タイトル:【SV】中秋の名月マスター:遊紙改晴

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/22 10:35

●オープニング本文


●月の兎に供え物 移ろう女神に盃を ススキの歌に耳済ませ 稲穂実らせ願う者たち

 中秋の名月。空気が澄み、美しく空に浮かぶ旧暦の8月15日の月を、こう呼ぶのだ。
 中秋とは旧暦の7〜9月のこと。月の見える場所にススキや収穫した里芋、栗、月見団子、お酒を供え、満月を見ながら豊作を祈るのだ。
 2008年、今年の中秋の名月は9月14日にあたる。
 月が綺麗に見えるように晴れを望み、縁側に座って夜空を見上げるものが、現代の日本にどれほどいるだろうか‥‥?
 いまや地上の明かりと高層ビルで空も星も月も覆われてしまい、人々はただ自分の足元だけを見て過ごしていた。

 しかし、まだまだこの行事を楽しみ護る人々もいる。
 九州の農家、水沢家。今日も元気な団八・喜代夫婦もそうだ。
「はい、そうです。はい。よろしくお願いいたします。では」
 喜代は珍しく長い電話を終えて、古い黒電話の受話器を置いた。
 囲炉裏に座った団八は不思議に思った。喜代は長話を好む女ではない。むしろ人の話を聞くことが好きなほうだ。
「お前にしては随分長い電話だったな。何の電話だ?」
「はい。UPCさんに依頼を出していたんですよ」
 思わず茶碗を囲炉裏の中に落としそうになった。お湯がこぼれて火が消える。
「あらあら、火傷しませんでしたか?」
「依頼!? キメラもやることもないってのに、なんで傭兵のやつらに依頼なんざ」
「戦闘依頼じゃなくても依頼を出せるんですよ。ほら、もうすぐ中秋の名月でしょう。お月見に傭兵さんも呼ぼうと思って」
「わざわざ呼ぶ必要もねえだろ」
「だめですよ、田植えのときも、蛙退治のときも、傭兵さんにお世話になったんですから。少しは恩を返さないと」
「奴らには金を払ってるんだ、それでいいじゃねえか」
「いーえ、今年の田んぼはあなただけの田んぼじゃないんですよ。それに皆さんで五穀豊作を祈ったほうが、神様もきっと聞き入れてくださるわ」
 諦めたようにため息をつくと、お茶碗を差し出す団八。喜代は無言で新しいお茶を注いだ。
「‥‥全く、お前は言い出したら聞かないな」
「お父さんほどじゃないですよ」
 
 昔の冒険家がこう言った。
『人間には時々、ふと立ち止まって考える時間が必要だ そしてそれができるのは人間だけなんだ』と。
 戦場を離れて月を眺めるのも、秋の一日にはいいかもしれない。

●参加者一覧

叢雲(ga2494
25歳・♂・JG
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
不知火真琴(ga7201
24歳・♀・GP
M2(ga8024
20歳・♂・AA
柊 理(ga8731
17歳・♂・GD
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
皆城 乙姫(gb0047
12歳・♀・ER
篠ノ頭 すず(gb0337
23歳・♀・SN

●リプレイ本文

●月見で一杯

 傭兵達を一番最初に出迎えたのは、頭を垂れ始めた稲穂だ。
 黄緑の葉が一色に染まり、稲穂が光を受けて黄金に輝くのももうすぐだろう。
「えへへ、ちょっと前に来たばかりだけど、また来れて嬉しいな」
「今回も二人に会うのが楽しみだね? 乙姫は大好きだもんね」
 手を繋いで坂道を早足で登るのは、熱愛中の篠ノ頭 すず(gb0337)と皆城 乙姫(gb0047)の二人。
「元気に育ってる‥‥団八殿も喜代殿も愛情を込めて育ててるんだろうね」
「みんなで頑張って植えて、守った田んぼ。元気にいっぱいそだってね!」
 朝日に照らされて輝く黒髪を翻し、田んぼ道を歩いていく愛らしい二人の姿は、画家なら一筆走らせたい光景だろう。
「お月見なんて久しぶりだなー。今日は腕によりをかけて料理を作るよ」
「‥‥うん、楽しみにしてる」
 続いてゆっくり歩いてくるのは、叢雲(ga2494)と不知火真琴(ga7201)の幼馴染の二人だ。
 いつもの元気はどこへやら、俯きながら歩く真琴の手を優しく握る。顔を上げた真琴に、叢雲はにっこりと笑いかけた。
 言葉は交わされなかったが、手と瞳を通じて、二人の気持ちは通い合っていた。真琴もいつもの明るい笑顔を返す。
 安堵した叢雲の横から、真琴が水沢家に向って走り出した。
「家まで競争!」
「あ、ずるい!」
 走っていく真琴の笑顔を眺めながらため息をついたのは、アンドレアス・ラーセン(ga6523)。
(「仲いいなぁ‥‥。つい真琴が行くって言うから来ちまったけど‥‥。邪魔だよなぁ、やっぱり」)
 先日真琴に告白し、フラれたばかりのラーセンには、二人の姿は残暑の太陽よりまぶしかった。
「‥‥ん。お団子、お料理、楽しみ。お腹すいた」
 項垂れるラーセンとは正反対に、最上 憐 (gb0002)はスキップで坂道を登っていく。
「お団子♪ 栗ご飯♪ サツマイモー♪ 里芋♪ 天ぷら♪ カレーライス♪」
 麦藁帽子に体操服、ジャージと、手伝う準備は万端だ。もちろん、全て食欲を満たすためである。
 小さな愛らしい姿と裏腹に、一日に7食を平らげる大食漢だ。今日の料理も殆ど彼女の四次元胃袋に収まることになるだろう。
「これで水沢家にお邪魔するのは、三度目になるんですね。田んぼ、気になっていたんですが」
「お、柊さんもきたのか。久しぶり! 俺達の植えた稲、元気に育ってるね」
 柊 理(ga8731)とM2(ga8024)も田植えを手伝ったうちの一人だ。
 豪雨や蟲、病気に罹っていないか心配していたが、稲は元気に二人を迎えるよう、風に揺られてお辞儀する。
 二人は嬉しそうに田んぼを見回しながら、ゆっくりと水沢家へ歩いていった。

「団八、喜代、元気だったー?」
 出迎えに出ていた二人に、皆城は思わず抱きついた。
「あらあら、乙姫ちゃん、いらっしゃい。すずちゃんも。元気だったかい?」
「はい。喜代殿も団八殿も元気そうで‥‥団八殿は相変わらずなのかな?」
「相変わらずとはなんだ、相変わらずとは。お前らこそ何度もきやがって‥‥」
 団八も口では嫌そうにしているが、微かに頬が緩んでいる。この爺、ツンデレである。
「到着! 初めまして、団八さん、喜代さん。うちは不知火真琴です」
「どうも。初めまして。叢雲です」
「あらあらまぁまぁご丁寧に。いらっしゃい。真琴ちゃんに叢雲君ね」
「今日はお世話になります」
「アンドレアス・ラーセンだ。世話になる」
「またでかいのが来たな。それにしても、二人ともなんだその髪は! 男なら坊主にしろ、坊主に!」 
「‥‥ん。最上憐。よろしく」
「あら! 可愛い子が来てくれたねぇ。憐ちゃん、よろしくね」
「こんにちは! またお邪魔しちゃいました!」
「こんちはー。稲、しっかり育ってたな」
「当たり前だ、俺の稲だぞっ! ‥‥お前達もまたきたのか。ったく、しょうがねえなぁ」
「柊君もメイちゃんも、良く来たねぇ!」
「いや、喜代さん、メイじゃなくてM2‥‥」
 しばらく玄関先の大騒ぎが終わると、月見に備えて皆で準備を始めた。

●水沢家裏の畑

「‥‥ん。準備万端。畑に突撃」
「団八〜、私も手伝って良い?」
 ポチの鳴いていない畑に、作業着姿の団八と、ジャージ姿の不知火、皆城、最上がいた。
「んー、土の匂い‥‥。こうして意識するの、久しぶりだなぁ。依頼じゃ土まみれなのに」
「そういえば団八、腰の調子はどう?」
「へっ、お前に心配されるほどやわじゃないわ」
「‥‥ん。サツマイモ、一杯採る」
 最上は軍手を嵌めてにぎにぎと手を動かすと、我先にとさつまいもの茎に飛びついた。
「あ、憐ちゃん‥‥よーし、私だって!」
 地面を這うようにして伸びる茎葉を、力一杯引っ張る。
「ふぬぬぬぬーーー! ってわっ!?」
 ぶちっと音を立てて切れ、どしん、と大きく尻餅をつく憐と皆城。あっという間に土まみれだ。
「違う違う。無理やり引っこ抜くと、芋が折れちまう。茎の下にある芋を掘り当ててから抜くんだ」
 団八が慣れた手つきで、千切れた茎の先を軍手で掘る。土の中から赤いさつまいもが、何本も掘り出された。
「ほら、やってみぃ」
「よーし、うちも!」
 不知火も袖を巻くって畑の中に飛び込んだ。
 芋を傷つけないように、軍手で優しく土を払っていくと、大根のように太いさつまいもが、何本も取れた。
 3人は可愛らしい顔に土で化粧しながら、一所懸命にサツマイモを掘り出すと、収穫用の籠が見る見るうちに埋まった。
「よし、それぐらいでいいだろ」
「結構とれましたね。うち、芋掘りなんて小学校以来ですよ」
「‥‥ん。サツマイモ。見ると。焼き芋。食べたくなる」
「焼き芋か、それならすずも失敗しないかな? でも黒っ焦げにしちゃうかも」
「やるなら飯のときにな。どうせなら焼きたてのほうがいいだろ。お前らは風呂にでも入って来い」
 団八は畑の乱れを直し終わると、疲れも見せずに重くなった籠を軽々と担いだ。
「団八は?」
「俺は山にいかなきゃなんねぇからな」

●すすきと栗、あけびに茸!

「初めて見るのに懐かしい感じもする‥‥田舎ってどこも同じかもな」
 髪の毛を借りた手ぬぐいで纏めたラーセンが、水沢家から見える山々を眺めて呟いた。これまた借りた作業着を着ていると、町工場の兄ちゃんといった感じだ。
「そうですね。心の故郷、というものでしょうか」
 作業着を着た柊もやる気まんまん、覚醒して血色もよくなっている。
「けっ、どいつもこいつも、出てってからじゃねえと故郷に気づかねぇ馬鹿ばかりだ」
 毒を吐きつつ、二人の分の背負い籠と道具を持ってきた。
「団八さん、今日はよろしくお願いします」
「俺もデンマークじゃこんなことしなかったから、何すればいいのかさっぱりだ。教えてくれ」
 二人の言葉にため息をつくと、身振りで籠を背負え、と伝えた。
「教えてくれもなにも、ただ取りゃあいいんだ。これだから何もやったことのない連中は‥‥ほら、ついてこい」
 団八は重ねた歳を感じさせない身軽さで坂道を降りていくので、ラーセンと柊も慌てて後を追った。

 山の木々は一足早い秋の実りを、全ての動物たちへ恵み与えていた。
「後少しで秋ですねぇ‥‥。紅葉も一緒に観れたらよかったのですが」
「それより、ヤブ蚊は大丈夫なんだろうな?」
 ラーセンは刺されないように、周囲の藪を警戒しながらそろそろ歩く。
「でかい図体して、肝っ玉のちいせぇ野郎だな。蚊くらいなんだ」
「デンマークには居ないんだよ! 刺されたらすごいヤバいって聞いたんだけど!」
「そうだな。刺されたら全身の血を吸われた死ぬな」
「マジで!?」
「ええ。特に外国人の血が好みだそうで」
『俺帰る!』
 思わず母国語で叫ぶラーセンを、笑顔の団八と柊ががっちしと掴んだ。
「おらおら、男なら覚悟を決めろ」
「囮がいなくなったらだめじゃないですかー」
『嫌だああああああ』

 山の中には栗、茸、あけびなどが数少ないながらも実っていた。
「栗のイガはこうやって‥‥」
 団八はイガを靴で踏むと、割れ目からイガが分かれて栗が露になる。
 栗を火ばさみで掴み取り、背中の籠へと放り投げる。
「なるほど、では早速」
 柊もそれに習う。ラーセンは無言で木に付いた茸を火ばさみで取っていた。
 別の木の下に生えていた、赤い傘に白い斑点の茸も取ろうと、火ばさみを伸ばす。
「おい、ラーセン! それはベニテングダケだぞ! 取るな!」
「は? ベニテングダケ?」
「神経毒をもった毒キノコです!」
「ははーん、二人ともまた俺を嵌めようったって、そうはいかねえぞ。これは噂に聞くマツタケって奴だろ!」
『違うわボケー!』

●料理は愛情手間暇かけて!

「よーし、一丁気合入れて料理しましょうか」
 料理暦9年の叢雲。前掛けをつけて袖をまくり、台所へと向った。
「俺も手伝うよ。まだ皆帰ってきてないから饅頭はまだできないし。」
 M2は前日から饅頭の皮と白餡を用意してきていた。饅頭職人の名は伊達じゃない。
「ええと、喜代殿は料理上手だよね‥‥我も手伝っていいかな‥‥?」
 篠ノ頭も、恥ずかしげに申し出てきた。割烹着と三角巾が反則的に似合っていて、昭和時代の奥さんという雰囲気だ。
「あら、三人とも。手伝ってくれるのかい?」
「ええ。天ぷらを作ろうかと思いまして」
「それじゃあ、こっちは任せようかしら。竈は火の扱いが難しいから、注意してね」
 叢雲は手馴れた動きで卵を割り、薄力粉と井戸から汲んできた冷水を混ぜ合わせる。
 篠ノ頭は喜代と一緒に、泥の付いた里芋を危なっかしい手つきで洗う。
 M2は二人が洗った里芋の皮を剥いていく。里芋の煮っ転がしを作るつもりだ。
「叢雲ー! さつまいも取ってきたよー!」
「‥‥ん。いい匂い。お腹がすいた」
「お芋掘り、楽しかったー! って、すず!? 割烹着姿可愛い!」
 籠一杯のさつまいもを持った、土まみれの三人が入ってきた。
「ありがとう、真琴さん。美味い料理、作るからね」
 そのままの格好で抱きついてきた皆城を、止めることもできない篠ノ頭。髪についた土を優しく取ってやった。
「乙姫泥んこだね。喜代殿、お風呂は借りられる?」
「そうだね。山に行った子たちも汚れて帰ってくるだろうし、お風呂を用意しようかね。ここは任せるよ、すずちゃん」
「んむ、こっちはこっちで任せておけ! 一品くらい作ろうかな?」
「ええ!? すずも作るの!? あ、えー‥‥っと、今回はせっかくだし、喜代に教わるのに集中したらどうかな? 成果は帰ったら改めてご馳走して? ね?」
 いつも恋人の起こす惨劇を目の当たりにしている皆城は、何とか回避しようと遠まわしに言った。
「ううん、今度こそ上手くいく気がするんだ‥‥。乙姫は風呂でゆっくり暖まってね」
 ‥‥回避不可能の強制イベントだったようだ。合掌。

「ただいまー。お、いい匂いだな」
「本当。思わずお腹がなっちゃいましたよ」
 ラーセンと柊が背中の籠を降ろした。中には栗、あわび、ヒラタケにナラタケがたっぷり詰まってた。
「蚊は大丈夫だった?」
「ああ。聞いてくれよ。二人ったらひどいんだぜ‥‥」
 ラーセンの話で談笑しているうちにも、料理は着々と進んでいく。
 美味しい音を立てて天ぷらが油の中で踊る。サツマイモと里芋、あけびの皮に肉を詰めたものもある。
 M2の栗饅頭も完成した。蒸した栗を白餡に卵黄を混ぜ込んだ黄身餡で包み、皮で包み込む。表面に照りようの卵白を塗って、ほっこり仕上げて出来上がりだ。
 篠ノ頭は喜代と一緒に、栗ご飯と大根おろし、里芋の煮っ転がしも少々作ったようだ。
「ちょっと作りすぎたかな?」
「‥‥ん。沢山作っても大丈夫。残ったら私が食べる」
 瞳を輝かせて、今にも涎を垂らしそうな最上。日も沈み、月も昇り始めた頃だ。
「それではラーセンさん、すすきを用意しましょうか」
「おう、そうだな」
 田んぼの畦道で取ってきたすすきを、つぼに刺して縁側に置く。
 団八は芋焼酎の酒瓶を持ってきて、器に注ぐ。喜代は月見団子を供えた。
 10人が皆、縁側に座って空を眺めた。ゆっくりと時間が流れていく。
 日が山の向こうに沈み、月が雲から顔を出した。

●月見

 屋根に登った叢雲と真琴。
「ん〜。風が気持ちいいですね。夏も終わり、ですか」
 大きく伸びをする叢雲。虫の音と優しい風が心地よい。
「月が良く見えるね。こういう所で見ると、また格別に綺麗な気がする」
 深呼吸する真琴。澄んだ空気が肺一杯に入りこみ、疲れを押し出していくようだ。
 幼い頃からいつも一緒に居た二人。苦痛のない、優しい沈黙。 当たり前の存在がすぐ隣にいてくれる嬉しさを、心の中に抱きながら、月を眺めた。
 縁側ではいくつもの料理が傭兵達の舌を楽しませていた。
「月見酒‥‥。20歳になったから飲めるようになったけど、まだ飲んだことないな」
 恐る恐る盃に口をつけるM2。口の中に濃厚な味、鼻に独特の匂いが。思わず咽る。
「‥‥ん。料理おいしい。栗饅頭。M2、よくやった」
 最上はM2の作った栗饅頭を気に入ったらしく、月見団子と一緒に両手に持って、次々と口へと運んでいく。
「よかった。取ってきた甲斐がありました。‥‥そういえば月の模様って外国では荷物を背負う人やカニに見えるなんて国もあるみたいです」
 あけびの天ぷらを口に運びながら、柊も美しい月を眺める。
「そうそう、月の女神の話は多いけど、俺の地元では月は男の神なんだ。太陽の女神ソールと月の神マーニの姉弟。2人は馬車に乗って、狼に追っかけられてぐるぐる空を巡ってるんだってさ」
 屋根の上の雰囲気に自棄酒を煽っていたラーセンも会話に割りこんできた。
「ロマンチックだね、すず」
 檜の風呂からあがり、浴衣へ着替えた皆城と篠ノ頭も、月の光に照らされて幻想的な美しさを纏っていた。
「あのさ‥‥お月様もいいけれど、乙姫の方がきれ‥‥んー、綺麗っていうより可愛いかな?」
「ふーんだ、後3年たったら、絶対綺麗って言わせてあげる!」
「ごめん、乙姫。お詫びに帰ったら習った料理、食べさせてあげる」
「う‥‥うん。楽しみにしてるね」

「‥‥ん。おわかり。もっと。おかわり。凄くおかわり」
「あ! 俺まだ天ぷら、食べてないのに!」
 皆が思い思いに話しをしている間に、最上が料理を平らげてしまった。
「はい、皆。まだまだあるからね」
「あ、月見うどんだ!」
 喜代が皆に月見うどんを配る。栗ご飯、芋羊羹、天ぷらに団子、煮っ転がしに味噌大根。まだまだ出てくる。
「‥‥ん。戴きます」
「俺も!」
「なくならないうちに、戴こうか」
 まだまだ、傭兵達の月見は終わらないようだ‥‥。
 もうすぐ、秋。収穫の季節が訪れる。稲穂たちが金色に染まるころ、再びこの地へ‥‥。