●リプレイ本文
●お祭りは終わらない
『はっぴーはろうぃーん!!』
開かれたパーティ会場に、ポスターを見て集まってきた傭兵たちがごった返した。
「トリックあーんどトリート! お菓子くれてもいたずらするぞ〜♪」
開いた玄関から飛び込んできた弓亜 石榴(
ga0468)は、そのままの勢いでアナスタシアの丸い体に抱きついて押し倒した。
「弓亜お姉ちゃんいらっしゃい〜! そして一人では立てないので起こしてください」
「うーん、この衣装じゃ抱きついても面白くないなぁ。後でお揃いの魔法使いやってみる?」
「うん、確かに動きに難ありだしねー、この衣装」
「今日は、お招きいただき、ありがとうございますっ!」
金城 エンタ(
ga4154)は元気よく二人に挨拶する。全力で楽しむことを目的として参加した彼は、しっかりとメイクセットも自分で用意してきていた。
「んふふふ、今日はお仕事忘れて、いっぱい楽しもうね!」
「今日は乙姫のいう事、なんでもきいてあげるよ」
皆城 乙姫(
gb0047)とその最愛の人である篠ノ頭 すず(
gb0337)は、仲良く手を繋いで入場してくる。
その姿は騎士と王女、いや侍と姫と言ったところだろうか。仮装は伊達政宗と小十郎にでもなるかもしれない。
「リズだ。宜しく。今日は皆でパーティーを楽しもう」
フランスの名門貴族出身のリズ(
gb0381)は、完璧な気品と礼節を備えていることを行動で証明していた。
彼女はパーティが始まる前から、会場の設営を手伝ってくれていたのだ。今も初対面の客が大多数の中、物怖じせずに来訪者を更衣室とテーブルへと導いていく。
「アナスタシアちゃん‥‥さんのほうがいいかな? ご招待ありがとう。今日は楽しませてもらうね」
日本男児を絵に描いたような千祭・刃(
gb1900)はそう言って、見事な腰からの礼をした。今日は仮装も武者で決めるつもりのようだ。
「とりーと・おあ・とりっく! かぼちゃ大王さん、くまさん、パーティー招待してくれておーきに♪ 今日は思い切り楽しませてもらうで〜」
チャイナ服を身に纏った鳳(
gb3210)は元気いっぱい、今日はウェディングドレスを持ち込んできていた。
予想以上の参加者に、男女共々更衣室はすぐさま埋まってしまう。
お遊びのパーティだが、楽しむことに積極的な傭兵たち。女装・男装にも手を抜かない。
美の追求者、ナレイン・フェルド(
ga0506)はプロのメイク師が使うような化粧箱と自前の衣装を持ってきていた。
今回は鳥飼夕貴(
ga4123)と共に衣装を合わせるつもりだ。
青いリボンにツインテール、尖った悪魔の触角に、ノースリーブ。腕にはアームカバーをつけ、したはショートパンツにラメ入り網タイツ。
かわいく丸まった尻尾に、靴には翼をつけたハイヒールだ。
いつもより少し濃い目の化粧を施すと鏡の前でポーズを決める。
「小悪魔ナレイン参上よ♪」
腰に手を当て、ウィンクする姿は何も知らない男性が見たらイチコロだろう。
「小悪魔夕貴、参りましたわ♪」
青い小悪魔のナレインに対し、鳥飼は緑の衣装で統一。
ノースリーブにミニスカボディコンスーツ、編みタイツに翼付きハイヒール。揃いの尻尾、触覚、悪魔の翼でメイクアップすれば、日本髪の小悪魔の出来上がり。
「藍――愛――の小悪魔、キュマブルー♪」
「緑――縁――の小悪魔、キュマグリーン♪」
『二人はコアキュマ!』
「決まった!? いろんな意味で!」
思わず鳳がツッコミを入れてしまうほどの完成度の高さ。放送はAKTVで日曜朝7時からだ!
「やはり十二単は無理がありましたか‥‥。女教師でいきましょう」
今日一番の大荷物を持ち込んだ神無月 紫翠(
ga0243)は、微笑を浮かべながら十二単から女教師の衣装へと着替えていく。
ちなみにこの十二単、その名の通り12枚の着物を重ね着するのだが、総重量は20キロにも及ぶ。
流石に動きにくい十二単での参加は諦めて、スーツ・タイトスカート、ハイヒールを身に付け、折りたたみ式の指示棒を持てば美人女教師の完成だ。
「手取り足取り、優しく教えてあげますよ♪」
眼鏡を直しながら微笑む姿は、カンパネラ学園生を虜にしそうだ。
美しい微笑では同じく負けていない美環 響(
gb2863)。チャイナドレスに札付き帽子を被り、メイクを施していく。
付けまつげにマスカラ、アイシャドーを入れていき、二度瞬きしてみせる。
口元を羽扇子で覆い、半分だけ開いた瞳を潤わせ、流し目をおくれば傾国の美女だ。
「ほ、本当に女装しなきゃいけないんですか!?」
周囲で魔法少女ばりの変身を見せ付けられつつ、天・明星(
ga2984)は冷や汗をたらした。
明星の肩をそっと、ミニスカせくしー魔女のコスプレをしたくまさんが叩く。諦観した優しげな瞳で見つめられ、やがて明星の心も折れた。
「じゃ、じゃあ、これで‥‥」
彼が選んだのは妖精の衣装だ。花の妖精をイメージした、ピンクの花びら風フリフリドレス、背中にはモンシロチョウの翅を生やし、触角付きヘアバンドを装着する。
母親からもらった宝物、牙をあしらったイヤリングとアメジストのネックレスを、自分を見失わないようにしっかりと握り締めて。花の妖精の完成だ。
同じ妖精でも、『妖精の女王』をモチーフとした金城は、大人っぽいシックなドレスに、造花をあしらい身に着けた。
髪も植物をイメージさせる明るい緑色に染める。もちろん、髪を傷めず色も落としやすいパーティ用の染髪スプレーだ。
メイクもナチュラルメイクを心がけ、薄く紅を走らせた。
「妖精の女王に見えるかな?」
そう言いながら背中の4枚の透き通る翅を広げてみせると、物語から飛び出してきた妖精の女王がそこに居た。
「ここに来たからには、完全に自分じゃないつもりで行こうか」
ハイテンションで笑みを浮かべながら着替えていくヒューイ・焔(
ga8434)の衣装は、ナース服だ。
ピンク色のナース服にキャップ、カルテを挟む板を抱え、腰にはピコハン、顔にはヒーローマスクを纏う。
胸元には、『ひゅーい・ほむらこ』と書かれた名札付きだ。
「ヴァン子ちゃん、今日は採血の練習でもしましょうか♪」
「なりきってるな。‥‥血を採りやすいように、注射器を大きくしてあげるわ」
ヴァン・ソード(
gb2542)はマジシャンが使うようなステッキを振るって見せた。彼の仮装のテーマは『ちょいエロ意地悪魔女』らしい。
赤いレザーボンデージスーツに、ストールを両肘に。下は同じく赤いレザーホットパンツ。黒ニーソに赤いレザーロングブーツを身につける。
小悪魔系のメイクに、ウェーブのかかった黒髪ロングヘアーのかつらを付ければ、セクシーな魔女が一人。
しっかり、足の毛まで剃る念の入れよう。愛嬌のある黒猫の絵が入った魔女の帽子をかぶって雰囲気はばっちりだ。
「ふふふ‥‥俺の特殊メイクによる変装術を披露する時がきた‥‥!」
背後で漫画化されないと見えない闘志を燃やしているのは鳳覚羅(
gb3095)。女装でも手を抜かないのが覚羅クオリティ、らしい。
2本角付きカチューシャに、パッドの入った黒いスーツ。黒い革靴を履きこなし、背中には悪魔の翼を背負う。
歩き方までキャリアウーマン風に腰を入れ、メイクも美女系悪魔メイクを施す徹底振りだ。
(よし完璧だ。俺の持つ変装術の極意を注ぎ込んだこの仮装。これなら誰も俺を男とは思わないでしょう)
「はーい皆さん デビル覚羅です今日はよろしくね〜」
‥‥裏声なのがばればれでなければ。流石に声まで変装できなかったようだ。
神妙で珍妙な面持ちで鏡の前に座る、夏 炎西(
ga4178)とイスル・イェーガー(
gb0925)。
「仮装するんですか?」
「‥‥どれ着ればいいんだろ‥‥?」
二人の左右にはナレインと神無月 るな(
ga9580)が、マスカラと魔女の衣装で武装して固めていた。
「魔女っ子イスルん〜そして伝説へ〜」
オ○テガの息子として恥じることのない、立派な男の子として育てられたイスルは、E:ミニスカ・ハイレグの魔女っ子に女装し、魔王・大魔王を倒しに旅立つのだが、それはまた別のお話だ。本当に。
E:危ない水着じゃなくて本当によかった。
「衣装とのミスマッチ感がいい感じよ♪」
マスカラで睫毛にボリュームをつけ、唇にはピンクルージュにグロスを塗る。頬にも軽く紅をいれた。
メイクを終え、とんがり帽子をつけたとたん、イスルは小悪魔ナレインに抱きしめられた。
「‥‥ぇ、‥‥ぁ、‥‥いや‥‥。これって‥‥」
本人は鏡の中の完全にコスプレ女の子化した自分の姿に赤面し、顔を逸らした。そこがまた可愛らしくて、るなも反対側からイスルを抱きしめた。
「本当に、仮装というより女装なんですね‥‥」
イスルとくまさんの格好を見て観念したのか、夏も赤いチャイナ服に着替えて化粧をしてもらう。
「夏さんも、やっぱり美人さんね♪」
薄いナチュラルメイクを施し、頬に影をつけてキョンシーらしさを引き出す。赤ルージュにグロスを塗れば、妖しげな魅力を放つ女キョンシーだ。
「これが私ですか‥‥って前にも言った気がしますね」
「なんや、みんな綺麗になったなぁ。見間違えたわ」
奥で着替えていた鳳がしずしずと歩いて戻ってきた。女の子なら一度は着たいと子供の頃に憧れる、ウェディングドレスを身に纏って。
白いシルクの手袋をつけた手にはブーケ、口紅で染められた美しい唇を笑みで持ち上げると、それだけでチャームの魔法が使われたように思えた。
(「普段チャイナドレス着る時はちゃんとズボンも穿いとったさかい、足がスースーする‥‥」)
「これはなんともはや‥‥」
一人落ち武者の仮装で男としての一線を越えずにすんだ千祭は、ハロウィンパーティというよりレベルの高いオカマバー化した男子更衣室内の光景に頭を掻いた。
「ほらほら、刃さん。一人だけ普通の仮装じゃずるいですよ。俺がメイクしてあげる」
「う‥‥郷に入りては郷に従え、か‥‥。余り怖くしないでくださいよ? とーちゃんに『女を泣かす男は最低だ!』と言われてますので」
覚悟を決めた千祭に、鳥飼がメイクセットを取り出し、化粧を施していく。
顔は死者に相応しいよう、青白く塗り、眉つぶしで眉毛を隠した。左まぶたを特殊メイクで腫れあがらせ、両目を紫のアイシャドーで痣を描いた。
口の端には紅を塗り、流血を演出する。
「鳥飼さん、少し女の子っぽすぎやしませんか?」
「気のせい、気のせい♪」
女装、完了!
「まさか男性陣がここまで強力とは‥‥後でこっそり放送するように、念のためカメラを仕掛けておいて正解だったわ」
「私にもダビングしてね、シアちゃん」
バンダナにスニークスーツ、ダンボール装備で覗き見していたアナスタシアと弓亜が戻ってくる。
「こっちも負けていられないよ! 皆、ガンバロー!」
ダンボールを外し、振り返ったアナスタシアの目に入ったのは、黒いスータン(神父服)と白いアルバ(祭服)を身にまとい、首にロザリオを下げたキャンベル・公星(
ga8943)の姿。
「灰は灰に、塵は塵に‥‥蘇りし者たちを冥府に送り返すが我が勤め‥‥なんてね」
手にはナイフ――禍々しい形態をしているが、ただのプラスチック――を持つ。ジャック・ザ・リッパーの仮装だ。
髪は首の後ろでまとめられ、顔にはシール型のタトゥで血の涙が刻まれていた。なかなかの迫力だ。
「トリックオアトリート、アンドブラッド!」
隣に立つリズは、どこから吹くのか気にしてはいけない風に靡くマントに、古いタイプのシャツと黒いスーツ、ヴァンパイアの仮装だ。
取り外し可能な牙を見せるように笑うと、白い化粧と暗めの照明のせいで怖さが引き立つ。
「夜の紳士、ヴァンパイアに仮装完了」
同じくエクレール・アルト(
gb2982)もヴァンパイアの仮装だ。タキシードに白いマスク、髪をまとめてアップにし、白い手袋にマント。
「胸‥‥苦しい‥‥結局隠し切れなかった‥‥うぅ」
‥‥さらしを巻いたが自己主張する胸は隠しきれなかったようだ。
「うんうん、なかなかいい感じだね!」
「よし、私も仮装しますか」
弓亜も毛がふさふさの着ぐるみを装着する。無駄に科学の粋を集めた着ぐるみは、尻尾と耳が感情とリンクして動くようになっている。
かなりリアルな仮面を被れば狼男が一匹完成した。
「ふふふ。がおー、シアちゃん、食べちゃうぞー!」
マスクの口が着用者の意思に反応してパクパクと動く。尻尾もパタパタと横に振られた。
「本当に無駄にすごいね、その着ぐるみ。でも結構似合ってるかも?」
かぼちゃ大王の仮装に戻ったアナスタシアに弓亜が抱きつくと、ボールにじゃれ合ってる犬にしか見えないのが難点だったが。
「とりっく・おあ・だい‥‥なのですよ♪」
「‥‥ん。仮面だと。食べ難くそう。これで。大丈夫」
大鎌にフード付きマントの死神を演ずるのは、るなと最上 憐 (
gb0002)の二人だ。
小さい彼女たちが死神に扮しても、恐怖というより愛らしさが勝っているのが難点であり、隙あらば弓亜が抱き着こうと目を光らせた。
「そうだ、憐さん。憐さんもメイクを‥‥」
イスルを女の子にした腕前で、最上もより美しく華やかに可愛らしく‥‥と思ったのだが‥‥。
「むぐもぐぬぐ‥‥ん。鼻眼鏡。初めて。役に立ったかも」
「うーん、もうメイクは終わってるみたいですね」
かぼちゃパイに手をつけ、口の周りをかぼちゃソースで橙色のメイクを施した最上の姿に、るなはメイクを諦めた。
「すず、すず! 見てみて、似合う? むなむなー」
「男装‥‥? やっぱり乙姫は可愛いよね。我はど、どうかな‥‥? 似合うかな」
「すずの格好も怖かっこいいよ! 新たな魅力発見だね!」
皆城と篠ノ頭は完全に二人の世界といった感じだ。皆城は赤いチャイナドレスに札付き帽子を被り、髪の毛を二つの三つ編みお下げを垂らしていた。
両手を前に突き出し、膝を曲げずにぴょんぴょんとジャンプしてみせると、三つ編みが揺れ、小さい某ゲームの敵キャラのようで愛らしい。
篠ノ頭の方はというと、背中に何本も矢の刺さったぼろぼろの甲冑を着た亡霊武者の姿。
甲冑にあいた刀傷から覗く体と透き通るような白い肌が、女武者の亡霊になんとも言えない妖しい魅力をかもし出していた。
「二人とも、冥府でも互いを支えあう侍と姫って感じだねー」
「例え乙姫が黄泉に落ちても、必ず助けにいくからね。イザナギノミコトと同じ過ちは決してしないし、逃げたりしない」
「すず‥‥!」
感極まって抱き合う二人。
「うーん、愛の力は偉大だねぇ。いい絵が撮れるよ♪ 後でお二人用に編集して送るからね!」
こうして男装・女装を終えた紳士淑女の傭兵たち。戦場での死闘を忘れ、ハメを外してみるのも悪くない。
●さぁ、祭りの始まりだ!
「皆、今日はパーティに参加してくれてありがとう! 今日はいっぱい、ゆっくり楽しんでいってね!」
斬首台の上に立ったアナスタシアがクラッカーを鳴らす。それを合図に、パーティは始まった。
「うわ‥‥面白そう‥‥。これ‥‥の、乗っても‥‥いいですか‥‥?」
会場の周りを走るトロッコに目を光らせた金城。側に控えたくまさんが笑顔で頷くと、すぐさま中に飛び乗った。
くまさんがシーソー型の動力を上下に動かすと、ゆっくりと、トロッコがレールの上を動き始める。
ゴトゴトと音を立てながら横揺れを伴うトロッコ。段々とスピードも乗ってきて、風を感じられるほどだ。
「わ〜‥‥すごいすごい! 楽しいです〜!」
羽をぱたぱたさせながら喜ぶ姿は、妖精の女王というより、幼い妖精の王女様に見えた。
テーブルでは用意してある料理に、皆が手を伸ばす。
「私と美環さんでお菓子を作りましたの。ふふふ‥‥この鎌でザックリされるか、お菓子を食べるか選んで下さいね♪」
るなが用意したのはパンプキンヘッドの形の、甘いマロンパイに、お化けの形の赤いキャロットクッキー。
さらに食べるとしたが赤くなるキャンディーに、かぼちゃの果肉入りのパンプキンプティング。
美環が用意したのは、キョンシー姿の彼に合わせた、お札の形のチョコレートボンボンだ。
「お菓子ですけどお札の形をしています。油断すると大変なことになるかもしれませんよ?」
魅惑的なウィンクと共に配られたチョコレートボンボン。はずれを引いたのはナース・ほむらこだ。
「ゴフッ!!」
中に酒の代わりに酢が入っていた。喉を焼けるような酸味が、鼻腔を刺激的な酸っぱい香りが、突き抜ける。
「め、めでぃーっく!」
「それはあなたのことじゃない、ヒューイ」
言葉を投げかけた魔女ヴァンは、謎のミイラ男の取り巻き――どこから連れてきたのだろう?――を侍らせて登場した。
四人のミイラ男に椅子を担がせると、軽やかに床を蹴って乗り、魅せつけるように右足を上げて左膝の上に乗せ、肘掛に肘を突き頬杖を付きながら座った。
ほむらこのもがく様子を眺めつつ、ワインを手のひらの中で回して口に含む姿は、悪の組織の黒幕の如し。
「さて、早速誰か、誘惑しちゃおうかしら」
そう言って狼男の弓亜に投げキッス。
「ふふーん、魔女っ子、食べちゃうぞ〜♪」
結果、椅子に飛びついた弓亜のせいで四人のミイラ男は下敷きになった。でもなぜか喜んでいるようだ。
「るなさんのおかげでおいしそうなものが出来ました、ありがとう! るなさんのもおいしそうですね。味見してもいいですか?」
「もちろんですよ! 私のお菓子で元気になって下さいね♪」
倒れるヒューイたちを他所に、るなと美環はお互いのお菓子を交換して味わった。
「ふふふ。あなたにも聞こえますか? 彼女(パイ)の悲鳴、魂の奏でる美しい旋律が」
キャンベルが両手のナイフを舞うように操る。二本の刃がぶつかる音と、パイが刻まれていく音が混ざり合って聞こえてくる。
「まだ温かなうちに、中身を美味しくいただくのが最高ですよ。冷めてしまっては、せっかくの芸術品が台無しですから」
さらにグラタンも器用に切って分けてみせた。が、彼女の演出で食欲を削がれ、なかなか手が伸びない。
一人最上だけは、我先にと切り分けられた料理を、懐から取り出したマイスプーンとマイフォークで次々に口へと運んでいく。
「‥‥ん。かぼちゃ。しっかり。食べて。供養する」
見てるほうが嬉しくなるような食いっぷりに、皆も食欲を取り戻したようだ。
「ゲームの前に、とりあえず腹ごしらえだよね」
弓亜が着ぐるみの手袋をはずし、かぼちゃのスープとサラダに手を伸ばした。
「アナスタシアちゃんも一杯食べないと。くまさんのお嫁さんになるには、スタイル良くならないといけないよ。体長的にも」
「うん、一杯食べて大きく強くなるよ」
「‥‥ただの保護者です」
「え? そうなの? 私はてっきり‥‥」
「特殊な趣味を持った熊だと思ってたんですね、わかりますー」
「シアちゃん、言いづらいことをはっきりと」
「‥‥むしろ捨て猫を拾ってきたような」
でも一杯食べて大きくなるのは賛成、シアはまともに栄養とれてなかったからと言って、くまさんはかぼちゃの煮物をアナスタシアの皿に載せた。
「それにしても、本当にうまいですね。好吃好吃很好吃!」
明星はかぼちゃと鶏肉の炒め物を頬張り、蛍光グリーンの緑茶を口に含んだ。
唇から舌まで蛍光グリーンに染まり、一層妖精らしさが増す。本人は気づかずに次々とデザートに手をつけていった。
「わぁ‥‥おいしそうなお料理です‥‥いただきます〜」
トロッコで遊んだ分お腹をすかせた金城もかぼちゃパンやスープ、プリンへ手をつけた。
「揚げたり種を炒ったりはしてましたが、カボチャ料理、こんなに種類があるんですね。作り方を教えてもらいたいです」
夏の申し出をくまさんは快諾し、準備依頼に参加してくれた傭兵から教わったレシピを、夏の手帳に書き写す。
恐らく歴史の中でも、こうやって他国の料理が伝わり、食文化が広がっていったのだろう。
「‥‥ん。全種類。制覇を目指す。先ずは端から。すたーと」
最上は名古屋撃ちならぬ名古屋食い宣言と共に、ピンク色の球体生物に勝るとも劣らぬ吸引力で食事が平らげられていく。
「‥‥ん。どんどん。もりもり。食べる」
「すず! 私たちも早く食べないと、無くなっちゃうよ!」
食糧難の危機を目の当たりにし、手近にあったデザートを口に押し込む皆城。
「ふむふむ、ひょれほ、ほひひひへ(ふむふむ、どれも、おいしいね)」
「こっちも取っておいたよ。ほら、乙姫。あ〜ん‥‥ってもう入らないね」
篠ノ頭は口の周りについたクリームをハンカチで拭いてあげた。
「私も頂こうか‥‥刃、食べているか? 取り辛いのなら私が取るが」
「あ、ありがとうございます」
食欲少女たちに遠慮して手をつけずにいた千祭に、リズが気を利かせて料理を取り分けた。
「楽しいパーティだな。できれば妹も連れてきたかった‥‥」
「妹さんがいらっしゃるんですか?」
「ああ、世界で一番可愛くて美しくて愛らしい妹がいる。あんな可愛い妹がいる私はきっと特別な存在なのだと確信している。写真を見るか?」
千祭が答える前に、リズは財布の中に入れられた妹の、小さいときから今までの何枚写真を取り出した。
この写真は妹が初めて立ったときの、初めてお姉ちゃんと言ってくれたときの‥‥などと思い出話まで挟まれた。
料理を取ってもらった手前無碍にもできず、確かに妹が可愛かったこともあり、長話になるのだった。
「取り合えず何か甘いものを口直しに頂きたい」
美環謹製の酢の脅威から回復したほむらこの前に、少女たちの魔手を逃れた、甘くて美味しそうなパンプキンプリンが差し出される。
「まだプリン残ってたわ。あなたにあげる」
再び4人のミイラ男に担がれた椅子に座り直した魔女ヴァンが、ワインを傾けながらプリンを勧めていた。
「あら、ありがとう、ヴァン子ちゃん‥‥って、同じ手を食うか!」
「むぐっ!?」
ほむらこは床を蹴り、ヴァン子の口にプリンを――彼が仕掛けた激辛スパイス入りプリンを――押し込んだ。
口腔内を微かなカボチャの甘みと、抑えることのできない辛さが広がる。
「め、めでぃーっく!」
「ああん? キコエンナァ!」
地面を転がるヴァンと高笑いのヒューイの頭に、巨大ピコハンが落とされた。
「‥‥とりあえず‥‥ストップ」
ミニスカ魔女っ子イスルのマジカル☆ハンマーで落ち着きを取り戻した二人に、メロンジュースを差し出した。
「‥‥喧嘩だめ‥‥これ飲んで」
イスルの純粋な瞳に見つめられると、喧嘩ってわけじゃなかったんだけど、という言葉は二人の爛れた喉に飲み込まれた。
「ありがとう、イスルちゃん」
「頂くわ」
しかし、二人は知らなかった‥‥イスルが甘い物好きだということを。
『甘えぇぇぇええ!』
濃縮メロンジュースの甘さにノックアウトした二人を、イスルは小首を傾げて不思議そうな目で見詰た。
「‥‥美味しいのに」
「それでは、新郎新婦の入場です」
女教師兼司会の紫翠がマイクを持ち、アナスタシアがカメラを構える。
会場の中心で、葬送曲と共に血のように赤いカーペットの上を歩く一組のカップル。
花婿のヴァンパイア・エクレールと、花嫁の鳳だ。
そして諸々の儀式を超能力ばりにすっ飛ばし、二人の前に大きなパンプキンケーキが用意されていた。
「それでは、夫婦で初めての共同作業、ケーキ入刀です」
お遊びとは言え、仲睦まじく手をとり合うと、照れで頬が赤く染まっていく。
二人の手に導かれたケーキナイフが、かぼちゃの形をしたケーキを切り分けた。
「何て幸せなんだ、僕は」
感極まったエクレールは鳳の腰に手を回し、優しく抱きしめた。
驚いて目を見開く鳳の顎を指で上げ、顔を近づけていく。周りの観客が息を呑み、カメラが二人に寄った。
(「ちょっとエクレールさん、こんなことまでするなんて聴いてない‥‥!」)
鳳の動揺を他所に、エクレールの顔はどんどん鳳へと近づいて、息が触れ合うほどになり、そして‥‥。
「エクレールさん‥‥」
「それじゃあ‥‥いあただきまぁす‥‥!」
『カプリ☆』
瞳を閉じた鳳の首筋に、エクレールの牙が突きたてられた。
「へ?」
首筋に甘噛みしたエクレールは笑いながら、呆然とした鳳をお姫様抱っこして、絨毯の上を歩いていく。
観客たちは笑い声と拍手で二人を見送った。
次にステージの上に立ったのは、ナレイン・鳥飼・デビル覚羅の小悪魔3人。
「藍――愛――の小悪魔、キュマブルー♪」
「緑――縁――の小悪魔、キュマグリーン♪」
「黒――刻――の小悪魔、きゅ、キュマブラック!」
『コアキュマ、マックスハード!』
『ドギャーーーーーン!!』
「増殖してるぅぅぅ!?」
「これは確かにマックスハード‥‥」
今度は明星と夏がツッコんだ。いつの間に誰が用意したのか、紙ふぶきまで使った手の入れよう。
ナレインと鳥飼は上機嫌でポーズと台詞を決めたが、覚羅はまだ恥を捨てきれていないようだ。
(「外側はいくらでも取り繕えるけど内面まではちょっとね」)
しかし、大鎌ノトスを構えてポーズはしっかり決めている。照れているのか酒の力を借りたためか、頬が少し赤かった。
「はぁ〜い♪ みんな、山手線ゲーム始めるわよ♪」
紫翠から司会とマイクをタッチされた小悪魔ナレインが、自転車の空気入れに繋がった風船を持ってきた。
「ルールを簡単に説明すると、出されたお題に沿った解答を順番に答えていくの。今日のお題は『世界のお化け』だから、『ヌリ壁!』とかね」
「解答している間、この風船を持ってもらうわ。風船が爆発したら罰ゲーム! 専用の料理か道具を選んでもらうわよ」
二人の説明と共にデビル覚羅が、給仕車を押して料理を持ってくる。
その上には唐辛子やタバスコで赤く染まった、一目でハバネロ並の暴君っぷりとわかるかぼちゃの血液シチューと、かぼちゃの果肉から作った団子のなかにいろんなものを詰め込んだ、パンプキンボムが用意されていた。
「う‥‥匂いと色だけで危険だとわかるな‥‥」
「私は椅子に座って眺めていましょうかね‥‥罰ゲームが危険そうですし」
「僕もいい。血ならさっき、鳳君にたっぷり頂いたことだしね‥‥♪」
「哀れ鳳君、ついに吸血鬼の魔牙に‥‥」
「違う! さっきワイン注いであげただけだから! 変なナレーションいれないで!」
結局参加者は弓亜、明星、金城、夏、キャンベル、皆城、篠ノ頭、リズ、千祭、美環、紫翠、鳳、それにナレインと鳥飼だ。
「参加する人は集まって〜じゃ、ミュージックスタート♪」
MDプレイヤーから流れる音楽にあわせて、円の中央でくまさんが空気を入れ始めた。
「それも手動なのか‥‥すぐに割れてしまわないか?」
「傭兵用の割れにくい風船だから大丈夫」
「傭兵用の風船って何なんだー!」
「気にしないでいくよー、お題は世界のお化け! まずは私から。一反木綿!」
風船が鳥飼にパスされる。
「お岩さん」
「大かむろ(巨大な顔で人間を脅かす妖怪)」
「獏!」
「ええと‥‥何がありましたっけ‥‥」
先ほどまで小悪魔ナレインに酌をしてもらい、断ることもできずに酒を飲んでいた夏は、かなり酩酊していていつものように頭が回らないようだ。
赤い顔で眼鏡の下の目を回し、混乱する夏に容赦なく、くまさんは風船を膨らませていく。
「やばいやばい!」
「離れていたほうがよさそうね」
「見捨てないで下さい! えっとええっと‥‥!」
みるみるうちに風船が膨らんでゆき、そして‥‥。
「わ、我が生涯に一片の悔いなしぃぃ!」
風船が破裂し、中から紙ふぶき(ケーキ入刀時のリサイクル)が宙を舞った。
「夏さん残念ー! 罰ゲーム犠牲者一人目です」
「次はキャンベルさんからね」
「えーと、バンシー」
「こうもりねこ!」
「くまたいよう」
「‥‥それは流石に魔方陣的な世界にしかいないからだめです」
「では、小豆洗いで」
「グレムリン」
「‥‥わかりません!」
「自信たっぷり言い切った!?」
千祭の番に再び風船が破裂し、第二の犠牲者が‥‥。
「一周する前に脱落者二人‥‥お題を変えましょうか」
「じゃあ今度は皆が知ってるショップの支給品でいきましょう!」
皆の共通する知識ということもあり、このお題は3周、4周と続き、リズとナレインが脱落。
「むむ、負けてしまったか」
「えぇ〜やだ、やらなきゃダメ?」
「提案者ですし、覚悟を決めてください」
「よし、それじゃあ罰ゲームに移りましょうか」
酔いの回った夏は、食べ物系では威力が低い可能性も考慮し、手術台へと連れて行かれた‥‥。
「あれ、覚羅さんの目が光ったような気が‥‥」
「何のことですかねぇ、夏さん。いい具合に酔っているご様子。少し横になったらどうですか?」
と言いつつ、デビル覚羅は手でるなに合図し、応援を呼んだ。
「拘束班のみなさーん」
「はーい♪」
るな、弓亜、キャンベルが近づき、手早く二人を手術台へと誘導した。
「私もこっちなの?」
隣の手術台にはナレインが横になった。こちらはるなが横に付き、身動きができないように手足を固定する。
「るなさん、それじゃ緩くない? もっとこう‥‥」
弓亜が邪な笑みと共に寝ているナレインに近づき、拘束具を付け直す振りをしてナレインの体をぺたぺたと触りたくる。
「んっ‥‥弓亜さん、変なところ触んないで‥‥あっ」
「ええ? ごめんごめん、中々うまくいかなくて。こうかなぁ?」
「ああっ!」
「‥‥セクハラ自重」
ナレイン姉さんの身の危険を退けるべく、魔女っ子イスルのマジカル☆ハンマーが再来した。
「いい夢が見れますよ、きっと‥‥」
天使のような悪魔の笑顔を見ながら、夏とナレインは睡魔に支配されていった‥‥。
「では、私はこれか‥‥」
リズと千祭の前にはパンプキンボムとかぼちゃ血液シチューが用意された。
「男児たるもの、覚悟を決めて突き進まなければならないときがある‥‥!」
千祭はシチュー用のスプーンで真っ赤な液体をすくい上げ、震える手を押さえつつ覚悟を決めると、口に含んだ。
「意外と平気‥‥‥‥!?!?」
口腔を通過し、喉から食道に液体が流れ込んだ時、液体に触れた皮膚・粘液、全てが燃えるような熱と痛みを放つ。
言葉を紡ぐこともできず、全身から冷や汗を噴出しながら床に転がるしかなかった。
その姿を見たリズは、シチューを避けてかぼちゃの団子にさまざまな具の入ったパンプキンボムへ手を伸ばした。
「こっちならまだ回避できる可能性があるはず‥‥!」
6つ並んだ団子の中から、ひとつを選び出し、口に放り込む。
ざり、という砂を噛んだような感触と共に、口の中の全ての水分が蒸発した。
中身は天然の粗塩の塊。塩分多量摂取は人体に多大な損害を及ぼす、危険な物だが、そのあたりはちゃんと計算されているようだ。
二人は用意された大量の水を飲み干していった。
「では皆さんの期待に答え、判決はゴスロリ美少女メイクの刑です」」
医師のように手の甲を向けた覚羅とるなが、手術台の拘束をとり、離れる。
夏はフリフリの衣装に着替えさせられ、かつらまでつけさせられピンク一色のロリータファッション少女に。
ナレインはと言うと‥‥。
「こ、これが私‥‥」
手鏡の中に写ったのは、肉襦袢と特殊メイクでムキムキな体とヒゲを蓄えたダンディな姿に変えられた自分の姿。
「いやあああああああ‥‥もう、お嫁にいけないわぁ〜」
余りに自分の美意識からかけ離れた姿に、ナレインは泣きながら更衣室へと走っていってしまった。
「ちょっとやりすぎたかな?」
●魂と傭兵の眠り
日が落ちても傭兵たちのテンションは下がらなかった。
それどころか、『夜こそ我らが時間!』と吸血鬼に仮装したリズやエクレールが騒ぎ出し、3人の小悪魔は悪役を買ってでた千祭相手にコアキュマショーをし始めた。
皆城と篠ノ頭はトロッコに乗って楽しみ、断首台に首を突っ込んだ皆城を、種も仕掛けもあるとは言え篠ノ頭が見過ごすこともできずに台ごと破壊してしまったり。
残った罰ゲーム用の料理に果敢に挑戦する者もいれば、更衣室の衣装を次々と用いて、中央のステージを使ったファッションショーが開かれ。
金城がお菓子を皆に分けようと大釜を覗き込んだら、中身を感触した最上が眠っていたり。
日付が変わるころには、全ての料理がなくなっていた。
「そろそろお開きにしようか」
何故か蜘蛛男の仮装に変わっているアナスタシアの言葉に、フランス人形の仮装に変えられたくまさんが頷いた。
「みんな、今日はありがとう! 楽しんでもらえたかな?」
「もちろん!」
「楽しかったです、謝謝!」
「いつか、世界中の人達がこんな楽しいパーティーができるような世の中にしなくては、な」
「今日は楽しかったね? またこうして一緒にわいわい楽しみたいね!」
「本当はずっと楽しくいたいけれど‥‥我達はやらなきゃいけない事があるしね!」
「‥‥ん。毎日。はろうぃん。なら。良いのにね」
「楽しんでもらえて、あたしも嬉しい! 最後に皆で、記念写真とろうよ♪」
「この格好で!?」
「女装して大騒ぎした記録をとっておくのは恥ずかしいな」
「大丈夫、きっと戦争が終わったころに、子供たちに聞かせる馬鹿話のひとつになるよ」
「誰かカメラ持ってる?」
「カメラ‥‥使いますか?」
「紫翠さんありがと! じゃあ私がとるから、皆ステージの上に二列に並んで!」
悪魔に魔女、亡霊武者に妖精、キョンシーに死神、ヴァンパイアに花嫁と、普通の人が見たら絶対傭兵とは思われない奇妙な一団。
「ほらほら、いまさら恥ずかしがらないで、みんなもっとくっついて!」
「シアちゃん、もうちょっと後ろに下がらないと入らないよ!」
「わかったわかった‥‥って、後ろはシチュー釜じゃない! 危ない、最後までやらかすところだった‥‥」
「ちぃっ!」
「そういう小ネタはいいから! ちゃんとこっち向いて〜。タイマー押すよ?」
「アナスタシア、ダッシュだ!」
「はいはい、みんなー、いちたすいちは〜?」
『に〜〜〜〜!』
傭兵たちの思い出のアルバムに、また一枚の写真が加わった。
いつか誰かと、この思い出を笑いながら話すために。明日もまた、彼らは戦うのだろう。
「‥‥はーい、じゃあ皆さん箒と雑巾持ってー。日が開ける前に会場を綺麗に元通りにしないと、別料金かかっちゃうから」
「トロッコなんて片付けられるのか!?」
「トロッコは道具を運搬するのにも使うから最後にお願い!」
「この大釜、どこに持っていけばいいの?」
「それもレンタルだから、先に洗わないと」
「更衣室のカーテン、汚さず切らないように、ゆっくり外して!」
「手術台はどうするの?」
「乙姫ちゃんとすずちゃんはらぶらぶってないで、ギロチンを責任持って直して!」
「最上さん、寝るなー! 寝たら死ぬぞ!」
「‥‥ん。お腹一杯。もう食べられないよー」
「そんなデフォルトな寝言を‥‥」
‥‥どうやらまだまだ祭りは続くようだ。
夜はまだ、明けない。