●リプレイ本文
●開店前‥‥
「さ〜て、今日から一週間。はりきってがんばろー♪」
「おお、気合が入ってるね〜。俺達もしっかり盛り上げて是非とも成功させようか〜!!」
ぐっと気合を入れて皆に声をかけた刃霧零奈(
gc6291)の姿を見て、同じく自身も気合を入れなおした白峰 琉(
gc4999)。基本的に敬語で話す白峰だが、こと刃霧に対しては普通に飄々としゃべるようだ。「準備にはこれなかったけど、この店はなかなか良い雰囲気だね、零奈」
「ま、まあ琉が来る前の店内を知らなければ‥‥ね」
にこにこと話しかける白峰の言葉を聞いて、軽く苦笑いをしてしまった刃霧‥‥まあ入り口の上からゾンビみたいな人形をぶら下がっている状況を知らなければ、今の店内は【格段に】綺麗な内装になっていた。‥‥しかし、二人の空気を見ているとお互いに何か想う部分がありそうなのだが‥‥果たして?
「あれ〜? 何だかピンク臭がにおってきますよ〜♪ お二人はもしかして〜‥‥」
「ちょ、ちょっと住吉さん!? 別に私達はそんな匂いなんか出してないよ!?」
大慌てで手を振っている刃霧の前でにやにやと微笑んでいる【ゴシック風魔女っ子】は住吉(
gc6879)である。細身な身体を包み込むゴシックワンピースにマント、そして魔術師風の帽子をかぶったその姿は、【性格さえ無視すれば】とても可愛らしい女の子であった‥‥
「ふふふ‥‥こんな衣装を着て売り子をしてみたかったのですよ‥‥くすくす」
「ちょ、ちょっと何だか怖いわよ? せっかく可愛い格好をしてるんだからもう少しその‥‥」
「くすくす‥‥【御姉様】がそう仰るならいくらでも言動を変えて見せますよ?」
「だ、だから誰が御姉様なのよ!!」
マリーのツッコミにも全く動じないその姿勢は、ある意味驚嘆に値するだろう。はぁはぁと息を吐いて肩を落としたマリーの後ろから、エリク・バルフォア(
gc6648)が手の中のボードを持って近づいてきた。
「すまない、マリー。少し手伝ってもらえるか? 聞きたい事があるのだが‥‥」
「え、ええ‥‥分かったわ。ところでリアナはどこにいるか知ってる?」
「ふむ、確か台所で菓子作りをしている柳凪の所へ行っていたが‥‥」
お互いに首を傾げながら後ろに見える台所へのドアを見ていたら、ひょこっと項垂れて出てきたリアナの姿があった。何やら寂しそうな空気を出しているが‥‥
「‥‥リアナ。今台所で何をしていた?」
「いえいえ〜、少しだけお手伝いをしようとしていたのですけど〜‥‥」
「‥‥もう良いわ。どうせまた変な薬を入れようとしたんでしょう?」
「も〜、変な薬じゃありませんわよ〜? ほんの少し【気持ちが軽くなる】調味料を入れようとしただけですわ」
「「それが変な薬だろう(でしょ!!)」」
ぴったり言葉がハモッたエリクとマリーだが、とりあえずリアナを追い出した判断は正しかっただろう。そして、今台所付近では‥‥
「さてさて〜、チャラ男になった比良坂さんもいることだし〜、男陣は完璧だね〜♪」
「だ、だから俺はチャラ男じゃないですってば!! これはちょっとしたイメージチェンジで‥‥」
「でもでも〜、どう見ても雰囲気が【むっつーりさわやかしゅけべ】だよ〜?」
「お、俺のどこがスケベなんですか!! どこが〜〜!!」
わいわいと居間で騒いでいるのは、長かった髪を短くしてがらっと雰囲気が変わった比良坂 和泉(
ga6549)と、今日も元気一杯に飛び跳ねている少女・ミティシア(
gc7179)である。現在は柳凪のお菓子作りも一段落し、ここで開店へ向けて最終準備をしているところであった。その最終準備とは‥‥
「‥‥なあ、変な部分はねえか?」
「そうだね、もう少し顔部分を左に向けた方がいいかな?」
ごそごそと大きな【パンダ】が居間に胡坐をかきながら、頭部分を右に左にといじっていた。その様子を前から確認している柳凪 蓮夢(
gb8883)。そしてどうやら位置が決まったらしく、一度立ち上がる【パンダ】‥‥その正体とは?
「それにしても、よくこんなきぐるみがあったな‥‥サイズもピッタリじゃねえか」
「まあリアナさんの店だしね。何があっても不思議じゃないんじゃないかな?」
「ま、それもそうか‥‥そんじゃ、一度歩いてみるか」
のそっと立ち上がった【パンダ】リュウセイ(
ga8181)がゆっくりと居間を歩いてみる。どうやらチャックはしっかり閉まっているようだが‥‥
「‥‥やっぱり長時間だと暑苦しいな」
「途中で休み休み頑張りましょう。お子様達の笑顔はリュウセイさんにかかっていますよ?」
「ま、こんな程度で喜んでくれるなら嬉しいこと‥‥」
「だから俺はスケベじゃないですよ〜〜!?」
「や〜いや〜い♪ しゅけべ鼻血チャラ男〜〜♪」
「‥‥元気だな」
「‥‥そう、ですね」
じ〜っとつぶらな瞳で二人の様子を見ているパンダリュウセイに、思わず苦笑した柳凪。しかしいつまでもここで時間を潰す訳にもいかない‥‥そう、もうすぐ開店時間である。
●さぁ、新装開店!!
「いらっしゃいませ〜♪ お気軽に見て回ってくださいね♪」
「はい、どうぞご主人様〜♪ ‥‥ってこれは違うでしょ♪」
店内はかなりの賑わいを見せていた。惜しげもなくそのツインメロンを押し出して接客をするキャットガール・刃霧(注:もちろんネコミミ付き)に、ゴスロリ衣装に着替えたミティシアのダブル接客は抜群である‥‥と、少し離れたテーブルでは、
「お、お待たせしました‥‥こちらが今日のお菓子サービスです‥‥」
「ほらほらマリ〜。もっと堂々と胸を張りませんと〜♪」
「って、どうして私までこんな格好をしなくちゃいけないのよ!!」
満面の笑みでお菓子を配っているのは、ミティシアの持参したコスプレ衣装に着替えたむっちりガンマン・マリーと、セクシーウィザード・リアナであった。二人とも【結構な】体型をしている為か、歩くたびにゆっさゆっさと揺れる胸が悩ましい。しかし、マリーは全く寝耳に水だったのか、顔が真っ赤である。
「わ、私は刃霧さんやあんたみたいにスパッと割り切れないのよ!!」
「でも似合ってますわよ〜♪ これで堂々とすればもっと引き立ちますのに〜」
「だから私はそんな勇気が‥‥」
「あぁ〜〜!! マリーさんこっちこっち〜〜!! お客さんが待ってるよ〜〜!?」
「あ〜〜もう!! やれば良いんでしょ、やれば!!」
少し離れた場所でふりふりと尻尾を揺らしながら(注:一緒にスイカも揺らしながら)こっちに手を振る刃霧の呼びかけに、かくっと肩を落として走っていくマリー。そして彼女が離れた隙をついて、リアナの場所へ歩いてくる一人のゴスロリ少女。
「‥‥リアナさん。向こうのお客さんが【例のブツ】をご入用でしゅよ?」
「ふふふ‥‥分かりました♪ 早速行きましょうか♪」
くすくすと二人でほくそ笑む様子を、周囲の客が変な顔で見ていたという‥‥
「こっちの商品が品切れですね〜。さすがセール札は大した効果です」
「ふむ、ではその代わりにこれを置いておくか」
店内の陳列商品を常に見回っている白峰とエリク。表が女性陣なら、裏で支えるのは男陣と決まったようである。お客が少しでも引いた瞬間に陳列・整理を的確にこなしていく二人の横を、えっほえっほとダンボールを運んでいる比良坂がいた。
「よいしょ、よいしょ‥‥次はどれを運びましょうか?」
「そうだな、こっちの傷薬の在庫が‥‥」
「「「キャ〜〜〜〜〜!!」」」
何やら店内が大いに黄色い悲鳴で沸き立ち、三人がビクッと飛び上がる。どうやら出来上がった菓子を持って出てきた柳凪のせいらしいが‥‥きゃいきゃい騒いでいる女性陣の勢いが凄まじい。その勢いを全く物ともせず、くすりと微笑みながらクッキーを配っていく。
「ほらほら、そんなに騒がないようにね‥‥はい、どう? 美味しいかな?」
「「「キャ〜〜〜〜〜♪」」」
「‥‥何だか、凄いですね‥‥」
「そうだな‥‥比良坂、手伝ってくるか?」
「そうですね、一人では大変そうですし。少し行ってきます」
「あ、それじゃあ俺も‥‥」
こうして比良坂と白峰も手伝いに向かっていったのだが、またもや黄色い悲鳴が上がったのは言うまでも無いだろう‥‥合掌。
「はいそこのお客様〜♪ ここはご近所では有名な怪しいお店、という噂はご存知でしょ〜? しかし‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
にこにことプロの商売人顔負けの勢いで外の通りがかる人々に声をかけているのは、ゴシック魔女っ子・住吉である。その口の上手さといったら見事なもので、ついつい足を止めて聞きたくなるような魔力を秘めていた。そして一緒に横で風船を配ったり、子供の頭を撫でているパンダ・リュウセイも大きな要因であっただろう。
「駄目で元々、一歩脚を踏み込んで中を覗いてみて‥‥」
「おうおう〜〜!! 何だか景気が良さそうな場所じゃね〜か〜!!」
「嬢ちゃんよ〜、随分可愛い格好してんじゃね〜か〜、よ〜?」
ノリノリで話を続けていた住吉の耳に、明らかに客と言うよりは【893】という風体の男達の声が入ってきた。にこやかに言葉を発していた住吉は、あくまでそのままの流れで周囲に声をかける。
「はいはい〜、それでは盛り上がってきた所で〜、絞りたてフレッシュジュースの配布ですよ〜♪」
「おいおい嬢ちゃん〜? こっちの話聞いてんのか〜〜、ぁあ〜ん?」
あくまで無視して周囲に声をかけている住吉の姿に、若干キレたのかずずいと近寄る‥‥と、その時男達の前に立ち塞がった存在が一匹。
「‥‥‥‥‥‥」
「あ〜ん? きぐるみ風情が何か用か〜、ぁあ〜ん?」
「俺達を誰だか分かってんだろうな〜? あの有名な‥‥」
目の前に現れたパンダに怒りの矛先を向けて詰め寄る【893】達。しかし、慌てず騒がずごそごそと可愛いパンダがカバンから取り出したのは‥‥一つのリンゴである。
「「「何のつもりじゃわれ〜〜!! いてまうぞこの熊猫ヤロウ‥‥」」」
【グシャグシャグシャ!!!!】
「「「‥‥失礼しました〜‥‥」」」
片手で瞬時に握りつぶされたリンゴを見て、手のひらを返したように逃げ出した三人組。その後、フレッシュリンゴジュースは無事にお客さんに行き渡ったのだと言う‥‥合掌。
●閉店後の一時‥‥
「あ〜、疲れた〜。でも接客とかって楽しいね♪」
「ふふ、そうですわね。私も一人一人のお客さんと話すのが楽しくて楽しくて♪」
う〜んと一糸纏わぬ姿で腕を伸ばしている刃霧の横では、にっこりとリアナが微笑みながら温泉に浸かっている。今日は初日と言う事もあり、なかなかの売り上げであった‥‥と言うより、普段の一週間分ぐらいの金額はあっただろう。
「でも皆さんにお支払いする賃金などを差し引きますと、まだまだ頑張りませんと‥‥ね、マリー?」
「‥‥そうね。ふ、ふふふ‥‥明日はどんな格好をさせられるのかしらね‥‥」
どこか虚ろな目でぽちゃんと湯に浸かっているマリーは、どうやら今日一日で精神的にかなりのダメージを受けた様子であった。普段ならバスタオルで隠している上半身も、今は全く隠しきれておらずその【結構な】果実がむき出しである。
「それにしても、今回は珍しく男の人の方が多かったわね〜。まあおかげで力仕事は助かったけど」
「そうですわね〜、でも来週からの事もしっかり考えておきませんと‥‥」
「はふぅ〜、今日は私も疲れました〜‥‥リアナ様や刃霧様もお疲れ様でした♪」
「ふぃ〜、今日もなんとか終わったね〜。皆お疲れ様〜♪」
ゆっくり湯に入ってきた住吉と、ドボ〜ンと元気良く飛び込んできたミティシアがリアナの言葉を遮って皆を労う。変なお客の事は住吉から既に聞いていたが、次に現れたときの対策もしっかりと考えておかなくてはいかないだろう。‥‥ちなみに、近くにある100tハンマーは関係ない(ぇ
「ところで〜、あのお守り‥‥反響あったら主力で行こっか?」
「そうですわね‥‥ふふ、まずは様子見ですわ♪」
「‥‥ちょっとあんた達、何そこで内緒話を‥‥」
「あ〜ん、さすが【御姉様】‥‥綺麗なお肌をしていますね〜♪」
「ちょ、ちょっとあんたどこ触ってるのよ!? そういう役割はどっちかというと刃霧さんの‥‥」
「う〜ん、たまには最後までゆっくり入るのもいいんじゃない? というか入りたいし」
「さて‥‥刃霧さんのお許しも出た事ですし、ここはじっくりねっとり最後まで‥‥」
「だ、誰か助けて〜〜〜〜!!」
「ふぅ、相変わらず向こうでは大騒ぎだな」
「そうですね‥‥相変わらず、です」
ゴシゴシと身体を擦っているエリクの横で、バシャッと湯を身体にかけて泡を落としている比良坂が呟いている。今回は流石に何も無いはず‥‥まあ騒ぐ【きっかけ】や【原因】さえいなければ、メンバーは冷静な人物ばかりである。
「そう言えば、リュウセイさん大丈夫でしたか? ずっときぐるみで外にいたんじゃないですか?」
「あぁ、確かに暑かったな‥‥まあこれでも能力者だ。この程度でへこたれる訳にはいかね〜よ」
筋肉質の体を豪快にタオルで擦っているリュウセイだが、ふと思い出したように呟く。
「あ、そういやまだリアナに聞いて無かったな‥‥俺に似ている奴ってだれだ‥‥?」
「どうしました? 私で良ければ話を聞きますが」
少し首を傾げて考え込むリュウセイに、後ろからゆっくりと歩いてくる柳凪。すっと引き締まった身体に、細身ながらもしっかりと筋肉が付いている。どうもここに集まっている男達は美男子が多いようである‥‥イケメン達が(ぇ
「いんや、また後で聞くぜ。それより白峰、お前刃霧の事が好きなのか?」
「え、ええ!? いきなり何を言うんですか!!」
びくっと一瞬で反応した白峰に、エリクが追加攻撃を加える。
「ああ、それは僕も思った。明らかに俺達や他の女性達に話しかける口調が違うからな」
「え? 俺は気付きませんでしたけど‥‥」
「比良坂さん、実は彼の態度が‥‥」
「ちょっと柳凪さん!! それ以上言わないで下さいよ!!」
柳凪がにこにこと比良坂に話そうとするのを、さらに大慌てで止める白峰。その様子を見て軽くエリクがため息をつく。
「ふぅ‥‥まあ今は普通の友人以上、恋人未満といった所か。これからどうなるやら‥‥」
こうして、【非常に珍しく】男湯でもゆったりとした時間が流れるのであった‥‥
「ねーねー、向こうで何だか白峰さんが騒いでたよね〜♪」
「うふふ〜、若さって良いですわね〜♪」
「ま、良いんじゃない。恋愛は自由だし、ね♪」
「くすくす‥‥もし良ければお手伝いしますよ‥‥♪」
「ちょ、ちょっと別にそんな関係じゃないってば〜〜!!」
ちなみに、この一週間の成果は来月分の家賃まで補えるほど稼げたと言う‥‥合掌。