タイトル:【ODNK】熊本決戦の大地マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/28 21:50

●オープニング本文


 ビー! ビー! ビー! ビー! ビー‥‥!
 熊本基地のメインモニター、北熊本から福岡を映し出しているその上に、あちこちに赤いマークが明滅している。
「バグア軍の大部隊、熊本へ向かって南進中、待機中の傭兵はただちに迎撃に向かって下さい――」
「大分方面から転進したバグア軍、熊本へ向かって移動中。迎撃部隊、熊本への侵入に対処して下さい」
「バグア軍主力の予想進路は広域筑後圏、敵の攻撃目標は熊本方面と思われます。全部隊にスクランブルが掛かっています。待機中の傭兵はこれを迎撃、バグア軍主力を福岡方面へ撃退せよ――」
 オペレータたちが慌ただしくコンソールを叩きながら傭兵たちを送りだしていく。
 バグア軍はまだ力を残している。その戦力は今、まさにトールハンマーとなって熊本へ向かって振り下ろされようとしていた。

 福岡南部、地上戦線――。
「――敵は陸戦が主力のようだな。ゴーレムがうぞうぞいやがる」
 傭兵は、言って操縦桿から手を離した。今しがたまで、ゴーレムの集団と激しい戦闘状態にあったのだ。
「隊長、戦域をクリアしました。ひとまず、ゴーレムの集団は後退した模様です」
「すぐに次が来るぞ、我々もひとまず後退して休むとしよう」
「残念だが、休んでいる時間はないぞ――」
 突如、電波ジャックでバグア軍から声が流れてくる。
「私は春日基地の副司令官を務める高橋麗奈。今から貴様らを滅ぼしに行く。地上は我が軍がもらう。覚悟することだな」
「高橋‥‥」
 UPC軍の地上にいる傭兵たちは声を聞きながら、レーダーに目を落とす。北から、続々と敵の集団がやって来るのが確認できる。
「ふふふ‥‥UPC、我々に勝てる通りなどない。貴様等の軍は、福岡南で地上から消滅するのだ」
「よく言ったもんだな高橋麗奈。敗戦のたびに昇格する奇跡の指揮官さんよ」
「何い?」
 高橋の怒気をはらんだ声が通信を震わせる。
「UPC軍よ、高橋麗奈は確かに猪武者ですが、ただの猪ではありません。注意することですね」
「洋子、貴様は黙っていろ! 奴らは私が叩く!」
「その調子では、またティターンを壊しまよ高橋」
「黙れ! ――行くぞUPC! 全軍我に続け!」
 洋子――青いティターンを駆るバグア軍の強敵だ。地上に高橋と洋子、二人のエースが揃った。喜べる事態ではない。
「ティターンが二機か‥‥。気をつけろ。これまでの報告でも、高橋と洋子は尋常ではない被害を出している二人だ」
「両エースが地上でそろい踏みとはね‥‥敵さんもやる気満々ね」
「叩き潰すまでだ。行くぞ!」
 傭兵たちは加速する。
 熊本決戦――まだ、戦いの趨勢は見えない。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
レティア・アレテイア(gc0284
24歳・♀・ER
吹雪 蒼牙(gc0781
18歳・♂・FC
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
イレイズ・バークライド(gc4038
24歳・♂・GD

●リプレイ本文

「敵機が接近してくるわ! みんな行くわよ! 今日ここで、バグアの足を止めるのよ!」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)は腕を振り上げると、加速した。
 軍KV、傭兵たちは雪崩を打って突撃する。
「全機突入! 奴らを生かして帰すなよ! 一気に福岡南を解放するんだ!」
「おお!」
 三島玲奈(ga3848)は前進すると、軍KVとともに敵の抑え役に回る。
「今は兵力を温存する。‥‥時には踏み込んだ攻撃も必要だ。敵よ二の矢三の矢という言葉を思い知れ!」
「後が無いか‥‥ここを抜かれるわけにはいかない!」
 シクル・ハーツ(gc1986)は言って、槍を構える。
「さすがに数が多い‥‥様子を見るか」
 やや引き気味で戦場全体を見渡しながら三島の逆サイドで孤立しないように戦う。
「三島、まずは様子見だ。エース機が出てくるまでは軍KVと協力していくぞ」
「了解した。ハーツ、そちらも気を付けてな」
 三島はそのまま前進すると、突入に合わせて援護射撃を開始する。スナイパーライフル2丁を交互に連射して射程内に捉えた敵を早期に攻撃していく。鋼鉄のガンマン。
「こちらチームアルファ! ゴーレム部隊と接触するぞ!」
「アルファ、援護する」
 三島は銃器を構えてずんずんと前進して行くと、銃撃を開始する。身にまとうリロード兵器は三島の雷電の象徴的な姿だ。
 軍属KVの援護を主眼に被害を食い止める。ただし待ちの姿勢では劣勢を招くのでKV部隊からあまり離れずリロード兵器を全開して針鼠の様な攻撃をする。
「針に触れて少しでも傷ついてくれればよい」
 言いつつ、敵が出てくるところを狙い撃つ。
「敵高性能機はこちらの温存策を早期に察して殲滅を仕掛けてくると思う、気を抜くな」
 リロード兵器の全砲門を周囲に巡らし迎撃の構え。陣形は円陣、隙を作らない。
 ハーツはレーザーを撃ち込みつつ、接近して行く。
「くっ、数が多い‥‥! 一機ずつ確実に倒さないと‥‥」
 ゴーレム優先で攻撃・常に回避中心・指揮官機には絶対に手を出さない。
「UPC! ここが貴様等の墓場だ!」
「そうはいかん‥‥!」
 タロスと打ち合うシクル。
「そう簡単に近づかせるか!」
 レーザー砲や槍で牽制し、常に中距離間合いを保つ。
 軍KVもあちこちで激突する。鋼鉄の巨人たちによる激しい格闘戦が始まる。
「意外なことだな! ここまで反撃するとは! だが、最後に勝つのは我らバグアだ!」
「そう思うか? ならば、私はお前たちの予測の上を行く」
 シクルは加速して、タロスに一撃叩き込んだ。
「何を! 世迷いごとを! 幾らあがいたところで貴様等に勝ち目はない!」
 タロスの反撃を弾き返し、冷静に攻撃を叩き込むシクル。ゼロ距離射撃でレーザーを放った。タロスの胴体をレーザーが貫通して、タロスは爆発四散した。
「貴様ら! どこまでも私の邪魔をする! 今日の私は機嫌が悪いぞ! 私の前に出たらまず生きて帰れないと思え!」
「高橋‥‥せいぜい死なないことですね‥‥私はあなたを助けるほどお人よしではありませんからね」
「に‥‥! 高橋麗奈と洋子? ‥‥気をつけろ! 指揮官が来ているぞ!」
 赤いティターンと青いティターンが突進してくるのを確認したシクルは、仲間全体に連絡する。
「‥‥師匠、今日は別行動ですが‥‥無事を祈っています‥‥」
「さて、相手が何であろうと、やることは変わらん。行くぞ‥‥!」
 奏歌 アルブレヒト(gb9003)とイレイズ・バークライド(gc4038)は機を見て加速すると、高橋のティターンに奇襲攻撃を仕掛けた。ブースターで一気に間合いを詰める。
「行くぞ高橋‥‥猪武者で無いならそれらしいとこも見せて欲しいとこだな‥‥尤も、猪を真っ向から受けて耐えられる自信は俺には無い。だから受け流す」
 マシンガンを叩きつけるイレイズ。
「‥‥覚悟‥‥仕掛けます」
 奏歌も加速。レーザーキャノン×2は片方ずつ発射。射撃しつつリロードする事で給弾の隙を消し連射、射程8以下でレーザーカノン、近接でDスタッフ。
「ぬう‥‥! 奇襲攻撃‥‥? 小賢しい手を使う奴がいる!」
 高橋は素早く立ち直ると、プロトン砲を連射する。
 奏歌とイレイズは回避しつつ走輪装甲でドリフトしながら、旋回する。
「ちい‥‥さすが春日の双璧か‥‥堅い」
 イレイズは言いつつ、ティターンの近接攻撃を双機槍で横に滑らせるように受け流す。
「これでも‥‥!」
 隙を見てマシンガンを腕部を狙い放つ。
 さらに死角から一撃離脱を仕掛ける。オフェンスアクセレータを使用し双機槍を振り被る前の様に構え、すれ違い様にラリアットをかます様に叩き込み体勢を崩す。叩き込んだら距離を取ってクロスで集中砲火――と行くところだが、高橋はそんなに甘くはなかった。離脱するところを双機槍を刀で絡め取ると、イレイズの腕を切り飛ばした。
「に‥‥! 試作型超伝導DC!」
「ぬう! 叩き潰す!」
 高橋の頭上に回り込んだ奏歌はブーストジャンプで低空から接近、射程5前後で相手の上方から回避先を狙い連射。
「‥‥各機‥‥レッドアタック‥‥!」
「ぬうううう! 私を小手先で叩き潰そうなど!」
 高橋は飛び上がって、奏歌のロビンを串刺しにした。
「‥‥何と言うしぶとい‥‥」
 そのままロビンを投げ飛ばしたティターン。転がる奏歌を踏みつける。
 レティア・アレテイア(gc0284)は加速。ブースト及び高速装輪走行を併用しつつ爆発した様な土煙を発生させながら接近する。
「高橋麗奈、残念ですが、今日はお前が冥界に旅立つことになるでしょう」
 90?連装機関砲×2、20mmガトリング砲での全力射撃を行う。
 バグアロックオンキャンセラーを作動させ20mmガトリング砲でティターンの胴体部に近接射撃を加え、ガトリング砲で受け止めると同時にマッドハウンドで射撃箇所を抉る様に攻撃を加える。
 敵の動きに合わせて纏わり付くように攻撃を繰り返し、敵攻撃での多少の装甲損壊は気にしない。
「何所へ行くのですか、何所にも行かせませんよ、お前達は取るに足らない者として居なくなるのです」
「ならば‥‥貴様もまた私の前に鉄クズとなって崩れ落ちるまでだ!」
 プロトン砲を連射しつつ、加速すると、高橋は突進してレティア機の頭部を粉砕した。崩れ落ちるイビルアイズ。
「厳しい状況ですが、分の悪い賭は嫌いではないので、ここは大きく賭けさせて頂きましょう――いくわよ!」
 なでしこは鋭く切り掛かった。粒子砲、レーザーを撃ち込みつつ突撃。
「はあああ‥‥!」
「ぬう‥‥! まだ!」
 高橋の気迫が一瞬緩んだ。
 なでしこはスキル全開で『雪村』を叩き込んだ。レーザーブレードがティターンを貫通する。
「ちい!」
 それでも、高橋は直後に立ち直ると、刀でなでしこ機の頭部を切り飛ばした。
「く‥‥何て化け物なの! これで!」
 さらに一撃、練剣を振り上げ、なでしこはティターンの腕を切り飛ばした。
「に‥‥!」
 さすがの高橋が後退する。高橋はプロトン砲を連射して撤退した。

 ――紅 アリカ(ga8708)は洋子の蒼いティターンに打ち掛かっていく。高橋のもとへ向かうつもりでいたが、同時に二人のエースへ攻撃するのは時間的にも不可能だった。
 アハトレーザーを撃ち込み、ハイディフェンダーで切り掛かる。
「‥‥あなたがこの戦場の指揮官なのね‥‥悪いけど、討たせてもらうわよ‥‥」
 アリカの強力な一撃は、しかし弾かれた。
「私を討てる傭兵はそうはいないでしょうね」
 洋子は冷静に距離を保って、プロトン砲で応戦してくる。
 凄まじい破壊力だ。シュテルン黒騎士の機体が爆発に包まれる。
「‥‥やるわね‥‥ティターン‥‥これだけの機体‥‥そうはいないわ‥‥」
 アリカは眉をひそめて、レーザーで牽制しながらドリフト走行で回避する。
 吹雪 蒼牙(gc0781)は大地を疾走しながら、旋回してティターンの側面に回り込む。
「うわー、約不足感は否めないなー、ま、やれるだけのことをやるだけだね」
 マイクロブーストとブースターを起動で、奇襲攻撃。アリカとの連携でティターンの後背から飛びかかった。固定されている『機刀「雪影」』による斬り付け、右の前腕に装着してる『マッドハウンド』で二段攻撃。
「ツインハウンド喰らえ!!」
 直撃――! スパークがティターンの装甲を包み込む。
「やった‥‥! 離脱して‥‥!」
 次の瞬間、洋子のティターンは振り向きざまに吹雪のワイバーンを切り裂いた。
「わわっ! くっ‥‥離脱する」
 孫六 兼元(gb5331)は怒っていた。普段は「辛い時こそ笑え」な性格だが、先の戦いでかなり怒っていた。終始怒りは隠さないが、本気で怒るときは「静かに怒るタイプ」なのだ。
「ワシを庇って散った者が居る。此度の戦は、其の名も知らぬパイロットの為に!」
 操縦席にて羅刹の面を被りながら――
「先の戦いは、ワシの不甲斐無さ故の結果だ。この身この心、鬼と化して戦うぞ。兄弟!」
 加速する孫六。
「強化人間2号! 貴様を討ってせめてもの供養とする!」
「強化人間2号ですか‥‥言ってくれますね孫六兼元」
 洋子は冷静であった。
 孫六は静かに牙を剥くと突進。圧練装甲展開しながら接近。プロトン砲をかいくぐってOGRE/Aを発動しジャンプし、更にOGRE/Bを発動、敵頭上より槍を突き下ろした!
「KV槍法・降龍!」
 蒼いティターンは見上げるように孫六機を見据えると、タイミングを合わせて回避して、落下する孫六機を串刺しにした。
「終わりです孫六兼元」
「それはどうですかね洋子――」
 側面から突進したのはソード(ga6675)。
「――!?」
 さすがの洋子が隙を突かれた。
「この前はお世話になりました。今回も相手をしてもらいます」
 練剣を抜くフレイア。
「ブースト作動! PRM『ツヴァイ』起動! シャイニング・ヘキサグラム!!」
☆必殺技:シャイニング・ヘキサグラム――。
 PRMとブーストを使用し錬剣で6連撃を行い敵を六芒星を描くように切り止めに女神剣を突き刺す必殺技。今回は止めに機槍を使用する。PRMはBモードの命中。
「ぬ――! しまっ――!」
 洋子のティターンがソードの猛攻を浴びて大爆発を引き起こす。ティターンの方足が吹き飛んだ。
「止め!」
 女神剣を突き刺した瞬間、洋子は孫六を投げ飛ばして後方へ飛んだ。
「ソードですか‥‥今回は勝負はお預けです。ですが、この借りは返しますよ」
 洋子はそう言って後退した。

 三島はその後も足止めに徹していた。敵エース2機の合流を阻止すべく足元をライフルで連射したり超伝導アクチェーターで敵進路に回り込みながらリロード兵器の弾幕をばら撒いて遅延を図る。
「ふむ、どうにか、高橋と洋子は後退したか」
 シクルもまた敵を引き付け、他のバグア兵を足止めしていた。
「私が敵を引きつけたら、一斉に攻撃してくれ!」
 協力してくれた機体を自分の後方に待機させる・仲間が指揮官機と戦いやすいように敵前衛のゴーレムとタロス10機前後を自分に引きつけ、引き撃ちしながら待機中の機体の方へ誘い出す・相手が少しでも自分の方へ来たら煙幕弾を誘いだした敵の後方へ打ち込み、敵狙撃機の射線を塞ぎ、敵の援護射撃を妨害して孤立させる――。
 だが激戦の中で、シクルの機体は傷つき、ぼろぼろになっていた。
「くっ、機体が‥‥! 頼む、もう少しもってくれ‥‥」
「シクル、どうやら、高橋と洋子は撤退したようだ」
 三島の言葉を聞き、シクルは「そうか」と頷く。
「‥‥少し‥‥無茶をしすぎたか‥‥だが、なんとかなってよかった‥‥」
 バグア軍は、高橋と洋子が後退したことを受けて大きく崩れる。続々と雪崩を討って壊走していく。UPC軍は猛烈な追撃を掛けて、多数のゴーレムを討ち取った。

 ‥‥戦闘が終結して、孫六は操縦席で一息ついた。
「これがわしからの手向けだ‥‥」
 そう言った孫六は、許しを請うたのだろうか。
「孫六さん」
 ソードが歩み寄った。
「うむ、ソード氏」
「これで、このエリアは開放に向かうでしょうか。俺たちの手で、いつか、北九州の戦を終わらせる日が、来ると信じたいですね」
「死んでいった者たちのためにもな」
 孫六は、コクピットで静かに瞑目した。