●リプレイ本文
「久しいとでも言えば良いか? ――何にせよ何時かの借り、此処で返させて貰おうか‥‥!」
御影・朔夜(
ga0240)の言葉に、バディの終夜・無月(
ga3084)の声が続く。
「では‥‥鹵獲機の行先で良いので教えて頂きましょう‥‥終わりです‥‥ダム‥‥」
「来い傭兵。捕獲機のありかが知りたいか」
ダムは送信機でも付けているのか、その声は回線に響いた。
「ここで終わらせる。‥‥長かったこの戦いも‥‥これで終わるんだ」
カルマ・シュタット(
ga6302)の言葉には、これまでの思いが込められていた。
「ダム・ダル。過去に一度だけ戦場で見たときは圧倒されたけど、今感じるのはそれ以上。悪夢みたいなものだけど‥‥、悪夢は必ず終わるんだ。いや、終わらせるさ」
旭(
ga6764)は、操縦桿を握る手に力を込めた。限界突破したダム・ダルの力は、恐らく想像を絶するだろうと。
「行くぜカルマっち、いよいよここまで来たねえ。ようやく、奴さんの背中を捕まえたってわけだ」
ヒューイ・焔(
ga8434)は飄々と言うと、拳と掌を打ち合せた。
「いよいよ決着か。リノみたいに勝ち逃げしてくれるなよ?」
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)の言葉に、ダム・ダルは牙を剥いた。
「私を最後まで捕まえることが出来るか‥‥やってみるがいい」
「これがダム・ダルとの最後の戦いか。なら、中途半端な勝利じゃなくて、完全勝利で終わりにしないとね」
アーク・ウイング(
gb4432)は呟きつつ、ぐぐっと拳を握りしめた。
「少し考えた、私が示せる敬意」
夢守 ルキア(
gb9436)は言った。
「ダム君? 賭けをしよう。きみが私を捕まえたら、私の身体とイクシオンをあげる。私の一番大切な私と愛機、だからそれを賭ける」
「賭けだと? 夢守ルキア、だが、私にはもはや意味を為さないな」
「遂に因縁の対決! 元彼の! 大分の! 仇! 斃れろ!!」
あやこはここへ来て感情爆発。
「ガッハッハ! 行くぞダム・ダル!」
「来たか孫六兼元」
「ガッハッハ! 行かいでか!」
「ダム、ボク(君)達の生きた軌跡は未来に繋がるんだろうね。ボク(君)達はとても興味深い存在だ」
「ソーニャ、では今日を生き延びることだな」
「よおダム・ダル、遂にお前を追い詰めた。あんたの最後、見届けてやるぜ」
「ブロンズか。では、私を倒して見ろ」
「よし、全機配置に付いたな。行くぞ――」
御影は合図を下すと、全機浮遊するダム・ダルに攻撃を開始した。
御影はアハトレーザーを叩き込む。ダム・ダルは手を上げて直撃を受け止めつつ、旋回する。
「さすがに化け物じみた奴だが‥‥」
これまでに限界突破したバグア人はごくわずか、御影はダム・ダルの力が相当なものだと判断した。
「これでも効いていないのか? 無月、気を付けろよ」
「了解です‥‥」
無月は白皇を加速させると、ロンゴミニアトを打ち込んだ。御影のレーザーを弾き返しながら旋回するダム・ダルを捉える。
「終夜・無月か、私から答えを聞きたくば、力を見せてみろ」
「そのつもりですよ‥‥ダム・ダル‥‥」
無月は続けてロンゴミニアトを撃ち込む。ダム・ダルは機刀で受け止め、弾き飛ばした。
「間近で見るまでは信じ難いけど‥‥やはり怪物だなこいつは」
カルマはダム・ダルの側面に回り込むと、ツングースカを叩き込んだ。機関砲の銃弾が金属的な破砕音を伴ってダム・ダルの肉体と激突しては飛び散って行く。
「何て奴だ‥‥限界突破か‥‥」
カルマは照準先のダム・ダルを捉えつつ、撃ちまくった。
「ダム・ダル、お前は何にしろ、俺の記憶に残る奴だよ。ここまで踏みとどまったのは、意外ではあるがね。逃げるかと思っていた」
ダム・ダルは銃弾を弾き返しながら歩き出した。
「カルマ・シュタット、もうこれが最後だ。お前と語る機会も最後になる」
「十分だよダム・ダル。俺たちが止めを差してやるさ」
「行くぜえ! ダム・ダル! カルマっち、援護よろしく!」
ヒューイが突撃する。防御や回避は考えず、全力で当たってぶった切るorぶん殴るつもりで行く。
「超伝導流体摩擦装置、ブースト起動! ――超伝導ブースト!!」
「ヒューイ・焔――!」
無月のロンゴミニアトで吹っ飛んだダム・ダルに、ヒューイは機刀「建御雷」で肉薄、さらに電磁ナックルαでぶん殴る。
「超電磁ナックル!!」
ガキイイイイイイン! と、ダム・ダルは受け止めた。反転して、白皇を吹き飛ばし、白魔と激突する。
「にいいい!」
ヒューイはダム・ダルの機刀を弾き返し、再度刀を打ち込んだ。
「これでも食らいなダム!」
スライドしつつヒューイは剣翼で切りつけた。凄まじい衝撃がダム・ダルを直撃しているはずだが、まるで効いていないかのようにダム・ダルは後退する。
旭は、狙いを付けると、旋回するダム・ダルにミサイルごと叩きつけるように、ガトリングを撃ちこむ。狙いとしては銃撃+爆発での威力倍増。
「いくら直撃が余裕だからって‥‥これならっ!」
ミサイルの直撃を受けて爆発炎上するダム・ダル。さらに追撃の機関砲を撃ち込む旭。
「手応えはあった‥‥けど」
煙の中から、ダム・ダルは悠然と起き上がって来る。
加速するダム・ダルに旭は後退する。
「福岡から追い出されて、熊本まで攻め込まれたけど、多くの犠牲を払ってやっとここまで来たよ。だから、これで終わらにさせてもらうよ」
アークは旋回しつつスライドすると、ダム・ダルの側面から試作型スラスターライフルとファランクス・アテナイを叩き込んだ。
「アーク・ウイング、打ち掛かって見せるか?」
ダム・ダルは銃弾を弾き飛ばしながら突進してくる。
「アーちゃんを甘く見てるなら――」
アークは練剣「白雪」に兵装を変更して攻撃。PRMシステム・改で知覚を最大強化。白雪がダム・ダルを貫通する。
しかし、ダム・ダルは意に介した風もなく、機刀をアークのシュテルンに振り下ろした。
「くっ――」
アークは咄嗟に機盾「ウル」で受け止めた。
「ダム! 積年の恨み! ここで晴らしてあげるわ!」
あやこはWR01と高分子を叩き込んだ。撃って撃って撃ちまくる。
「私を殺せば恨みが晴れるか。そう簡単ではないだろうが、ならばここで立ち切ってやろう藤田あやこ」
ダム・ダルは旋回すると、加速したが、御影にカルマ、旭にアークが猛烈な銃撃を加えて足止めする。
「お前の暴走ここで終わりにしてやるよ! ユーリ、後は頼んだぜ」
ブロンズは突進すると、アクロバットに反転しつつ遠心力を用いた一撃を叩き込んだ。
「ぬっ――」
ダム・ダルは器用な角度でそれを受け止め、ディープブルーの剣を押し返した。
「ぬぐぐぐ‥‥畜生、まじか」
次の瞬間、ダム・ダルの刀が跳ねて、ディープブルーの腕を切り落とした。さらに腰の光線銃で機体の関節を焼き斬るダム・ダル。
「今だよ、ユーリさん!」
ソーニャは戦況を確認しつつ、タイミングを図っていた。
「ああ、行くぞルキア!」
双機刀を構えると、加速するユーリ。
ダム・ダルは振り向いたが、双機刀の連撃を受ける。
「切り裂け! ディース!」
足を止めず流れるように動きながら、薙ぐ様に双機刀を滑らせる。ダム・ダルの反撃は滑らせる様に受け流すか払う、を試みるが、そう簡単にはいかない。直撃を受けてディースは一部爆発した。
「ユーリ・ヴェルトライゼン、さすがと言ったところだが――」
「そうだ――」
ダム・ダルの突きを交差させた双機刀で受け止め、動きの一瞬止まった所で脚爪による蹴り上げを。ダム・ダルは吹っ飛んで舞い上がった。さらにAファングを乗せながら斬り裂いてダメージを蓄積させて行く。
「これでも受けろ!」
至近距離から機関砲を叩き込みつつ後退する。
ルキアはスライドしながら回り込んでいく。側面・背面を取られない様に。狙いを付けると、ピアッシングキャノンを撃ち込む。
後衛、サークルブラスト警戒。狙撃と行動1温存。瞬間移動は、直感でブースト回避と副兵装で迎撃。
「戦いたくて仕方がなかった、何も無くなったきみと」
愛しさにも似た殺意、敬意を抱ける強さを持つ相手と戦う、喜び――。
「きみの見てるセカイは何色? 言葉にしないと、叫ばないと、伝わらない事もある」
ブースト攻撃と方向転換の追撃、距離を取る。
「夢守ルキアか‥‥私が見る世界の色は、砂色だ。言葉に出来るとしたらな」
「砂、ね」
次の瞬間ダム・ダルは瞬間移動でルキアのイクシオンの上に立つと、機刀を振り上げた。
「世界はもろい。砂のように脆く、崩れる」
「そう言うこと、でも――」
ルキアは機体の出力を低下させ、ダム・ダルを押しつぶすように、地面に倒れる。
「誰にも捕まる気は無い、私はルキアだ」
「夢守ルキア――」
ズウウウウン! と、ダム・ダルを下敷きにした。
「ルキア!」
「私は大丈夫――けど」
ダム・ダルは立ち上がると、そのまま片手でイクシオンを持ち上げ、投げ飛ばした。
「おいルキア、しっかり」
「ちょっと、ダム君を怒らせたかな」
御影は無月とともに、タイミングを図っていた。
「無月、仕掛けるぞ――」
「了解です‥‥」
御影は加速、ブースト起動→接近→雪村×3→後退→アハト(計行動力:6)
接近し、無月と共に雪村の連続斬撃。そして後退し距離を取りつつ、アハトの一撃を見舞う。
「――行くぞ、受け切って見せろよ‥‥!」
無月も加速。決す一斉攻撃――朔夜と合せブースト近接にて雪村全行動使用連撃。主攻撃の右手の雪村と副攻撃の左手の内臓雪村で練剣二刀流し多角的な攻撃で敵に必中必殺実施。
「ダム・ダル‥‥この攻撃‥‥受け止めることが出来ますか‥‥」
凄絶な知覚攻撃が炸裂する。ダム・ダルを貫通する。
それでも、次の瞬間ダム・ダルは機刀で白皇の片腕を切り飛ばし、吹き飛ばした。
「ダム・ダル――! まだまだあ!」
続いてヒューイが突進した。連撃を叩き込む。
「ここでお前を‥‥!」
次の瞬間、ヒューイの機体は真っ二つになった。崩れ落ちる白魔。
「く‥‥やられた‥‥!」
ヒューイはすぐに飛び出すと、近場の建築物に瞬天速で移動、そこからペイント弾を込めた番天印で顔面を狙い撃ち、射撃後、瞬天速で他の建物の屋上に移動し再び顔面を狙い撃つ。
だが次の瞬間、ヒューイはダム・ダルの機刀に真上から叩き潰された。圧殺は逃れたが、ヒューイは大ダメージで意識が飛びそうになった。
「みんな! まだ! 一斉に仕掛けて!」
ソーニャは声を飛ばした。
「行くわよ! 孫六さん援護します!」
あやこは加速すると、銃撃を叩き込み、孫六はダム・ダルに突撃した。
「行くぞダム・ダル! これがワシの最後の一撃だ!
圧練装甲常時展開、練力限界まで連続OGRE/B使用し両腕でダム・ダルを掴み、両手の龍破を発射!
「自機の損傷など気にするか!」
「孫六――!」
ダム・ダルはオウガの腕を引きちぎると、孫六機の足をへし折った。
「まだ! 行けー!」
ブロンズも肉薄して、ダム・ダルに連撃を浴びせる。
「これでも‥‥まだやるのか‥‥ダム・ダル」
カルマもPRMをアグニに乗せて、撃ち込んだ。直撃がダム・ダルを吹き飛ばす。
旭も加速した。ブースト+ツインブースト・アタッケで間合いを詰め、レイディアントスターで攻撃。
「全力っていうのは、今こういう時にこそっ! ヘリオス、ツインブーストドライブッ!!輝けぇぇぇっ!!」
ヘリオスの全開の攻撃――!
ダム・ダルは直撃を受けたが、起き上がって来る。飛びかかって来ると、ヘリオスのコクピットに手を掛ける。
「旭さん――」
アークは盾でダム・ダルを殴りつけたが、ダム・ダルはそのままヘリオスのキャノピーを引きはがす。
旭は剣と盾を取って白兵準備。
「くっ――!」
左手を叩きつけて庇う。
ダム・ダルの光線銃に撃ち抜かれて激痛で意識を失いかけた。旭はその後に気力を振り絞り、本気の一撃(エアスマッシュ+両断剣・絶)を叩き込んだ。
「そうだ、それでこそ戦士というものっ!」
微動だにしないダム・ダルを旭は見上げた。
「僕は闘いに喜びなんて見出したくない‥‥いや、そんなことはどうだっていい。全力の敵に、全力の一撃で応えるっ! そうさ、これこそ戦士としての名誉っ!!」
「死にたいのか旭」
ダム・ダルは機刀を振りかぶった。
そこで、再度アークの一撃を食らってダム・ダルは吹っ飛んだ。
立ち上がるダム・ダルに猛烈な火力が叩きつけられる――!
「まだ終わらんか‥‥だが」
御影は、トリガーを引きながら深呼吸する。苛烈ではあるが、自身が打倒する気はなく。今まで奴を追い求めた者が決着をつけるべきと考えている。自身は借りを返し、その結果を見る為に。
ユーリは突進すると、ブロンズや兼元たちが作り出してくれたこの隙に、タイミング合わせてブースト+Aファングで全力の斬撃。
「カルマ!」
カルマも加速してロンゴミニアトを撃ち込む。ユーリは逆方向から盾で押し込んで挟む。
「相討ち上等! 勝ち逃げだけは絶対させない!」
ダム・ダルを捉えた一撃が――それをダム・ダルは跳ね返すと、ユーリとカルマを吹き飛ばし、脱出すると、地面に降り立った。が、よろめいて崩れ落ちた。
「‥‥‥‥」
傭兵たちは来るであろう反撃を待った。しかし、ダム・ダルは立ち上がると、膝をつき、苦しそうに肩で息をしていた。
パキーン! と音がして、ダム・ダルの片腕にひびが入った。そこから光の粒子がきらきらと漏れてくる。
「ここまでか‥‥やってくれたな傭兵たち‥‥どうやら、私の命は尽きたようだ‥‥これまでだ‥‥間もなく、私の肉体は失われる」
無月は、用心しながら銃口を向けると、今一度問うた。
「ダム・ダル‥‥最後と言うなら‥‥捕獲機のありかを教えてもらいましょうか‥‥」
「オーストラリア‥‥今はそこにある‥‥恐らくお前は辿りつけまい‥‥辿りついたところで、取り返すことなど不可能だろう」
「その言葉さえあれば十分です‥‥」
カルマは言葉を掛けた。
「さようならだ‥‥宿敵。さようなら‥‥ダム・ダル」
「さらばだカルマ・シュタット」
ルキアも一言。
「きみはユイイツの戦士だよ」
高揚は薄れ灰色になるケド、記憶すればいい。
孫六は、ぼろぼろの機体から降りると、ダム・ダルの前に立った。
「死に逝く者は敵に非ず、キミと戦えて良かった! また逢おう、友よ!」
「友、か‥‥孫六」
「さようならダム」
「さらばだソーニャ」
そうして、ダムの体が崩壊して行く。ひび割れて行くダムの肉体は、光の粒子となって消滅して行く。
「夢守ルキア‥‥本当のことを言えば‥‥世界の色は一言では言えない‥‥世界の色は‥‥」
そうして、ダムの肉体は完全に消滅する。舞い散る光の粒子は空へ上がって行くと、消えた。
それが最後だった。終わったのだ。
やがて、カルマは空を見上げた。
「ダム・ダルが居なくなって少しだけ‥‥世界が寂しくなったかな」