〜ん‥‥なかなか良い情報が無いわね〜」
「仕方ありませんわ。逃げ足も速いそうですし‥‥あら? 向こうに見える人は‥‥」
 街中で色々と聞き込みをしていたマリーとリアナだったが、ふと道の向こうに見知った人物がいた。その人物は片手で【拳銃】をクルクルと回しつつヤクザ風の人物へニコニコと話しかけている。
「ふむ、君はどうしても知らないと言い張るのかね?」
「あ、当たり前だ!! 何で男である俺がそんなキメラの事を知ってるんだよ!!」
「全く‥‥人はもう少しお利巧になった方が長生きできるというのに‥‥」
 軽くため息をついたそのトレンチコート男は、銃を回す手を止めてピタッと照準をヤクザの男の額に当てる。
「私は最近目が悪くなっていてね‥‥君の額についている黒い点が虫に見えて仕方ないんだ。ちなみに私は飛んでいる虫を銃で落とすのが大得意でね?」
「だ、だから知らね〜〜よ〜〜〜!!」
 最早どっちが悪者か分からないが、とりあえず見ない振りをするにはあまりにヤクザが可愛そうに見えた。仕方なくトコトコと男に近寄ったマリーが、ため息をつきながら声をかける。
「ちょっとあんた。確か以前リアナの店に来たあの破天荒男よね」
「おや、そういう君は確か‥‥開脚前転のお嬢さん」
「ちょ、ちょっと何であんたがその事を‥‥!?」
「ほらほらマリー、お話がずれていますわよ?」
 ひょっこりと顔を上げたその男が二人の姿を認め、はっはっはと笑いながら銃を収める。(その間にヤクザは涙を流しながら逃走)
「‥‥と、とにかくどうしてあんたが一市民を脅しているのよ?」
「ふむ、別に脅していたつもりは無いのだが‥‥あくまで平和的な話し合いだよ」
「あら〜、世の中にはまだまだ私の知らない話し合いがあるのですわね〜」
「あんたも一々乗らないの。‥‥それで、結局何してたのよ」
 そして男から話を聞くと、どうやら彼も例のキメラを探しているようであった。しかし彼の捜査方法は滅茶苦茶で、手当たり次第に人相の悪そうな男を捕まえてはこうやって聞き出していたのだという。
「あんたね〜‥‥流石に犯罪よそれ!?」
「問題は無いよ。なんせ相手も【ソッチ系】ばかりだ、下手に警察などに知らせたりはしないよ」
 ふふんと鼻を鳴らして腕を組んでいる男だったが、ふと思い立ったようにマリーを手招きして、リアナに聞こえないぐらいの声でそっと話しかける。
「ふむ‥‥ところで、君はなかなか美人さんだね?」
「ちょ、ちょっといきなり何よ‥‥?」
「しかも胸も大きめだ‥‥よし決まった。君が囮になって私が捕まえる、いいね?」
「だから何をいきなり勝手に決めてるのよ!? 私が囮なんてするわけ‥‥」
「君がしてくれないとなると、彼女にお願いするしかないだろう。まあ私はどちらでも構わないのだが‥‥」
「こ、この最低自己中男‥‥分かったわよ!! やればいいんでしょやれば!!」
「ハハハ、やっぱり誠意を持って話し合うのが一番だ。あ、一応能力者も呼んでくれたまえ。相手はキメラだ。何が起こるか分からないからね」
 こうしてリアナが口を挟む間もなくトントン拍子で話が纏まり(注:脅迫?)、マリーが囮役としてキメラを捕まえる事となったのであった‥‥

●参加者一覧

比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
カズキ・S・玖珂(gc5095
23歳・♂・EL
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG
エリク・バルフォア(gc6648
18歳・♂・ER
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
パステルナーク(gc7549
17歳・♀・SN
黒羽 風香(gc7712
17歳・♀・JG

●リプレイ本文

●作戦準備‥‥
「え、ええと‥‥ホントに【盛る】、の?」
「大丈〜夫だって。マリーさんの綺麗さに【この】追加要素があれば、間違いなくキメラもやってくるから」
「うふふ‥‥御姉様のお胸がこんな間近に‥‥私、もう死んでも構いません♪」
 ここはリアナの店の奥。キメラは巨乳系の女性しか狙わないという事を聞いていたので、囮役となるマリーの胸を【盛る】事にしたのだった。一応マリーは、標準系の女性と比べると十分【豊満】な体型に入るのだが‥‥常木 明(gc6409)や住吉(gc6879)は【あくまで】確実性を増すためにこうして追加要素を加えているのだった。(注:若干一名は怪しい笑みを浮かべているが‥‥)
「あらあら〜、少しブラのカップが足りませんでしょうか〜」
「あ、それじゃあたしの使う? 多分大丈夫じゃないかな〜?」
「‥‥詰め物をした私の胸さえ包み込める刃霧さんのブラって一体‥‥」
「あ〜、ボクのもきっと大丈夫だよ〜。少し比べてみる〜?」
「むむ、パステルナークさんの胸も大きいね〜‥‥」
 リアナが首を傾げていると、ごそごそとカバンを探り出す刃霧零奈(gc6291)。最早お決まりとなっている彼女の【ツインメロン】だが、今回の依頼ではそれに匹敵しそうな【強敵】が出現した。リアナの依頼に初参加というパステルナーク(gc7549)である。
 少しエキゾチックな雰囲気を醸し出している彼女の胸部には、まるでどこかへ爆撃に向かうのかというような【ツインボム】が搭載されていた。小麦色の肌にマリーと同じ様な青い髪‥‥そして豊満体型。今までに無い強敵の出現に、刃霧も若干対抗心を燃やしているようだ(ぇ
「‥‥何と言いますか‥‥私もそれなりにあると思っていたんですけど‥‥」
「う〜ん‥‥ま、気にしない方がいいんじゃないかな? 大きくても面倒な事だって多いし」
「そういうものですか‥‥でも、常木さんが言うのは説得力がありませんよ‥‥」
 若干不満そうな顔でその様子を眺めているのは、同じく彼女の依頼初参加組の黒羽 風香(gc7712)である。以前に兄がお世話になった縁‥‥かどうかは分からないが、とりあえず色々と考える事が多い依頼になりそうであった。
「さ〜て、そろそろ良い時間かな。よっしー、そっちは準備出来た‥‥」
「ほらほら御姉様〜♪ そんなに動かれますときちんとブラが付けれませんよ〜?」
「だからあんたのその手の動きがイヤらしいのよ!! これぐらい一人で‥‥ふぁん!?」
「うふふふ‥‥ここですか〜? ここが弱いんですね〜♪」
 ‥‥どうやら、もう少し時間がかかりそうである‥‥(ぁ



「さて、そろそろこちらも話し合いを続けようじゃないか」
「そうですね。やっぱり色々と作戦もありますし」
「何にせよ不安要素は無いに越した事はないしな」
「‥‥ふむ、それは私がここで簀巻きにされている事と関係があるのかね?」
 そして店の売り場側では、男性陣が円周を組んでいた。エリク・バルフォア(gc6648)の片手には盗聴器、比良坂 和泉(ga6549)の手には隠しカメラ、そして新たに初参加となるカズキ・S・玖珂(gc5095)の手には怪しげなリモコンが握られている。これらは全て、目の前に転がっているトレンチコート男の私物である事は言うまでも無い。
「改めて言うまでも無い事だが、【こういう事】は許さない‥‥い・い・な!?」
「ハハハ‥‥それは少し変わったアクセサリーだよ? 人の趣味に口を出されるのは心外だね」
「そのアクセサリーで、あなたは一体何をしようとしてたんですか!!」
「‥‥確か、向こうのドアにさり気なく近づいてゴソゴソと準備をしていたな」
 珍しく【かなり怒っている様子の】エリクがじろっと睨みを効かせるが、男はハハハと笑うだけである。比良坂が思わず男にツッコミを入れるのを、冷静な視線で見つめるカズキ。
「さて、とにかく【僕達の】作戦内容だが‥‥とりあえずリアナの薬を飲ませて‥‥」
「とりあえず彼をここで放っておくのは‥‥簀巻きの上からもう一枚‥‥」
「いや、それだけでは甘いな。ここはやはりワイヤーで‥‥」
「ハハハ。なかなか面白そうなアイデアが繰り広げられているね〜」
 ‥‥こちらでもしばらく時間がかかりそうであった‥‥合掌。



●それじゃ、頑張るわよ!!
 リリリリ‥‥と、どこかで虫の鳴く声が聞こえる薄暗い夜の街。トコトコとマリーが一人で大通りを歩いていた。
 一日目・二日目は全く反応無しのまま終わり、このまま終わってしまうと任務失敗となってしまう最終日。皆の士気は否応もなしに高まっている。
 マリーの片手にはスイッチの入ったままのトランシーバーが握られており、耳に挟んだ小型マイクで皆の会話がしっかりと聞こえていた。
「‥‥こちらには気配無しだね。そっちは?」
「こちらカズキ‥‥ネガティブだ。だがいつでも急行可能」
「ボクの方も反応無〜し。刃霧さんは〜?」
「こっちもまだだね‥‥エリクさん? 少し気負ってるみたいだけど大丈夫?」
「ああ、問題ない‥‥僕はいつでも冷静だ‥‥」
「‥‥でも、さっき塀の上の猫さんに銃を向けていましたよ?」
「く、黒羽‥‥!! いきなり何を‥‥!!」
 何やら色々と会話が聞こえてくるが、マリー自身は気が気では無い。
 なんせ相手はキメラであり、リアナみたいに平気で近づけるような度胸も無い。もし万が一、皆の応援が遅れたりすれば‥‥
「ううん、皆を信じなくちゃ!! ‥‥確か、以前はあの辺りで事件が‥‥」


    【クマクマクマ‥‥‥】


「‥‥‥!?」
 何やら不気味、というより可愛らしい声が不意に前方から聞こえる。
 コソコソっと物陰から現れた、一匹の小熊‥‥いや、こんな場所に小熊などいるはずが無い。これは間違いなく‥‥
「で、で、出た‥‥!!」
「こちら常木、あちきも確認したよ。気付かれないように包囲網を」
「大丈夫、愛する御姉様は私が守ります♪ ‥‥ですから、安心して下さいね?」
「ああ。すぐ駆けつけられる場所に居る‥‥安心してくれ」
 常木が皆に合図を送り、周囲の空気がにわかに動き出す。
 そして緊張しているマリーを安心させようと、いつもの口調で囁く住吉とエリク。
「え、ええ‥‥そ、それじゃあお願い‥‥」
「クマクマ〜〜!!」
「え、ちょ、ちょっといきなり〜!?」
 相手が確実に一人だと思い込んだのか、何の前触れも無く飛び掛ってくるコグマキメラを必死の勢いで横にかわすマリー。
 しかし今かわせたのは単なる偶然であり、次に飛び掛られると‥‥
「マリー!! 無事か!?」
「それじゃ、夜のパーティーの始まり〜、だね!!」
 その一瞬後にエリクが飛び出して自身の背中へ隠し、一緒に飛び出した刃霧がキメラの進行方向を遮る。
 不意の襲撃に驚いたのか、キメラもすぐに逃げる体勢が取れなかった。その一瞬を狙ってパステルナークの弓が唸る。
「逃がすわけにはいかない‥‥から!!」
「クマクマ〜〜!?」
 しかし敵もさるもの、何とか矢を回避すると撤退の行動を取り始める。
 しかしそれを阻止しようと比良坂の【咆哮】が夜の街に響き渡り、またキメラの足を止める事に成功した。
「うおぉぉぉぉ〜〜〜!!」
「なかなか良い声だ。‥‥俺も負けていられない、な!!」
 ニヤリと笑ったカズキが、片手に装備した小銃でキメラを狙い打つ。
 動きが鈍くなった体に次々と命中‥‥したのだが、どうやら耐久力もなかなかのようだった。一瞬の隙をついて塀を乗り越えようと‥‥
「お〜っと、こっちは行き止まりだよ?」
「くく‥‥目標ほそ〜く!! サーチ・アンド・デストロイぃ!!」
 そうはさせまいとばかりに、常木と住吉が先回りを果たしていた。
 【月詠】と【乙女桜】のダブル攻撃が炸裂し、ますますキメラの動きを鈍らせていく。そこへ気配を悟られないように近づいた黒羽の【無慈悲な蹴り上げ】。
「変態が寄って来ないで下さい。汚らわしいですよ?」
「く、黒羽さん‥‥何だか怖いです‥‥」
 戻ってきた比良坂が冷や汗をかいているが、その蹴り上げで予想以上に飛んでいってしまったキメラ。あわれ任務失敗か‥‥!?
「‥‥逃がすわけが無いだろう。今日の僕は【殊更に】不機嫌だ‥‥八つ当たりにつきあってもらうぞ!!」
 しかし、今日のエリクは一味違った。飛んでいった方向へ既に先回りをしており、蛇のような装飾が巻き付いた杖を大きく振りかぶって【物理的に】キメラを叩き落す。そしてガクっと倒れこんだキメラへ追い討ちとばかりに電磁波を発生させ、完璧に息の根を止め‥‥(ぁ
「‥‥えっと、エリクさん? 一応主目的は【捕縛】だったんだけど‥‥」
「ふむ、不幸な事故だったな」
「だ、だから捕縛‥‥」
「事故だ」
「‥‥‥」
 エリクのどこか清清しい顔に、若干引きつった笑顔でロープを玩ぶ刃霧。とりあえず任務終了であった‥‥



●もう一つの戦い‥‥?
 何とかぎりぎり3日で終わらせる事が出来た能力者達は、揃ってのんびりと【さらさの湯】で一息ついていた。
「はふぅ〜‥‥ホント、今回は特に疲れたわ〜‥‥」
「ふふふ‥‥お疲れ様です、マリー。無事で何よりですわ♪」
 この三日間、同じように夜を寝ずに待っててくれていたリアナ。やっぱり親友がこういう事に行くというのは心配で仕方なかったのだろう。
「それにしても、なんで囮役を一般人のマリーさんにするかなぁ、あのおっちゃん!!」
「まあまあ。とりあえず無事に終わった事だし、私も気にしてないから、ね?」
「むぅ〜‥‥でもまだ何だか気が収まらないよ‥‥」
「ま、あちき達がしっかり見張っていたんだし。ちゃんと安全は確保出来ていたはずだよ」
 むすっとした顔で湯に顔を鎮めている刃霧を、のんびりと湯に浸かりながら笑いかける常木。
 どうやら刃霧にとって、今回の依頼は色々と不満な部分が多かったのだろうか‥‥いつもより長く湯に浸かっている。
 そして苦笑いしているマリーを、そ〜っと近寄る人影が‥‥
「うふふ‥‥でも、御姉様の貞操を守る事が出来て、私はとっても満足してますよ〜♪」
「ちょ、ちょっと何いきなり抱きついてるのよ!?」
「あぁ〜〜ん♪ やっぱりこのすべすべの白磁のようなお肌‥‥何だか火照ってきます♪」
「だから少し危ないのよ!! あんたも見てないで助けて頂戴!!」
「‥‥いえ、何だか皆さんを見ていると【覚醒】してしまいそうで‥‥」
 そんな住吉とのじゃれ合いを、じと〜っとした目で鑑賞を決め込んでいる黒羽。(注:目の前でマリーの乳房が揺れまくり)。
 そんな中、身体を洗い終わったのかひたひたと歩いてくる人影が一つ。
「お待たせ〜。それじゃ、ボクもは〜いろっと♪」
「「「‥‥‥!?」」」
 思わずビクッと振り向く三人(注:マリー・刃霧・黒羽)。その視線の先には‥‥見事な小麦色の【ツインボム】を二つ搭載した爆撃機・パステルナークがニコニコと向かってきていた。
 全く隠そうともせずにタオルを頭に載せて湯に足を付けていく彼女の一挙一動さを、思わずじ〜〜っと見てしまう刃霧と黒羽。
「むむむ‥‥やっぱり私の強力なライバル出現だね‥‥」
「‥‥何でしょう、この感覚は‥‥」
「ん〜? 何だか視線が集まっているような‥‥」
 しかしそんな様子など全く気にせず、ばしゃばしゃとマリー・住吉ペアの方へ歩いて行くパステルナーク。そしてじ〜〜っとマリーの目を見つめる。
「ちょ、ちょっと何かしら‥‥?」
「‥‥実は〜、マリーさんって‥‥何だか一目見たときから他人の気がしないんだよ‥‥」
「〜〜〜!?」
 一瞬で顔が真っ赤になって後ずさるマリー。しかし、後ろには住吉という【後門の狼】が待ち構えている。そして思わず前を向いた瞬間、既に目の前には深い輝きのシルバーアイが迫っていた。
「あらあら、御姉様〜‥‥こっちは行き止まりですよ〜♪」
「ホント、白い肌だね‥‥良いなぁ〜‥‥」
「え、ええと二人とも‥‥? 目が段々怖くなってるんだけど‥‥ちょっと〜〜!?」



「‥‥嫌がらせか、この状況は」
「‥‥カズキさん。この程度で焦っていては、きっとこれから待ち受ける【何か】に耐えられませんよ?」
 女湯とを隔てる一枚の竹壁。その向こうから何やら甘い声が聞こえ始めてきた‥‥発参加であるカズキにとって、これはなかなか堪える状況のようだった。
「‥‥とにかく今は呑もう。呑んで紛らわすしかあるまい」
「ふむ、僕も付き合いたいところだが‥‥この男がいるからな」
「おやおや、信頼されていないね〜。私が今までに何をしたと言うんだね?」
「‥‥‥」
 キメラさえも逃げ出すような視線で男を睨みつけるエリクだが、またもやその厚くなった面を破ることは出来ない。そんな中でゆっくりと冷酒を飲み始めるカズキに、そろそろと男が近づいていく。
「少し私も貰うよ、いいかね?」
「いや既に飲んだ後で言うな‥‥こら、そのツマミは俺のだ!!」
「‥‥今は、普通ですね」
「あぁ‥‥今は、な」
 体も洗い終わって、ゆっくりと男湯に浸かっている4人。‥‥と、その時ふと男が立ち上がって竹壁のほうへ向かう。勿論エリクと比良坂も立ち上がるが、その男の眼差しが妙に真剣である。
「‥‥どうした。何かあるのか?」
「‥‥いや、気にしないでくれたまえ。きっと気のせいだろう」
「もしかして、彼以外に別の場所から覗きが!?」
 比良坂が周囲を見渡すが、気配は感じられない。エリクもふと周囲に視線を回し‥‥そのまま男の腕をがっしりと掴む。
「‥‥なかなかの手際じゃないか」
「ふむ、君の洞察力もなかなかのものだね」
「む、その手に握られているのは‥‥!?」
 カズキが思わず唸ってしまったのは、皆の視線が逸れた僅か一瞬の間に用意された【道具】の数々。それが既に竹壁にしっかりと設置されていたのだから侮れない。
「さて、何か言い訳‥‥いや、言い残す事はあるか?」
「イヤだね〜、そういう殺気丸出しで近づくのは‥‥よっと」
「な!?」
 何の前触れも無しに男がひょいとしゃがみ込んだ、その一瞬後‥‥


「こんの〜〜!! 怪しい気配はここだね〜〜!!【ドッカ〜〜〜〜〜〜〜ン】」


 なんと女湯の方からいきなり拳が突き出して、その勢いのまま轟音とともになぎ倒される竹壁。そして向こうから現れたのは‥‥バスタオルを軽く巻きつけただけの刃霧である。
 勿論そのツインメロンの谷間はバッチリと見えており、若干バスタオルの丈が短かったのか、むっちりとした太もものかなり上まで見えてしまっている。湯上りと汗のせいか、うっすらと光る雫が胸元や足を滑り落ちている。そして湯煙の奥には新たな桃源郷‥‥!!(ぇ

「は、刃霧!? どうして君が‥‥!?」
「なるほど‥‥こ、これは‥‥ま・ず・い‥‥ガク」
「す、スミマセン、エリクさん‥‥あ、後は任せ、ま、す‥‥(ダバダバダバ!!)」





 ちなみに、やっぱりどさくさに紛れて男は逃げ出していたのであった。
「では、また合う日まで‥‥アデュー」