タイトル:【ODNK】熊本決戦の空マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/28 21:49

●オープニング本文


 ビー! ビー! ビー! ビー! ビー‥‥!
 熊本基地のメインモニター、北熊本から福岡を映し出しているその上に、あちこちに赤いマークが明滅している。
「バグア軍の大部隊、熊本へ向かって南進中、待機中の傭兵はただちに迎撃に向かって下さい――」
「大分方面から転進したバグア軍、熊本へ向かって移動中。迎撃部隊、熊本への侵入に対処して下さい」
「バグア軍主力の予想進路は広域筑後圏、敵の攻撃目標は熊本方面と思われます。全部隊にスクランブルが掛かっています。待機中の傭兵はこれを迎撃、バグア軍主力を福岡方面へ撃退せよ――」
 オペレータたちが慌ただしくコンソールを叩きながら傭兵たちを送りだしていく。
 バグア軍はまだ力を残している。その戦力は今、まさにトールハンマーとなって熊本へ向かって振り下ろされようとしていた。

 福岡南部、上空――。
「――敵の第二波来襲! まだ来ます!」
 傭兵たちは激戦のただ中にあった。今、福岡南部から北熊本に掛けて展開するバグア軍とUPC軍との間に、熊本決戦が勃発していた。両軍の大部隊があちこちで激突し、戦火は激しさを増していた。
「こちらデルタワン! ファームライドの出撃を再び確認した! ダム・ダル(gz0119)の奴、さすがに焦ってるだろうな! このまま一気に福岡南部から押し返すぞ!」
「こちら第八空戦隊。気をつけろデルタワン。まだ戦の天秤はどちらに傾くとも知れない。ファームライドを侮るなよ。こっちからも援軍を送る」
「ファームライド、第二防衛ラインを突破。一気に出てくる!」
「迎撃するわよ! あの化け物に好き勝手させるものですか」
「ファームライドを先頭にする敵集団、第七空戦エリアに侵入。まずい、奴に側面を突かれるぞ」
「そうはさせない。アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ、各空戦隊はダム・ダルの侵入を食い止めろ。他はこっちで止める」
「了解空戦隊長。俺たちは奴を止める。幸運を!」
 そうして、傭兵たちもファームライドの迎撃に向かっていく。
 熊本決戦――まだ、戦いの趨勢は見えない。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
エヴリン・フィル(gc1479
17歳・♀・ER
ラナ・ヴェクサー(gc1748
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

「全機エンゲージに備えて! 早く掃除して! 私にゴホウビね!」
 夢守 ルキア(gb9436)の軽快な声が回線に響く。
「了解!」
 傭兵たちはアフターバーナーを吹かせると、勢い加速して突進して行く。
「敵機を捕えた! ミサイル発射!」
「FOX2!」
 流れるミサイルがHWに向かって飛んでいく。噂の新型HWは、急旋回とジグザグ飛行でミサイルをアクロバットに回避して行く。
「やるな。あれが新型HWか」
 オウガと遊撃の位置についていた白鐘剣一郎(ga0184)は、僅かに眉を寄せると、操縦桿を傾けた。
「全機掛かるぞ。FRが出てくるまではその他を落とす。ルキア、FRの姿は見えるか」
「うーん、どうも隠れているのかな。レーダーには映ってないよ。単にキューブのジャミングの死角になっているだけかも知れないけどね!」
「まあいい、俺たちはいつでも動ける態勢を取っておく‥‥行くぞ!」
 剣一郎たちはバレルロールで加速すると、HWに襲い掛かっていく。
「よし白鐘、今日はあの牡牛座を仕留めてやろうじゃないの!」
 加速するKVが弾丸のように突進する。ライフルを叩きつければ、HWの装甲が激しく吹き飛んでいく。反撃のプロトン砲をかわす剣一郎。友軍のオウガは一機戦闘不能異なる。
「く‥‥しまった! 予想外だった! すまん!」
 その時である。正面から大きな反応が突進してくる。FRの反応が出現する。
「もう来ましたか‥‥このジャミング下で厄介な。白鐘殿! みなさん! FRです! 真正面から来ます!」
 神棟星嵐(gc1022)の声に、剣一郎は冷たい瞳を前に向けた。
「西方位、ダム君が遊びにきたよ!」
 夢守 ルキア(gb9436)が仲間たちに言葉を投げる。
「出たか‥‥わざわざ向こうからお出ましとは大儀だな」
 次の瞬間、FRの銃撃で友軍数機が瞬時に爆発四散する。
「う、わあああ‥‥!(ザザー)」
「脱出できない! わあああああ!(ザザー)」
「ダム・ダル!」
「待って、ここからよ。敵さんも屈指の工業地帯を長く占領した成果か高性能HWの物量が半端ないね。本気出して行くよ」
 藤田あやこ(ga0204)は雷電チームと魚鱗の陣形を組むと、FRの攻勢に備える。ラナ・ヴェクサー(gc1748)もまたその一翼を担っていた。
「勝っても負けても大勢が決すか‥‥ならば徹底的に叩くまで」
 加速する藤田たちは、タロス、HWに銃撃を叩きつける。吹っ飛ぶタロスが、一機爆発四散する。
「く‥‥UPC! 熊本は渡さん!」
「それはこっちの台詞よ!」
 あやこは烈火のごとく怒りを露わにすると、SESエンハンサーでレーザーを叩き込んだ。
「ふふふ‥‥我らの機体は力を増した! 生半可な攻撃など、当たるものかよ!」
 凶暴なHWのエース機が突進してくると、プロトン砲を連射して雷電を一機沈めた。
「に‥‥やる‥‥!」
 ラナは旋回して、ミサイルを叩き込んだ。
「ここは渡さない‥‥お前たちの舞台は、ないぞ」
 ラナはバンクサインを交換して雷電チームとエース機を包囲してハチの巣にする。
「さて、悪いけど邪魔はさせないよ」
 カルマ・シュタット(ga6302)は言って、CWを撃墜して行きつつ、タロスに打ち掛かっていく。
「FRは撃墜させてもらう。仲間たちの邪魔はさせない」
 K02をロックオンして、ミサイルを放出した。
 HWとタロスは、回避行動を取りつつ、急旋回してミサイルを振り切る。
「お前たちの相手は、俺がしてやる――来い!」
「そのシュテルン――! 春日基地では噂のカルマシュタットか! ならば貴様を落として、俺が春日基地のビッグスリーに名乗りを上げる」
「馬鹿言ってるなお前」
 カルマは敵のプロトン砲をかいくぐって跳ねるように飛ぶと、エース機の背後をとった。
「この程度でビッグスリーとは、新米エースか」
「く‥‥何! こんな容易く私の背後を‥‥!」
 カルマはトリガーを引いた。ツングースカを叩き込む。猛烈な銃撃がエース機を貫通する。
「うおおお‥‥!」
 爆発四散するエース機。
「さすがはカルマ・シュタット、名うてのエースだけある」
「それだけ叩きつぶしがいがあると言うものだ」
「俺一人で相手になると言ったな、くくく‥‥どこまでそんな強がりが通用するかな」
 敵はざわざわとカルマの周りに集まり始める。
「そうはいかねえよ! 今日も元気にちゃっちゃと始めますかねえ!」
「ぬ!?」
「上空! ハヤブサ! これは‥‥ラストホープのファルコン、ヒューイ・焔(ga8434)!」
 敵集団が空を見上げる。
「カルマっち! 一人で格好いいところ持っていくなよな!」
「ヒューイさん、助かるよ」
「はっはあ! ここからはハヤブサちゃんの出番だぜ!」
 ヒューイはブーストダイブで加速すると、一機タロスに突貫した。急旋回でまとわりつくようにソードウイングの連打を浴びせる。
「ぐ‥‥おおおおお!」
 タロスは切り刻まれて粉々に吹き飛んだ。
「さーて次々い!」
 と、UPCの軍KVも援軍に駆けつける。
「おい、まさかお前らだけで敵を相手にするつもりじゃなかろうな。全く無茶な奴らだ――各機、ラスホプ組の支援に回れ! ワームを叩き潰すぞ!」
「ラジャー!」
 エヴリン・フィル(gc1479)、大戦でタロスに相方を落とされたのを思い出す。
「同じことを二度やるのは馬鹿だ‥‥私は馬鹿じゃない‥‥行きます」
 加速するエヴリン。目標はタロス。ドックファイトは極力せず周囲を見渡せる様に余裕のある移動。回避行動にも派手な航空機動は取らず、スキルを使った上で加減速で被害低下を選択。
「FRが早々と出てくるとは‥‥」
 エヴリンはそちらへは近づかず、タロスを狙っていく。
「タロス‥‥!」
 混戦の中でタロスと向き合うエヴリン。
 悠然と旋回するタロスに、エニセイをばら撒く。
 突進してくるタロスがプロトン砲を叩き込む。直撃が来て、衝撃が走る。
「く‥‥」
 態勢を立て直しつつ、ブースターを起動。
「エヴリン機! 支援する」
 友軍がミサイルを放ってバレルロールで突進する。
「ありがとうございます‥‥ターゲットはタロス‥‥フィル機攻撃を開始します」
 横合いを突く位置を経由して誘導弾を撒く。タロスに回避行動を連続させ隙を作る。
 そのまま加速し敵とクロスしながらマシンガンとエニセイを連射。反撃は剣戟の間合いだけ留意して砲はスキルと抵抗で受け止める。離脱時にフレア弾を撒いて回避に備える。
「ここで指揮官を落とせれば後が楽になりますね‥‥」
「大丈夫かエヴリン!」
「多少ならば‥‥耐えられる‥‥はず」
 プロトン砲を回避しつつ、次の一手を探る。互いに旋回しながら、友軍のサポートを受けてミサイルを発射。
「修復の間は開けさせません‥‥これで終演です!」
 そのまま突貫して、マシンガンを叩き込んだ。タロスの装甲が吹っ飛び、友軍の集中砲火で遂に爆発四散するタロス。
「やった‥‥!」
 神棟はレーダーに随時目を通しながらD−013ロングレンジライフルで小型HW及びタロスへ牽制し、前線メンバーの支援を行う。
「狙撃は初めてだが、やってみるさ――狙い撃つ!!」
 FR出現後もHWとタロス迎撃部隊の支援を行う。
「夢守殿から連絡はなしか‥‥FRが出て来ては、それどころではないかな」
 軍KVペインブラッドと連携通達して、新型HWを狙い撃つ。
「さすが新型‥‥手ごわいが‥‥」
 
 飛べさえすれば良かった
 この空の何処で砕け散ろうと
 だからこの戦いにもどこか感謝してた
 戦いがなければボクは飛べなかったから
 あの子はどうだったんだろう
 名前も聞いていない
 多くの仲間が死に、敵を殺した
 せめて刻もう
 ボクたちは幸せ和な世の礎に逝ったのだと
「‥‥だんだん勝手に逝く訳にいかなくなってきたなぁ。この世が何処にいくのか見届けないと」
 ソーニャ(gb5824)は先の戦いで散った少女を思い出す。
 目を持ち上げた時、ソーニャの瞳には決意があった。この宇宙人との戦闘の終わりを、必ず見届ける。
 軍KV雷電×5、ロビン×5と連携。
 タロス、HW対応。
 ソーニャが初撃レーザー囮。ロビン隊後続、雷電隊で蹂躙。
 アリス常時起動、Mブースター適宜。狙われたら味方射角へ逃げつつ。
 そしてFRへ――。
「ここはお願い、行ってくるよ」
「了解ソーニャさん、気を付けて。HWは押さえます」
「うん。頼むよ」
 旋回するエルシアン。
「毎回突っ込んでるからね。少しでも意識してもらえてるとうれしいんだけど」
 言って、ソーニャは加速した。
 アリス、Mブースター、時に通常ブーストを混ぜ、他のFR対応機とタイミングを合わせ、またずらし突入。
「白鐘さん!」
「ソーニャか。FR来るぞ!」
「はい」
 直前で離脱。突撃フェイクで牽制。その実、タイミングを計っている。
 藤田は旋回してFRの側面を突く。
 前衛の物理攻撃で抑えてもらい、編隊の裾野を伸ばす様に自分は知覚KVと一緒になって敵陣を包囲、八方から知覚攻撃の雨を降らせる。
「熊本は渡さん」
 FRは銃撃の嵐を次々とかわしていく。かわしつつ、一機、二機と撃墜して行く。
「きゃああああ!(ザザー)」
「くそ‥‥脱出する!(ザザー)」
「ダム! 熊本から出て行け! 家族の恨み!」
「ここへ来て反撃とは、よくよく分からないものだ。だが、いつになくお前たちの抵抗が激しいことには驚く」
 ダムは言って、加速する。
「お前な! いつまでも余裕でいられるか! そのうち春日基地を叩く!」
 ヒューイは高高度から突進して、ウイングで切り掛かった。
「ファルコン号か、来い」
 FRはバリアーで弾き飛ばすと、ハヤブサのバルカンをことごとく回避する。
「にゃろう!」
「大分方面は追い返したんだ。こちらも負けてはいられないね。今度こそきっちり追い返す!」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)は加速すると、友軍機と突進する。
「ダム・ダル‥‥また会ったな! もうお前には‥‥言葉が出ないぜこのヨリシロ!」
 僚機に射撃支援を貰いつつ、接近戦で纏わり付く。いつもの攻撃だ。射撃支援はディアブロと練剣積んでないフェニックスで。練剣を積んだフェニックスは、高度を取ってFRの頭上に位置。
「ユーリ・ヴェルトライゼン。お前は何を企む」
「何も企むか!」
 言いつつユーリは、FRの突進をかわす。木の葉落としの要領で下に逃げる。FRが急降下する。――そのタイミングで上空のフェニックスがダイブアタック+空中変形+練剣攻撃。
 しかし、ダムは鮮やかな反応で回避すると、フェニックスを旋回しつつ体当たりで吹き飛ばした。
「何、だと!」
「まだまだあ!」
 直後にユーリが下から交差するように剣翼にAファング乗せて斬り上げ、フェニックスの変形の援護を。
 畳みかける様に、ディアブロと残りのフェニックスに機体能力乗せて一気に弾幕を叩き込んで貰う。
「行けー!」
「ならば――」
 FRはさらに急加速して、凄まじい高速で攻撃を振り切った。
「‥‥3、2、1、エルシアン行けー!」」
 スクリュー軌道で突っ込む。ひそかに雷電、ロビン隊がFRの射程圏にブースト突入。I−01一斉発射。アリス、Mブースター、通常ブースター起動。ラージフレア散布、ミサイル郡にまぎれる。ミサイルには4発の照明弾が混ざっている。照明弾の発光に合わせ3発ある緊急ブースター個別点火。瞬時に軌道変更。エルシアンは残像を残し、位置を変える。回避技、ファントム改「ミラージュ」。G放電全弾発射、離脱。
 だがFRはこれもかわす。
「やっぱかわしたあ――」
 ソーニャは首を巡らせてFRを見やる。
 ルキアはダムとの通信開いた。敵数が多いし、持久戦だとジリ貧。でもワクワクしてー、思想はワカンナイケド。
「ねー、歯車もセカイも、どーでもいいよ、ソンザイかそれ以外。ダム、きみは何が欲しい、何がスキ?」
「何だと?」
「私は、自分を通してセカイを見るのが好き」
 そこで、ダムは聞いたことのない異星人言語で何かを呟いた。
「ん? 何今の?」
「俺が欲しいものか? ひとつ教えてやろう。我々が欲するモノは、存在でもそれ以外でもない。我々にとって価値のあるものだ」
「いつか消えるなら、私はセカイを見る。きみはきみ、それ以上でも以下でもない」
「お前の哲学もまた、俺にとって欲するものとなろう」
 ダム・ダルはそう言って、回線を切った。
「んー、相変わらずだなきみは」
「決着を付けようダム・ダル!」
 剣一郎は果敢にFRに撃ち掛かっていく。レーザー、ライフル、G放電とありったけの攻撃を叩きつける。それでもFRはアクロバットに回避して行く。
「奴の機体は化け物か」
 旋回する剣一郎のシュテルンを、プロトン砲が撃ち貫く。凄まじい衝撃が来て、大爆発が起こる。
「に‥‥!」
「ダム、いつか必ず決着はつける。それはそう遠い日でもないさ」
 ユーリの言葉に、ダムは「それは最後まで分からん」、そう言い残して、傭兵たちの前から後退する。

「FRはまたしても落ちそうにないな」
 ラナは言って、レーダーを見ていた。最後のCWを撃ち落とす。神棟、エヴリンらと、残敵の掃討に当たる。
 猛威を振るうFRは、単騎で軍KVの二割近くを撃墜していた。
「しかし、奴を倒せる日は、本当に来るのだろうか‥‥」
 そしてワームの集団も撤退して行く。傭兵たちは空をクリアして、戦域を確保した。