タイトル:すいか無粋かマスター:愉縁

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/21 11:33

●オープニング本文


 たわわ、たわわ、たわわに実った子供たち。
 さんさんひざしと、ざんざんあめあめ。
 いっぱい、いっぱい、たくわえて。
 元気に育てよ、お前たち。

 ニコニコ、ニコニコ、オジサンが。
 大事に、大事に、スイカを撫でた。
 愛しい、愛しい、私の子。
 ニコニコ、ニコニコ、しあわせそう。

 でもでも、わあわあ、スイカたち。
 あわてふためく、スイカたち。
 スイカのカタチは、太刀のよう。
 ふりあげられた、スイカ太刀。  
 あかあか光る、スイカの身。
 てんまつ知るのは、スイカのみ。
 あかく染まった、すいかのみ。

***

「キメラの討伐依頼です」

 オペレーターの少年が、資料から傭兵達に視線を移した。彼は絵にかいたような金髪碧眼の美少年だった。ULTの制服を着用していたが、何故か半ズボンだった。色んな意味で、グッジョブだった。グッジョブULT総務課。いや、総務課の仕事かどうかは知らないが。
 残念なのは、この位置からは、その生足が見えないことだった。まぁ今は、そんなことより、依頼だ。

「討伐目標はスイカ人間。身長170cm。スイカ頭に全身緑のタイツ、左手に円形のスイカ模様の盾、右手にスイカを三角に切った形状のスイカリバー(仮称)を持ち、口からスイカの種を秒間16連射で発射します。スイカ畑に突如出現、以降、畑に近付く人間を、片っ端から襲っているようです」

「‥‥」

 夏だからって‥。いや、夏だから、多分、そんなキメラなんだろうか。とか、傭兵は思ったかもしれない。ああ、多分鳴き声は『ス〜イ〜カ〜』だな‥とか。軽くセピア色の遠い目をした傭兵を置いて、半ズボンの美少年は続ける。
「今のところ、スイカ人間は1体だけが確認されているだけですが、他にも潜んでいる可能性があります。十分にご注意を」
 依頼を読み終える最後まで、真摯な表情を崩さなかった少年を見て、傭兵はハッと正気に戻った。
 フザけたキメラだが、だが、キメラには違いが無い。傭兵はプロの思考に切り替え、依頼書を挟んだボードを少年から受け取った。

 それを確認したオペレーターの少年は、張り詰めた仕事モードの雰囲気を解除し、そして屈託の無い年頃の表情を浮かべ、「どうかお気を付けて、御武運を」と、柔らかく微笑んだ。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
未名月 璃々(gb9751
16歳・♀・ER
淵塚・L・スカディー(gc3670
12歳・♀・FC
ジョシュア・キルストン(gc4215
24歳・♂・PN
リコリス・ベイヤール(gc7049
13歳・♀・GP
天水・紗夜(gc7591
18歳・♀・EP

●リプレイ本文

 ぱーーっと、麦藁帽子を被った二人の少女が、つると葉、スイカの実で彩られた大地の海を、綱から開放された仔犬のように、勢いよく駆け抜けて行く。
「スイカ〜♪スイカ〜♪美味しいスイカ〜♪」
 突き抜けるような晴天の空に、リコリス・ベイヤール(gc7049)の軽やかな歌声が響き渡り、
「へうっ〜♪スイカ♪スイカ♪」
 次いで不協和音の合いの手が、実になだらかな、緩く、真綿で首を絞めるような混沌を滲み出していた。淵塚・L・スカディー(gc3670)の、常人では到底理解できない超常現象的な音程に、足元のスイカ達も思わず、ショットガンで吹っ飛ばされたようになっても、何の不思議も無い。飛ぶ鳥を落とす‥‥いや、飛ぶ鳥が落ちてくる勢いの歌声だった。しかしリコリスは気にせず、逆に楽しそうに、スカディーと摩訶不思議、奇奇怪怪なセッションを繰り広げていた。ある意味、大物だった。

 そんな二人の背中に、セピア色の遠い目で、視線を送っていたジョシュア・キルストン(gc4215)は、嫌な予感しかしていなかった。だが、イケメンは決して表情を崩さない。まだ耐えられる。頑張れ僕の三半規管。ふと、振り返り、手を振るスカディーに、精一杯の笑顔を返すことも忘れない。‥‥若干頬が引きつっていたが。
「‥‥で、ドクターは、何があったんだろう?」
 カオスではあったが、明るく元気に突き進む二人とは対照的に、深く、梅雨で湿気た布団みたいな、どんより湿った表情のドクター・ウェスト(ga0241)に、ジョシュアは視線を移し、呟いた。
 その視線に気付いたのか、或いはただの独り言か、ウェストは自嘲気味に、口を開く。
「すまない、今我輩は畑の中に入ることすら出来ない‥‥」
 その目には光無く精気は衰え、食事もロクにしていないのか、ただでさえ細い体が、更に干上がり、頬こけ、細っていた。目元には深い隈ができていて、余計に憔悴しているように見える。
「叩いてみて、赤いFFの反応が出れば、当然ソレはキメラだということだね〜‥‥」
 ぼそぼそと言うが、辛うじて聞き取れた大きさで、何せ、聴覚が若干馬鹿になりかけていたジョシュアだったので、「はぁ」と、苦笑いを浮かべて返すのが精一杯だった。
 そんなウェストの脇を抜け、スイカ畑に水色の麦藁帽子を被った黒髪ロングの女の子がたーっと、駆け、踏み入った。一面のスイカ達をぐるりと見回し、目を輝かせている。
「スイカが沢山!壮観だわ!‥‥コレ、1つ位ならお土産に貰っていっても良いかしら」
 天水・紗夜(gc7591)が感嘆の息を漏らす。何気なく視線を向けていたジョシュアに気付き、ハッとした紗夜は、パタパタを手を振った。
「‥‥じゃ、じゃなくて、スイカ人間退治して、安心してスイカを作れる環境を取り戻さなくっちゃ、ね!」
 慌てて紗夜は取り繕ったが、ジョシュアはくすりと微笑んで、「折角ですから幾つか持ち帰りますか? 少しくらいバレないでしょう」と、優しく返した。

「ところで、あの二人‥‥。もう、見えませんけど」
「え?」
 振り向けば、既にリコリスとスカディーは視界からフェイドアウトしている。‥‥どんだけ元気なんだ。と、ほんの少し思った。だが、サボる気満々のジョシュアは動じない。二人の実力を知っているし、今回のキメラを、そう危険な相手とも感じていなかった。‥‥いや、最終的には、面倒なだけだった。

 ウェストと同様に、スイカ畑に入ってこない人物がもう一人いた。未名月 璃々(gb9751)である。日差しが嫌なのか、日差しを返す生温い土が嫌なのか、或いは単に面倒なだけなのか。スイカ畑の横にあった地蔵の鎮座した石の段に腰掛け、そしてその小さな身体を、ギリギリ日陰に隠し、けだるそうに、ぼーっと、カメラを構えていた。
「‥‥えっと、未名月さん、貴女だけが頼りです。しっかりお願いします‥‥よ?」
 若干、かける言葉を間違えたような気がするジョシュアに、璃々はのっそり、ゆっくりと視線を動かし、無表情に、そしてやや虚空を見つめながら、間延びした口調で、璃々は言う。
「地中に胴体が埋まっているなら、センサーに感知する筈ですよー」
 パチッと何かがスイッチし、ブラウンの光が璃々の周囲を取り巻く。バイブレーションセンサーを発動したようだった。敵位置を調べて、あとは丸投げする腹積もりらしい。実に手馴れていた。

「‥‥変ですね」
 少しも焦った様子も見せず、璃々は首を傾げる。彼女はここにある無数の振動を感知していた。しかし、人型のそれは、一向に拾うことができない。バイブレーションセンサーは範囲内の動くものを感知するが、逆を言えば、『動かないもの』を感知することができない。そこが唯一の欠点だった。
「ですが、いくつか微弱な振動を発しているスイカを見つけましたー。もしかしたら、それがキメラなのかもしれませんー」
 と、とりあえず、手近なスイカを指差し、ジョシュアと紗夜に向かって言った。
「‥‥そう、スマートには行きませんか」
 やれやれと首を竦めたジョシュアの側を離れ、指示されたスイカを、じっと見つめる紗夜。彼女の周辺に、青い燐光がふわっと舞っている。覚醒状態に入ったのだ、と、感じた。

「‥‥」
「どうしましたか? 紗夜さん」
 無言で、真顔になった紗夜に声をかけたジョシュアが、一瞬嫌な予感を感じ取り、後ろに仰け反った。


 ドパッ!!


「いいぃ!?」
 紗夜がそのスイカを小突くと、バラバラにスイカが吹き飛んだ。噴出した液体が、ジョシュア目掛けて飛んできたが、辛うじてそれを回避し、難を逃れた。飛んできた液体の方向に視線を移すと、そこに生えていたスイカのツルと葉が、見事に融解し、蒸発している。
「ブ‥‥ブービートラップ!?」
 心臓の辺りを押さえて、冷や汗をかいているジョシュアを尻目に、璃々が涼しげな表情を浮かべている。
「ああ、やっぱり。そんな気はしたんですよー」
 悪びれた様子も無く璃々はのたまった。

「知ってたなら、教えてください!」
「いやァー」
「褒めてません!」

 即座にツッコミ返したジョシュアの横で、顎に手を当て、紗夜は真面目な表情で俯いた。
「困りましたね。どうやら、同様のトラップが、無数に仕掛けられているようです‥‥。擬態潜伏するキメラ、ならではの戦法ということですか。少々、厄介ですね」
「バイブレーションセンサーでスイカ爆弾の位置は大体特定できていますが、一つ一つ仕分けていくのは大変ですねー」
「大変って‥‥。どうせ、自分は動かないくせに」
「わかってるじゃないですかー。その通りです」

「‥‥」


 ドドドドドドドド。


「あ」
「え」

 二人の沈黙をぶち壊し、駆け音と土煙が、遠くから迫ってくる。更にピィィィィーー!!と、呼笛が響き渡り、何事かと見てみれば、土煙の発生源に、満面の笑顔を浮かべたリコリスと、涙目のスカディーが全力疾走していた。
 その後ろから、スイカ頭の人型キメラが3体、ぜーぜー息を切らせながら、必死に追いかけてきている。というか、走った衝撃で、地面のスイカ爆弾が次々破裂し、まるで、盆と正月が一緒に来たような状態だった。

「‥‥あ、そうか」
 ポンっと手を打った紗夜が、微妙にスススと、直撃の進路からさり気なく逸れて行く。
「畑の中を走り抜ければ良いのね」


「へぅぅぅぅ!!」
「やっほー!ジョッシュアッ、ちゃぁぁーーん!!」

 何か絶叫と悲鳴が聞こえてくる。再び遠い目をしたジョシュアと璃々が、若干ぼーっとそれを眺めた。
「呼んでますよ、ジョシュアさん」
「さりげなく、僕から距離をとらないでください、璃々さん」
 もう、諦めました。くらいの投げやり具合で、ジョシュアが言えば、
「傭兵の世界は不思議がいっぱいだわ‥‥」
 と、ほのぼのと、紗夜が続けた。完全に他人事だった。


「っどーーーーん!!」
「うわ、ようじょつy‥‥」

 リコリスは踏ん張って急制動をかけつつ、削ぎ切れなかった勢いを、ジョシュアに体当たりすることで、相殺した。ぼふぅんと、土煙が上空に舞い上がり、飛び散ったスイカがボトボトと落下してきて、べちゃべちゃと地面に落ちて、豪快に砕けた。


 すると、今まで微々たる反応しか起こさなかったウェストが、ムクリと、立ち上がった。その眼球が爛々と強く煌く。
「キメラが、バグアが悪いのだ、業は我輩が背負おう〜!」
 目のような覚醒紋章が、ブワッと、孔雀の羽のように背後に雄々しく広がり、すぐさまその映像紋章の配列が並び変わる。電波増強を発動していた。怒っているような、悲しんでいるような、どれとも取れない表情を浮かべ、エネルギーガンをスイカキメラに連続して放った。
 怒号を上げ、スイカ畑を薙ぎ払いながら、1体のキメラを易々飲み込む光の螺旋。次の瞬間には、抉り取られた大地と、吹き上げた土煙だけが残り、そしてパラパラと、果汁の雨が後から降ってきた。それはまるで、血の雨のようだった。


「ズィ‥‥ズィィィ!!」
 その光景に、一瞬怯んだスイカキメラであったが、ギリッと、傭兵達に向き直ると、いきり立ち、手にしたスイカリバーを振り上げ、駆け出してきた。
「すぅ‥‥」
 腰に下げた二刀の蛍火の柄にそっと手を掛け、スカディーはぎゅっと、地面を踏みしめる。一足一刀の間合いに入り、左に握り締めた蛍火を瞬時に抜き放った。スイカは咄嗟に盾を突き出し、それを弾こうとするが、ブンっと、虚しく空を切る。フェイクだ。次の瞬間には更に深く、スイカキメラの懐に踏み込んでいた。右に握り締めた彼女の蛍火が、いつの間にか天を刺していた。
「ギッ‥‥!?」
 何が起こったのかもわからないまま、咄嗟にスイカキメラはスイバルカンの発射姿勢を取る。しかしそこにスカディーの姿は無かった。彼女は既に、キメラの背面に迅雷で回り込んでいる。
 右手同様に天を突き刺した蛍火を掲げ、静かに呟く。
「陸道龍双刀抜刀術、双月閃」

「ギ‥‥ギッ?」
 声の方向に振り返るスイカキメラだったが、剣を振り上げようと試みた右手も、シールドを構えた左手も、いつの間にか地面に落ちていた。スイカキメラは、まるで何も理解できないように、首を傾げた。

「おにくがスイカよりも強い事を証明してやるっ!!」
 そこに一足で飛び込んできたリコリスが、両手にちょっとぬるっとした漫画肉を携え交互に殴りつける!

 ボン、ボヨ〜ン。

 心地よい弾力だった。香ばしい香りが、戦場を駆け抜ける。ムカッとしたのか、スイカキメラはリコリスに向けてスイカの種バルカンを高速噴射する‥‥が、既に彼女はそこにはいない。疾風脚で足回りを強化していた彼女は、素早く背面を取り、返す漫画肉で、膝裏をボスッと叩き、所謂ひざかっくんを炸裂させた。スイカは、大きくバランスを崩した。

 ゆっくりと視界が崩れ、その中に、赤毛の少女がぼんやり映る。しかし、その姿を1秒と続けて捉えていることは、叶わなかった。
「雷槌(イズチ)!」
 迅雷で瞬時に駆け抜け、胴に刹那の一撃が入る。キメラの腹部は、水平に割れて、どさっと、静かにその場に崩れ落ちた。その姿を見ぬまま、スカディーは刀を、チンッと、納める。
「へうぅ‥‥久々に一刀で居合いをしたよ。‥‥帰ったら、久々に訓練しようかな」


「一発入魂!紅蓮、衝撃っ!!!!」
 紅蓮のオーラに包まれ、巨大な槍斧を振りかざした紗夜だったが、重量に任せたその一撃は僅かに逸れ、その紅の斧刃は、スイカ頭の皮を一枚裂くだけに留まってしまった。
 しかし、紗夜は動じない。巨大な慣性を操り、槍斧を切り返して振り抜き、スイカキメラを牽制する。ジリジリッと、間合いを詰めてくるスイカキメラ。
 だが、紗夜は、でも、頭を狙ったらあれよね、グロテスクよね。頭より胴を狙った方が、きっと良いわよ。そうよ私。負けるな私!‥‥と、思っていた。スローモーションで弾け飛ぶスイカでも、想像したのだろうか?
 ぼんやりと、そんなことを考えている隙を、見逃すキメラはいない。口らしきものをすぼめると、スイカの種型の弾丸を、勢い良く噴出した。
「あっ!?」
 まだ戦闘に不慣れな為か、思わず目を瞑り、身を屈める紗夜。その彼女の脇を、スイカ種の弾丸が、弧を描いて通り過ぎていった。
 ようじょのタックルにより、一時戦線離脱をしていたジョシュアが、彼女を守るように、そこに立っていた。ふわりと髪を靡かせ、落ちてきた細身の剣を、ハシっと手に収める。実にクールな動作だった。
 回転舞で剣を空中に残し、それを足場に迅雷で空中を駆け、脚爪「オセ」で蹴り落としたのだ。自分でもちょっと、痺れるくらいだと、少し思った。きっと、紗夜さんのハートを釘付けにしてしまったか、と、振り返る‥‥が。

「嗚呼!種飛ばしとか、楽しいけど人に向かってやっちゃ駄目だわ!汚いわ!」
「え」
 しかし、一瞬の出来事、一瞬目を瞑っていた紗夜は知る由も無かった。インサージェントをぎゅっと持ち直し、スイカキメラに向き直ると、力強く一歩踏み出した。
「行儀の悪い子はお仕置き、よっ!」


 そんな勇姿を、璃々は安全な場所からのんびりと、カメラのファインダー越しに覗き、撮影していた。近い将来、彼女の変態キメラ全集に、このスイカキメラと戦った傭兵達のメモリーが、収められることだろう。

***

 結局、畑の4分の1程を荒地に変えてしまったが、それでもキメラは倒され、スイカ畑は平穏を取り戻した。6人の傭兵は、綺麗に切り分けられたスイカを囲み、高速艇の迎えを待っていた。

「スイカは、縞模様がハッキリしている方が美味しいんでしたっけ?」
 何気なく璃々が、ウェストに訊ねた。
「そうだねぇ。縞模様の境界がくっきりとしていて、ギザギザがしっかり出ているスイカが甘いというよ〜」
 力無く、ウェストが答える。スイカキメラのサンプルを採取し、少し落ち着いたのだろうか。しかし、訊ねた本人はスイカを食べる事に興味を示さず、黙々とナイフでスイカを刻み、彫っていた。それをスカディーが不思議そうに眺めていると、
「フルーツカービングです。ナイフで草花に彫り上げる、タイの伝統工芸ですよー」と、答えた。
「それにしても、よく食べますねー」
 今度は逆にスカディーを眺め、璃々が言った。
 ‥‥食塩を片手に、もう既に5玉は平らげている。脅威の食欲だった。
「え‥‥、もうみんな要らないの?美味しいよ!」
 ほわっと、柔らかく微笑むスカディー。その脇で半月に切られたスイカを、シャクシャクと、頬張っていたリコリスが、ふと、スイカを見詰めていた紗夜に気付いた。
「んー?どうしたの、紗夜ちゃん」
「このスイカ‥‥1個持ち帰っても、いいでしょうか‥‥。弟も喜ぶと思いますし」
「いいと思うよ〜♪ ジョシュアちゃんが、ちゃーんと、依頼主さんに頼んでおくからっ♪」
 スイカを切り分けていたジョシュアの肩をポンと叩き、リコリスは二コーっと、無邪気に微笑んだ。