タイトル:ナーシリーヤへマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/06 20:13

●オープニング本文


 イラク南部――。
 クウェートから進発したUPC軍は空と陸でバグア軍の抵抗を受けていた。
「こちらデルタ中隊! ヘルメットワームを全機撃墜した! どうぞ!」
「空戦隊隊長のベイルだ。よくやった。そのままアルファ中隊の援護に回ってくれ」
「了解しました隊長殿! よし行くぞみんな!」
「こちらベイル。地上部隊どうぞ」
 それから、雑音の後に声が響いた。
「ベイル隊長、カーンだ。空は順調なようだな」
「そっちはどうだカーン隊長」
「まあまあだよ。ゴーレムやキメラがやって来るが、これまでの勢いが無い。今はバグアもアフリカに全力か」
「それは好都合だ。このまま一気にバグダードを落とすことが出来れば、アラビア半島のバグアどもにも打撃を与えることが出来る。イランも勝ったも同然だな」
「楽観し過ぎだろう。ラストホープがブライトンの直接攻撃を受けているんだからな」
「そうだった。油断は出来んな。最後まで何が起こるか分からない」
「ゴーレムの抵抗が終わったらゼカリアを投入する。予定通りナーシリーヤまでを制圧する」
「ではよろしく。ナーシリーヤで会おう」
 そこで、ベイル隊長は部下からの悲鳴のような通信を受けた。
「隊長! ティターンです! アレン・キングスレーのカスタムティターンが出ました! もの凄い勢いで突進してきます!」
「全機で食い止めろ。幾らティターンでも単騎でこの戦線は突破できん」
「た、隊長――!」
 あっと言う間に、ティターンと交戦した味方のマークがレーダーから二つ消えた。
「くそっ、駄目か。全機後退しろ! ティターンには近づくな! いいか! 奴から離れろ!」
 その声を聞いていた若いパイロットは、ティターンを睨みつけると加速した。
「キングスレー! パトリックの仇だ! この地球で復活できないようにしてやる!」
「ジャン! よせ!」
 ジャンは味方の制止を振り切ってティターンに突撃した。
「食らえキングスレー!」
 ジャンはありったけのミサイルを叩き込んだ。
 直撃を受けて爆炎に包まれるティターン。
「雑魚が――いきがるんじゃないぜ」
 炎の中から姿を見せるティターンからキングスレーは短く言った。キングスレーはジャンの機体に照準を合わせると、プロトン砲を叩き込んだ。
 ジャンは最後に光を見た。そして、機体もろとも吹っ飛んだ。
「‥‥‥‥」
 キングスレーは吐息して、天を振り仰いだ。遥か宇宙に浮かぶバグア本星が見える。
「それにしても‥‥俺も随分帰ってないな」

 クウェート、UPC軍司令部――。
 ULTオペレータのフローラ・ワイズマン(gz0213)は、ブライトンの攻撃が近付いたこともあって、ラストホープからクウェートの司令部へ派遣されていた。
 情報分析官としてナーシリーヤへ進軍する友軍をサポートしており、今はバグダードの空撮任務に当たっているKV隊のライブ中継の通信調整を担当していた。モニターには、バグダードの空撮映像がライブで映っていた。
「予想外だな――」
 司令官は言って、眉をひそめた。
「バグダードはイラン以上に危険かと思っていたが‥‥バグア軍にも余裕が無いのか?」
 司令官が部下達を見渡すと、ざわざわと声が上がった。ここへ来て予想に反してワームの数が少ないことを、士官たちはどう判断したものかと戸惑いの声が上がる。恐らく北にまだ戦力を残しているに違いない‥‥とか。
 と、フローラの端末に前線からの最新レポートが表示される。デルタ飛行中隊がキングスレーのカスタムティターンによって全滅させられたのだ。
「司令官――」
 フローラは手を上げた。
「どうしたフローラ」
「デルタ飛行中隊がアレン・キングスレーのカスタムティターンによって全滅させられたとのことです。ナーシリーヤへ向かう部隊が足止めされています」
「スクリーンに出してくれ」
 フローラは戦術マップをモニターに映し出した。ティターン以外にも敵のエース機が点在している。
「キングスレーは厄介だな。それにエース機か」
 司令官は躊躇うことなく増援の決断をする。
「フローラ、待機中の傭兵にスクランブルをかけてくれ。敵エースに対応できる一個大隊に出撃命令を頼む」
「了解しました」
 フローラは傭兵たちと連絡を取ると、状況を説明し始めた。

●参加者一覧

カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
天小路桜子(gb1928
15歳・♀・DG
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF

●リプレイ本文

 出撃前――。
「ジョーさん」
 ソード(ga6675)は隊長に言った。
「ヨリシロのアマンダ・シスとはどんなバグア人なのですか」
「強敵だよ。先の戦闘でも単機でKVを圧倒した」
「なるほど」
「ラスホプ屈指のお前さんとは言え、単機で当たるのは危険だぞ」
「俺だって死にたくはありませんからね」
「とは言え、お前さんのフレイアが軍にとっても大きな戦力であることは確かだけどな」
「ジルダン様、出来ましたら、友軍KV大隊は、隊長機が空、副隊長機が地上に回って頂き、両方の展開のフォローをして頂きたいと思います」
 そう言ったのは天小路桜子(gb1928)。
「そうさなあ‥‥どうだ真琴」
 ジョーは真琴に問うた。
「いいんじゃない。空と陸から攻めるのも悪くないわ」
 桜子は頷いて、軍傭兵たちの配置を提案する。
「空にはフェニックス、シュテルン、S01H、ロビンに回って頂きます。陸にはシラヌイ、雷電、ディアブロ、ミカガミ、オウガに破暁が回って頂ければと思います」
「‥‥分かった。じゃそれで行きましょう」
「よろしくお願い致します」
 桜子はお辞儀した。
「今回の相手はチェス駒がモチーフか! ワシもチェスは多少嗜むが、バグアにしては良い趣味だな! ガッハッハ!」
 孫六 兼元(gb5331)は豪快に笑って腕組みした。
「それではワシは陸戦で敵を迎え撃つ! 戦域情報は、夢守氏からの情報を常に確認するぞ! まずは軍KVを中心に、敵機を纏めるように包囲して貰おう! 個人プレーが多い相手ならば、自由が利き難い環境になれば互いの行動が干渉し合い、動きを阻害出来るかもしれん! 有る程度纏まった段階で、友軍の包囲の隙間から突撃だ! 逆サイドから天小路氏が同様に仕掛けてくれるので、上手くタイミングを合わせるぞ!」
「そうねえ‥‥今回はこっちが数で勝ってるから、うまくいくかもね」
 真琴は言って、思案顔で顎をつまんだ。
「パトリック、君は人気者だったんだね。わかる気がするよ」
 ソーニャ(gb5824)は、遠くを見つめるように口を開いた。
「ボクは君の仇を討ってあげられない。ボクはバグアを殺す、味方を犠牲にする。それはボクのせい、ボクの罪。誰にもあげられないよ。だから、せめてそこで見ててほしい。ボクの飛翔を。みんな見てて欲しい。君たちのつなげた未来、どこに行くのか‥‥」
「パトリックのことは残念だったよソーニャ。俺もあいつとは古い付き合いでね」
 ジョーは言って、吐息した。
「ジョーさん、僕には飛ぶことしかできないんだ」
 ソーニャの言葉に、ジョーは肩をすくめて応えるのみだった。
 夢守 ルキア(gb9436)はジョーと真琴にS01Hとシラヌイを随伴に付けて貰うように提案する。
「S−01は元々、情報の収集を狙った機体。是非、管制に欲しい、シラヌイは特殊能力を見ても、持久戦も出来るし速度も申し分ない。守りとして欲しいんだ」
 ルキアの提案に、ジョーは頷いた。
「ではそのように行こう。真琴――」
「部下達に伝えるわ」
 ルキアはそれから言った。
「S−01Hはスキルで予測を立てて、情報収集を重点的にして欲しい。シラヌイは、攻撃を受けたトキの反撃と防衛かな。S−01Hとシラヌイのペアを作って、後方から撃つカンジ。勿論、後ろに回られたり死角に入られても困らないように、3組攻撃、1割カバーで警戒かな」
「ルキア、まあそうは言っても俺たちも攻撃には参加するがねえ」
「だとしても、指揮官には生還してもらわないと。撃墜されたらダメージが大き過ぎるよ。とにかく、攻撃を受けても周りの味方と合流して、数で圧そう。負傷者を下げて、攻勢を止めないって言う方法で行こうかな」
「ラスホプ組だけに危険な橋を渡らせるわけにもな。まあお前さんたちは大規模作戦では見事な健闘だがね。実績もあるけどさ」
 そうして、ジョーはパチンと手を打ち合わせた。
「よし、それじゃ行こうか。滞在しているバグアどもには御退場願わないとな。デルタ中隊の弔い合戦だ。みんな気合入れろ!」
 そうして、傭兵たちは出撃した――。

 バグア軍陣営――。
 カスタムティターンの中で、アレン・キングスレーはコンソールに目を落としていた。消失した大西洋のハリケーン、ラストホープの衛星画像をキングスレーは見つめていた。信じ難いことにブライトンは撃退され、バグア陣営は混乱していた。
「人間の思いの力とはこれほどまでに強いのか‥‥現実にあのブライトン様を撃退するとはな‥‥」
 そこで、通信が割り込んだ。
「アレン、これからどうなるのかしらね。これまでにバグアが惑星の攻略に失敗したことなんてないんだけど。思いの力って‥‥人間にそんな力があるって言うの」
「分からんよアマンダ。思いの力なんてあり得ないと思っていたが、どうやら我々は人間を見くびっていたようだな。我々は未知の種族と相対することになる。ここから先のストーリーはだれにも読めない。ブライトン様が地球攻略から退くことになって、別の誰かがその指揮を取るとして、さてな‥‥どうなるものかね」
「私に言わせればね、人間は危険だわ。こんな種族といつまでも関わっているのは危険よ。いつの日かバグアを滅ぼす原因になるかもしれない。早く片づけてしまうべきよ」
「急に保守的な考えに取りつかれたのかアマンダ」
「あなたはどうなの。あなたはどう考えているのアレン」
「俺がどう考えたところで何も動きはしないだろう」
「言い逃れね。あなたの言葉は少なくともアジアオセアニア地域の動向には関わって来るでしょう」
「買いかぶり過ぎだよ。俺に影響力なんてない。意思決定はウォン司令やドレアドル司令が行うことさ」
「でも――」
「そこまでだアマンダ。どうやらUPCが出て来たようだ」
「この話の続きはまた後で」
「冗談だろ続きなんておい‥‥全く‥‥」
 キングスレーはぼやきながら部下達に命令を下した。
「全機に告ぐ。傭兵たちを迎撃せよ。ナーシリーヤへ行かせるなよ。このままだと本当に居場所が無くなるぞ――」

「兵装1、3、4、5発射準備完了。PRM『アインス』Aモード起動。マルチロックオン開始、ブースト作動――ロックオン、全て完了! 『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
 ソードは必殺のミサイル攻撃レギオンバスターを繰り出した。ブースターとPRMを起動。錬力100全てを状況に合わせた能力に使用しミサイル2100発を発射するフレイアの空戦必殺技である。
「FOX2ミサイル発射!」
「発射!」
「食らえバグア野郎!」
 レギオンバスターの幕開けとともに傭兵たちはミサイルを発射した。
 直撃がタロスの集団を薙ぎ払う。
 が、爆炎を割って、タロスの集団が加速すると、プロトン砲を連射して来る。
 ルキアはアルゴシステムを起動すると、管制を開始。
「カスタムティターン、カスタムタロスゴールドクイーンが来るよ。シルバールークは地上へ行った。 ビショップが二機にナイトが二機。ポーンが六機。敵は意気盛んだね。直進して来る。ヨリシロに気を付けて」
「了解した!」
「了解!」
「よーし全機ドッグファイトに移行! 各機、幸運を祈る!」
「行きますよシス」
 ソードはブースターで加速すると、シスの黄金のタロスにエニセイを叩き込んだ。炸裂するエニセイ。凄絶な銃撃が黄金のタロスを撃ち抜く。
「シス、デルタ中隊の仇、討たせてもらいますよ」
「フレイアのソードね。噂は聞いてるわ。確か高橋麗奈を倒したんだっけね」
 言いつつ、シスはアクロバットな機動でフレイアの銃撃を回避すると、プロトン砲を正確に撃ち込んで来る。直撃がフレイアを揺るがす。
「やりますねシス」
「人間はブライトン様を撃退したけれど、それはあなたたちの寿命を縮めたことになるわ。この星から人間が消滅するのは時間の問題ね」
「そうかも知れません。俺たちの存在なんて、バグア人から見たらちっぽけなものでしょう。多分宇宙の塵にしか見えないんでしょうね」
「そう言う言い方は私の勘に障るのよソード」
 シスは旋回しつつ、プロトン砲を撃ち込んで来る。ソードは受け止め、エニセイで応戦する。二機は激しく撃ち合う。黄金のタロスは意外な強さを見せつけた。
「宇宙の塵なら無駄な抵抗はしないことね。そうやって戦うことが無駄だって思わないの。バグア人に勝てるとでも?」
「可能性がある限り、俺たちは諦めないんですよ」
「だから腹立たしいのよね。そう言う小癪なところが人間は」
「シス、俺があなたに腹を立てていないと思ったら大間違いですよ」
「だったら泣いて叫んで命乞いをしなさい!」
「せめて人間らしくですか」
 ソードは怒り狂うシスに対して、冷静に攻撃を命中させていく。
「アマンダ‥‥すっかり奴のペースに乗せられてるな」
 キングスレーは呟き、口許に笑みを浮かべた。そうでなくては生きている意味が無い。
「我々は人形を相手にしているわけじゃないんだからな。ヨリシロの知識を吸収し、進化を遂げる‥‥それは我々の本能だが、それだけで敵に勝って来たわけじゃない」
 キングスレーはレーダーに目を落とす。激しいドッグファイトが繰り広げられている。キングスレーは適当に軍傭兵と交戦しつつ、戦況の推移を見守る。
「ジョー君、ビショップがそっちに加速してるよ。速度が上がった気がする。ショタっ子の勘だけど気を付けて」
「了解した!」
 それからルキアは、コンソールを操作しつつ、友軍に指示を出す。
「フェニックス、シュテルン、そのまま敵のポーンを追い詰めて。数ではこっちが勝ってる。確実に攻撃を当てて行こう。S01Hとロビンはナイトを攻撃、各個撃破に専念して」
 ロングレンジライフルを撃ちながら、骸龍イクシオンを操る。アルゴシステムを操作して、管制を続ける。
「おっと、ソーニャ君、ティターンの危険人物がそっちへ移動中ダヨ。単独での交戦は避けてね。気を付けて」
「了解したよ」
 ソーニャはレーダーに目を落としつつ、操縦桿を傾けた。
「アレン・キングスレー、これは密かな思い、勝手な期待。君が変る何かを見せてくれる事を。ダムは歴史を作る側の人だった。ダムはボクを殺さなかった。戦闘外でボクを殺しても別の誰かが変るだけ。意味はない。殺すのも簡単だから、そこは気まぐれだったんだろうけど。でも、観察してこそ意味が生まれる。この戦いで人は変る。しかしバグアも例外じゃない。エジプトのこととかね。その中で君は何を選択するのかな。ただの駒で終わるのか、それとも差し手になるか、観戦者か。チェスの駒、洒落が利いてるね。サンプルとしてはあんまり普通じゃないかもしれないけど、ボクと言うデータを見せてあげるよ。だからバグアがどう変っていくか見せてよ」
「ソーニャ、お前は相変わらず突飛もないことを言い出すな‥‥。まあゾディアックには敬意を払おう。地球侵攻の初期に礎を築いた人物たちだからな。ダム・ダルは確かに稀な観察者だった。彼が残したデータは興味深い。象徴的な言葉が残っている。『確実なことは、例外を除けば、ほとんどのバグア人にとって人間は永遠に理解することの出来ない存在であろう。そのためにバグア人は問い続けることになるだろう』とな。実を言うと、俺にはこの言葉の意味が良く分からなかった。ダム・ダルが予言したと言うつもりはないが、むしろ不安を覚えたね。お前は何を選択するのかと言ったが、俺たちはそれこそ今、不確かな状況に置かれていて、それを言葉で表すことは難しい」
「こういう会話は、得難いものだと思っているんだけどね――」
 ソーニャは言って、ブースターで加速した。ミサイルポッドをばら撒いて旋回する。
 キングスレーはアクロバットに回避して、遠ざかるエルシアンを見送った。
「ま、俺はダムのような観察者じゃない。これは戦争だ。人間が理解できない存在だろうと、俺の知ったことじゃないがねえ――」

 陸上では、傭兵たちは数的優位を作ってタロスを包囲しようとしていた。
「――サイドに展開してタロスを十字砲火に捕えて!」
 真琴は言いつつ、レーザーガンを撃ち込んでいく。
 桜子はライフルを叩き込みつつ、タロスの側面に回り込んでいく。
 桜子のアッツェンプッツェルの逆サイドに、孫六のオウガの姿が見える。
 シラヌイ二機と雷電二機と連携して、桜子はタロスの集団に銃撃を加える。
「皆さま、このままうまくタロスをまとめてしまいましょう」
「桜子! 左翼は頼むわよ! 私は中央から押し潰すからね!」
「了解しました真琴様――。孫六様、もうすぐ一斉攻撃に入ります。ご準備を」
「了解した!」
 そうして、傭兵たちはタロスの反撃を封じつつ追い込んでいく。
「今です! 攻撃開始です!」
 桜子はヴィヴィアンを構えると、パンプチャリオッツで突撃した。大型機甲ランスがタロスの戦列を貫通する。ダメージを受けていたポーン複数が一挙に爆発する。
「今だ突撃!」
 桜子の突進を合図に、傭兵たちは加速した。
「天小路氏! よくやってくれた! ここからは任せてもらおう!」
「孫六様――」
「ガッハッハ! 大丈夫だ! ウム!」
 OGRE/Bを起動すると、一気に攻勢に転じる。
「シルバールーク! ほう! ワシと同じ『銀』を担うか?! 銀とは曇り無き心の現われ。貴様等に相応しいか確かめてくれる!」
「何を!」
 激突するオウガとルークタロス。孫六は足を薙いだら顔を突き、顔を突いたら胴を薙ぐといった連続攻撃でルークタロスを撃破する。
「孫六様! ティターンです!」
「むう! キングスレーか!」
 桜子は天を仰いで、孫六は槍を持ち上げた。
「キングスレーよ、求める強さは見つかったか? 野心だけでは強くはなれんぞ!」
「孫六兼元か。言っておくと、俺は十分強いんだがね」
「行くぞ!」
 上下の槍捌きで連続攻撃を加えると、真Dコレダーの攻撃を見舞う。
「元より倒せるとは思わん! ‥‥が、痛撃は与えて見せよう!」
 OGRE/Bを連続使用し、真Dコレダーを有りったけ撃ち込む!
 狙いはティターンが構える剣。防御に使ったソレを、渾身の力を持って叩き壊す!
「此れがワシのやり方だ!」
「ぬっ!」
 キングスレーは僅かに態勢を崩した。コレダーを受け止め、剣で弾いた。が、剣は刀身の真ん中で折れた。
「やってくれる‥‥」
「アレン――!」
 そこでシスのゴールドタロスが上空を舞う。
「ここは持ちそうにないわ! 部下達に撤退を命じた! サマーワへ後退するわよ!」
「決着は持ち越しか。分かった、俺も撤退する。孫六、勝負はお預けだ」
 そして、ティターンは舞い上がると飛び去った。
 回線に、ルキアの声が流れる。
「みんな、バグア軍は後退していく。UPC軍の本隊がナーシリーヤへ前進を開始した。地上にはゼカリアの進軍だよ。何トカね」
「孫六様、強敵ですかあのティターンは」
「ウム‥‥そろそろ本気かも知れんな」
 桜子の言葉を受けて、孫六は唸った。
 その後UCP軍はナーシリーヤを制圧する――。