タイトル:じじい、空を舞う!マスター:遊紙改晴

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/21 02:08

●オープニング本文


●年寄りの冷や水? 大きなお世話じゃ!

 空は青く晴れ渡り、草原を風が走り抜ける。素晴らしい秋晴れだ。
「天候よし」
 草原に引っ張りだされていた巨大な物体は、眼を疑うような物。
 旧世代の異物、単葉機。
「絶好の空戦日和じゃ、正宗」
 白髪の老人が機体を優しく叩いた。飛行服に身を包み、頭にはもちろん飛行帽。
 これがバグアとの戦争中でなかったら、飛行機好きのジジイとしか思われなかっただろう。
 だが、機体を叩く老人の手には、エミタが埋め込まれていた。
「今日が貴様の初陣じゃ。バグアどもの目に物見せてやろう」
 老人の名は、大恩慈 豪(だいおんじ ごう)。今年で77歳を迎える、元気なジジイだ。
 高度経済成長をつくり大企業を一人で立ち上げた、豪胆という言葉をそのまま人間にしたような男だ。
「おじいちゃん! やめてってば!」
 愛機正宗に乗りこもうとする豪老人の服を引っ張るのは、15歳ほどの、彼のひ孫、大恩慈 愛。
「死んじゃうよ、おじいちゃん!」
「人間はいつか死ぬんじゃ、だったら適性がある以上、バグアと戦って死んだほうがマシじゃ! 子供たちの仇を討ってくれるわ!」
 曽祖父が旧式戦闘機に乗り込み戦地へ向おうとするのを、必死に止めようとしていた。
 豪老人は子宝に恵まれたが、その多くが彼よりも先に息を引き取るか、音沙汰がなくなるか、兵士となってバグアに殺されてしまった。
 失意の中、自分にも子供たちと同じく能力者としての適性があることがわかり、弔い合戦と息巻いたが、歳が歳だということもあり、KVのGに耐えられないだろうと判断されてしまったのだ。
 しかし彼は諦めなかった。一人で企業を起こし築き上げてきた財産の一部をつぎ込み、昔の単葉機を現代の科学を加えて改造し、愛機正宗として作り出したのだ。
 豪老人は今日はその機体、正宗の処女飛行及び、初出撃とするつもりだ。
 ひ孫の言葉を無視し、77歳とは思えぬ身軽さで体を操縦席に押し込むと、エンジンを掛ける。
 SES機関を積んだエンジンが、勢いよくプロペラを回転させる。機体が風となって草原を走り出した。
「おじいちゃんの、ばかぁぁぁぁーーー!」
 ひ孫娘の叫び声に、笑顔で親指を立てて答えると、豪老人はゴーグルをつけ、操縦桿を握った。
 機体が地を離れる。翼が風を切った。
「わーっはっはっはっは! 爽快爽快! 待っておれ、バグアども!」
 こうして一つの機体が、インド・デリー向けて、日本を飛び立ったのだった。

 仕事を求める傭兵たち。眺めるモニターに、新しい依頼が表示される。
○バグアと戦おうと飛び立った曽祖父を止めてください。

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG

●リプレイ本文

●青い空、白い雲、飛ぶ9羽の鳥たち

「一撃を食らえば、撃墜されるような機体でHWに挑もうとする心意気は立派ですけれど、もう少し残された家族の事を考えてあげてもいい気がしますわ」
 白衣の代わりにパイロットスーツに身を包んだクラリッサ・メディスン(ga0853)が、ワイバーンのコックピットの中で呆れた声を出した。
「無事に連れ戻して、お説教の一つもして差し上げるべきですわね」
「元気があるのは結構なことだが、能力者とて適材適所がある。‥‥無茶と無謀も違うしな。単機突撃は「無謀」と言うのだ――如何に機体に可能性があろうとな」
 傾国とも言える美貌と凶暴さを兼ね備えた傭兵、リュイン・カミーユ(ga3871)も雷電でその後を追う。
「仇を討ちたいという気持ち、少しわかる気がします‥‥。でも、家族を悲しませるようなことは絶対にして欲しくありません」
 ウーフーに乗り込んだ流 星之丞(ga1928)は、自分のエミタに触れて目を伏せた。無意識に左奥歯を噛む。
「目指せ! インドデリー、知己知己大レース! さあ手助けしましょ、私のおじい様〜☆ いーちゃんいーっちゃん」
 それに大して元気の塊とばかりにディアブロを豪快に操るのは阿野次 のもじ(ga5480)だ。時間との勝負のこの依頼、ムードメーカーの彼女が傭兵たちの緊張を和らげてくれるだろう。
「レシプロエンジンにSES‥‥その発想はなかったなあ」
 主翼をスカイブルーに塗装した阿修羅を飛ばすのは、KV整備士の資格を持つ井出 一真(ga6977)。
 傭兵の中には、正宗という異様な機体に興味を引かれて、この依頼に参加したものも多かったようだ。
「レシプロKV試作機開発計画に参加していた身としては、正宗という機体、見逃せませんね」
 瞳に星を輝かせバイバーで空を翔るのは、傭兵のMVP王、傭兵の顔の美少女と名高い熊谷真帆(ga3826)だ。
「レイさんのAlvitrを傷つけないといけないなんて‥‥」
「大丈夫。私もAlvitrもそんなに柔じゃありませんよ」
 Hervararと名づけられた雷電のコックピットの中で、御崎緋音(ga8646)は苦悶の表情を浮かべていた。
 その隣を姫を護る騎士のごとく寄り添って飛ぶのは、白一色に塗装したディアブロに乗る彼女の婚約者、レイアーティ(ga7618)。
 しかし、トレンチコートにフェイスマスクと、折角の端整な顔立ちが台無しだ。
「我ながら怪しげな格好ですが‥‥これならバグアと思ってくれるでしょうか‥‥」
 レイアーティは鹵獲機役となり、御崎が大恩慈に撤退を呼びかけた後、撃破するという作戦だった。
 しかし、火薬を減らしたとは言え恋人の機体に一撃、放たなければならないことに強い抵抗を抱いていた。
「元気の良すぎる爺を止める為の、我の仕事を始めるとするか」
「先行していることがばれないように、別ルートで向かいますわ」
 クラリッサ、リュイン、井出は先行し、HWを抑えに向かう。
「1機とはいえ油断は禁物だ。どんな強化が施されているか判らないぞ‥‥」
 時間稼ぎと戦力差を見せるためとはいえ、HWを撃墜せずに足止めしなくてはならないのは、熟練の傭兵とはいえ好きこのんで陥りたい状況ではない。
 
「できる限り早く説得してみせます! でないとレイさんを撃たなくちゃですし」
「うーーん、でも流石の昭和1ケタ男。しつこさとあきらめの悪さにおいては定評あるだろうだわさ」
「でも、なんとしてでも愛さんの元へ無事に帰してあげないと」
 流、阿野次が護衛にあたり、熊谷がHWと大恩慈機の間に入り防御する。レイアーティは敵の鹵獲機として登場し、大恩慈機を追撃。性能さを見せ付けたところで、御崎が模擬弾で攻撃する作戦だ。
『正直、バカな依頼だと思ってる。お金は払うとは言え、あのアホジジイ一人助けるのに、傭兵のみんなの命を危険にさらすなんて。でも‥‥やっぱり家族だから、さ。見捨てるわけにはいかないよ』
 出撃前の大恩慈愛の言葉が、傭兵たちの中で思い出される。
「たった一つの命を救うのに、理由はいりませんよね」
「けど連れて帰ったら、愛ちゃんに2、3発ぶん殴ってもらおうか」
「後は正宗の設計図ももらいましょう♪」
 各々思いを胸に、8羽の鳥たちが希望の巣を飛び立った。
 1羽の老いた鳥を、再び巣に連れ戻すために‥‥。

●三羽鴉、空を舞う

「電子戦機がいないので、レーダーにかかるか分からん辺りが‥‥ちと辛いな」
「でもそれは大恩慈氏の正宗も同じはず。速度がある分、こちらのほうが有利ですわ」
 リュイン、クラリッサ、井出の三人はKVのモニターに表示される正宗とHWの予想飛行進路から、到達地域に先回りする。
「正宗のレーダーにかからず、HWに存在を気取られるように動けば、あちらから攻撃してくるだろう」
 最悪の展開は、井出たち3機も説得班も間に合わず、HWに正宗を捕捉されてしまうことだ。
 どんなに気持ちが強かろうと、ウサギでは獅子には打ち勝てず、アリは象を倒せはしない。
 見つかれば最後、交戦して数分もたたぬ間に撃破されてしまうだろう。
 限界速度ぎりぎりで飛ばしつつ、モニターと肉眼での周辺確認を怠らない。
 クラリッサのレーダーに反応。
 白点1――HWだ。
「敵発見! 接近しますわ」
 すぐさま機首を返して接近。リュイン機、井出機もそれに習った。
 今度は肉眼で確認するも、すぐさま雲を切り裂いてレーザー砲が3機めがけて発射された。
「さあ、ショータイムといこうか。軽く遊んでやろう」
 リュイン機が挨拶とばかりに、気を惹くためスナイパーライフルで射撃。
 反撃を交わしつつ、砲撃に集中し遅くなったHWへ接近する。
 引き離そうと後退しつつ射撃するHWの背面目掛け、今度はクラリッサ機のガトリンク砲が火を噴いた。
「逃がしはしませんよ」
 さらに、二人の間を埋めるように井出機がHWと距離をつめ、長距離バルカンで牽制する。
「悪いが、堕ちてもらっても逃げてもらっても困るんでね」
 初撃で虚を突けたことが3機を優位に立たせていた。
 だが、問題は持久戦になる、ということだ。時間がかかればかかるほど、状況は彼らに不利になっていく。
「撃墜しないよう、逃がさないよう――とは、なかなか骨が折れるぞ」
 苦笑しながらも、ブースターの微妙な角度変更で、敵の砲火を紙一重で回避する。
 クラリッサも、ワイバーンのマイクロブーストをこまめに使いながら、敵の射線から機体をずらしていた。
 集中力を極限まで高めつつ、それを持続させる。撃墜できず、一歩間違えれば撃墜、という緊張感とストレス。
 じょじょに3人の体力と精神力は削られていった。
「合図はまだかな‥‥」

●年を重ねることは、人間の思考と可能性を硬化させる

『豪ちゃん、タイヘ〜ン! 後方より4機、KVが接近中!』
 やたらと軽い女声のAIが、警告とともにモニターに4機のKVの接近を知らせる。
「ふん、きおったか。あのバカ娘め‥‥まあ予想通りじゃがな」
 嬉しいのか悲しいのかわからぬ笑みを浮かべつつ、大恩慈は機体を操作した。
「な〜び子ちゃん、低速に落として自動操縦へ」
『どうするの、豪ちゃん?』
「何、少々囮を‥‥な」

「あれ‥‥?」
 レーダーを睨みつつ機体を飛ばしていた流は、目を疑った。
 捕捉していた正宗の機体信号が、突如3つに増えたのだ。
「ジョー君? そっちのレーダーも?」
「阿野次さんの方もですか」
「レーダーの表示が増えたって? 計器の誤作動じゃないんですか?」
「むしろ、大恩慈さんが何かをしたと考えるほうが妥当ですね」
「本当に一筋縄ではいかないなぁ」
 幸い移動速度は低速なので、振り切られる可能性はないが、進路がそれぞれ違う。
「ここは分かれてどれが本物か、確認しないとですね」
 阿野次、流が左右を、熊谷と御崎が中央の目標を確認することに。
『レイさん、そういうわけですから、そちらでももし確認できたら連絡を』
『了解』
 
 最初に目標に到達したのは、阿野次だった。
「うーん、こちらいっちゃん、機影は確認できず!」
 レーダーに映っていたのは、小型のラジコン飛行機だ。
 大恩慈が作らせた特注品らしく、擬似電波でレーダーでの追跡を撹乱する目的で作ったんだろう。
「図ったな、豪!」
 遠くでカラカラと笑う豪の声を聞いたような気がした。
「こちらも囮ですね‥‥」
 流も雲間を飛ぶラジコン飛行機を確認、回収する。
「これが受信する電波を、レーダーに入れて逆探知した情報を送ります。これで二度は騙されません」

「結局、私たちが追ってるのが正解というわけですね」
 熊谷機と御崎機が目標に近づくと、大恩慈機は再び速度を上げた。
「もう逃げられませんよ!」
『いっちゃんもすぐ合流するよー』
『回り込んで三方から動きを固めましょう』
 二人は正宗機の左右につくと、機内無線を繋いだ。
『大恩慈豪さんですね。ひ孫の愛さんからの依頼で、あなたを連れ戻しにきました』
『この近くには敵の鹵獲機もいます。すぐに戻りましょう』
『やれやれ、大恩慈家は独立独歩、自分独りで生きることが家訓じゃというのに、あの娘は人の心配なんぞしおって‥‥』
『ひ孫の娘さんにとって、貴方は大切な家族です。私と同じ年頃のあの子に、また同じ悲しい想いをさせる気ですか?』
『あいつにはまだ両親がおる、曽祖父のわしが死んだところで大して変わらんわい』
 そこに、阿野次と流も合流してくる。周囲を固めるようにして、進路を妨害しようと試みる。
『もしもし。こちら、いっちゃん。トラトラトラニイタカヤマノボレ、イスカンダルへー。まてーるぱばん。敵対機でないなら当てんショーンプリーズ』
『ああん? また煩いのが増えよったな』
『大恩慈さん、お話しは聞きました‥‥その、僕でどこまで手伝えるかわかりませんが、力を貸します』
『鬱陶しいわ、小童らが! 娘の金の二倍、貴様らにくれてやろう。さっさとLHへ帰るんじゃな』
『報酬がほしくて依頼を受けたのではありません。貴方を愛さんの元へ無事連れ帰るために、ここにいます。力を振るうだけじゃない、僕には出来ない戦い方だって』
『その通り。貴方の戦うべき相手はライバルメーカーですよ。貴方が量産型正宗という矢を束ねて射れば、その機銃よりも遥かに有効です』
『20年も生きておらんひよっ子どもが、人の、この大恩慈豪の道を遮ろうとは片腹痛いわ!』
『頑固者ですね。あなたも、正宗単機でHWに勝てるとは思ってないのでしょう?』
『ふん、傭兵の癖に腑抜けたことを言う。性能差? 単機? 関係ないわ! 勝てるから戦うのではない。戦うから勝つのじゃ!』
『闘うと申すか、チャレンジしたら負けかなナドとのたまう若者が慢性する世でその心意気、感極まった感動した』
『お主も黙っとれ!』
 聞く耳も持たず、大恩慈機は雲に入った一瞬の隙を付き、4機の包囲を突破してしまう。
「こうなったら、レイさん、お願いします!」
『わかった、向かう』
『大恩慈さん、鹵獲機が向かってます! 注意を!』
 御崎の無線とともに、レイアーティが操るAlvitrが空を裂いて現れた。
 正宗機の近くを飛び、衝撃波で機体を揺らす。
『鹵獲機‥‥のう。貴様らが現れた時点で、考えることはお見通しじゃ。どおせここで足止めしている間にHWを撃破するか、わしの弾切れを狙うつもりなんじゃろうが‥‥甘いわ!』
 最高速度のまま、正宗がAlvitr目掛けて真正面から接近していく。
 レイの威嚇射撃にもまったく怯むことない。接触まで、呼吸三回ほどの距離だ。
「危ない!」
 御崎がコックピットの中で叫んだ。レイはすんでのところで機首を上げ、正宗を交わす。
 正宗はAlvitrのブーストにあおられて機体を回転させるも、すぐに平衡を取り戻してHWへと接近する。
 壊れるほど強く握られた操縦桿。曲げられぬ意志。
 レイアーティは交差する一瞬、大恩慈の厳しい顔が見えた気がした。
『なんて無茶な‥‥』
『大恩慈家の男子は、無茶やら無理やらの言葉なんぞ、お袋の中に置いて生まれてくるんじゃ! 正宗が性能として劣るのも、承知の上‥‥この大恩慈豪、無理を通してみせる!』

『豪ちゃん、カッコいい台詞の後で悪いんだけどぉ〜』
『なんじゃ、ナビ子ちゃん』
『傭兵さんたちに見つからないように飛んでたから、もう燃料がありませーん♪』
 ぶるんぶるん、と嫌な音を立てて、プロペラの回転数が落ちていく。機体は減速し、きりもみ状態で降下していった。
『なんじゃとおおおーーー!』
 正宗はそのまま、海へと落下した。あの老人のことだ、これくらいでは死なないだろう。
『無理は通せても、燃料がなければ飛べませんよね‥‥』
『あ、リュインさん? こちらは解決しました。反撃開始です』
「だそうだ。思いっきり、暴れさせてもらおう!」
 リュインの放った螺旋弾頭ミサイルが、HWのシールドを突き破り機体を揺らす。
「ダンスの時間はこれでお終い。その姿はもう見飽きましたから、ご退場頂きますわ」
 クラリッサのホーミングミサイルが、傷ついた装甲を的確に狙い撃った。
「SESフルドライブ。ソードウイング、アクティブ!」
 20mmバルカンの牽制の後、井出機のソードウィングが大空を閃く。
「一気に決める!」
 機体を大きく縦断されたHWは、空中で爆発を起こしながら海へと堕ちていった。

●戻ったのは巣か鳥かごか?

「このアホジジイ! みんなに迷惑かけてぇ!」
「ふん! 誰が助けてくれと言った!? 貴様こそこんなアホな依頼出しおって!」
 傭兵たちに回収され、LHに連行されるやいなや、愛は大恩慈老人にコブラツイストを決めた。
「自分のことだけではなく、残される娘さんのこともきちんと考えて差し上げて下さい。何時だって、悲しい思いをするのは待っているだけの人間なのですからね」
 説教すると言っていたクラリッサも、流石に二人の姿に呆れ顔だ。
「正宗が悪いとは言わん――が、単機出撃は無謀としか言いようが無い。汝に死ぬ気はなかろうが、敵はそんなもの考えてはくれん。無謀者を見送るハメになった曾孫の気持ちも考えてやれ‥‥まぁ既に耳タコ状態かもしれんがな」
 リュインも、どうせまた同じことをするのだろうなこの老人は、と思いながら苦笑するしかなかった。
「豪ちゃんと共闘したかったなぁー。結局HWも落とせなかったし」
 活躍の場を逃した阿野次は少し不満そうに頬を膨らませている。
「豪おじいちゃん! 正宗のことなんだけど〜」
 熊谷が殴り合いに発展しそうな愛と豪の間に割って入った。
「設計図だったら、醤油をこぼしてしまったんでな。汚くて読めないから、燃やしてしもうたわ! まあもう一度作りたかったら、今度は紫電改の図面を銀河重工にでも持ち込むんじゃな!」
「この、あほじじいいいぃーー!」
 項垂れる熊谷の前で、愛の拳が豪の顎に決まったのだった‥‥。